考え方

リスクマネジメントの方針

外部環境変化や経営上のさまざまなリスクを認識し、リスクが顕在化したときにも企業の社会的責任を果たせるよう、リスクマネジメント体制を構築しています。

下記のような主要リスクのうち、船舶運航に伴うリスク、災害リスク、コンプライアンスに関わるリスク、その他の経営に関わるリスクの4つのリスクに分類し、それぞれ対応する委員会を設けています。 

また、この4委員会を束ね、リスクマネジメント全般を掌握・推進する組織として、危機管理委員会を設置しています。 
社長がこれらすべての委員会の委員長を務め、平時においても四半期ごとに委員会を開催し、リスクマネジメントの強化を図っています。 

4つの主要なリスク委員会では、リスクマネジメントのための研修を定期的・継続的に実施しています。一例として大規模事故演習の実施や他社とのリスクマネジメント勉強会への参加等を通じ強化を図っています。また、毎年11月を「コンプライアンス月間」と定め、コンプライアンスの重要性を周知徹底しています。

体制

リスクマネジメント体制図

リスクマネジメントプロセス

当社グループにおけるリスク管理を徹底すべく、グループ全体に関わるリスクを特定し、情報管理・モニタリングを行いながら、リスク対応に取り組んでいます。各リスクの管理は、期末にリスクの再評価や網羅的なリスクの洗い出し・特定を行い、管理体制の有効性や主要リスクから重要課題を定めた上で、各委員会において定期的にレビューを行い、再評価、対策の実施を行うPDCA体制としています。このPDCAでは、各委員会がボトムアップでリスクの再評価や洗い出し・特定を行う手法と、まだ顕在化していないが重要性が高まっているエマージングリスクのようなメガトレンドの変化をトップダウンで評価をする手法とで、重層的に対応しています。メガトレンドの変化は、リスクのみならず機会となるため、次年度の事業戦略立案時に行うPEST分析(※)を軸として、メガトレンド認識を的確に事業戦略に活かす側面と、最新のリスクトレンドの変化を評価し対応する側面とで、リスクと機会の双方を漏らすことなく取り組んでいます。
具体的には、PESTの要素を当社各事業のバリューチェーンに掛け合わせることでリスクシナリオを想定し、経営陣により発生可能性/影響度/備えの程度を整理の上、ヒートマップを作成します。さらに専門家による分析や調査レポート等の外部知見も得ながら、注視すべき課題を特定し、ボトムアップ式のリスク特定と合わせて重要課題を選定します。
また、PDCAサイクルの過程でリスクマネジメントに対する情宣を行っています。リスク対策や期初に特定した重要課題への取り組み状況を、取締役会や執行役員会を通じて社内に周知しています。

 

(※)外部環境を政治・経済・社会・技術の4つに分類し脅威を洗い出し、自社にもたらす影響を分析するフレームワーク

取り組み

BCMについて

当社グループでは、自然災害や新型インフルエンザを含めた感染症による機能不全を想定したBCP(Business Continuity Plan)を 策定の上、BCM(Business Continuity Management)を行っています。人命の尊重を第一とし、その上でライフラインを支える社会インフラの一翼を担うものとして、内外地店所への業務移管や遠隔地でのバックアップ データの蓄積、在宅勤務などによる重要業務の継続を図っています。特に、首都圏直下型地 震に関しては、事前にその規模や被害をシミュレーションした上で、定期的な避難訓練やBCMの強化を行い、災害レジリエンス向上に向けて全社的に取り組んでいます。 
また、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、事業運営においては、在宅勤務体制の拡充 やオフィスでの感染予防策の徹底を行い、船内・乗組員に対しては、乗船前の体調管理・社命による乗船前隔離・PCR検査等の実施や感染対策物資の供給といった対策を講じました。2024年度も引き続き、変異株の発生、新種のウイルスの発現など予期せぬ事態により、当社の事業運営に影響を及ぼす可能性がありますが、過去4年間の一連の対応を振り返り、新型コロナウイルスを含む将来のウイルスによるパンデミックに備えた行動手引書等に基づき、緊急時においても事業継続できる状態を構築した上で、各事業に適した対応を行っていきます。

