【自営事業】

Q-1: 自営事業について、今年度の経常損益予想は、一過性要因も含めて下方修正され、785億円となっています。来年度の目標である900億円達成に向けた手応えや確度がどのような状況にあるのかについて教えてください。

 

A-1: 今回は、一過性の要因や為替の影響も含め、自営事業の経常損益を785億円と公表していますが、来期に向けてはさらに積み上がる事業も想定しています。為替の動向も一定程度影響すると考えていますが、それを見込みつつ努力していきたいと思っています。さまざまな策を検討している部分もありますが、現時点で確実に実現するとは申し上げられません。以降、年度の後半を含めて計画を詰めながら、あらためてご説明する機会を設けられればと考えています。

 

Q-2: 自動車船事業について、通期の経常損益を下方修正されていますが、この際に輸送台数を下げたと理解しています。トラブルがあったというお話や、運航費の増加についての言及もありました。コスト増加にあたるのかわかりませんが、なにか川崎汽船特有の要因があるのでしょうか。

 

A-2: 自動車船事業の経常損益について、8月公表値からの下方修正については、先ほどご説明したとおりです。トラブルについては、韓国におけるストライキが原因で生産が円滑に進まなかったことが要因です。今回の40億円という数字に関しては、約半分が一過性の要因、残りの半分が非一過性の要因と分析しています。

一過性の要因については、トラブルが発生したことやモデルチェンジによる一時的な生産延期、いわゆるモデルチェンジの端境期が影響しています。

非一過性の要因としては、契約更改時に運賃が若干下がったことが挙げられます。複数年契約などがありますので、その影響で運賃が下がった分が反映されています。さらに、一部の市場で販売が少し落ちたことに伴い、荷動きが減少したことも影響要因です。荷動きの減少幅は3万5,000台程度を見込んでいます。

 

Q-3: 自動車船事業に関して、入港料1年停止の影響については織り込まれていないかと思います。例えば、配船の繰り方のコストが軽減されることで、下期の自動車船事業の利益見通しが現在の計画より引き上がる可能性があるのかどうか教えてください。

 

A-3: 自動車船の米国の入港料について、先ほどご説明があったかと思いますが、この影響は織り込んでいません。現在、1年延期されるかどうかを確認しているところですが、現状は10月14日から施行されているルールが適用されているという前提で、お客さまとご負担の分担について協議を進めています。

 

Q-4:自動車船関連での40億円の下方修正について、そのうち20億円は一過性でトラブルに起因するとのことですが、これは運航費の上昇と同じ要因として理解してよいのでしょうか。また、残りの契約更改によるレート低下について、可能な範囲で背景を教えてください。

 

A-4:ご質問のトラブルについては、出荷がなく荷量が減少したことで説明がつくと考えています。減益の要因については、さまざまな要素が絡み合い、ばらつきが見られるものの、現在、当社では一過性要因と非一過性要因を分けて整理・分析を進めているところです。非一過性要因における運賃について、足元では交渉を進めている状況です。今年度においては、若干想定を下回ったものの、来年度や再来年度を含む複数年契約を結べている点は良好です。また、以前の事業説明会でもお伝えしたとおり、運賃の下落幅は基本的に想定の範囲内であり、運営に支障はないと考えています。

 

Q-5-1:ドライバルクセグメントにおける第1四半期と第2四半期の利益の動き、さらに下期の利益の動きについてご解説をお願いします。第1四半期では、2桁億円程度のトラブル影響があったと理解していますが、第2四半期には特に影響がなかったのかという点、そして市況の前提を考えると、ドライバルクセグメントの下期の経常損益予想76億円という数字はかなり大きいと感じます。この点について、第2四半期と下期の利益水準が市況以外のどのような要因でこれほど変化したのか教えてください。

 

A-5-1:第2四半期と下期、特にこの差が大きい主な要因としては、第2四半期に市況が回復したものの、契約の時期や運航の時間差が影響しています。この運航の時間差は、通常からあるものですが、収益影響が後ろに出やすいという特性があります。また今回、期をまたぐ運航において航海の滞船や航海の変更が発生し、やり繰りによって収益認識の時期が下期にずれ込んだものが、例年より少し多かったと考えています。これらをならすと、前回公表した第2四半期と下期のバランスに近かったのではないかと分析しています。

