考え方・目的

基本的な考え方(陸上)

“K” LINEグループは、グループ全体で遵守される行動規範である「グループ企業行動憲章」を制定しており、そこに掲げる「人権の尊重」の中で、国の内外を問わず人権を尊重するとともに、グループ従業員の人格、個性および多様性を尊重し、安全で働きやすい職場環境の整備・向上を図り、ゆとりと豊かさを実現することを謳っています。 

基本的な考え方(海上)

労働災害事故の撲滅は、安全、経済運航の根幹を成すものであり、各人の安全意識を向上するために、安全体感研修やKYT(Kiken Yochi Training、危険予知訓練)を通じて船上での安全確保に努めています。また、ニアミスレポートなどで、事故に至らなかったものの潜在的な危険性のあった事象を拾い上げ、これをフィードバックすることで、今後の安全運航に役立てる取り組みを行っています。一方、2006年海上労働条約(MLC2006)は、国際労働機関(ILO)により2006年2月に採択された海上で働く船員に対する包括的 な国際労働条約であり、この条約には船員の基本的権利4項目が明記されています。 

 

  1. 結社の自由及び団体交渉権の実効的な承認 
  2. あらゆる形態の強制労働の撤廃 
  3. 児童労働の実効的な廃止 
  4. 雇用及び職業についての差別の撤廃 

 

当社フリート船では、この条約を遵守することで、船員の基本的権利を侵すことのないよう努めています。 

 

健康宣言

川崎汽船は、海運業を主軸とする物流企業として、人々の豊かな暮らしに貢献することを企業理念に掲げ、事業活動を行っています。その理念達成の前提は「安全で最適なサービスの提供」であり、それを成し遂げるためには事業に関わる個人が常に心身の健康を維持し、持てる能力を最大限に発揮していくことが求められます。健康こそが個々人の幸福の源であるとともに、当社グループの理念実現に不可欠であると考えます。当社は、グループ社員の一人ひとりの健康がすべての出発点であるととらえ、健康保険組合、労働組合、診療所(産業医)とともに協力しながら、社員の健康維持・増進に全力で取り組んでいきます。 

体制

マネジメント体制(陸上)

職場の安全衛生と従業員の心身の健康保持増進を図るとともに、労働安全衛生法に基づく衛生委員会の機能を果たすために、人事担当役員(統括衛生管理者)を議長とする健康管理委員会を設置しています。同委員会で審議、報告された事項は、定期的に取締役会および執行役員会へ報告し、情報の共有を図っています。 

マネジメント体制(海上)

海上においては、法令に基づいて、安全衛生に関する支援体制をつくっています。

陸上に船員安全衛生委員会、船上に船内安全衛生委員会を設置、関係部署および管理会社と連携を取りながら安全衛生関連業務を推進しています。

船員安全衛生委員会では、船内における作業環境及び住居環境、危険または健康障害を防止するための対策、船員災害の原因及び再発防止対策、安全衛生に関する教育などについて、調査審議しています。

当社は船員労働災害防止優良事業者(一般型1級)認定を、2008年に外航船社として初めて取得しました。

取り組み

ワーク・ライフ・バランス(陸上)

社員の能力発揮を促す観点でも、当社グループの持続可能性を担保する観点でも、社員のワーク・ライフ・バランスは重要なテーマです。さまざまなライフステージを経ても社員が働き続けられるよう、新型コロナウイルスによるパンデミック以前から在宅勤務制度を採用するなど、当社は社員の勤務形態に柔軟性を取り入れています。また、出産・育児・介護制度についても法令を上回る仕組みを整え、制度面からもサポートしています。

ワーク・ライフ・バランスを支援する制度の概要

当社は、労使間で良好な関係を築くよう心掛け、労働環境の向上、ワーク・ライフ・バランスなど、労使協働の取り組みとして推進しています。具体的には、在宅勤務、高度不妊治療のための休業制度、育児休業に加え、男性の育児参加への機会促進のため、当社独自の連続最大10日間の育児休暇制度を導入しています。そのほか、時短勤務やフレックスタイムなどさまざまな制度を整え、従業員のワーク・ライフ・バランスを支援しています。

