【当社の株主還元について】
Q-1:株主還元について、今回株式分割前基準で1株当たり300円の増額修正の予想で、280億円程度原資として出ていくことになるかと思います。自社株買いをされる予想をしていたので、今回配当予想の増額という決断をされたのは、どのような背景なのか教えてください。また、自社株買いの検討状況についても教えてください。
A-1:追加還元策については、検討中であるというステータスは変わっていません。キャッシュインを中心とした業績動向と、当社としての投資計画の状況を見ながら決めていくというスタンスで、現時点では決まっていません。
また、配当か自社株買いかということよりも、現時点でキャッシュインフローが確定的に増えるという見通しもあり、バランスの取れた株主還元ということを念頭に置きながら、このタイミングでの増配予想を決めたというのが現状です。
Q-2:追加的な株主還元1,000億円以上については現状未定ということですが、外部からは、ある程度キャッシュインや、設備投資についても大分目途が立ってきているのではないか、と見えます。何か他に株価とか業績とかいろいろ検討するべきものがあるのでしょうか。或いはまだ第1四半期で市況見通しも不透明であり、いったん様子見という意味合いが強いのでしょうか。もう少し詳しく教えてください。
A-2:後者の方、いったん様子見というのにニュアンスとしては近いと思います。キャッシュインを中心とした業績動向と投資以外にも、いろいろな要素を考える必要があり、中期経営計画を打ち出して最初の3カ月で何かを決め切るというのも、やや性急と思っています。事業環境が不透明なところも多いので、もう少し見極めながら決めていきたいと思います。
Q-3:単体利益剰余金について、前期末で大体1,900億円くらいあるのではないかと思いますが、この水準は今期それなりの規模の株主還元策を実施するのに十分なのかどうか、教えてください。
A-3:単体利益剰余金は、現在発表している株主還元策を補うに十分な水準と考えています。常に株主還元の原資の水準などは担保しながら、株主還元政策を発表していくというスタンスに変わりはありません。
Q-4:株主還元について、今回の追加配当1株当たり300円はあくまで今期だけの措置ということなのでしょうか。あるいは来期以降も、基礎配当の部分に追加して1株当たり600円を基礎配当として継続するということなのでしょうか。
A-4:当社は配当性向の設定や、配当金額を予め幾らと決めるという形での株主還元を現状では考えていません。期中のキャッシュインフローと、投資のために必要なキャッシュポジション、財務状況も踏まえた上で株主還元を機動的に考えていくということですので、今回発表しました配当予想がこれからも継続されていくということではありません。
Q-5:今回の1株当たり配当300円の増額に関しては、営業キャッシュフローが1,000億円ぐらい増えそうだという部分の3分の1を還元に充てるという考えでよいのでしょうか。
A-5:キャッシュインフローの何%を還元するというような定式は決めていません。そういう意味では、キャッシュインフローとその投資メニューに加え、さまざまなものを考えながら、企業価値が最大化されると評価されるような株主還元を実施していこうと思っており、1,000億円のキャッシュインがあったから、その3分の1を株主還元に充てる、ということではありません。
Q-6:追加還元について、今後のアナウンスメントをどのように考えればよいでしょうか。川崎汽船としては、企業価値や株主価値の最大化を打ち出していて、株価に反映されないような短い期間で実施してしまうと、勿体ないと思います。アナウンスメントの仕方自体で価値に与えるインパクトもかなり変わってしまうので、川崎汽船が追加還元策のアナウンスメントについて、どのように考えているのか教えてください。例えば上期と下期でどうアナウンスしていくのか、期中で出すべきなのかどうかなど、きちんと想定して議論しているのか、見解を聞かせてください。
A-6:アナウンスメントの仕方などは社外の知見も入れながら検討しているところです。ご指摘のとおりで、アナウンスメントの仕方によって、本来の株主還元が会社にもたらすであろう企業価値の向上、端的に言うと株価の上昇に違いが出る、ということは明々白々なので、極力その還元の実が取れるような形でのタイミング、やり方、規模などを、じっくりと検討した上で、適切にアナウンスしていきたいと思っています。
Q-7:決算が発表されてから、株価も少し下がっていたので、川崎汽船が意図したものが伝わっているのか、ミスコミュニケーションのようになっている可能性があるならば、補足されたほうがよいのではないでしょうか。
A-7:決算発表、あるいは株主還元発表直後に株価がそのような動きをすることはありますが、これまでの経験からも、その後の市場へのアナウンスメントやアナリストの方々へのご説明などで、きちんと全体像を正確に伝えるということが不可欠だと思っていますので、今回もぜひ励行しようと思います。
Q-8:今回増配されたのは、営業キャッシュフロー1,000億円が計画より上回ったことを考慮して、追加還元されたということでよいでしょうか。今後、もし業績が上振れ、利益、キャッシュフローが想定より増えるようであれば、新たに追加配当を検討していくのかどうか。1,000億円以上の追加還元が維持されたということもあり、ここに関しては別枠だと思っていてよいのか、確認させてください。