大規模事故リスクと当社の対応

当社グループは、安全運航の徹底を最優先課題の一つとして、安全運航水準と危機管理体制の維持強化を図っています。不測の事故、とりわけ油濁その他環境汚染につながる重大事故などが発生し、環境汚染を引き起こした場合、当社グループの財政状態や経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。また、海賊被害、政情不安・武力紛争地域での運航、船舶へのテロ行為リスクの増大は、当社グループの船舶に重大な損害を与え、また船員の生命を危険にさらすなど、当社グループ船舶の安全運航、航海計画管理、海上輸送事業全般に悪影響を与える可能性があります。その対策として、社長を委員長とする安全運航推進委員会を定期的に開催し、安全運航に関わるすべての案件について、あらゆる視点に基づいた検討と取り組みを行っています。さらに緊急時の事故対応をまとめた「事故対応マニュアル」を策定し、定期的な大規模事故対応演習により継続的改善を図っています。 

リスクマネジメント文化の醸成

組織全体で効果的なリスクマネジメントの文化を促進・強化するために、階層ごとに定められた行動規範にはリスクマネジメントの項目があり、その基準が反映されるように人事評価制度がつくられています。この人事評価は給与や昇進にも影響します。シニア・エグゼクティブは、リスクマネジメントに関する全社的な取り組みの実施に責任を負います。  

さらに、その他リスクマネジメントに関する規程やBCM情報等を社内ポータルサイトのトップページに掲載することでリスクマネジメントに対する啓発を行っており、社外取締役含む取締役に対しては、外部講師によるリスクマネジメントに特化したセミナーを毎年行っていく体制を構築しています。

環境保全・気候変動対策

当社グループは、人々の生活や経済を支えるライフライン・インフラとしてサステナビリティの重要性を強く認識しており、環境保全・気候変動に関連したリスクや機会に対応すべく、「“K” LINE 環境ビジョン2050」を策定しています。 

2015年3月に策定した「“K” LINE 環境ビジョン2050」の中で、創立100周年(2019年)に向かって定めたマイルストーンの多くを達成しましたが、激変する世界を見渡し2050年のゴールの一部を見直すとともに、2030年に向けた新たなマイルストーンを設定しました。さらに、世界的に2050年GHG排出ゼロの動きが加速していく中で、2021年11月には同ビジョンの2050年目標を改定し、「2050年GHG排出ネットゼロ」というより高い目標に引き上げて挑戦しています。 
気候変動に関するシナリオ分析については、以下をご覧ください。 

“K” LINE環境ビジョン2050

https://www.kline.co.jp/ja/sustainability/environment/management/main/010/teaserItems1/012/linkList/0/link/2006vision%20jp.pdf

上記の事業計画・戦略策定、施策検討を踏まえ、自然エネルギーを利用する自動カイトシステム「Seawing(風力推進)」の導入など、さまざまな環境保全への取り組みを行っています。 

 

当社グループの環境保全への取り組みについては、以下をご覧ください。

環境

 

リスク情報

当社グループにて認識しているリスク項目の内容、対応策、組織への影響の可能性、潜在的なビジネスインパクトの大きさ、さらにそれらを元にした各項目のリスク優先度を、下表に纏めています。

リスク内容

対策

事業へのインパクト

重大な事故・環境破壊・紛争等


重大な事故・

環境破壊・

紛争等

当社グループは、安全運航の徹底、環境保全を最優先課題として、安全運航水準と危機管理体制の維持強化を図っています。

不測の事故、とりわけ油濁その他環境汚染に繋がる重大事故等が発生し、環境汚染を引き起こした場合、当社グループの財政状態・経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。また、海賊被害、政情不安・武力紛争地域での運航、船舶へのテロ行為リスクの増大は、当社グループの船舶に重大な損害を与え、また船員の生命を危険にさらすなど、当社グループ船舶の安全運航、航海計画管理、海上輸送事業全般に悪影響を与える可能性があります。

安全運航については、社長執行役員を委員長とする安全運航推進委員会を定期的に開催し、安全運航に関わる全ての案件について、あらゆる視点に基づいた検討と取組みを行っています。更に緊急時の事故対応をまとめた「事故対応マニュアル」を策定し、定期的な事故対応演習により継続的改善を図っています。

環境保全については、当社グループの事業活動が地球環境に負荷を与えることを自覚し、それを最小限にすべく、環境憲章を掲げています。環境憲章に沿って、環境への取組みを確実に推進するために、社長執行役員を委員長とするサステナビリティ経営推進委員会を設置して、推進体制の審議・策定をしています。

