【自営事業】

Q-1:自動車船の上方修正については、主に輸送台数の前提を引き上げたことによるものと推察しています。運賃に関しては、なにか考え方に変化があったのでしょうか。開示がない部分については定性的なご回答でも結構ですので、運賃に関する見通しになにか変化があれば教えてください。

 

A-1:運賃面については、現時点では特段大きな変化が見込まれるとは考えていません。ご案内のとおり、契約については多くの部分が確定しているため、基本的に大きな変動はないと思われます。また、需要がこれから大きく変化しない限り、スポット貨の運賃についても大きな変動はないという見通しを立てています。この前提に基づいて、今回の見通しを作成しています。

 

Q-2:ドライバルクについて、説明会資料には、事故や争議等に伴う配船変更の影響があるとの記載があり、ドライバルクで一過性的な費用が発生したのではないかと見受けられます。もしそうであれば、その金額について教えてください。

 

A-2:冒頭でギニアについて触れましたが、もう1つペルーの積地での事故などもあり、残念ながら複数の要因が重なってしまいました。影響額については明確な金額は控えさせていただきますが、今回、二桁億円近い損失が発生しています。

 

 

【コンテナ船事業】

Q-1-1:ONE社の第1四半期の実績については税引き後利益が86百万ドルという結果でしたが、想定よりもやや弱かった印象があります。川崎汽船の想定と比較してこの実績をどのように評価されるのかお聞かせください。運賃率・積高はもちろんですが、特に第1四半期は運航費などのコストが増加しているようです。この点を含めたオペレーションも含めて、川崎汽船の想定と比較してどうだったのか教えてください。

 

A-1-1: 第1四半期の実績の評価については、第1四半期は米国関税政策の影響を受けたことにより、船会社も荷主も振り回される状況がありました。この影響で、北米航路や欧州航路、その他の航路で船の入れ替えを行い、ONE社に限らず追加コストが発生したのではないかと考えています。また、4月と5月には一時的に中国からの荷量が減少しました。この減少は後に回復しましたが、このような上下動の中で今回の実績に落ち着いたというのが正直な印象です。

 

Q-1-2:補足でうかがいますが、関税導入初期における船の入れ替えに伴うコストは、一過性コストと捉えてよいのでしょうか。

 

A-1-2: そのように捉えていただいて結構です。

 

Q-1-3:可変費で1億ドル、運航費で3億ドルの増加が見られますが、これらも概ね一過性コストという理解でよいですか。

 

A-1-3:今おっしゃっているのは、おそらくONE社の滝グラフの数字かと思います。それは2024年の対前年同期比のデータですので、直近の第1四半期の数字とは異なりますが、その中に今お話しした一過性のコストが含まれているとご理解ください。

 

Q-2: コンテナ船の見通しについて、足元ではコンテナ船運賃が下げ止まっているようにも見えますが、現状を起点として、第2四半期、第3四半期、第4四半期とどのように推移すると想定していますか。

 

A-2: 運賃についてですが、確かに短期運賃のマーケットは下げ止まっています。本来であれば年末の需要期に向けて夏場の「ピークシーズン」が期待されるところですが、今年は在庫状況などから推測すると、夏場の一層の積み増し、追加需要はあまり期待できないと予想しています。これは需要だけでなく、需要増加に伴う運賃の高騰も同様です。そのため、夏季や秋口に見込まれる例年のピークシーズンも大きく期待できず、現状の需要としては悪くないものの、この状況が年内続き、第4四半期に向けて需給がさらに緩やかになると見ています。ONE社の通期見通しについて、期初、関税の影響がない場合には11億ドル、関税の影響が最大限に及んだ場合では2.5億ドル程度まで下がるのではないか、という2本立ての予想としていました。その後の3ヶ月の現状を踏まえて今回公表した見通しは7億ドルという数字になりました。偶然、これは当社の予想と似たようなレベルになりましたが、ONE社の見通しという意味では、今年はこの程度で踏みとどまりたいと考えています。

 

Q-3: コンテナ船の業績見通しについて、2025年5月公表時から20億円上方修正されています。自動車船に比べると金額は小さい印象を受けますが、これは例えばトレードパターンの変化や米中間の関税が未決定であることなど、関税以外になんらかのマイナスの影響を織り込んでいるのでしょうか。

 

A-3:当社通期見込みにおけるコンテナ船事業の20億円の上振れしている中に、米国関税の影響による下振れ要因が一定程度含まれているかというご質問だと理解しましたが、その意味では含まれています。米中間の関税など、まだ確定していない要因もありますので、通期において米国関税の影響は引き続き存在する可能性があると考えています。ただし、今後の9ヶ月間でどの程度定量的に影響を及ぼすかについては、現時点では詳しい見通しが立っていない状況です。