 

Q-5-2:第2四半期には、特にトラブルはなかったという理解でよろしいでしょうか。

 

A-5-2:おっしゃるとおり、ありませんでした。

 

 

【コンテナ船事業】

Q-1: コンテナ船の下期の短期運賃のイメージについて教えてください。具体的にお答えいただくのは難しいかもしれませんが、前回公表との比較でどのように下方修正したのか、なにかヒントをいただければ幸いです。

 

A-1: 先ほどご説明したとおり、9月に短期運賃は下がりました。その状況を受け、10月中旬からONE社だけでなく各船会社がいわゆる値上げの調整を行っており、それが足元では効果を出しています。現在の状況をご説明すると、ONE社は下期で想定している運賃レベルよりも高いレベルにありますが、この状況がどこまで続くのかという点が課題です。これからの短期運賃動向は、年末にかけて、特に欧米での需要期であるクリスマスシーズンやサンクスギビングなどの消費がどの程度進むかにかかっていると考えています。

一方で、先立って米中の関税が停止された影響が、来年2月の中国の春節の出荷シーズンに底上げ、つまり荷量の増加をもたらし、それに伴って短期運賃が再度上昇することを期待しています。

 

Q-2: コンテナ船について、10月にGRIや値上げが実施され、前倒し需要があったというお話がありましたが、現在足元ではその反動減で需要が弱いのではないかと思っています。しかしながら、短期運賃の値上げがしっかりと通っている状況を考えると、10月から12月にかけての需要環境をどのように見ていますか。

 

A-2: 船会社としては、2つのポイントがあります。1つ目は、短期運賃を引き上げるといういわゆるGRIの実行です。2つ目は、需要の前倒し、いわゆる先食いが明らかになったことです。本来なら、10月の国慶節等でピークを期待していたものの、そこまで活況ではありませんでした。船会社では通常、冬場の需要低迷期、スラックシーズンに合わせた減便などの対応施策を実施します。今年は、例年よりも早めに減便などの対応を行ったこともあり、結果的に現在の需給バランスが船会社にとって好影響をもたらし、GRIが効果を発揮している状況です。しかしながら、いつまでこの状況が続くかは注視が必要だと認識しています。

 

 

【資本政策】

Q-1: 追加還元500億円以上の件について、今回は特にアップデートがなかったようでした。今後、どのような判断軸や時間軸でこの件についてお話しいただけるのか、その目線を教えてください。

 

A-1: 500億円以上の追加還元の枠については、現在も検討を継続している状況です。時期については、現時点では申し上げられませんが、適切なタイミングで、できるだけ早く、どのようなかたちで実施するのかご説明したいと考えています。営業キャッシュフローについては、非常に堅調に1兆5,000億円を維持できると考えています。そのため、大きな不安はなく、しっかりと2026年度末までに、できるだけ早いタイミングで方針を公表できるよう努力したいと思います。

 

Q-2: 800億円のマネジメントアロケーションの現状の位置づけについて教えてください。まだ営業キャッシュフローのバッファーという位置づけなのでしょうか。あるいは、投資キャッシュフローの面で変化が出てくる可能性があるのでしょうか。特に、ネットゼロフレームワークの採択延期の話も踏まえた上で、投資キャッシュフローの見方について方針など、可能な範囲でおうかがいできればと思います。

 

A-2: マネジメントアロケーション800億円についても、追加還元と同様の要件となります。現在、さまざまな状況が完全に透明であるとはいえないため、キャッシュアロケーションとしての価値はあると考えています。その上で、今後どのようなことに資金を活用していくのか、投資を含めて前向きに検討を進めている段階です。そのため、現時点では詳細をご説明できず大変申し訳ありませんが、適切なタイミングで、どのようなかたちで進めるのかについてご説明したいと考えています。

 

Q-3:キャッシュアロケーションの追加還元500億円についてうかがいます。今回、ベンチマークとなる営業キャッシュフローの見込みが変わらず確度が高い中で、アクションを起こされなかった理由について、どのような懸念や検討があったのか、お話しいただける範囲で教えてください。

 