不測の事故、とりわけ油濁その他環境汚染に繋がる重大事故等が起これば、当社グループの財政状態・経営成績に重大な影響を与える可能性があります。

当社グループは、安全運航の徹底、環境保全を最優先課題として、安全運航水準と危機管理体制の維持強化に努めていますが、リスク重要度は非常に高いリスクです。

公的規制


公的規制

海運事業は、一般的に船舶の運航、登録、建造、環境保全、労務に係わる様々な国際条約、各国・地域の事業許可や租税に係る法・規制による影響を受けます。今後、新たな法・規制が制定され、当社グループの事業展開を制限し、事業コストを増加させ、結果として当社グループの財政状態・経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

当社グループの運航船舶は、現行の法・規制に従い管理・運航され、かつ適正な船舶保険が付保されていますが、関連法・規制の変更が行われる可能性はあり、また新たな法・規制への対応に費用が発生する可能性があります。

各国・各地域の法律・規制の動向、及び地政学リスクの変化には、常に十分な注意を払い、情報の収集に努めています。国あるいは地域ごとにリスクを判断し、対策を講じています。

今後、国際条約、各国・地域の事業許可や租税に係る法・規制の新設、変更が起こり、その対応のため、当社グループの財政状態・経営成績に一定の影響を与える可能性があります。

海運事業は、多くの国際条約、多くの国の法・規制による影響を受けるため、リスク重要度が非常に高いリスクです。

法務・コンプライアンスリスク


コンプライアンス

当社グループの役職員が法令違反行為や企業倫理違反行為等を発生させた場合、当社グループの社会的信用やブランドイメージの低下、当局より課される課徴金、発生した損害に対する賠償金の支払い等により、当社グループの営業活動、財政状態・経営成績に悪影響を与える可能性があります。

当社は、当社及び当社グループ会社のコンプライアンスを担保するための方針及びコンプライアンス違反に対する対応措置を審議するための場として、年4回コンプライアンス委員会を開催しています。また、「川崎汽船グループ グローバルコンプライアンスポリシー」を制定し、当社及びグループ会社役職員に遵守を義務付け、毎年11月をコンプライアンス月間と位置付け、コンプライアンスの重要性を再認識させるため、社長メッセージを配信するとともに、必修のコンプライアンスeラーニング研修、外部講師を招いてのコンプライアンスセミナー、階層別人事研修の中でコンプライアンス研修等、組織的にコンプライアンス文化を醸成す様々なプログラムを実施しています。

コンプライアンス上のリスクは、社会情勢、国民意識によっても変化し、完全には回避出来ないものであり、コンプライアンス上の問題が生じた場合、当社グループの社会的信用やブランドイメージの低下、またそれに伴う対応のため、当社グループの営業活動、財政状態・経営成績に悪影響を与える可能性があります。リスク重要度は非常に高いリスクです。


競争環境等

当社グループは、国際的な海運市場の中で事業展開を行っており、有力な国内外の海運企業グループとの競合関係の中では、他企業との各事業分野への経営資源の配分の度合い及びコスト・技術面等の競争力の差によって、当社グループの業界での地位や経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

競争環境の厳しいコンテナ船事業においては、他の海運企業とのアライアンスに参加することでサービスの競争力の維持・向上を図っていますが、一方で、アライアンスメンバーの一方的離脱など当社グループが関与し得ない事象は、当社グループの営業活動、財政状態・経営成績に悪影響を与える可能性があります。

他企業との各事業分野への経営資源の配分の度合い及びコスト・技術面等の競争力の差によって、当社グループの業界での地位や経営成績に一定の影響を及ぼす可能性があります。リスク重要度が非常に高いリスクです。


取引先の

契約不履行

将来において取引先の財政状態の悪化などにより、契約条項の一部又は全部が履行不可能となる可能性があります。その結果、当社グループの財政状態・経営成績に悪影響を与える可能性があります。

当社グループは、サービスを提供あるいは享受する取引先の選定においては、その信頼性を可能な限り調査しています。

契約条項の一部または全部が履行不可能となった場合、当社グループの財政状態・経営成績に一定の影響を与える可能性があります。当社グループは世界中に多くの取引先が存在し、リスク重要度が非常に高いリスクです。


