【2024年度本決算説明会資料】

A. 2024年度決算概要

A-1. 2024年度通期業績

  2024年度の通期の業績は、売上高が1兆479億円、営業損益が+1,028億円、経常損益が+3,080億円、当期純損益が+3,053億円となりました。売上高から当期純損益まで前年同期比増加となります。為替レート実績は152円73銭、平均バンカー価格は610ドルとなります。なお、2024年度第1四半期から在外子会社等の収益及び費用の円貨換算を決算日の直物為替相場から期中平均為替相場によるものとし、今回の前年表記は同手法を遡及適用後となります。セグメント別の状況は、前年同期と比較して、大きくはドライバルク事業、自動車船事業などの自営事業が堅調な輸送需要に支えられたことにより、営業利益が増加しました。また、コンテナ船事業での短期運賃の上昇によりOCEAN NETWORK EXPRESS(ONE社)の業績が好調であったことから、持分法適用収益が大幅に増加し、経常利益が増加、最終的に当期純損益も増加しました。

  期末の自己資本は1兆6,484億円、有利子負債は3,448億円、DERは21%、自己資本比率は75%となりました。傭船料などのオフバラ資産・負債約6,000~7,000億円を加味した連結自己資本比率は57~59%となります。また、2024年度の株主還元は、期末配当を2025年2月公表時予想どおり1株当たり50円とし、中間配当50円と合わせて通期では1株当たり100円となります。

 

 

 A-2. セグメント別通期業績

  セグメント別の通期業績は、ドライバルクセグメントでは、年度を通じて大型船の市況は堅調な輸送需要に支えられて順調に推移しました。中小型船市況は、上期は堅調に推移しました。結果として、通期では前期比改善しました。セグメント全体では、前年度発生の一過性要因の剥落もあり、前期比で増収増益となりました。

  エネルギー資源セグメントでは、LNG船、電力炭船、VLCCおよびLPG船は引き続き中長期契約のもと順調に稼動し、安定収益を積み上げたものの、一過性要因により前期比で減収減益となりました。

  製品物流セグメントでは、全体で増収増益となりました。自動車船事業は、世界の自動車販売市場は半導体・自動車部品の供給不足が概ね解消され、回復基調が継続しました。また、運賃修復および運航効率改善の取り組みを継続し、高水準の利益を確保しました。コンテナ船事業は、新造船の供給は増加しましたが、貨物輸送需要は堅調に推移しました。また、紅海情勢からスエズ運河を回避した運航が継続したため、船腹供給が約10%圧縮され、全体の需給が締まり、市況は堅調に推移しました。今年の旧正月以降、荷動きの鈍化や船腹供給の増加から短期運賃市況は下がる傾向にありますが、年度を通して市況は前期比大幅に改善しました。

 

 

B. 2025年度通期業績予想と取組み

B-1. 2025年度通期業績予想及び変動要素

  2025年度の通期の業績予想および変動要素は、足元の事業環境を踏まえて、米国政権の通商政策など不透明な状況が続いているため、今年度の影響度合い、またその影響が続く期間について予想することが難しいところではありますが、当社としての見通しをご説明します。

  まず、予想前提のポイントをご説明します。2025年度は、自営事業、コンテナ船事業共に通年でスエズ運河を通峡せず、喜望峰経由の運航という前提にしています。また、関税導入による荷動き、市況への影響は、コンテナ船、自動車船を中心に当社の想定を織り込んでいます。また、その想定の影響は、年度末まで継続する前提での数字としています。USTRの入港税の影響は自動車船が中心となりますが、現時点では織り込んでいません。為替レートは通期で140円79銭、燃料油価格は574ドルです。各船種の市況の前提は、Appendixをご参照ください。

  これらを前提とした2025年度の通期の業績予想は、売上高9,500億円、営業損益は+800億円、経常損益は+1,050億円、当期純損益を+1,000億円としています。なお、当期純損益の上期と下期のアンバランスは資産売却など特別利益の計上の時期の違いによるものです。為替レートの変動影響は1円当たりプラスマイナス16億円、燃料油価格変動は10ドル当たりプラスマイナス0.3億円です。

