【通期業績予想】

Q-1:下期の見方について、経常利益が若干の減益の計画となっていますが、コンテナ船事業の上期と下期の業績予想の差ということで下期にサプライチェーンの正常化を想定している為と思うのですが、ONE社として業績予想を開示していない中で四半期ごとにどのような運賃前提で想定されているのかを教えてください。

 

A-1:ONE社収支の見方、特に下期をどう見るかということが一つのポイントと思います。当社としては現在のサプライチェーンの混乱については今のところ改善の兆しが見えていませんが、やはり徐々に改善して、調整局面に向かうと見ています。劇的に需要が落ち込み、サプライチェーンの混乱が解消するということではありませんが、下期、特に今年の後半、年末には徐々に改善に向かっていくと見ています。その兼ね合いで運賃推移については、第2四半期は、第1四半期とほぼ同レベルか、あるいは足元では更に上昇しているのが現状だと思いますが、第3四半期から運賃は徐々に下落してもおかしくないと見ています。これは需要が徐々に調整局面に入っていく、サプライチェーンの混乱が改善していくという見立てをベースにしています。

 

 

Q-2:第1四半期の自動車船事業とドライバルクセグメントについて、利益の改善傾向を見ると、自動車船はまだ赤字、ドライバルクも第1四半期の利益額としてはかなり小さい印象を持っていますが、ドライバルクは第2四半期の利益がかなり増える想定となっていますので、どのような前提の下、計画を作られているのかを教えてください。

 

A-2:ドライバルクについては、第1四半期は、5月の公表段階で、相当エクスポージャーが絞り込まれた状況でしたが、実際には荷動きが活発化して各地で滞船が起きたり、あるいは顧客の荷物を運ぶペースが早くなり、予定よりも早く契約を履行しなければならない状況が発生して、高い市況で傭船したことがありました。また、コロナ禍の影響で船が止まる状況も実際に起きています。加えてFFA(海上運賃先物)により、第2四半期以降はヘッジを行っていますが、市況が上がったためにこの評価損が、第1四半期で出ている部分もあります。結果的に第1四半期の利益額は小さくなりましたが、第2四半期以降はしっかりと力強く、この好市況を享受していく計画です。

 自動車船については、第1四半期はご理解のとおり若干の赤字に止まりました。最大の原因は、これは自動車船特有の事情ですが、運賃体系、とりわけバンカーサーチャージ(BAF)の取り扱いに起因するものです。具体的には、燃料油価格の変動に連動するバンカーサーチャージが、契約にもよりますが、数カ月の期ズレをもって反映されるためです。第1四半期は前提に比べてかなり燃料費が上昇しており、それをカバーするバンカーサーチャージが実際に効いてくるのが数カ月後となるので、この影響が想定よりも大きかったためです。

 

 

Q-3:構造改革として、まだ対象となるメニューとして何が残っているのでしょうか。また、今期で対処できるものであれば、構造改革として実施していく可能性もあるのでしょうか。教えてください。

 

A-3:いまだ不経済船や不採算の事業もありますので、収益改善のための検討課題として、これまで同様に捉えようと考えており、今期も既に収支計画の中で予定をしていますが、足元で対応できる構造改革はある程度実施しようと思っています。ちょうど今は中古船価格も上昇しており、従前考えていたよりも少ないダメージで大きな効果を上げられるような構造改革も可能な環境にあるので、ここは機を見て臨機応変に取り組みたいと考えており、収支予想上も織り込んでいる状況とご理解ください。主には、中古船としての売却や処分の形を取りますが、場合によっては、事業そのものを処分することも選択肢としてはあり得るかと思います。

 

 

【企業価値向上に向けた取組み】

Q-1:決算説明会資料10頁で説明のあった、成長戦略を盛り込んだ新たな経営計画について、例えば、今後の成長分野としてどのような分野を考えているのか、またその際にM&Aなども検討する余地が有るのかどうか、現時点でお話しできることを教えてください。

 