人権侵害リスク

企業に対して、自社の事業活動に関わる全てのステークホルダーの人権尊重を求める国際社会からの要求が年々高まっています。

この様な状況下で、当社グループ及びサプライチェーン上に存在する人権問題への対応が不適切な場合、社会的信用の低下、人材の流出等、当社グループの営業活動、財政状態・経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

当社グループは2022年に国連の定める「ビジネスと人権に関する指導原則」に基づき、「川崎汽船グループ人権基本方針」を策定しました。本方針は、グループ全体で遵守される行動規範である「グループ企業行動憲章」で掲げられた「人権の尊重」について、より具体的な指針として策定されたもので、人権尊重に関連した国際規範や法令を尊重・遵守するとともに、当社グループの事業活動との関わりにおいて生じる人権への顕在的又は潜在的な負の影響を把握して、これを未然に防止又は軽減していく、という一連のプロセスである「人権デューディリジェンス」を実施することを定めています。

本方針の下、当社グループの事業活動において優先的に取り組むべき人権課題を特定するため、国内外のグループ会社からヒアリングを実施し各社個別に取り組みを強化すべき課題を抽出、その結果を受けて改善に向けたアクションプランを実行しています。

また、当社グループの事業活動に関わる全てのステークホルダーの人権尊重に向けた取り組みを推進すべく、PDCAサイクルの確立を目指しています。

人権問題が発生した場合、当社グループの社会的信用やブランドイメージが低下し、当社グループの営業活動、財政状態・経営成績に悪影響を与える可能性があります。

当社グループでは、グループ全体で遵守される行動規範である「グループ企業行動憲章」を制定しており、そこに掲げる「人権の尊重」のなかで、国内外にて人権を尊重していますが、リスク重要度は非常に高いリスクです。

情報セキュリティ


情報セキュリティ

当社グループは、世界の経済活動を支える物流インフラとして、安全・安心な海上輸送及び物流サービスを提供するため、情報セキュリティの確保と向上へ対策を講じています。昨今のサイバー攻撃は、多種多様化を極め、局所的な対応や製品導入のみでは万全の防御が果たせず、不正アクセスによる情報の漏洩、ウイルス感染によるシステム停止等が発生した場合には、当社グループの営業活動、財政状態・経営成績に悪影響を与える可能性があります。

当社グループでは、継続的にサイバーセキュリティの強化を進めています。これまでにPC、サーバーなどのエンドポイントや通信ネットワークのセキュリティ強化、最新技術を用いた監視体制を導入しました。 更に、グローバルでの認証基盤構成を見直し、多要素認証やアカウント管理認証レベルの高度化、迅速な脆弱性への対応を進めることで、グループ全体のITガバナンスの強化、認証レベルの向上、マルウェア・情報漏洩への対策強化を実現し、サイバーインシデントに迅速かつ的確に対応できる体制を築いています。

近年、インターネット回線による船舶運航データの船陸共有化と安全品質の向上へのデータ活用が進んでおり、衛星通信容量の拡大に伴い、船内ICT機器及び船内ネットワークの整備が必須となっています。 今後、船陸間でインターネット環境への接続が一層増えることによるサイバーリスクを見据え、当社グループの船舶管理会社では一般財団法人日本海事協会からサイバーセキュリティマネジメントシステム(CSMS)の認証を取得し、船上のサイバーリスクへの対応力強化に努めています。

「安全」は海上輸送を主軸とする当社グループの事業の根幹を成すものであり、サイバーリスクへの対応を強化することで、より安全で最適な輸送サービスを提供してまいります。

また、技術的対策に加え、当社グループ全般におけるセキュリティ教育・啓発活動を通じ、セキュリティファーストの文化を醸成して、安全・安心・安定、強靭なIT基盤を構築していきます。

不正アクセスによる情報の漏洩、ウイルス感染によるシステム停止等が発生した場合には、当社グループの営業活動、財政状態・経営成績に重大な影響を与える可能性があります。 当社グループは、世界の経済活動を支える物流インフラとして、安全・安心な海上輸送及び物流サービスを提供するため、情報セキュリティの確保と向上へ対策を講じていますが、リスク重要度は非常に高いリスクです。

