【自営事業】
Q-1-1:下期の計画の考え方について教えてください。全体の利益としては前回公表比据え置かれていますが、コンテナが上ぶれ、ドライバルクなどで下ぶれています。コンテナ以外のセグメント、ドライバルク及びエネルギー資源でリスクをどのように見ているのでしょうか。
A-1-1:エネルギー資源について、注目するポイントは米国大統領選挙、中東情勢だと考えています。現状の原油価格は、中国の需要が若干弱含んでいる影響はありますが、中東情勢次第ではマーケットが上がっていき、需給がさらにタイトになることもあり得ると考えています。米国大統領選挙の結果については、トランプ氏とハリス氏は全く逆のエネルギー政策・環境対応をしていく可能性がありますので、そこが見きわめるべきポイントになっていくでしょう。ドライバルクについては、中国の経済の不透明感がなかなか拭えない状況がリスクと考えています。上期は大型船を中心に堅調な荷動きが続きましたが、下期は慎重に見ています。ただ、市況について言うと、振幅はあると思いますが前提は前回5月の公表から変えていません。収支が少し下がったように見えるのは、為替の影響です。上期と下期のつけかえの中で動いたもので、ドライバルクでは本質的な収支前提を変えていません。ただ、リスクは存在しているので、期初からエクスポージャーの管理に取り組んでおり、貨物を押さえながら縮減を着々と進めています。
Q-1-2:エネルギー資源セグメントの第1四半期業績について、一過性の要因で前年同期比減益だった背景を教えてください。
A-1-2:本船の入れ替えによる一過性の影響と捉えていただきたいです。
Q-2-1:コンテナ船事業以外の製品物流セグメントで、第1四半期は増益でしたが、第2四半期以降は減益の計画ですし、下期同士の比較でも前回公表から下方修正されており、また対前年同期比でも減益幅が大きくなっているように見えます。これは自動車船事業によるものなのか、物流事業によるものなのか、解説をお願いします。
A-2-1:基本的にはコンテナ船事業以外の製品物流について、利益の大宗は自動車船事業になります。物流事業は比較的安定した収益なので、自動車船事業が、上期と下期を比べると、下期は若干低い数字を想定しています。
Q-2-2:前年比というところで、コンテナ船事業以外の製品物流セグメントが、第2四半期から減益になる想定になっていますが、この減益は自動車船事業の減益でよいでしょうか。下期同士で比較すると、コンテナ船事業以外の製品物流について下方修正されているので、もしこれが自動車船によるものだとすると背景は何でしょうか。
A-2-2:先行きを含めた自動車船事業の状況についてはしっかり落ちついて見ています。上期と下期で適用する為替レートが違うので、テクニカルタームになってしまいますが、上期末と下期のところでBS項目を含めた為替調整を入れているので、下期が低く見えていると思います。
通期で見たときに、決して期首段階から事業動向が悪くなっているとは考えていません。逆に紅海を通れないことによる喜望峰への迂回による船腹不足があったり、引き続き好調な北米のマーケットに対する輸送量が強く出ていたりするので、全体として業績が下落傾向にあるというよりは、通期で数字をつくる中で上期下期で差が出ているものと、お考えください。
第2四半期についても動向としては決して悪い見通しではなく、前年度の第2四半期も好調に推移したこともあり、前年同期比で差が見えているとご理解いただければと思います。
Q-3:下期の利益計画について、これは前回5月公表の下期の計画と比べるとコンテナ船事業は80億円上方修正されていると思いますが、ドライバルクセグメントで15億円下方修正、エネルギー資源で5億円下方修正、自動車船その他で50億円下方修正されていると思います。ここは何か意味のある下方修正なのか、ただの帳尻合わせなのか、その点を確認させてください。
A-3:上期と下期で見ている為替前提が大きく異なります。上期の平均が154円35銭、下期が140円なので、そこで15円ほど差があります。第1四半期と第2四半期の間や下期も含めて期末為替レートが異なることで、BS項目の毎四半期の期末評価によって収支に影響を与えているところがあります。上期と下期で見ても、確かに下期は若干低いように見えると思いますが、コンテナ船事業については若干不透明感があるものの、それ以外の事業については、市況前提や事業のファンダメンタルズが大きく変わることを想定していません。
【コンテナ船事業関連】
