【当社の株主還元について】

Q-1:来年度以降の還元の考え方を確認させてください。中期経営計画期間の5年間で4,000~5,000億円という還元の枠を示されていますが、今期の追加還元も含めて、恐らく今年度で2,000億円強の還元予定になると思います。その前提では、残り4か年の還元総額が縮減し、今年度の一株当たり400円の配当予想の規模感を維持するのは難しいように見えますが、そのような理解で宜しいでしょうか。或いは、4,000~5,000億円の還元の枠自体もキャッシュ・フローによっては引き上げる可能性もあるので、現時点では還元が来期以降縮減するわけではないということなのでしょうか。

 

A-1:配当の将来的な考え方については、まだ確定的なことはお話しできませんが、そもそもの当社の中期経営計画におけるキャッシュイン・フローも、ある想定に基づいて計算しています。その上で現時点で見えている事業投資をするということで、キャッシュイン・フローや事業投資のいずれも完全に確定、固定されたものではありません。これは変化し得るもので、増やす一方だけではなく、可能性としては減らすこともあるという前提のもとで、当社の考え方としては、この4,000~5,000億円を還元したら終了ということにはならない性質のものだと思います。現時点で確定的なことは言えませんが、そのような柔軟性のある当社の株主還元方針であるとご理解いただければと思います。

 

 

Q-2:株主還元について来期に向けて、もう少し詳細にアップデートできるものがあれば教えてください。今期は総還元性向として30%くらいと見えるので、来期も30%という目線になってくるのか、あるいは他に絶対額でこれくらいというものがあるのでしょうか。

 

A-2:株主還元政策について、当社は配当性向など、定量的で固定的な基準はあえて示していません。事業環境が非常に大きく変わるので、それに合わせて柔軟に当社としての投資もでき、それから株主還元も十分にできるような形にしています。フォーミュラや、あるいは何%という形での数字は持っていません。

 

 

【業績、業績予想について】

Q-1:ドライバルク船事業について、同業他社比で第3四半期と第4四半期の損益が大きく悪化しているように見えますが、為替の影響や一過性の損失が出ているのか、少し影響が大きいように見えますので状況について教えてください。また、同じ質問をエネルギー資源事業についても教えてください。繁忙期であるはずの下期にほとんど利益が出ていないように見えます。市況も悪くないはずなので、何か要因があれば教えてください。

 

A-1:下方修正の主な要因としては、第3四半期において、急激な円高方向への為替変動による一部の外貨建て資産の一過性の為替差損によるものです。この為替差損は、当社の場合採算を持っている全事業部門が負担することになっており、このためドライバルクやエネルギー資源でも負担が出ています。資料の8ページに、第2四半期との公表比で経常利益がドライバルクで▲90億円、エネルギー資源で▲30億円となっていますが、このほとんどが為替差損による影響だとご理解ください。ドライバルクもエネルギー資源も航路運営において何か特別な損失が出たということではありません。

 

 

Q-2:エネルギー資源は下期で8億円の利益、第4四半期で7億円の経常利益ということですが、今期は為替による一過性の損失が出ているということですか。来期も今期と同じ為替水準だとすると、下期は同じくらいの利益になるということですか。

 

A-2:為替影響については、航路運営における取引で起きたものではなく、会社全体での外貨建て資産の評価損が確定したということで、エネルギー資源の事業自体で為替差損を出したということではありません。今後も為替が変動したらエネルギー資源の業績が変動するということではなく、一過性のものであり、第3四半期だけの事象とご理解いただきたいと思います。

 

 

Q-3-1:第3四半期3か月間の為替差損が270億円くらいに見えますが、どのような比率でドライバルク、エネルギー、製品物流などの事業に割り振られているのでしょうか。

 

A-3-1:資料の8ページをご覧ください。経常利益の前回公表比増減額はドライバルクが▲90億円、エネルギー資源が▲30億円、コンテナ船事業が▲430億円、コンテナ船事業以外の製品物流が+40億円になっています。コンテナ船事業は、ONE社自体の収支悪化と為替影響で430億円減少しています。製品物流セグメントのコンテナ船以外は、特に自動車を中心に、業績そのものはむしろ若干改善していますので、前回公表比との差異は為替差損の影響も含まれているものとご理解いただければと思います。

 

 

Q-3-2:前回公表比ドライバルクで90億、エネルギー資源で30億円下方修正したのは、ほとんど為替差損によるもので、残りは製品物流セグメントに計上されているということですか。コンテナ船事業を除いた製品物流セグメントの利益は、一過性の為替差損も含まれていて、実態上はより良いということですか。