A-8:当社の株主還元の考え方について、中期経営計画でも公表しました通り、キャッシュインフローを原資として単体の利益剰余金の範囲内で実施するものです。その前提となるキャッシュアウトについて、まずは設備投資に必要な資金を最優先で確保して、その次に、財務の健全性・安全性を維持するに足るだけの内部留保を確保することです。これは、端的に言うと格付けでA格以上を常に維持できるような財務の安定性を担保したいと考えています。以上によって、適正な自己資本を確保した上で、余剰分を株主還元する、という考え方です。そういう意味では、今後追加で営業キャッシュフローが増えたら、その分だけ機械的に株主還元が増えるということにはならず、先に述べたような考え方によって、株主還元の額を変えていくことになります。
また、追加還元1,000億円以上とは別枠かという点については、今回の株主還元策については別枠としましたが、今後も同じような形にしていくかどうかという点についても、機動的に決定していきたいと思っています。
【コンテナ船事業関連】
Q-1:コンテナ船事業について、今回ONE社の親会社各社は上方修正しており、業績が好調だというのは理解しているのですが、川崎汽船としては、この好調さが夏頃から落ち始める想定を、今回3か月ずらしたということでしょうか。また、これまでの想定よりも、運賃下落の局面では、年度末にかけてよりシャープに下落していく前提を入れているということでよいでしょうか。
A-1:コンテナ船事業の業績予想については、ご指摘のとおりで、従前までは8月ぐらいからサプライチェーンの正常化に伴う運賃の下落が始まるという前提でしたが、現下の状況を見ると、8月にそれが起きていないということで、10月ぐらいから運賃が徐々に下落を始める前提としました。ただし、第4四半期末にかけて運賃レベルがコロナ禍前の水準、即ち2019年の水準に戻るという前提は変えていないので、そういう意味では、運賃の落ち方は前回想定よりはシャープになっていると、ご理解いただければと思います。
Q-2:コンテナ船事業について10月から運賃レベルが下がるという前提になっていると思いますが、一番のピークから見れば運賃市況は下がっていて、特に北米西岸向けはかなり下がっていて、直近で言うと7,000ドル/FEUを下回っているような状況になっています。
この運賃レベルでは、おそらく今年前半に契約した長期運賃の水準を下回っているのかなというイメージを持っていますが、契約に与える影響についてどのように考えればいいのか教えてください。
また、欧州についても、おそらく北米よりフレキシブルな長期契約になっていると思いますが、足元の市況が長期契約に与える影響について何かありましたら教えてください。
A-2:コンテナ船の運賃動向について、ご指摘があったように既に短期運賃は調整局面に入っており、下落傾向にあります。大きく下落しているかというと、少なくともONE社の享受している運賃レベルはぐずついている程度で、期首の想定値よりも若干高めに推移している状況です。従って、今後10月以降、もう一段と調整局面に入る可能性があり、今回の業績見通しにはそれを織り込んでいます。
長期運賃への影響については、北米向けよりも欧州向けのほうが短期運賃に長期運賃が引っ張られる傾向があります。また、北米向けにおいても若干なりとも影響はあるかもしれないと考えています。短期運賃に長期運賃が引っ張られる形で下方に動く可能性についても、今回の業績見通しには一定程度織り込んでいます。
Q-3-1:コンテナ船のアップデートで、西海岸の労使交渉、港湾についてはお話しいただきましたが、それ以外にも、鉄道のほうで急にストライキのリスクが出てきたり、トラックドライバーたちの抗議活動がカリフォルニアであったり、サプライサイドのリスクが従来よりもかなり増えているような気がしています。また足元で鉄道が西海岸では混雑しているという情報もありますが、川崎汽船としての見解について教えください。加えて、ヨーロッパの港湾ストライキなどで、逆にサプライサイドのほうで混雑になっていないのかという点も確認させてください。
A-3-1:ご指摘の通り、例えば北米西岸では、船の滞船は確実に減っていて、年初に100隻程度だったのが、今は20隻程度です。一方、内陸に入ると、ボトルネックとなっているのがトラッカー不足による内陸輸送の部分や、鉄道サービスの不安定さ等々があり、港湾サイドは状況改善していますが、内陸に入ると悪化している状況です。従いまして、確実に改善の方向には向かっていると思いますが、まだ時間がかかる状況だと思います。
欧州についても同様で、例えば現在の不景気を反映してトラックドライバーがストを起こす、あるいは港湾労働者がストを起こすという状況で、ハンブルグに至っては、場合によっては20日程度の滞船も出ています。
そういった意味では、全体像としては改善に向かっていると思いますが、局地的にまだまだ改善余地があり、道半ばというイメージです。
Q-3-2:鉄道のほうで仮にストライキなどが発生すると、コンテナ船社としてはかなり影響があるのでしょうか。
A-3-2:ターミナルからコンテナを搬出できない状況になるので、ターミナルそのものが満杯になります。そうすると、船が着岸しても荷物が下ろせないことになり、程度問題ではありますが影響は出ます。また、コンテナの回転率が落ちるという意味では、コンテナ不足等が生じる可能性があり、実際生じています。