自然災害の発生


自然災害の

発生

自然災害発生時の事業継続は、社会の機能の一端を担い社会に責任を負う当社グループの責務であるとともに、当社グループの存在意義に関わる重大な事項です。首都圏直下型大地震が発生した場合には、多くの建物、交通、ライフラインに甚大な影響が及ぶことが想定され、また新型インフルエンザ等対策特別措置法に準ずる感染症が発生し、世界的大流行(パンデミック)となった場合には、多くの人々の健康に重大な影響が及ぶことが懸念されます。また、これらの自然災害又はその二次災害に伴う風評被害が広がることが懸念されます。

当社グループではこれらの災害等を想定した事業継続計画(BCP)を策定し、自然災害の発生時には、この計画を適用又は応用することで可能な限りの事業継続を目指していますが、当社グループ事業全般に対し悪影響を与える可能性があります。 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関する一連の対応を振り返り、感染症パンデミックに備えた行動手引書の作成を完了していますが、新たなコロナ変異株の発生、新たな感染症の発現など予期せぬ事態により当社グループの事業運営に影響を及ぼす可能性があります。

自然災害発生時、また新型インフルエンザ等対策特別措置法に準ずる感染症が発生し、世界的大流行(パンデミック)となった場合には、当社グループの営業活動、財政状態・経営成績に影響を与える可能性があり、リスク重要度は非常に高いリスクです。

為替レートの変動


為替レートの

変動

当社グループの事業売上においては米ドル建て収入の比率が大きく、為替レートにより円換算後の価値が影響を受ける可能性があります。米ドルに対する円高は当社グループの財政状態・経営成績に悪影響を与える可能性があります。

当社グループは、費用のドル化や為替予約などにより、為替レートの変動による悪影響を最小限に止める努力をしています。

当社グループの事業売上においては米ドル建て収入の比率が大きいため、為替レートの変動は、当社グループの財政状態・経営成績に一定の影響を与えます。対米ドル為替1円の変動により当社連結経常利益はおおよそ

±15億円の影響を受けます。また当社グループの連結財務諸表の為替換算調整勘定の金額にも影響を与えます。為替レートは様々な要因で常に変動しているため、リスク重要度が非常に高いリスクです。


金利の変動

当社グループは、継続的に船舶の建造等の設備投資を行っています。これらの設備投資には自己資金及び金融機関借入を充当しており、適切に有利子負債をコントロールしています。

また、事業運営に係わる運転資金調達を行っています。将来の金利動向によっては資金調達コストの上昇による影響を受け、当社グループの財政状態・経営成績に悪影響を与える可能性があります。

当社グループは、金利変動リスクをヘッジするため、一定の規模を固定金利で借り入れたり、また船舶・設備投資資金の借入の一部を対象とした金利固定化スワップを実施しています。

当社グループの設備投資について、資本効率を意識して適切なレバレッジを効かせる観点から、一定程度金融機関からの借入を行っていますが、金利の変動は、当社グループの財政状態・経営成績に一定の影響を与えます。また、金利は様々な要因で常に変動しているため、リスク重要度が非常に高いリスクです。

燃料油価格の変動


燃料油価格

の変動

燃料費は当社グループの船舶運航コストの中で大きなウェイトを占めています。燃料油価格は、原油の需給バランス、OPECや産油国の動向、産油国の政情や産油能力の変動など当社グループが関与できない要因により影響され、その予想は極めて困難といえます。

また、環境規制の拡大・強化に伴い、環境負荷の低い良質な燃料の使用が求められ、結果として価格が割高な燃料を調達せざるを得ない可能性があります。著しく、かつ持続的な燃料油価格の高騰は当社グループの事業コストを押し上げ、財政状態・経営成績に悪影響を与える可能性があります。

当社グループは、不安定な価格変動の影響を回避するため一部先物取引による価格固定化を行っています。

燃料費は当社グループの船舶運航コストの中で大きなウェイトを占めているため、燃料油価格の変動は、当社グループの財政状態・経営成績に一定の影響を与え、燃料油価格10ドル/MTの変動により、当社連結経常利益はおおよそ±0.1億円の影響を受けます。

また、燃料油価格については常に変動しており、昨今のロシア・ウクライナ情勢や中東情勢等を勘案すると、リスク重要度が非常に高いリスクです。

投資計画の未達成


投資計画の

未達成

当社グループは、船隊整備のために必要な投資を計画していますが、今後の海運市況や公的規制等の動向によって計画が想定どおりに進捗しない場合、造船契約を新造船の納入前に解約するなどにより、当社グループの財政状態・経営成績に悪影響を与える可能性があります。