 

A-3-2:ご理解の通りです。どの程度の為替差損が出たかという点については、確定している部分もありますが、一方で前回公表比での経常利益500億円の下方修正についても、期中における前回予想と今回の予想に基づいた仮定の部分もありますので、現段階で内訳については控えたいと思います。ただ、コンテナ船事業はもともと金額的に大きく為替差損の帰属割合も他のセグメント、事業よりも大きくなることはあるのではないかと思います。

 

 

【コンテナ船事業関連】

Q-1:ONE社の12月末のバランスシートについて、ネットキャッシュは幾らぐらいになっていますか。

 

A-1:外部には開示する対象になっていません。相当程度積み上がっていることは間違いありません。

 

 

Q-2:コンテナ船のスポット運賃の状況を見ていると、来期の長期契約の水準も一定程度下がり、川崎汽船の連結業績も大幅に減益になるリスクもあると思います。仮に大幅に減益になった場合、川崎汽船のバランスシート、そしてONE社のバランスシートも相当強くなっているので、それを利用して配当性向を大幅に上げて高い配当を維持することも考えられますか、それとも大幅な減配もあり得ると考えておくべきでしょうか。

 

A-2:まずONE社の来期の収支がどうなるかについて、まだ具体的な数字の予想を策定していないので、配当など具体的な話は出来ませんが、当社の還元方針はキャッシュ・フロー予想に基づいて、適正な投資、適正な内部留保を除いた、適正資本を超過する部分は株主に還元するという考え方です。従いまして、キャッシュインがもし大きく変わるようであれば、それに応じた形で株主還元は調整する必要が出てくると思います。ただ、現段階でONE社の来期収支がどうなるのかということは、ONE社の巡航速度の利益水準を見きわめた上でないと方針は決められません。

 

 

Q-3:コンテナ船事業における下方修正が大きいと感じるのですが、基本的に海外の資産はONEに移管していて、評価性の損は出ないと思っています。この理解は間違っていますか。

 

A-3:当社のコンテナ船事業は他の事業と異なり、ドル建てのONEの年間利益を円に転じて最終的な決算をしています。最終的には2023年3月末の円レート、当社は今回128円としていますが、これで評価をし直すという会計ルールがあります。既に実績として確定している部分は変えられないので、下期において128円で1年間換算した部分の為替の洗替調整が反映されるという形になります。この部分と合わせて、ONE社自体の収支悪化が下方修正の主な要因となります。

 

 

Q-4:ONE社について教えてください。現状のスポットレートで運航されていると、ONE社としては黒字を維持できているという理解でよいでしょうか。

 

A-4:はい、当社の試算では、現行のスポットレートであってもONE社は赤字にはならないと考えています。

 

 

Q-5:現在のスポットレートぐらいで欧州航路や北米航路の長期契約を更新できれば、長期契約自体も黒字になるという理解でよいですか。

 

A-5:そのような前提でも赤字にはならないと思います。長期契約は、一般的にはスポットレートよりは高い水準になります。なぜならば、スペースをお客様にコミットするからです。お客様としても、ピークシーズンに確実にスペースが確保できるという意味でのプレミアムがアドオンされます。そうでなければ、恐らく長期契約にはならないと思います。そういう意味では、スポットレートと長期契約が同じ水準になるという想定はしていません。

 

 

Q-6:コンテナ船事業について、来年需給ギャップがさらに悪化するというお話だったので、今のスポット運賃水準より、更に下がっても不思議ではないと思いますが、如何でしょうか。

 

A-6:コンテナ船の需給については、2023年度は色々な見方がありますが、例えば巷間で言われているのは、船の供給の伸び率が2023年度では7%程度、24年度で14%程度。新造船が竣工してくると言われています。もともと当社としては、ONE社の23年度以降の収支について、コロナ禍やサプライチェーンの混乱が収束した場合、過去2年間の水準は維持できないと考えていました。例えば年間2,000億円プラスアルファ程度のレベルで推移をするのではないかと推測をしていました。恐らく今の運賃レベル、これまた春先以降回復するとは思いますが、そうなれば当社の考える巡航速度での利益水準を、ONE社のみならず各コンテナ船社が上げられるのではないかと考えています。現時点でこのような予想を想定していますが、今後需給環境が悪くなっていくことで大きく変わり、各社赤字になるような事態は、可能性はゼロではありませんが、現時点では想定し難いと考えています。当社が認識している需給ギャップの範囲内であれば、運賃が急落したりコンテナ船市況が底を抜けたり、ということは現実的ではないと思っています。

 

 