Q-3-3:現状の内陸への鉄道輸送が混雑しているところで、コンテナが滞留しているようなことは起こっていないのでしょうか。
A-3-3:西岸ターミナルにおいては、ヤードは満杯で、コンテナの不足が起きているというよりは、かなり回転率が落ちています。空コンテナをカーゴソースのアジアへ効率的に持ってくる努力はONE社としては継続していますし、カーゴソースのほうで極端にコンテナ不足が出ているという状況にはまだ至っていません。
【自動車船事業関連】
Q-1:自動車船事業について、現状のタイトな供給状況をもって、今期中あるいは来期に向けて、完成車メーカーに対してより一層の運賃の値上げが実現できるのかどうか、感触について教えてください。今期、確かに上方修正されていることは理解しているのですが、かつてに比べればまだ利益水準が少し低いので、今後の収益性について考え方を教えてください。
A-1:値上げではなくて荷主さんとの合意ということになりますが、ご指摘のとおり、足元需給が非常にタイトであります。これは、追加の傭船等、キャパシティーを増やそうとした場合のコストが従前に比べて非常に上がっているということでもありますので、その意味では、その分についてお客さまにも適正にご負担をいただく必要があると思っています。
一方、世界経済の先行き等も見ながら、お客さまとの関係も含めて、自動車船事業は長期でお付き合いをしておりますので、よく考えながら、ということになります。
Q-2:自動車船について、改めて昨年下期ぐらいから、かなり利益水準が上がってきており、採算性が取れてきていると思います。輸送台数自体がコロナ前に比べてかなり強いというわけではないと思うので、どういう背景で利益改善しているのか教えてください。
あわせて、足元サプライチェーンの混乱などもあって、一時的に良い状況という部分もあると思うので、今後の採算の持続性についても感触を教えてください。
A-2:ご指摘にもありましたような運賃修復、これは過去1年~3年の決算説明の際に何度かお話をしているとおり、数年前に下がった運賃水準については、適正な水準まで戻すということで、これまで継続してお客さまともお話をさせていただきながら進めてきました。その成果が、ここに来てきちんと出てきています。
また、収益性の高いハイ・アンド・ヘビー、背高の車両についても従前より営業に注力をして、貨物の中に占めるポーションを高めていくことを目標として掲げてきていますが、こちらも着実に成果が上がってきています。これら2点がかなり大きな要因として、利益水準の向上につながっていると考えています。
今後、現状の採算レベルが続くのかというご質問については、足元の需給についてはかなりタイトな状況が続いていますが、グローバル経済、アメリカ、ヨーロッパ、それに中国もここのところ少し雲行きが怪しいところもありますので、当社としては、年明けから来年度頭にかけてどのように環境が変化していくのか、まずは注意をしていくべきと考えています。
【LNG船事業関連】
Q-1:LNG船でかなりプロジェクトの引き合いがきているというお話がありましたが、これらの地域や内容について(例えば今まであった長期契約が切れて、また新しく出てきたものなのか、それとも北米から欧州に持っていくような案件が増えているとか、カタールからの案件とか、もしくは日本が従来とは別の地域から調達する案件なのか、など)教えて頂けますか。
A-1:今取り組んでいるものは、ご指摘のとおり長期案件の切り替えのものや、新規で取り組んでいるものが混ざっている状況です。内容はまだお話しできる段階ではないものもありますが、一般的に言われておりますカタールの拡充案件やモザンビークの案件、それからマレーシアのペトロナスの案件等々新たに取り組んでいるものがあります。また、北米のシェールガスの案件については拡充していくという状況ではありますが、まだ具体的な案件に取り組んでいる状況ではなく、そこに船社である当社が入っていくというのは時期としてはまだ早いと考えています。
【投資計画関連】
Q-1-1:今回、為替変動で収益が上振れていると思いますが、逆に、設備投資などで為替変動によりマイナス影響を受けるということはあるのでしょうか。今後の投資キャッシュフローの部分で、為替変動で悪影響あるいは好影響を受けるようなことがあれば教えてください。
A-1-1:円安が当社の設備投資に不利に働くことがあるか、あるいは変化があるかということですが、例えばドル建ての本船を購入するに当たって、金利の安い円で資金を調達しようとした場合、円安だとその借り入れするロット、円金額が増えますので、そういう意味では当初の想定よりは投資金額が増えるというマイナスのインパクトはあろうかと思います。
それと、ドル高円安が進むという背景の一つには、ドル金利が高騰して円金利が下がっているということがありますので、そういう意味では、仮にドル建てで調達をしようとした場合に、当初の想定よりはドル金利が上がっているということがドル高円安下の状況では可能性が高いので、そういう意味でも、投資のための費用負担が増えるということは可能性としてはあると思います。
Q-1-2:例えば現状の為替前提だと中期経営計画の設備投資計画がどれぐらいに膨れ上がるか、定量的に測るのは難しいのでしょうか。
A-1-2:中期経営計画の5,200億円の投資計画は全て確定したものではないので、今後投資対象の金額そのものが変わるようなこともありえます。現時点で精緻に為替前提の違いでどれくらい差が出るかということの試算まではしていないというのが現状です。