考え方

基本的な考え方

海運業を営む上で、安全運航の確立・維持は不変の使命です。“K” LINEグループでは、企業理念やビジョンにおいて「安全で最適なサービスの提供」を謳い、安全運航による社会への貢献を果たすために、①安全運航管理体制の充実、②船舶管理体制の強化、③海事技術者の確保・育成の強化の3本柱を掲げています。 

推進体制

安全運航管理体制の充実

当社では社長執行役員を委員長とした安全運航推進委員会を安全運航に関わる最高決定機関とし、社船・傭船・運航受託船等すべての当社運航船の事故防止および安全対策につき、基本方針の策定から施策の実施までを下図の体制にて行っています。

 

 

取り組み

船舶管理体制の強化

当社理念を共有した以下のインハウス船舶管理会社により、船種ごとの専門性を生かした、より高品質で安全・安心なサービスを提供しています。

 

船舶管理会社

管理船種

K MARINE SHIP MANAGEMENT PTE. LTD.

油槽船、LPG船、LNG船

“K” Line Ship Management (Singapore) Pte. Ltd.

コンテナ船

“K” Line LNG Shipping (UK) Limited

LNG船

ケイラインローローバルクシップマネジメント株式会社

自動車船、ドライバルク船

新会社の設立

当社は2022年度中期経営計画に基づき、高品質で安全・安心な船舶管理サービスの提供と、地域に根付いた 顧客密着型のサポート体制の確立を目指し、また、多様化するニーズに柔軟に応えるために、船舶管理会社を含めた海技組織・人材・拠点のグローバルな機能戦略体制の強化を図り、二つの新会社を設立しました。

 

①K MARINE SHIP MANAGEMENT PTE. LTD. 

シンガポールにK MARINE SHIP MANAGEMENT PTE. LTD.を設立し、ケイラインエナジーシップマネージメント株式会社から油槽船、LPG船、LNG船の船舶管理を移管しました。また、事業部門のアジア地域における活動を最前線からサポートするグローバルな海技拠点の一つとして、脱炭素化やDX技術導入への取り組みなども加速していきます。 

 

②ケイラインマリンソリューションズ株式会社 

当社グループの海事コンサルティング業を行うケイラインマリンテクノサービス株式会社を、2022年7月1日付 で、ケイラインマリンソリューションズ株式会社に改称するとともに、船舶部門および各事業部門に点在していた当社の海技機能を集約しました。既存事業の海技的サポートから、社内横断的な取り組みが求められる新事 業・新燃料に関するコンサルティング、LNG燃料焚き機関などの新技術に関連するトラブルシューティングから船員教育など、時代のニーズに敏感かつ柔軟に対応できる海技組織体制の強化を目指します。 

 

“K”AREプログラム

当社は安全運航の達成のため、テクニカルスキル(専門的技能)に加え、コミュニケーションや意思決定等のノンテクニカルスキル(非専門的技能)の能力向上を目指し、「”K”AREプログラム」という取り組みを行っています。 これまでも、操船要員のチームパフォーマンス向上を目的としたブリッジリソースマネジメントにてノンテクニカルスキルの要素に注目していましたが、「”K”AREプログラム」は船上及び陸上での広い場面におけるノンテクニカルスキルの向上を目的としています。 経営者から現場の船員まで海陸一丸となって、企業の安全文化醸成に向けて取り組み、事故の防止、撲滅を目指します。

乗船前ブリーフィング

本社ならびにインハウス船舶管理会社では、シニアオフィサー(船長、機関長、一等航海士、一等機関士)が乗船する前に、都度、乗船前ブリーフィングの機会を設け、安全運航に関わる当社の基本方針に加えて、各管理会社の安全管理マニュアルおよび関連手順書に基づく具体的な最新情報提供や指導を行っています。

検船による「KL-QUALITY」の維持

当社独自の品質指針「KL-QUALITY」を指標として当社検船監督が全運航船を定期的に訪船 し検船を実施しており、コロナ禍においては、IT・デジタル機器を活用したリモート検船を 開始しています。また、長期傭船の船主各社実務担当者と、幅広い情報の共有と意見交換を行う船主安全対 策連絡会を年1回開催しており、優れた傭船船主に対してはその功績を称え、表彰もしています。