Q-7:今のスポット運賃の水準では赤字にならないというのは、運航ベースでと考えてよいでしょうか。それとも販管費までを含めて全体の利益として赤字にならないという意味ですか。

 

A-7:後者の意味です。

 

 

Q-8:コンテナ船について、今のスポット運賃でも黒字を出せるということですが、現状のスポットレートはFEU当たり2,000ドル程度と理解しています。第3四半期のONEのOPEXを、ボリュームで割ったら2,600ドルぐらいになると思います。もちろん変動費、ハンドリングコストやバンカーも下がっている中、色々なコスト削減努力もされていると思いますが、具体的にどれぐらいのコスト削減が来期に向けて行われているのでしょうか。

 

A-8:運賃が、TEU当たり何ドルがブレイクイーブンポイントかというのは申し上げられません。個別のフォーミュラの検討はできていませんが、コンテナにかかるコスト、貨物費やリース料などは運賃に付加されますが、本船のコスト、燃料費や船費そのもの、港費などは、船が大きければ大きいほど1つのコンテナに掛かる金額が少なくなります。そういう意味では、大型化を進めることによってコンテナ1個当たりのコスト競争力が上がり、ある一定の運賃でも利益が大きくなると思います。こういう形での競争がコンテナ船事業の歴史では繰り返されてきまして、そろそろ大きさとしては2万3,000とか2万4,000という上限に達しつつあると思いますが、この合理性の追求を、過度な船隊規模の拡大という問題に抵触する前の段階でできれば、低運賃に対する対抗策になると考えています。

 

 

【自動車船事業について】

Q-1:自動車船事業の利益について、基本的に製品物流セグメントからコンテナ船事業を除いたものだと理解しています。近海汽船とか物流とかいろいろ事業も含まれていますが、通期計画だと、6,360億円から5,700億円を引いた660億円が自動車船事業の利益に近いものと理解しています。この自動車船事業の今期の利益は恐らく過去最高益だと思いますが、現状の需給を鑑みればまだアップサイドがあるのでしょうか。先ほどの説明では契約更改のたびに収益が改善するようなお話がありましたが、まだ来期に向けて改善の可能性があるのか、それなりの契約条件に近づいてきているのか。自動車船というのはなかなかスポットの運賃指標もなく、外部から今どんな水準にあるのかがわからないという背景からの質問です。

 

A-1:コンテナ船以外の製品物流セグメントの中では、物流事業や近海内航も相当収益に貢献していますので、ほとんど全てが自動車船というわけではありませんが、確かに一番ポーションが大きく、当社の歴史の中で最高益を上げていることは事実です。

この先について、運賃契約の更改は、大体タームが2年や3年なので、現在の高い水準で更改すると、3年くらいのタームで現在のレートを享受できることになります。マーケットでは傭船出来る船はほとんど無く、船隊を増やして収益を上げようとしても傭船することは難しく、傭船出来たとしても非常に高い価格になって、中期的に見たときには得策かどうかわからないということがあります。そうなると必然的に当社のみならず、自動車船事業会社は新造船で収益規模の拡大を図るしかなくなります。それらの新造船が当社の場合2023年、2024年以降8隻程度のLNG焚きの新造船が竣工してくるので、それが竣工するまでは急速に収益が伸びることにはならないと思いますが、少なくとも現状の収益規模の維持は、可能だと思っています。

 

 

Q-2-1:自動車船の長期契約の話について、2年とか3年ぐらいのタームであれば、スポットとしての市況のレベル感から、まだ続いている契約が残っていると思います。例えば来期、4月ぐらいに一部契約が更改されるものもあるかと思いますが、今の市況感のレベルとのギャップで来期、再来期も更なる運賃の上昇を期待できるものなのか、教えてください。

 

A-2-1:スポット市況と契約貨物の運賃レベルの差がどういう感じかというご質問と理解しましたが、ここ1~2年、お客様のご理解も頂戴しながら運賃の修復に努めています。その意味では、スポットと契約運賃の差は以前に比べると縮小してきていることは事実です。

 

 

Q-2-2:以前は何割ぐらいで、今は何割ぐらいとかはありますか。理論上は、ある程度全部更新されると、スポットと契約運賃の差がゼロに近づいていくというイメージでよいですか。

 

A-2-2:具体的な数字は、控えさせていただきますが、いわゆる乗用車、あとはハイ&ヘビー、大型車両など、自動車船はさまざまな積み荷があり、それぞれ運賃レベルとしては品目によって差があるという事実はあります。なかなか一括りにこのぐらいの運賃レベルと言いづらい状況です。