Q-1-1:コンテナ船市況の見通しについて、どのように考えているか教えてください。SCFIが足元下がっていますが、前倒し需要の影響で、今後コンテナ市況はなだらかに下がっていくのでしょうか。
A-1-1:コンテナ船市況の先行きに関しては、OCEAN NETWORK EXPRESS (ONE社)の資料でも記載がありますが、当社としても先行きの見通しは難しいと考えています。市況は需給関係のみならず、中東情勢や労使交渉も関係してきます。アメリカでは、今年9月末でILAという北米東岸の労働組合の契約期限が切れるため、現在その更改交渉が大詰めを迎えています。西岸でもカナダのILWUという組合の交渉が同様の状況です。一般的な需給バランスで言うと、通常秋口からなだらかに下がっていく傾向であり、今年もそのような前提を考えています。そこに外的要因がどのように影響するのか、コロナ禍でも起こったようにサプライチェーンの混乱が再度生じるのかどうかということは、予測が出来ないので確定的なことは言えません。しかし、いずれにしてもファンダメンタルズな需給はこれから落ち着いていくことが想像できますので、短期運賃は7月にピークアウトを迎えたとみられ、今後徐々に下がっていくと見ています。この傾向が今後続き、秋口に実際の積み高の減少とともにどの程度のレベルに落ちていくのかについては、現状ではONE社及び我々株主も、第4四半期くらいには当初期首に見込んでいたような運賃レベルや積み高の水準に戻るのではないかと予想しています。
Q-1-2:秋口からの下落は、季節性の観点から通常であれば下がるという一般論を含めた想定という理解でよいでしょうか。
A-1-2:ご理解の通りですが、今年はいくつか不確定要素があります。秋口にはアメリカ大統領選が控えており、年末商戦に向けた需要の先取りや船積みの前倒しも想定されます。供給面では中東情勢の不透明な影響がありますが、ONE社の前提としては秋口以降なだらかに落ち着いていくと見ています。
Q-1-3:不透明な外部環境の中で、ONE社はこれまで予想については株主3社に委ねていたというスタンスだったと考えています。その中で、今回このような状況下でしっかりと予想を出した背景には、どのような議論があったのでしょうか。
A-1-3:ONE社も事業を開始してから6年が経ち、ONE社なりにいろいろな経験を積み重ねてきました。予算や実績などの自己分析も随分重ねてきました。株主3社がというよりもONE社自身が発信できる、あるべき状況になってきたとご理解ください。
Q-2-1:ONE社の第1四半期の実績で、ONE社の決算資料3ページ目に、対前年同期比での運賃の増益効果が1億2,400万ドルと書かれています。これを売上と割算すると3%くらいしかないように見え、短期運賃市況や、同資料の4ページ目に掲載されている北米航路や欧州航路の往航運賃の伸びからすると、すごく低いように見えます。この背景を解説お願いします。北米と欧州の運賃はそれなりに上がっているが、アジアや他の航路で運賃が実は下がっているようなことがあるのでしょうか。足元までの短期運賃のトレンドと比べると、運賃上昇による増益効果があまりにも少ないというのが第一印象で、この点について教えてください。
A-2-1:売上高の増加に影響を及ぼしているのは、増益効果としては運賃以上に積高が増えたということです。実際の実需が増えたことが、端的な理由になっています。
Q-2-2:資料4ページ目の運賃指数を見ると、北米や欧州の運賃指数は前年同期比、北米往航は10%弱増えたり、欧州往航は4割くらい増えています。年間契約も含めてブレンドした運賃だと思うので、そのような伸びからするとすごく少ないように見えます。そもそもの理解が違っているのかもしれませんが、この点はどう理解したらよいですか。
A-2-2:いわゆる積高に占める長期運賃と短期運賃の割合は、これは通年を通してみると大体の傾向はありますが、その時々、期中でも変化し、そのような点も作用している一因だと考えています。
また、例えば2022年度サービスコントラクトの高い運賃が23年度の第1四半期に残っていることや、いわゆる進行基準で運賃を計上していく中で、5月から7月に向かってずっと短期運賃がピークに上がっていったような影響があるので、なかなかその動きがきれいに出てくるのが難しいという要素も恐らくあるのではないかと思います。
Q-3:ONE社の業績について、今回開示された今期の第1四半期(4-6月)と前期の第4四半期(1-3月)とを比べると、売上は増えていますが、費用は対直前四半期比で減っていると思います。これはなぜかを確認させてください。
A-3:運航費が下がっていますが、主な理由としては燃料費用の減少となります。