また、これらの新造船の納入時点において貨物輸送への需要が想定を下回る場合、当社グループの財政状態・経営成績に悪影響を与える可能性があります。

想定最大損失額を連結自己資本の範囲内にコントロールし、適正な投資規模による「安定性」と「成長性」を両立しています。事業リスク量(想定最大損失額)は、事業特性を踏まえながら、統計学的手法を用いて計測しています。

今後の海運市況や公的規制等の動向によって計画が想定どおりに進捗しない場合、若しくは、新造船の納入時点において貨物輸送への需要が想定を下回る場合、当社グループの財政状態・経営成績に一定の影響を与える可能性があります。海運市況は不確実性が高いため、リスク重要度が非常に高いリスクです。

船舶の売却等による損失


船舶の売却等

による損失

当社グループは、市況に応じた柔軟な船隊整備に努めていますが、実際の船腹需給バランスの悪化、船舶の技術革新による陳腐化や傭船市況の動向に伴い、保有する船舶を売却し、また傭船する船舶の傭船契約を中途解約する場合があります。この結果、当社グループの財政状態・経営成績に悪影響を与える可能性があります。

当社グループは、市場の動向を見極めた売船、自社保有や用船といった船舶の保有形態のバランスを適切に保つことにより本リスクの低減に努めています。

当社グループが保有する船舶等の固定資産について、売却や傭船契約の中途解約に至った場合、売却損や解約手数料が発生し、当社グループの財政状態・経営成績に影響を与える可能性があります。当社グループは、過去の構造改革や経営管理の高度化により、固定資産の保有規模とそれに対するリスク管理の適正化が進んでおり、更に継続的なモニタリングと必要に応じた対策を講じていますが、リスク重要度が高いリスクです。

固定資産等の減損損失


固定資産等の

減損損失

当社グループが保有する船舶等の固定資産について、収益性の低下により投資額の回収が見込めなくなる可能性があります。その結果、減損損失を認識するに至った場合には、当社グループの財政状態・経営成績に悪影響を与える可能性があります。

また、当社グループは有価証券の評価基準及び評価方法として、その他有価証券のうち市場価格のない株式等以外のものについては決算期末日の市場価格等に基づく時価法を採用しています。その結果、株式市況の変動による時価の下落が当社グループの財政状態・経営成績に悪影響を与える可能性があります。

当社グループは、継続的な業績のモニタリングを行っており、投資に対する回収が困難となる前にリスクへの対策を講じるように努めています。

当社グループが保有する船舶等の固定資産について、減損損失を認識するに至った場合、若しくは、投資有価証券のうちの時価のあるものについて時価の下落が発生した場合、固定資産並びに時価のある投資有価証券の金額を上限として、当社グループの財政状態・経営成績に影響を与える可能性があります。海運市況や株式市況は不確実性が高いため、リスク重要度が高いリスクです。

感度分析とストレステスト

毎月行われる予算編成とモニタリングの機会を利用して、年2回の感度分析とストレステストを実施しています。

主要な変数は、為替レート、金利、燃料油価格のほか、ドライ・バルカーのBDI(バルチック・ドライ・インデックス)、石油タンカーのWS(ワールド・スケール)などの市場指数であり、これらの変数は、営業損益や経常損益の主な変動要因となります。

また、VesselsValue.comや海運ブローカーなどの専門的な情報源を利用して、事業の中核資産である保有船舶の市場評価テストを行っています。

エマージングリスク

当社グループでは、事業戦略の実行を妨げる可能性があり、まだ顕在化していないが従来に増して重要性が高まっているリスクをエマージングリスクと定義しており、当社グループで認識しているエマージングリスクを下表に纏めています。

リスク

リスクと事業背景の説明

ビジネスへの影響

リスク低減アクション

地政学情勢の変化による荷動きへの影響

地政学的要因による経済圏の分断やサプライチェーンの変容により、市場環境が変化しつつあります。これに起因する、顧客によるサプライチェーンや事業モデルの見直しは地産地消や拠点の変更を伴い、長期的には荷動きの変化として現れ、その結果、輸送需要と供給能力のインバランスが発生することでマーケットコンディションやPricingにも影響を及ぼし、当社の経営成績に影響を与える懸念があります。特に当社は「成長機会を共有できる顧客とのパートナーシップ」の構築・発展を通じて持続的成長と企業価値向上を図る、顧客密着型営業・投資で事業・収益基盤を拡充させる戦略をとっている為、特定顧客への依存度が高く、顧客によるサプライチェーンや事業モデルの見直しが与える影響度は大きいと言えます。また、当該リスクは主に外部的なもので、マクロ経済・地政学的環境、市場環境、競合他社の価格戦略に関連しています。