A-3: 率直に申し上げると、先ほどお伝えしたように、事業環境を含むさまざまな要因を検討しています。決してなにか悪い要因があるわけではなく、何が最適であるかを慎重に考えるため、現時点で具体的にお伝えすることができない状況です。ただし、なにか障害があって実行できないというわけではありませんので、前向きに検討を進めています。適切なタイミングでご説明できればと考えています。ご理解のほど、よろしくお願いします。

 

Q-4:最適自己資本構成に関して議論が進められているものの、まだ結論には至っていないと思います。時間がかかっている状況の中で、議論の内容がどのように深まってきているのか、また議論の進捗について教えてください。

 

A-4:さまざまな点を考慮しており、前々からご説明している内容もありますが、現在、ONE社の最適資本構成を含め、検討を進めています。この件については、株主3社とも議論を行っている状況です。自営事業についても、現行の投下資本や事業資産だけでなく、将来計画を踏まえた上で、資本コストをしっかり回収できる資本構成に向けて、どのように調整すべきかを詰めている段階です。その中で、現状からこのような方向に動かしたほうがよいという話を積み重ねていますが、もう少し時間がかかると考えています。

 

 

【その他】

Q-1: 米中合意後のコンテナ船や自動車船における荷動きや状況の変化について、どのように認識されているか教えてください。関税や、入港料が下がり良くなっている、引き合いに変化が出てきている、といったことが確認されているかどうかについて教えてください。

 

A-1: コンテナ船について、米中合意の影響は正直なところ、現状では手応えや目に見えた影響は確認できていません。これは、先ほどお伝えした年末に向けた消費動向や、中国からの出荷がどれだけ増えていくかということに関連しています。来年の春節に向けたオーダー状況についても、コンサイニー、いわゆる受荷主からオーダー状況を各オフィスで聞き取るなど、現在調査を進めています。

自動車について、現時点では米中合意の影響はあまり出ていません。米国市場の販売については、10月の速報で総市場が-5%という数字が発表されましたが、1月から10月までの累計では前年比+3.3%となっています。メーカーによって、モデルのラインナップや在庫量が異なるため、販売実績にはばらつきが見られるかと思います。一方で、輸出国である日本、EU、韓国からの関税が15%に引き下げられたこともあり、各OEMが販売対策を立てやすくなったのではないかと思います。そのため、今後は各メーカーの販売実績のばらつきが平準化されることを期待しています。

 

Q-2-1: 今年も半期が過ぎ、来期以降のことを考えて対応していく局面に入ってきていると思います。五十嵐社長として、現在の変化や環境をどのように捉え、どのような経営課題に対して前もって手を打つ必要があるとお考えでしょうか。この半年間で、来期を見据えてどのような対応が必要だとお考えか教えてください。

 

A-2-1: 半期を過ぎた段階で、いくつか考えなければならないことがあります。足元の現業でご説明すると、特に船が不足している状況です。これは各船種においても同様であり、不足が原因でさまざまな発注が行われています。需給環境が一部崩れ始めていると見られ、自動車専用船のような例もあれば、逆にケープサイズ船のように不足が懸念される事例もあります。

このような状況を踏まえ、日本の造船業の復興も含めて、将来的な手当をどのように進めていくのかをあらためて考え直すタイミングに来ていると思います。特に脱炭素及びエネルギー関連の取り組みについて、先日のIMOのMEPCでネットゼロフレームワークの採択が延期されたものの、今後ともそのような準備をしっかり行う必要があると考えています。脱炭素及びエネルギー関連については、来年度に向けてさらに踏み込んだ取り組みを準備し、それを基にしっかりと対応していきます。

 

Q-2-2: 現状を見ると、中期経営計画や現在の状況で想定されている内容から、あまり変化がなく、修正する必要はないという認識でしょうか。

 

A-2-2: 中期経営計画を2022年5月に提示し公表していますが、それ以降、一定の時間が経過しており、事業環境も大きく変化している部分があると思います。当社としては、必要な部分は柔軟に対応しながら進んでいきたいと考えています。中期経営計画自体は2026年度が最終年度となっていますので、当然ながらその次の段階も見据えてさまざまなことを検討し始める必要があるタイミングです。そのため、十分に検討を重ねた上で、必要に応じて適時にご説明できるよう努めていきます。