  2025年度の年間配当予定は、1株当たり基礎配当40円に追加配当80円を加え、1株当たり120円の配当とします。前回2月公表から1株当たり20円の増配になります。

 

B-2. 2025年度収支比較(前期比、関税影響)

  ここでは、2024年度業績実績と、2025年度の業績予想について、経常損益の比較を表しています。左側に2024年度実績、中央に米国関税影響をほぼ考慮する前の2025年度業績予想、右側に当社が関税影響を考慮した後の2025年度業績予想を示しています。

  2024年度実績から米国関税影響を考慮する前の2025年度業績予想までの変化は、自営事業は約12円の円高の影響で経常収支が232億円減少していますが、その他の要素は30億円改善しています。コンテナ船事業は、長期運賃は前年比少し上昇となりますが、引き続き新造船の竣工増加もあり、短期運賃の下落などから1,470億円の悪化を想定しています。

  米国関税影響を考慮する前の2025年度業績予想から当社が関税影響を考慮したあとの2025年度業績予想への変化は、自営事業は主に自動車船事業で、関税影響による荷量減少、運賃市況の影響を見込み、135億円の収支悪化です。結果として、関税影響を考慮後の2025年度業績予想の自営事業経常利益は+680億円で、2024年度実績の+1,017億円から337億円減少しています。

  コンテナ船事業は、関税影響で米国航路を中心に荷量の減少、運賃下落を見込み、当社持分では-165億円の影響となります。結果として、関税影響を考慮後の2025年度業績予想の経常利益は+370億円で、2024年度実績+2,063億円から1,693億円減少しています。

  足元でも関税政策が年度を通してどのような影響を及ぼすのかは、継続性も含め見通しが難しいところですが、自営事業、コンテナ船事業ともに、年間を通して足元で考え得る影響が続くレベルで業績予想としています。

 

B-3. セグメント別通期業績予想

  2025年度のセグメント別通期業績予想は、ドライバルクは米国関税政策の影響として、荷況などの変動リスクを織り込んで前期比46億円の減益を見込みます。今後、状況に合わせた運航効率の改善、コスト削減に取り組んでいく方針です。

  エネルギー資源については、米国関税政策影響はそれほど大きくないと考え、LNG船、電力炭船、VLCC、LPG船など中長期契約のもとで安定的に収益貢献します。前年度の一過性要因の剥落もあり、増益を見込みます。

  コンテナ船事業以外の製品物流について、自動車船事業は、当初は堅調な荷動きと輸送契約の中長期化などの施策から、引き続き堅調な業績を期待していましたが、関税政策影響により米国向け海上輸送量が年間を通して約30%減少する前提で業績予想としています。

  Appendixの当社の輸送予想台数は前年比大きく変化していないように見えます。これは、もともと2025年度には新規契約獲得などの増量が存在するところ、米国向けの輸送台数減少があり、結果として前年同様の数量となっているものです。関税影響として、自動車船事業は、必要に応じて船隊規模の適正化、運航・配船効率の向上に取り組みます。なお、自動車船事業につきましては、今年度第1四半期より、コンテナ船事業と同様に、製品物流セグメントの内数として、業績を開示する予定です。その他、当社物流事業、近海内航事業では、当面、関税政策の影響は大きなものでない前提としています。

  次に、製品物流のコンテナ船事業ですが、2025年度コンテナ船事業の当社持分収支は+370億円を見込みます。ONE社は2025年度収支ガイダンスとして、比較的安定した事業環境時で、通期の税引後損益+11億ドル、特定航路における貨物量の減少や世界的な運賃下落、関税による潜在的な影響可能性すべてを織り込んだ通期税引後損益として、+2.5億ドルの2つのシナリオを設定しています。潜在的な影響をどこまで織り込むかがポイントになりますが、当社予想は2024年度から足元の事業環境を踏まえ、貨物量の減少、運賃市況の下落影響を織り込んで通期の税引後損益を約+7億ドル弱としています。ONE社は状況に応じて機動的な配船と効率的な運航への取り組みを継続するとし、引き続き事業環境の変化に注意していきたいと思います。

 

C. 中期経営計画の状況・進捗

C-1. 中期経営計画のポイント

  現行中期経営計画のポイントについて改めてご説明をしますと、低炭素、脱炭素化を機会として、成長を牽引する役割と環境への投資を進めていきます。そのために、資本政策、事業戦略、機能戦略の3つの大きな取り組みを掲げています。

