【自営事業】

Q-1:自動車船事業について、今年度の予想が今回上方修正されているように見えます。滞船影響によって輸送台数目標は引き下げていて、為替は円安方向に修正されているので、為替要因を除いた見通しとしては、引き下げているということでしょうか。また、今期の製品物流セグメントのコンテナを除いた経常利益は880億円となるようですが、その中の自動車船事業はOEMとの契約運賃がベースになっているので、安定的であると理解しています。自動車船事業の来期見通しについて、需要と傭船料の推移などからどのように見ているのか教えてください。

 

A-1:輸送台数については資料のAppendixにつけていますが、第4四半期は前回の11月の予想より落としています。これは、オーストラリアでのストライキや船の回転率の低下による台数の落ち込みです。為替要因を除けば、その一時的な影響が大きく響いているので、通期見通しはその分だけ落としています。この先の見通しについて、最終的にはまだ確定していませんが、25年度については大方の契約を既に中長期で押さえているので、その部分についての変動は大きくないと見ています。輸送台数も先ほどの一時的な要因を除けば各メーカーから堅調な出荷予定を頂戴しているので、大きな問題があるとは考えていません。ただ、米国の関税に起因する影響がどのように出てくるのか、例えばメキシコやカナダから車が入ってこなければ、どこかから持ってくることもあり得ると思います。逆にインフレーションによってアメリカの市場が冷えてしまうということもありえると思いますので、今後の動向を慎重に見ていきたいと考えています。

 

 

【資本政策】

Q-1:25年度から26年度の配当引き上げに関してのメッセージを伺いたいです。外部環境が不透明な中で、このタイミングで引き上げた背景について、もともと上期決算のタイミングでキャッシュアロケーションを見直した際に700億円程度がマネジメントアロケーション枠としてあったと理解しています。今回自営事業の経常利益が通期で1,030億円となりましたが、コンテナが落ち込んでも自営事業でこの水準が概ね維持できるという自信と見ていいのでしょうか。来期の自営事業の水準感、配当の引き上げとタイミングについて教えてください。

 

A-1:現在さまざまな予算作業の策定をしています。一方で、今期の業績も上振れを予想しています。その中でキャッシュフローの見通しも日々刻々、常に我々もモニタリングしています。200億円の追加の株主還元となる増配については、中計期間中において問題なくできるという確信、経営としての判断があるということですので、そのようにご理解いただいて結構です。

 

 

Q-2:本決算の時になると思いますが、残る中計2ヵ年のキャッシュフローのアップデートについて、営業キャッシュフローと投資キャッシュフローが、それぞれ今の計画から比べて、増額するのか減額するのか、もし見えている方向感があれば教えてください。

 

A-2:現在25年度以降の予算を策定中のプロセスですので、あまり確固たることをお伝えすることはできません。しかし、営業キャッシュフローについては、先ほど業績に対する自信があると言いましたが、自営事業についてはしっかりと中計の目線に沿った形でやっていけると思っています。従って、現在掲げている1.5兆円をベースにして、例えば今期も事業収益が上振れしているので、このような上振れ予想を当社として見込むことができるかなどがポイントになってくると考えています。投資キャッシュフローについては、船価の動向やプロジェクトの動向、顧客がいつ船を必要とするか、船台に関しても期近な船台がない状況ですので、どういうタイミングで契約をするのがいいか、という問題もあると思います。その中で、中計最終年度の26年度までの期間を限定した中での数字というよりも、当社としては継続して必要な投資をきっちりとやっていく必要があります。現在は26年度までで7,400億円の投資を計画していますが、より大事なことは、適切な時期に適切な投資をきっちりとやるということだと思いますので、決して当社としては事業や投資を減らすようなことは考えてはいません。ただ、中計期間中として限定して見た時には、今後の船台の状況によっては、若干減少するように見える可能性もあると考えています。

 

 

Q-3:決算説明会資料10ページに記載があるPBR1倍以上という部分に対しての、現状の認識を教えてください。これまでCFOをやられていて、これまでの取り組みと、その中でなぜPBR1倍以上が実現されないのか、どのように認識しているのか、想いや現状認識について教えてください。特に24年度は、自己株式取得をかなりの金額規模で実施してきているのに、逆に株価は下がったという状況なので、PBRの概念でいうと、結局のところ期待成長率が低い、ということと同じだと思います。この点、どのように総括するのでしょうか。

 

A-3:PBRが1倍に届かない状況が続いている点、非常に忸怩たるものがあるところです。なぜPBR1倍に届かないのか、その理由については、もちろん海運業そのもののボラティリティの高さといったものがあり、特にコンテナ船事業のボラティリティの高さもあると思います。この点は、もちろん一定程度コントロールをしていくということではあるのですが、事業の性質として避けられないところだと思います。そのような中で、当社の自営事業での安定収益をどのように伸ばしていくのか、これをどのようにしてマーケットに理解していただけるのか、これらをより具体的に示していく必要があると、これまでも考えていましたし、今も考えています。