Q-4:コンテナ船事業の前提について、短期運賃が7月からピークアウトするという前提でONE社の計画はつくられているということですが、短期運賃も航路毎に全然状況が異なり、北米西岸向けは上がり過ぎたから反動で落ちている一方で、他航路はあまり変わっていない状況です。しかしながら、ONE社の運賃指数を見て、北米は1-3月と4-6月は、ほぼ変わっていません。短期運賃が調整すればONE社の業績にどの程度影響があるのでしょうか。前提として、一部の航路だけでなく全航路で全ての短期運賃が調整していくという前提でつくられているという認識でよいでしょうか。
A-4:航路ごとの詳ししいご説明は省略しますが、現状の7月にピークアウトした後の動向を見ると、確かに北米西岸向けが一番落ち幅は大きいです。それに比べて、同じ北米向けでも東岸は比較的まだ落ち幅が少ない状況です。欧州はまだそれほど落ちていない傾向があり、それぞれ航路毎に事情があると思います。北米東岸向けについては先ほどお話ししたような、組合の労使交渉関係がこれからどうなるか、まだわからないという不透明さもあります。欧州航路も中東情勢の不安定さが続く見込みということです。そのようなことはありながらも、これは船会社側から希望するところではないですが、やはり運賃が落ち始めると全体が落ちていくという傾向は、一般的にあります。よって、どの航路がどれだけ落ちるというような軽重というよりは、過去の傾向を踏まえて一定程度は落ちることを、全航路で押し並べて織り込んでいるとご理解いただければと思います。
【キャッシュアロケーション、株主還元】
Q-1:今回、還元についての変更はありませんでしたが、自己資本比率やキャッシュフローの状況等を踏まえながら機動的に考えていきたいという説明はありました。今回の第1四半期の決算で、直前に上方修正があった中でも還元に変更がなかった背景には、どのような議論があったのでしょうか。
A-1:前回5月の決算公表時、株主還元については5,000億円以上から7,000億円以上に、投資計画については6,300億円から7,400億円に上方修正をしました。この計画を公表するに至る社内の議論は半年程かけて行いました。その中では、どのような還元政策、どのような投資計画・投資案件があるのかについて内容を詰めた背景があります。それから3ヶ月が経過しました。確かに第1四半期において営業キャッシュフローは上ぶれする見立てであり、一部は自営事業に起因する部分もありますが、コンテナ船事業の好調さ、或いは為替動向など、期初の段階ではそこまで大きく振れるとは想定していなかったところもあります。その中で、新たな営業キャッシュフロー上ぶれの規模感を認識・確認したうえで、どのような施策を取っていくのがいいのか、社内で検討していく必要があると考えています。今回の決算公表のタイミングで、何らかの形で公表出来ればよかったかもしれませんが、しっかりと今の状況を改めて見つめ直して、何が最適なのかをもう少し時間をかけて議論していきたいと考えています。
Q-2-1:営業キャッシュフローの上ぶれについて、ONE社からの配当がなければ結局営業キャッシュフローは増えないことになると思います。この見込みがどれぐらいかが見えないから、単純に今回はキャッシュフローの見込みを変えていないという認識でよいでしょうか。
A-2-1:キャッシュフローの内訳という言い方も変ですが、まず自営事業の部分でも、営業キャッシュフローは上ぶれています。加えて、確かにONE社の利益が上がればその分配当が増えることは期待されますが、ここはまだどういう配当方針になるのかは確定しておりません。「ONE2030」で基本的な配当方針はお示ししていますが、2024年度の配当方針について、具体的に今回の収支の上ぶれに基づく配当がどうなるのかという点については、これから株主間で議論していく必要があるところです。よって、自営事業の上ぶれ部分があって、それに加えてONE社の株主間の協議でその上ぶれ分がさらにどの程度上積みされるのか、そのように考えています。ただ、一方で当社としては、しっかりと認識できる部分もあるので、その部分については、当社の資本政策をどうしていくのか、検討は社内で進めています。
Q-2-2:営業キャッシュフローが増えているのは、他の自営事業はそれほど計画を変えていないため、大半はコンテナ船事業で増えるということになるのではないでしょうか。
A-2-2:コンテナ船事業の部分を大きく期待してというよりは、自営事業でも相応に伸びていますので、自営事業で伸びている分など当社が既に把握している部分については、いろいろと考えていきます。