考え方

基本的な考え方

海運業を営む上で、安全運航の確立・維持は不変の使命です。“K” LINEグループでは、企業理念やビジョンにおいて「安全で最適なサービスの提供」を謳い、安全運航による社会への貢献を果たすために、①安全運航管理体制の充実、②船舶管理体制の強化、③海事技術者の確保・育成の強化の3本柱を掲げています。 

推進体制

安全運航管理体制の充実

当社では代表執行役社長を委員長とした安全運航推進委員会を安全運航に関わる最高決定機関とし、社船・傭船・運航受託船など全ての当社運航船の事故防止および安全対策につき、基本方針の策定から施策の実施までを下図の体制にて行っています。

 

 

安全運航管理体制の図

全海洋を包括カバーする3極のグローバル・モニタリング体制

全海洋を包括的にカバーする3極のグローバル・モニタリング体制を整えることで、全世界の当社運航船への24時間安全サポート体制と、有事対応体制を整えます。24時間365日対応のアジア・欧州・米州拠点を整備することで、常時モニタリング体制を構築し、気象・海況変化や航海計画に応じた安全運航をサポートします。また、緊急対応の支援や本社・船舶管理会社との連携支援も行います。

「人間力」をベースとした安全運航

当社では、安全運航にとって最も大事なのは「人間力」だと考えています。安全運航の実現には、人材の確保・育成、顧客密着を支える海技サポート体制の強化、そして全海洋を包括的にカバーする安全管理体制の構築・運用が不可欠です。一方で、高度な安全・輸送品質の実現を支えるには、先進・デジタル技術の活用による暗黙知のデータ化を進め、「人間力」を補完していく必要があります。「人間力」を生かした安全・品質管理を先進・デジタル技術が補完する、いわば「人」と「テクノロジー」の両輪で、3極のグローバル・モニタリング体制を強化し、「お客さまを第一に考えた安全で最適なサービスの提供」を行っていきます。

本船のサイバーセキュリティ認証

近年、インターネット回線による船舶運航データの船陸共有化と安全品質の向上へのデータ活用が進んでいます。また、衛星通信容量の拡大に伴い、船内ICT機器および船内ネットワークの整備が必須となっています。今後、船陸間でインターネット環境への接続が一層増えることによるサイバーリスクを見据え、2020年より当社グループの船舶管理会社では一般財団法人日本海事協会(ClassNK)からサイバーセキュリティマネジメントシステム(CSMS)の認証を取得し、船上のサイバーリスクへの対応力強化に努めています。

取り組み

船舶管理体制の強化

当社理念を共有した以下のインハウス船舶管理会社により、船種ごとの専門性を生かした、より高品質で安全・安心なサービスを提供しています。

 

船舶管理会社

管理船種

K MARINE SHIP MANAGEMENT PTE. LTD.

油槽船、LPG船、LNG船

“K” Line Ship Management (Singapore) Pte. Ltd.

コンテナ船

“K” LINE ENERGY SHIPPING (UK) LIMITED

LNG船、液化CO2船

ケイラインローローバルクシップマネジメント株式会社

自動車船、ドライバルク船

乗船前ブリーフィング

本社およびインハウス船舶管理会社では、シニアオフィサー(船長、機関長、一等航海士、一等機関士)が乗船する前に、都度、乗船前ブリーフィングの機会を設け、安全運航に関わる当社方針や最新情報の共有を行うことで、安全管理体制を現場まで浸透させています。

会議室で当社男性社員が会議をしている様子

安全キャンペーン

日頃から運航船舶の寄港時には、運航担当者や海技部門担当者、安全監督、船舶管理会社担当監督などが訪船し、乗組員との意見交換や船体・機器類の状況確認など、安全運航に必要な活動を行っています。
この活動に加えて、毎年実施する安全キャンペーン期間においては、社長や役員などの訪船も含め活動を強化し、船機長および乗組員との意見交換を行うことで、海陸を含めた全“K” LINEグループの「安全運航と環境保全」に対する意識をより一層高める機会としています。

ウェブ会議システムを活用した会議を行っている様子

Safety Report制度

 不安全行動などの船上でのニアミス報告は、陸上で勤務している熟練の海事技術者によって丹念に分析され、本船にフィードバックされています。当事者の責任を問わないノンブレイミングカルチャーの徹底により、年間数千件の報告を共有することにより、現場における安全意識を根付かせています。