もちろん一朝一夕にいくものではないと思いますが、そのような課題意識を持って当社としては取り組んでいるので、引き続きそれを続けることで自営事業の成長戦略を、より企業価値に反映されるような形で作り上げて、実行していきたいと考えています。

コンテナ船事業については、当社の場合はコンテナ船事業の比率が高いといわれるところでありますが、コンテナ船の市況や業界の構造は、2010年代と比較すると変わってきていると思います。一定程度の寡占状況、プレイヤーの数が少なくなってくることによって、下限、下方硬直性というものが非常にできているのではないかと思います。この点を市場にしっかりと信任いただくだけの時間がまだ経過していないということもあると思うので、引き続き当社も株主としてOCEAN NETWORK EXPRESS (ONE社)に働きかけることによって、そのようなコンテナ船事業に対する信任も得られるよう、務めていくことが重要だと考えています。

 

 

 


【コンテナ船事業関連】

Q-1:コンテナ運賃の前提としては、年度末にかけて、おそらく紅海情勢が発生する前の運賃レベルまでの下落を見ていると思います。足元の運賃を踏まえ、実際に2、3、4月、目先2~3カ月の運賃はどのような推移が想定できるのか、前提とは別に見ていることがあれば教えてください。

 

A-1:運賃レベルは、昨年の7月、8月でピークアウトして徐々に落ちています。落ちてはいますが、第3四半期は前回予想よりも運賃の落ち幅が少なかったということで上方修正に至り、その傾向は今年1月も続きました。従って、1月末時点では、既に計画に織り込んでいる短期運賃レベルよりは実際若干高めで推移しており、今後、旧正月明けの需要がどうなるか、2月からのアライアンス組み換えによりマーケットがどうなるか、足元の短期運賃のレベルがどうなっていくのかという状況はまだ不透明感があります。しかし、1月末時点では、想定を若干上回るレベルで推移している状況です。

 

 

Q-2:来期以降の配当引き上げ、キャッシュフローの話の中で自営事業に対する自信のほどは理解していますが、一方でブレが大きいONE社についての自信はどこまであるのか不透明に感じます。来期以降の業績もONE社次第によって良くなったり、悪くなったりすることがあるように思っています。ONE社の来期の業績予想についての確度や手応えについて教えてください。またONE社の業績が想定より悪くなっても25年度、26年度の配当100円/株ができるというのは、弱気ケースでのシナリオ分析をした結果としての自信なのでしょうか。

 

A-2:ONE社の業績と当社の株主還元の関係について、当社は株主還元の方針にあたっては、キャッシュフローを重視しています。キャッシュフローに基づいた株主還元を常に意識していますが、ONE社のPLがそのまま当社のキャッシュフローになるということではありません。ONE社からの配当があって初めて当社のキャッシュフローになるので、その影響度が小さいと言ってしまうと語弊ありますが、多少ONE社の業績やコンテナ船の市況が悪化したとしても、当社としての株主還元には大きな影響がないという判断をしているとご理解いただきたいと思います。

25年度、26年度のONE社の業績について今予想するのは非常に難しいですが、一番大きな要素は、スエズ運河がいつ再開するかという点に懸かっていると思います。現時点で、スエズ運河がいつから再開するかという目途は、ONE社では見立てていませんし、実際スエズ運河が再開されたとしてもサービスの組み換えに数ヵ月間を要するので、25年の前半にすぐにスエズ運河に戻れるという見通しは、今のところ立っていないと思います。

そのような状況の中で、ONE社として中期の収支計画を立てています。本来は24年、25年が需給バランスでマーケットが軟化すると見込んでいました。これが24年は、中東情勢によって、喜望峰周りの迂回となったことで、本来見込まれていた新造船の供給増が吸収されました。いつかスエズ運河が再開して、また需給バランスが緩むという局面は来るだろうと認識はしていますが、それがいつ戻るのか、また、そうなったときに老齢船の処分等もあり、どこまで需給バランスが落ち込むのか、落ち込まないのかというポイントもあります。色々な要素がありますが、マーケットが悪くなっても、以前のコンテナ船業界のような営業段階での赤字が長期に及ぶというようなことは、希望も含めて、それほど予想していません。25年度、26年度のONE社の業績は、既に当社の中計にも一定程度、織り込まれているとご理解いただければと思います。

 

 

【その他】

Q-1:新社長になる五十嵐さんにお聞きします。現行の中計というよりは、次期中計なのかもしれませんが、どのような独自色を出していきたいでしょうか。社長の大きな経営判断には投資があると思いますが、この点に関して、現時点で何か課題認識などはあるのでしょうか。何か抱負などあれば教えてください。

 

A-1:次期中計は、まだこれから先の話になりますが、現行中計で取り組んでいる三機能、即ち「安全と船舶品質管理」、「環境技術」、「デジタルトランスフォーメーション」、これらに加えて「人材と組織」と謳われている部分を、より強くしていこうと思っています。今でももちろん効果が上がっていますし、液化CO2輸送事業など、色々なところに出ていますが、これを社内外によりご評価いただけるように、一層取り組んでいきたいと考えています。