当社独自の安全設備設置指針「K-DNA」

「K-DNA」とは、現場で培ってきたノウハウの蓄積、過去の事故から得た教訓 を反映させた、当社独自の安全設備の設置指針です。「K-DNA」は、航海設備 や機関設備、安全保護、海賊対策などの設置基準からなり、あらゆる角度か らの知見を集結させることで、継続的に発展させ、全運航船におけるハード 面の安全強化を図っています。いわば当社の安全運航の歴史を受け継ぐ DNAそのものと言えます。

事故情報管理システム 「AIMS(Accident Information Management System)」

事故事例の適切かつ迅速な処理や、事故傾向の分析と効果的な防止対策の構築を目的として、2015年、新たに事故情報管理システム「AIMS」を立ち上げました。

「AIMS」により事故の詳細や傾向を分析し、隠れた事故原因などを深く掘り下げることで、事故ゼロに向けたさまざまな対策を実施しています。さらには、事故情報をデータベース化することで、世界各地に広がる海外店所ともタイムリーに情報を共有し、最適な安全対策を実現しています。

安全キャンペーン

毎年、「安全運航と環境保全」をテーマに「安全キャンペーン」を行っています。 

日頃から運航船舶の寄港時には、運航担当者や海技部門担当者、安全監督、船舶管理会社担当監督などが訪船し、乗組員との意見交換や船体・機器類の状況確認など、安全運航に必要な活動を行っています。 

この活動に加えて、安全キャンペーン期間においては、社長や役員などの訪船も含め活動を強化し、対面で「船機長および乗組員との意見交換」を行うことで、当社運航船全体の「安全運航と環境保全」に対する意識をより一層高める機会としています。また、コロナ禍においては、ウェブ会議システムを最大限活用した船陸双方のコミュニケーションにより活発な意見交換を実施しています。 

Safety Report制度

不安全行動などの船上でのニアミス報告は、陸上で勤務している熟練の 海事技術者によって丹念に分析され、本船にフィードバックされています。 当事者の責任を問わないノンブレイミングカルチャーの徹底により、年間数千件の報告を受け、現場における安全意識も根付かせています。

大規模事故対応演習

不幸にも事故が発生した場合に「迅速」かつ「的確」な事故対応を行えるよう、「当社運航船にて最悪の事態が発生した」場合を想定した演習を定期的に行っています。演習では、初期緊急対応チーム招集から対策本部招集/設置、事故対策本部内での情報共有体制、海外との連絡体制、メディア対応の確認等、実践的な訓練を行っています。

海賊被害防止への取り組み

ソマリア沖・アデン湾での海賊事案発生件数は、自衛隊を含む各国部隊による海賊対処活動等により近年低い水準で推移していますが、国際社会がその取り組みを弱めれば、状況は容易に逆転する恐れがあります。また、西アフリカのギニア湾や東南アジアでも海賊被害が継続多発しており、商船の航行にとっては依然として予断を許さない状態が続いています。

当社では、ソマリア沖・アデン湾においては、可能な限り海上自衛隊や各国海軍の護衛を受けて航行しているほか、自衛手段として、出没海域を避けた航行、高速航行の準備および高圧放水装置やレザーワイヤー(カミソリのついたワイヤー)の設置による乗り込み防止など、乗組員の安全を第一に考えたあらゆる方策を尽くしています。

また、速力の遅い船や乾舷が低い船は海賊の乗り込みを防ぐことが難しいため、民間武装警備員を乗船させて警戒に当たるといった対応も取っています。

 

 

関連データ

重大事故発生件数*

年度 

2017 

2018 

2019 

2020 

2021 

2022

件 

0

海運業を営む上で、安全運航の確立・維持は不変の使命です。過去5年間に座礁1件、衝突1件により2件の漏油事故が発生しましたが、適切な対応の下、被害を最小限に抑えました。 

* 対象範囲は当社および連結範囲が売上高の100%の連結子会社です。

PSC検査を受けた船舶の平均指摘数*

ポートステートコントロール(PSC)とは、外国籍船舶の入港を許可する寄港国が、その船舶が入港した際に行う安全検査のことです。

様々な国際基準を遵守しているか本船に立ち入り検査を行います。

“K” LINEグループ船がPSCにおいて受けた指摘件数は、主な地域でPSCを受けた船舶の平均指摘件数を大きく下回っています。

 

* 対象は当社及び連結範囲が売上高の100%の連結子会社です。

* 東京MOU:アジア・太平洋地域におけるPSCの協力組織

* パリMOU:欧州・北大西洋地域におけるPSCの協力組織