A-1:まずこの背景から説明しますと、業績の大幅な改善により、前回5月に公表した経営計画で2030年度までに4,000億円以上の自己資本を確保するとした目標を、最重要の経営課題として打ち出したわけですが、今期末には達成できる見込みが立ったのがまずあります。もう一つは、海運業界のみならず当社顧客である荷主の皆様の業界動向、例えば、製鉄・火力発電・自動車などの業界が、これからどう脱炭素への対応を進めて、どういった商流に変わっていくのかが、少なくとも昨年のコロナ禍の段階では見極めづらい状況でした。それが特に「環境」という軸を中心にして顧客の進む方向が若干見え始めたという2つのベーシックな変化があります。昨年の段階ではそういった見極めをするまでの間は、敢えて当社としての成長戦略を打ち出さないという考えもあったのですが、まず財務目標の達成が見えており、加えて顧客の環境志向に対する動きが明確化してきたこともあり、手を拱くことなく、なるべく早く新しい成長戦略ならびに資本政策を含んだ経営計画を作る必要があるというのが現在の認識です。具体的な議論はこれからですが、謙虚に当社の価値観について、自分たちで気付いていない部分もあるかもしれませんし、例えば顧客が知っている、あるいは従業員が知っていることもあるかもしれませんが、その掘り下げから始めて、当社としてのコアコンピタンスとなるもの、これも自分たちで気付いていない強みがあるかもしれませんが、その拾い上げ、磨き上げから始めて、事業ポートフォリオをどうしていくかという議論に展開していこうと考えています。従って、現時点で具体的な説明ができる状況ではありませんが、今申し上げたような、概念まで掘り下げて考えていくことで新しい経営計画を作っていこうと考えています。

 

 

Q-2:財務戦略について、連結の自己資本は大きく改善していますが、単体については厳しい状況は変わっていないと思いますが、この点についてどういう評価をされているのでしょうか。決算説明会資料11頁に、他のコンテナ船会社とONE社を比較して時価総額にまで言及をされていますが、保有するONE社の株式を他の親会社2社に売却して、財務体質の改善を図るのも選択肢にあるのかどうかも含めて、単体の財務改善をどう考えているのか確認させてください。

 

A-2:ご理解の通り、コンテナ船事業をスピンオフした後の当社の財務、会計については、ONE社からの収益は、連結財務諸表のPLに反映されますが、単体のPLには直接的には反映されない構造になっています。従って、その単体の利益や自己資本を拡充するためには、単体の自営事業の収益を上げるか、あるいは連結PLには反映されませんが、子会社や関係会社からの配当金を単体で受け取るという、大きく2つの方法があります。現在、ONE社の収支改善という状況がありますが、ご説明したようにONE社で親会社への配当も含めた事業計画や資金計画を策定している最中ですので、その去就如何によってONE社から親会社への配当が決まり、それに従って当社単体での自己資本政策も決まるものと認識しています。そのONE社株式をどうするのかは、現時点で何か決まっているわけではありませんが、当社の持分法適用会社として、当社のバランスシートに計上されているので、将来的に色々な選択肢、あるいは検討課題として、ONE社の上場や、保有する株式をどうしていくかもシミュレーションの対象にはなっているとご認識ください。

 

 

Q-3:コンテナ船傭船に係る逆鞘がまだ残っていると思いますが、今期、来期以降についてどのように考えておられるのでしょうか。新しい成長戦略を考える前に、まだ処理するべきものもあると思いますし、またそれが財務にも影響すると思いますので、新しい経営計画の中でどう位置付けていくのか。また、経営計画ではなく、長期ビジョンのようなものを作り直すということなのでしょうか、確認させてください。

 

A-3:新しい経営計画については、従来の計画とは若干異なる期間とスタンスで、5年後、10年後に当社がどうあるべきかを念頭に纏めていきたいと思っています。従って、足元の色々な問題を個別にどう対応していくかまでは、今のところは考えていません。いずれ経営計画の中ではそうした対応も行っていくものと思いますが、まずはこれまでなかなかお示しできていなかった、5年先に当社はこうして成長しています、10年先にはこうなっていますという絵姿を、当社の全階層・全員が当事者として検討していきたいというのが、現時点での当社の一番強い意志であり、従って、各論の問題については、現時点では申し上げられないような状況にあるとご理解ください。また、単年度の経営計画を作るというわけではなく、長期的な当社としてのポートフォリオ戦略の見直しを検討しようと思っています。

 

 

Q-4:新しい経営計画について、いつ頃公表できそうか目途がありましたら、教えてください。

 

A-4:現時点で、いつ公表すると正式に申し上げる段階ではありませんが、努力目標としては来期に向けて策定を進めていきたいと思っています。

 

 

【その他】

Q-1:決算説明会資料11頁について、海外同業他社とONE社との比較はシンプルに可能なのでしょうか。邦船3社のONE社に対する船舶の貸出料は相対的に安く、ONE社にて利益が出やすいのではないかと思いますが、如何でしょうか。

 

A-1:こちらは参考指標として、同業のコンテナ船社の評価をお示ししたものであり、ご指摘の通り、正確に比較するためには、より精緻なDD(Due Diligence、デューデリジェンス)のようなことをしない限りは難しいと思いますが、何らかの推測する一つの材料にはなるものと思います。例えば、傭船に係る親会社の負担する逆鞘部分が、ONE社の企業価値に反映されていないとすれば、このグラフからその部分を差し引いて考えるというような材料としてお使いいただければと思います。