当社の事業モデルの80%以上は、海上輸送である為、荷動き動向は、当社の経営成績に大きな影響を与えます。

顧客の環境対応など事業戦略に沿った輸送需要に積極的に応えるため、営業・運航要員の増員、専任海技者の登用、環境営業の強化・育成を通じ、営業体制を進化・発展させることで

顧客の事業戦略の変化を機敏にキャッチし、サプライチェーンや事業モデルの見直しに柔軟に適応していくことでリスクの低減を諮っています。

同時に、適切な船隊及びエクスポージャーコントロールで市況変化への対応力・耐性を強化しています。

また、ポートフォリオ戦略として、主要顧客とのパートナーシップを深化させ成長を牽引する役割の事業を中心に、その他事業にも経営資源を配分し、多種多様な顧客との関係性を強化することで成長機会をともにする事業等、事業の特性に応じた役割を明確にし、ポートフォリオを適切にマネジメントしています。

米中関係の不透明性による船舶建造、保守への影響

中国での船舶竣工量は世界の47%を占めており、近年増加しています。今後当社においてもコスト面から中国での船舶の建造、保守が増えることが見込まれますが、社会的要因による米中関係の不透明性により、長期的な船舶の建造、保守に影響を与えることがリスクの一つとして考えられます。特に、当社では8割以上の船舶が中国で入渠しており、当該リスクは継続的な船舶運航を阻害する要因ともなり得ます。また当社では中国での新造船発注残もあり、今後も中国発注は増える見込みです。なお、当該リスクは主に外部的なもので、地政学的環境に関連しています。

当社は411隻の船舶を運航しており、船舶は少なくとも5年ごとに入渠することが条約で定められています。中国の修繕ドックの供給能力は世界の50%であり、仮に中国ドックへの入渠の阻害要因が増大すると、船舶の運航に影響を与え、当社グループの営業活動と経営成績に影響を与えます。また、中国での船舶竣工量の比率は近年増加しており、最新の数字では世界の47%を占めております。その為、仮に中国での船舶建造が阻害される事態となれば、世界および当社の船舶供給に影響を与え、当社グループの営業活動と経営成績に大きな影響を与えます。

当社では、新造船の発注残を全社管理し、またリスクの定量化も行い、万が一の際にリスクを吸収できる耐性を保持しています。さらに、新造船発注に際しては、定量的かつ定性的な観点から検討を行い、かつ発注ヤードについても分散発注を検討するなど、リスクの最小化を図るべく専門家との協議を重ねた上での発注を行っています。また、船舶修繕地についても全社管理し、分散化を図っています。 さらに、全社ベストプラクティスの策定にむけて関係者間で協議を重ねており、グループ一丸となってガイドラインを策定しています。

リスクリターンと資源配分(ポートフォリオ)の考え方

当社は、安定収益型事業の維持・拡大と市況影響型事業における競争力の強化、戦略的成長分野の投資拡充といった事業ポートフォリオ転換の実現と、それらを通じた企業価値向上を目指し、2017年10月に以下2点を軸とした経営管理の高度化を公表しました。

事業リスク総量管理

想定最大損失額を連結自己資本の範囲内にコントロールし、適正な投資規模による「安定性」と「成長性」を両立させます。事業リスク量(=想定最大損失額)は、事業特性を踏まえながら、統計学的手法を用いて計測します。 

事業におけるリスクは多種多様です。事業リスクリターン管理は、自己資本毀損に至る「損失発生リスク」を対象にしています。事業リスクリターン管理対象外の事業におけるリスクは、各事業ユニットがコントロールの上、全社管理は危機管理委員会およびその下部組織でマネジメントする社内体制を取っています。 

事業評価指標の刷新

事業リスクに見合うリターン確保を重視した投資・事業評価指標("K" VaCS/"K" RIC)を導入し、それらを用いて最適な事業ポートフォリオへ転換します。