 

Q-4:コンテナ船について関税の影響を若干織り込んでいると思います。スライドには、コンテナ船のトレードパターンの変化の可能性についての記載があります。実際に、中国からの輸出が減っている一方でベトナムからの輸出が増加しているなど、足元でなにか変化はありますか。

 

A-4:現時点ではそれほど目立った動きはありません。ただし、今後米中関係の動向によっては、中国からの輸出がさらに減少し、その分をその他の地域の荷量で補うといった事態が発生する可能性はあります。しかしながら、現時点ではトレードパターンという観点で大きな変化は見られていません。

 

Q-5:コンテナ船の今後の供給のはり方に変化はありますか。直近のスポット市況を見ると、北米は弱含みが続いている一方で、欧州はやや強含みというトレンドのように感じます。このような市況の変化を踏まえて、方面別のキャパシティのはり方に変化があるのかについて教えてください。

 

A-5:コンテナ船の供給のはり方の今後についてですが、これはONE社のみならずコンテナ船業界全体に関わる予想となるため、ご参考までにお聞きいただければと思います。北米航路と欧州航路の強弱については、北米航路の需要が緩むことにより、船社がサービスを北米航路から欧州航路へ転配する動きなど、サービスの入れ出しが影響していることが一因だと考えられます。また、これとは別に、スエズ運河の通航が制限される状況がある一方で、コンテナ船業界全体として新造船の供給キャパシティが着実に増えているという実情があります。その中でも、コンテナ船全体で消席率が100パーセント、いわゆる満船の状態が約1年前までは続いていました。これが徐々に、ONE社を含む各船社で消席率が緩んでくることに伴い、ここ数年停滞していた老齢船の処分や、いわゆる船社側のサービス改編といった動きが出てくると考えています。これらの動きと需給の関連性から、当面の需給が調整されていくのではないかと考えています。

 

Q-6: コンテナ船の第2四半期の利益について、先ほど「第2四半期は通常のような、ピークシーズンはなさそうだ」という前提だとのお話がありました。その中で、ONE社の第1四半期が86百万ドルで、第2四半期が450百万ドル程度と直前四半期比で大きくジャンプアップする想定になっています。この直前四半期比での差は、コスト面によるものなのでしょうか。直前四半期比での大幅増益の背景を教えてください。

 

A-6:コンテナ船の第2四半期についてですが、運賃レベルはトップシーズン、ピークシーズンの急激な上昇を見込むわけではありませんが、トップシーズンということで一定の需要が保たれるため、短期運賃も堅調に推移する見込みです。

 

 

【資本政策】

Q-1:今後の株主還元に関する考え方について、今回、通期計画が増額修正された一方で、追加還元の500億円以上については据え置かれている状況だと認識しています。こちらについて、どのような時間軸や判断材料で見直しを予定しているのかをお聞かせください。

 

A-1: 当社の株主還元については、対外的に配当性向などを具体的に謳っているわけではありませんが、基本的に当社が考える最適な資本構成を意識しながら、財務の健全性を確保しつつ、キャッシュフローを見ながら還元方針を決定しています。期初の段階から、業績を若干上方修正しましたが、営業キャッシュフローや投資キャッシュフローともに期初の時点から大きな見直しはありません。このため、このタイミングでは株主還元の具体的な数字についても、従来の方針から変更はありません。追加還元の500億円以上に関してどのタイミングで実施するかについては、まずは関税などの足元の先行き不透明感が業績にどのような影響を及ぼすのかある程度見通せた段階で、どのようなかたちで行うかを決めたいと考えています。早いに越したことはないとの認識ですが、このタイミングで決定するにはやや早いと判断しました。なるべく早い時期に詳細をご説明できるよう、準備を進めていきます。

 

Q-2:株主還元について、上期までの進捗と今後のキャッシュフローの増減によっては、追加還元500億円以上という計画を少し見直す可能性があるのではないかと思います。また、投資については当初の中期経営計画から後ずれしている印象です。今回、成長についても言及がありましたが、フリーキャッシュフローの使途についても、マネジメントも変わり、アップデートがあるのではと考えています。今後の方針についてお考えがあれば教えてください。

 