事故情報管理システム 「AIMS(Accident Information Management System)」

「AIMS」は、事故事例の適切かつ迅速な処理や、事故傾向の分析と効果的な防止対策の構築を目的とする、事故情報管理システムです。

「AIMS」により事故の詳細や傾向を分析し、隠れた事故原因などを深く掘り下げることで、事故ゼロに向けたさまざまな対策を実施しています。さらには、事故情報をデータベース化することで、世界各地に広がる海外店所ともタイムリーに情報を共有し、最適な安全対策を実現しています。

大規模事故対応演習

当社運航船にて大規模事故が発生した場合を想定した演習を定期的に行い、有事の際に迅速かつ的確に対応できるよう備えています。演習では、初期緊急対応チーム招集から対策本部招集/設置、事故対策本部内での情報共有体制、海外との連絡体制、メディア対応の確認や模擬記者会見の実施など、実践的な訓練を行っています。

会議室で当社社員が事故対応の演習を行っている様子

運航船モニタリング体制

安全運航管理体制の強化の一環として、傭船を含む運航船のモニタリングを実施しています。
単一プラットフォーム上で各本船の離路や荒天遭遇予想をモニタリングし、その情報を船陸で共有することにより、航海事故の防止に努めています。
世界3極でのモニタリングで、24時間のモニタリングと安全運航サポート体制を構築しています。

当社独自の安全設備設置指針「K-DNA」

「K-DNA」とは、現場で培ってきたノウハウの蓄積、過去の事故から得た教訓を反映させた、当社独自の安全設備の設置指針です。航海設備や機関設備、安全保護、海賊対策などの設置基準からなり、あらゆる角度からの知見を集結させることで、継続的に発展させ、全運航船におけるハード面の安全強化を図っています。いわば当社の安全運航の歴史を受け継ぐDNAそのものといえます。

「K-DNA」を説明している図

検船による「KL-QUALITY」の維持

当社では全運航船(傭船を含む)を対象とする独自の品質指針「KL-QUALITY」に基づいて、検船監督が実際に訪船しての検船を定期的に実施しています。
また、長期傭船の船主各社実務担当者と、幅広い情報の共有と意見交換を行う「船主安全対策連絡会」を年1回開催しており、優れた傭船船主に対してはその功績を称え、表彰しています。

船のエンジンを点検している様子

EV安全輸送のノーテーションを取得

“K” LINEグループでは、運航する自動車船に対して、電気自動車海上輸送のための安全対策が講じられた船舶であることを意味する船級ノーテーション*を取得しています。
“K” LINEグループはかねてより自動車の安全輸送に向けた取り組みを強化しており、当ノーテーションの取得は、この活動が評価されたものです。

* 船級符号。船級協会が要件を満たした船舶やシステムなどに与える付記

DX対応

DXを活用した安全運航の推進

自動積み付け最適化への取り組み

当社は、鋼材・鉄鉱石・石炭積み付けプラン自動作成共有システムの開発を通じ、お客さまのさまざまな要望と各種の制約を満たした上で、積み数量の最大化、積み付けの最適化および船上作業の省力化を目指しています。現在は、本船上の航海士や海事技術者のノウハウで積み付けプランを作成していますが、高度な数理最適化技術を活用したアルゴリズムによって、熟練海事技術者と同等の積み数量を実現する実証実験に成功しました。DXの活用によって、本船上の航海士の業務負担を軽減し、最重要任務である安全運航に注力できる環境づくりを進めています。

関連データ

重大事故発生件数*

2020

2021

2022

2023

2024

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* 対象範囲は当社および連結範囲が売上高の100%の連結子会社です。

PSC検査を受けた船舶の平均指摘数*

PSCとは、外国籍船舶の入港を許可する寄港国が、その船舶が入港した際に行う安全検査のことです。さまざまな国際基準を遵守しているか、本船に立ち入り検査を行います。
“K” LINEグループ船がPSCにおいて受けた指摘件数は、主な地域でPSCを受けた船舶の平均指摘件数を大きく下回っています。

 

* 対象は当社及び連結範囲が売上高の100%の連結子会社です。

* 東京MOU:アジア・太平洋地域におけるPSCの協力組織

* パリMOU:欧州・北大西洋地域におけるPSCの協力組織