ワーク・ライフ・バランスを支援する制度と利用実績

主な制度

当社の制度

法が定める水準

2022年度利用者数

男性

女性

合計

母性尊重・健康管理の尊重

妊娠中の時間短縮勤務が可能

同左

-

0

0

勤務時間中の通院時間の確保

同左

-

1

1

産前・産後休業

出産予定日8週前より取得可能

出産予定日6週前より取得可能

-

16

16

産前8週~6週前の期間中、出産手当金相当額を補助

定めなし

-

15

15

育児休業

満3歳まで取得可能

満2歳まで取得可能

13

11

24

父親のための育児休暇制度

5営業日以上10営業日以内の休暇取得が可能

定めなし

11

-

11

高度不妊治療のための休業制度

最長1年半の休業取得が可能

定めなし

0

1

1

介護休業

最長2年間の休業取得が可能

最長93日間の休業を付与

0

0

0

育児、介護中の支援制度

貸付金制度

小学校就学前の子どもがいる場合や、介護者がいる場合には、最低200万円貸付可能

定めなし

0

0

0

短時間勤務制度

小学3年生まで、2時間の時短勤務が可能

小学校就学前まで利用可能

0

28

28

フレックスタイム

コアタイムを11時~15時とし、各部門で採用

労使協定による

-

-

-

リフレッシュ休暇

勤続11年目に取得可能(連続した7日間)

定めなし

9

9

18

勤続21年目に取得可能(連続した10日間)

定めなし

10

5

15

配偶者転勤休業制度

海外は2年間、国内は1年間の休業が可能

定めなし

0

4

4

くるみん認定

当社は、仕事と育児の両立支援に関する積極的な取り組みが評価され、厚生労働省・東京労働局から「子育てサポート企業」として、「2022 年くるみん」(取組期間 :2019 年4 月1 日~2022 年3月31 日)を取得しました。
なお、当社は2016 年、2020年にも「くるみん」を取得しており、3回目の認定となります。

また、当社の連結子会社である株式会社ケイ・エム・ディ・エスも「2021年くるみん」を取得しました(取組期間:2017年4月1日~2020年3月31日)。外航貨物輸送に関わるドキュメンテーション業務を含む貿易実務や、アウトソーシング事業の受託・請負、労働者派遣事業などを行っている同社では、女性従業員比率が90%に達しているという特色がありますが、女性も男性もますます活躍できるよう、職場環境の整備、働き方の多様化を推し進めています。 

ワーク・ライフ・バランス(海上)

家族と接する機会の創出―海上勤務

家族と遠く離れても、安心して船上勤務に従事できるよう、船上にインターネット環境を整え、個人のスマートフォンやPCを使って家族または友人とメールやSNSなどで連絡を取ることができる環境を提供しています。また、国内外の港に入港した場合は、家族を本船に呼ぶことができるよう、その旅費や宿泊費をサポートしています。 

そのほか、家族が一定期間乗船できる便乗制度を設け、海事技術者本人だけでなく家族含めて安心し、海事技術者が質の高い業務を行えるように努めています。 

船内の生活環境について

船上での生活は勤務環境と密接であるため、オン/オフをしっかりと切り替える必要があります。会社は、業務終了後、運動、読書またはDVD映画を鑑賞し、リラックスできるよう、体育室を設置し、レクリエーション用具を購入するために費用を補助することで、しっかりと休息が取れる環境づくりに取り組んでいます。

船上での生活では、毎日の食事は非常に重要な役割を持ち、調理は外国人コックにより行なわれています。そのコックに対しては、マニラにある“K” LINE MARITIME ACADEMYフィリピン研修所で訓練を受講させ、バランスが良く、栄養価の高い食事が提供できる環境を整えています。

また、各船へは、船上勤務経験豊富な日本人調理師によるレシピを定期的に配信し、バラエティーに富んだ食事が提供できるようにしています。

またときには、日本人・外国人を問わない乗組員全員参加型のレクリエーション大会や、パーティーを企画し、海事技術者が率先して、明るく、働きやすい職場環境づくりに取り組んでいます。

安全と健康への配慮(陸上)

健康診断

健康診断については、年1回の受診を従業員に義務付けるとともに、2回目の受診を希望する従業員に対しても費用の補助を行い、従業員の健康管理を積極的に支援しています。また本社オフィスでは診療所を設置しており、社内での健康診断を実施しているほか、体調が優れない場合は、社内で医師の診療を受けることが可能です。さらに、疲労回復のためヘルスキーパー(マッサージ)を利用することもできます。