A-2: 株主還元について今回アップデートしていない理由としては、営業キャッシュフローや投資キャッシュフローにおいて、5月に発表した内容から大きな変動がなかったためです。業績の見通しについては、先行き不透明感が残るなかで、関税の影響によるマイナス幅を縮小し、上方修正を行いました。ただし、還元政策を変更するほどの大きな影響はキャッシュフローや業績面で見られないと判断し、変更を行わない方針としました。今後については、マネジメントが変わったからというよりも、当社としては、先ほどのご説明の中でPBRついてお話したとおり、しっかりと成長に向けた道筋を示しつつ、必要な資金を適切に活用していきたいと考えています。中期経営計画期間中も一貫した方針で進めていますが、投資に関しては当社だけの都合ではなく、お客様との調整により投資のタイミングが決まる場合もあります。そのため、ご指摘のとおり、現状では投資が後ずれし、進捗がやや遅れている印象をお持ちかと思います。そこで、将来に向けた当社の成長戦略をしっかりと示し、どのような分野に資金を充てるのかをご説明します。また、株主還元を軽視するわけではありませんので、最適資本構成を超える部分については積極的に還元を実施するという方針は変えることなく進めていきたいと考えています。

 

Q-3:最適資本構成について外部からはよくわかりづらい点があるため、還元をどのようにするのかという話になるのだと思います。こちらについてはまだ具体的な情報は出てこないのでしょうか。

 

A-3:最適資本構成について、「実際にどのような数字なのかを具体的に説明してほしい」というご要望だと理解しています。単純に財務比率、例えば自己資本比率やデッド・エクイティ・レシオといった指標を用いて資本レベルの感覚をお示しするのが適切なのかどうか、という問題もあると考えますが、これらの指標も含めて、継続的に検討しています。当社のビジネスの構造上、ONE社からの収入も大きなウエイトを占めています。そのため、キャッシュフローの面ではその影響を大きく受けることになります。このような点をしっかり見極めた上で考え方を示したいと考えています。「なぜ具体的な説明が出てこないのか」とのお叱りだと受け止めていますが、当社としては「こうあるべき」といった自分たちの考えとともに、ONE社を含めた資本構成についてさらにしっかりと検討を進めた上でお示ししたいと考えています。申し訳ありませんが、もう少しお時間を頂戴できればと思っています。

 

 

【その他】

Q-1-1: 関税影響について、通期の最新予想では、自営事業がマイナス35億円、コンテナ船事業がマイナス145億円の影響があるとのご説明がありますが、この期間別内訳、特に第1四半期にどの程度発生したのかについて教えてください。

 

A-1-1:何が関税影響に該当するのかを完全に特定することは難しいものの、感覚的には自営事業については、第1四半期に関税影響といえるものはほとんどなかったと考えています。関税影響をどう捉えるかによって若干の影響があったかもしれませんが、当社として、自営事業において関税影響と呼べるものは、全体を通じてほとんどなかったと認識しています。

 

Q-1-2: コンテナ船事業についても、第1四半期にはほとんど影響は発生していないという理解でよろしいでしょうか。 

 

A-1-2: コンテナ船については影響が出ています。これは収支実績そのものではありませんが、大きな影響があったといえます。どこからどこまでが関税影響によるものかを明確にするのは非常に難しいのですが、特に4月から5月初旬にかけて、米中の荷動きがいったん大きく下落したことは事実です。それがどのようなかたちで、どの程度の金額で影響を及ぼしたかについては先ほど触れた一過性のコストとも関連しますが、非常に分析が難しい状況です。それでも、収支の結果には大きな影響を与えたとご理解ください。

 

Q-2:為替差損益の配賦変更の影響について、2024年度の本部費用との差を見ると、大きな差はなく、10億円強の入り繰りを変えただけのように感じます。結局、為替差損がドライバルクの赤字や自動車船に影響を与えている状況は変わらないという理解でよいのでしょうか。

 

A-2: 為替差損益については、最近は為替レートが短期間で大幅に変動することがありました。昨年度も、第1四半期から第2四半期にかけて円安となった後、急激に相対レベルで円高となる動きが見られました。当社では、手元の現預金としてドル建て預金を保有しており、その評価損益が大きく影響していました。従前は一定のロジックで部門に配賦していましたが、為替差損益の影響により事業の損益の実態が見えづらくなるという問題意識を抱えていました。そこで、2025年度からは、各事業に紐付く損益についてはそのままとし、本部で保有する各部門に紐付かない営業債権などの為替差損益について配賦方法を変更しました。これが変更の背景です。足元ではそれほど大きな影響が出ているわけではありませんが、変更の趣旨は今ご説明したとおりです。