“K” LINEグループは1919年の設立から約一世紀に及ぶ歴史の中で、安全・確実な運航へのたゆまぬ努力を続けながら、革新的な取り組みに挑戦し、環境変化の荒波を幾度となく乗り越えてきました。
革新的な取り組み
“K” LINEグループは設立以来、進取の気性と自由闊達な企業文化の下、多様化・高度化する顧客ニーズに応え、常に業界の先駆者として技術革新を取り込み、新たな船型やサービスを開発してきました。
海上・陸上・ターミナルオペレーションを統合する世界的なコンテナ革命が、1960年代に幕を開けました。こうした中、1968年に北米航路に就航した当社のフルコンテナ船“ごうるでん げいと ぶりっじ”は、日本におけるコンテナリゼーションのパイオニアとなりました。その後1975年にかけてすべての主要航路をコンテナ化。さらに当時の耳目を驚かせる挑戦として、1971年に外国間をつなぐ三国間コンテナ航路、極東・北米太平洋岸航路を単独で開設しました。
日本で初めての自動車専用船“第十とよた丸”を建造したのは“K” LINEです。当社はこれを「純自動車専用船(Pure Car Carrier)」と命名、その後「PCC」は自動車専用船の代名詞になりました。梱包されていない貨物を無傷で運ぶ自動車輸送には高度な品質管理が求められ、世界でも限られた船会社しかそのサービスを提供できません。“K” LINEは自動車輸送の先駆けとして半世紀にわたって輸送品質を磨き、日本発着はもちろん、三国間輸送においても確固たる地位を築き上げています。
天然ガスは、発電燃料や都市ガスに利用されるクリーンエネルギーとして注目されています。LNGは天然ガスをマイナス162℃で液化したもので、1969年に日本に初めて輸入されました。その後、LNG輸送は外国船社に委ねられていましたが、1983年に“K” LINEの“尾州丸”がインドネシア・日本間で、日本船籍による初めてのLNG輸送を実現しました。現在も日本のエネルギー供給の長期安定化に貢献しています。
一度コンテナに貨物を詰め込めば、海・陸・空とさまざまな輸送手段を一気通貫で接続できる「コンテナリゼーション」のメリットを生かし、“K” LINEは1986年、北米大陸においてダブル・スタック・トレインと呼ばれる2段積みコンテナ専用列車を日本の船会社で初めて整備しました。これにより、輸送時間を大幅に短縮するとともに、運行スケジュールもきわめて正確なものとなり、国際化時代の物流合理化に大きく貢献しました。
環境への取り組み
“K” LINEグループは環境最先端企業を目指して長期環境指針「“K” LINE 環境ビジョン2050 ~青い海を明日へつなぐ~」を策定し、環境保全の分野においても、先進的なチャレンジで独自性を発揮しています。
2015年、14,000TEU型の超大型コンテナ船“MILLAU BRIDGE”が竣工しました。輸送効率を高める船型の超大型化に加え、外板には海水との摩擦抵抗を低減する最新塗料、風圧抵抗を低減するバウカバー、船内消費電力を低減する機関室ファンなどを採用しました。こうしたさまざまな省エネ技術により、運航費を削減してコスト競争力の一層の強化を図るとともに、環境保全への貢献を実現しています。
海洋汚染・生態系の保護、大気汚染、そして地球温暖化という世界が直面する地球環境の重要課題に対し、世界をリードする環境フラッグシップとして、7,500台積み自動車運搬船“DRIVE GREEN HIGHWAY”が竣工しました。環境先進技術の粋を集め、地球温暖化の原因となるCO2に加えて大気汚染物質(SO_{X}, NO_{X})の排出も大幅に削減できる本船は、日本船舶海洋工学会主催の「シップ・オブ・ザ・イヤー2016」を受賞しました。
“K” LINEは、2024年2月6日にCDP 気候変動質問書における最高ランク評価である2023年「Aリスト」企業に選出されました。気候変動に関するコーポレートサステナビリティでの透明性とリーダーシップが認められ、2016年に「Aリスト」企業に選出されて以来8年連続の選定となります。CDPは、ロンドンに本部を置く国際非営利団体(NGO)で、2023年には運用資産総額130兆米ドル以上を有する世界740社を超える機関投資家と連携しており、気候変動リスクと機会、その対応等に関する質問書を企業へ送付、回答結果に基づいて8段階(Aリストが最高値)の評価を実施しています。回答企業数は年々増加傾向にあり、2023年は前年比で約3割増となる歴代最高の約23,000社が回答に応じました。今年は、気候変動「Aリスト」の認定企業数は世界346社、日本企業は109社となる模様ですが8年連続の受賞は当社を含め僅か数社です。
当社は長期経営ビジョンとして、自社・社会のスムーズなエネルギー転換にコミットし、低炭素・脱炭素社会の実現に向けた活動を推進することとしています。また、環境に関する長期指針『“K” LINE 環境ビジョン 2050』では、「2050年温室効果ガス排出ネットゼロ」への挑戦を目標に掲げ、中期経営計画として投資額全体の6割を集中的に環境対応に充てる方針を公表しています。LNG 燃料船の導入推進及び、自動カイトシステム“Seawing”搭載、CCSバリューチェーン構築に向けた液化CO2輸送船事業の更なる拡大など先進的な取り組みを通じて自社及び社会の低炭素・脱炭素化に向け積極的に取り組んでいること、アンモニア/水素燃料等のゼロエミッション船の実用化に向けて、各種協議会や実証事業へ参画等に積極的に関与すること、また、当社環境マネジメントシステムの運用を通じて事業活動での継続的な環境負荷低減への取り組みが評価されたものと認識しております。
今後とも、当社グループは気候変動と自然資本の包括的な理解のもと情報開示を充実させ、すべてのステークホルダーから信頼されるパートナーとして、持続的成長と企業価値向上を目指していきます。