メンタルヘルス

メンタルヘルスの一助として、従業員自身で心の健康状態を管理できるインターネットによるストレスチェックプログラムを取り入れ、ストレス耐力の向上に役立ててもらっています。また、毎年川崎汽船本社において、役職員向けメンタルヘルスセミナーを開催しております。さらに、当社では、本社診療所での専門医によるメンタルヘルス相談に加えて、社外相談窓口としてEAP制度(Employee Assistance Program)も導入し、従業員の心身のケアにおいて、多方面からのサポート体制を取っています。

過重労働防止の取り組み

長時間労働を改善するために、管理職向けに過重労働と健康との関係についての研修を実施し、過重労働の防止強化を進めています。労働時間の管理については、時間外労働がある一定時間数を超過すると自動的に所属上長宛にメールが届き、部下の長時間労働がタイムリーに把握され、業務負荷の軽減などの迅速な対応が行える仕組みとなっています。また、従業員ごとの時間外労働実績を日々管理し、全社における時間外労働時間の上位者に対しては、必要に応じて所属上長や本人にヒアリングを行うなど、長時間労働の抑制に努めています。さらに部門ごとの平均時間を執行役員会へ毎月報告することで、経営層と一体となったより効果的な改善策へつなげる一助としています。

海外赴任者の健康管理サポート

海外赴任前には、従業員や帯同する家族の健康診断や予防接種の受診サポートに加え、緊急医療支援サービス会社と提携し、赴任後も海外で勤務する従業員とその家族に対する医療支援を行っています。

新型インフルエンザ等対策業務計画

当社は、新型インフルエンザ等対策特別措置法(平成二十四年法律第三十一号)に定める指定公共機関ですが、同法は指定公共機関に対し、事業の実施に関し適切な措置を講ずること、新型インフルエンザ等が発生したときにも国民生活及び国民経済に及ぼす影響が最小となるよう業務を継続することを求めています。

また、同法の規定により、指定公共機関は、その業務を実施するに当たり、新型インフルエンザ等対策に関する業務計画を作成し内閣総理大臣に報告するとともに、要旨を公表することが求められています。

この規定に従って当社は「新型インフルエンザ等対策業務計画」を定めましたが、その要旨は次のとおりです。

安全と健康への配慮(海上)

海上での労働災害防止の取り組み

船内では、毎朝作業前のミーティングを行い、労働災害防止に努めています。また、船内作業管理委員会を毎月開催し、船内での作業に関して危険のないよう準備をしっかりと行うことを徹底しております。「安全監督だより」を定期的に全船に配信し、労働災害や安全、衛生面の注意喚起を行っています。また、ラジオ体操のCDを配布し作業前などに怪我防止のため実施しています。

また、海事技術者に対しては、安全衛生関連研修の受講を定めています。

海上での過重労働防止の取り組み

海上での過重労働防止についても、労務計画立案システムを導入、過重労働とならないように仕事量と人員の適正な負荷分担を考慮するとともに、運航スケジュールを考慮し、必要に応じて増員するなど、無理のない運用に努めています。

健康診断

航海中は陸上医療施設で受診できないため、海事技術者が心身ともに健康であることは非常に重要です。乗船前には必ず健康診断を受診させると共に、法定項目以外の項目も年に1度、受診することを義務付けています。

受診データは会社で確実に記録し、各海事技術者の健康状態の把握に努めています。海事技術者のメンタルヘルスについては、社外有資格者による研修受講体制のほか、後述の安全監督からの定期的な情報発信及び当社産業医と連携する体制を取っています。

受動喫煙防止への取り組み

14,000個積新造コンテナ船において、分煙の取り組みのトライアルを行うべくスペックの改定を行い、喫煙室を設けることで受動喫煙防止の実現に取り組んでいます。喫煙者と非喫煙者が船内で快適に過ごすことができる職場環境を目指します。 

訪船による安全健康管理指導

海事技術者全体の安全衛生向上のため、海事戦略グループに安全監督を配置しています。安全監督は寄港地で訪船し、安全管理や健康管理について、指導を行っています。さらに訪船時には、安全指導のほか、個人面談によるメンタルヘルスケアも実施しています。また、災害防止の目的で、船内での就業開始前には、ラジオ体操の実施を推奨しています。 

人事担当者によるヒアリングの強化

海事技術者が海上勤務する際、通常の職場とは異なり、船上での生活は閉鎖的となります。また乗船すれば通常6ヶ月の船上勤務となるため、特に下船後は、船上での生活、人間関係その他本人たちが感じたあらゆることについて、担当者による電話インタビューを必ず実施しています。また必要があれば、対面でのインタビューを実施しています。このことにより、海事技術者の不安を和らげることはもちろん、会社も現場の状況把握に努めています。

船上働き方改革

乗船中の海事技術者は最重要任務となる安全運航の維持に加え、本船の入出港に伴う諸手続きなど、多くの事務作業も担っています。その業務負荷を軽減するため、当社では本船のIT化、デジタル化に取り組んでおり、すでにITの高度化に対応した高スペックのパソコンの本船への搭載や、大容量のデータ通信が可能な通信インフラの導入が進んでいます。

 2021年年3月に竣工した「CENTURY HIGHWAY GREEN」には、通常の衛星通信システムに加え、LTE回線を用いたIP/MPLSソリューションを導入しました。十分な通信速度と高度な暗号化通信を両立させたFAN(Field Area Network)環境を船陸間で実現させることにより、国内外の寄港地においてさまざまなデジタル技術を活用し、船内業務を効率化しています。

関連データ

健康経営データ

健康経営に関する重点取り組み項目

  • 健康管理委員会の設置・定例開催(内容は従業員にも公開) 
  • ストレスチェックの実施とフォローアップ 
  • 社内ウォーキングイベント開催 
  • 睡眠に関するセミナー(eラーニング形式) 

【ストレスチェック受検率】 

2018年度 

2019年度 

2020年度 

2021年度 

2022年度 

85.1% 

82.6% 

84.3% 

90.1% 

88.0% 

【ワークエンゲージメントと高ストレス者率】 

項目 

2019年度 

2020年度 

2021年度 

2022年度 

総合健康リスク *1 

88 

87 

87 

84 

高ストレス者の割合 *2 

9.6% 

10.8% 

8.9% 

9.4% 

ワークエンゲージメント *3 

2.5点 

2.5点 

2.5点 

2.6点 

プレゼンティズム *4 

-

-

-

4.1点 

(備考) 新職業性簡易ストレス調査票より算出 

(注)新職業性簡易ストレス調査票より算出 

 

  1. 「仕事の負担(量)」「仕事のコントロール度」「上司のサポート」「同僚のサポート」の4因子の得点から導かれ、職場環境に起因して発生する健康リスクの度合いを数値化したもの。全国平均は100であり、数値が低いほどリスクが低下 
  2. 「心身のストレス反応」「仕事のストレス要因」「周囲のサポート」について5段階評価に換算し、その平均点に基づき判定(全国平均は10%) 
  3. 仕事から活力を得て、仕事に誇りを感じ、従業員がいきいきと仕事をしている状態の指標「仕事をしていると、活力がみなぎるように感じる」「自分の仕事に誇りを感じる」という項目の回答を、そうだ=4点、まあそうだ=3点、ややちがう=2点、ちがう=1点として平均点を算出(全国平均は2.5点) 
  4. 何らかの心身の健康問題を抱えながら就業しており、生産性が低い状態。(5点満点で全国平均3.9点、数値が低いほど生産性が低い) 
     

年5日の年次有給休暇の確実な取得

【年次有給休暇平均取得日数】

2020年度

2021年度

2022年度

8.3日

8.9日

9.9日

【7デイズ・バケーション 平均取得日数】
 ※年度内に7日間を限度として取得できる法定外休暇。

2020年度

2021年度

2022年度

5.3日

5.0日

4.8日

時間外勤務の抑制

【法定時間外労働時間(月平均)

2020年度

2021年度

2022年度

7.9時間

8.9時間

6.8時間

※正社員のみ、出向者および時短勤務者は除く



上記の取り組みの結果、当社は、経済産業省と日本健康会議が共同で実施する、優良な健康経営を実施している企業を顕彰する制度である健康経営優良法人認定制度において、5年連続6回目となる「健康経営優良法人2024」の大規模法人部門にて認定を受けました。

 

労災関連データ

項目 

単位 

年度 

2020年度 

2021年度 

2022年度

陸上 

海上 

陸上 

海上 

陸上 

海上 

労働災害発生件数 (※1) 

件 

0

0

0

0

0

1

労災死亡事故発生件数 

件 

0

0

0

0

0

0

休業傷病発生件数 (※2) 

件 

0

0

0

0

0

0

休業災害度数率(LTIR)(※3)

0

0

0

0

0

0

※1 通勤災害を除く 

※2 業務上の負傷や業務に起因し、1日以上の休業を余儀なくされた負傷、疾病の件数 

※3 休業災害(負傷および疾病が発生した日またはシフトを超えて仕事を休む結果となった事故)/(1,000,000時間比の総労働時間)