  資本政策では、最適資本構成を実現し、経営管理高度化を進めた上で、成長投資と株主還元のキャッシュアロケーションの最適化を進める計画です。

  事業戦略と機能戦略では、成長を牽引する役割と環境への投資を成長の軸とする一方、安全・船舶管理品質、環境技術、DXという当社の強みである横串機能を尖らせていくことで、その強みが活かせる領域で、顧客・パートナーとの連携も手段に成長を実現しようと思っています。

  後ほどご説明しますが、事業戦略を中心に近日中に事業説明会を開催させていただく予定です。

 

C-2.【資本政策】資本政策の進捗と企業価値向上に向けて

  稼ぐ力の強化について、足元での事業環境は不透明さはありますが、2026年度までの現行中計期間の営業キャッシュフローは1.5兆円と、前回2月公表から変更していません。

  投資計画について、2026年度までの投資キャッシュフローは、前回2月公表時には7,400億円としていましたが、今回6,100億円になる見込みとしました。新規投資はほぼ予定どおり進捗していますが、お客様の計画の後ろ倒し、船価動向から代替投資の一部を後ろ倒ししていること、これは2026年度を越えて次の中計期間の始めに差し掛かることになります。また、事業や資産の売却によるキャッシュインの増加があり、これらの要因から6,100億円の投資キャッシュフローに修正しています。投資の後ろ倒しは先ほどご説明したとおり、現行の中計期間を越えて2027年度以降に発生するものもあります。

  最適資本構成は、事業リスクを意識した財務健全性、資本効率の両立を目指して、引き続き検証を続けます。

  株主還元政策は、還元方針は従来どおり最適資本構成を意識し、企業価値向上、成長に必要な投資と財務健全性を確保し、適正資本を超える部分についてはキャッシュフローを踏まえて積極的に株主還元を行います。

  今回、ここまでご説明した事業環境、業績見通し、営業キャッシュフロー、投資キャッシュフロー見込みによるキャッシュアロケーションを確認の上、中計期間の還元総額を8,000億円以上とし、前回公表の7,500億円以上から機動的な追加還元500億円以上を加えることとしました。実行方法や時期については、決定次第、改めてご案内します。

  また、2025年度の配当予想は、基礎配当40円、追加配当80円の合計120円に1株当たり20円増額します。この増額は、従来の還元総額7,500億円以上の中で、自己株式取得等を終了した後の余資を使用して行うもので、500億円の追加の機動的還元とは別物です。

  最後に、企業価値向上に向けて、足元PBRは1倍を割れていて、忸怩たるものがあります。企業価値の向上と成長に向けて、当社の強みを活かす機能戦略強化を通じて、顧客・パートナーとの連携も含め、さらに取り組みを強化していきます。

  また、2025年3月28日から指名委員会等設置会社に移行し、ガバナンスの強化と経営の強化を通じて当社の取り組みを加速させていきます。

 

C-3. 【資本政策】キャッシュアロケーション

  キャッシュアロケーションについては、営業キャッシュフロー1.5兆円に対して、投資キャッシュフロー6,100億円、株主還元8,000億円以上としています。一部残るキャッシュフローは、今後の事業環境変化も踏まえ、M&Aや一部後ろ倒しの投資、あるいは株主還元への配分も対象にマネジメントアロケーションとして取り扱う考えでいます。

 

C-4. 【資本政策】事業投資計画

  前回2月の公表の投資キャッシュフローは7,400億円としていましたが、最新の投資キャッシュフローは6,100億円としています。

  投資の進捗状況としては、足元46隻のLNG船は、2026年度には65隻に増加し、更なる取り組みを進めています。

  自動車船では、傭船を含めて合計17隻のLNG燃料焚き船の投入を決定しています。

  鉄鋼原料船も、顧客需要に合わせて新燃料船を含めた船隊整備を進めています。

  さらにはヨーロッパでの液化CO2輸送船事業の開始、洋上風力発電支援では地質調査船事業を開始するなど、成長を牽引する役割と環境を軸に事業投資を進めています。しかし、お客様の計画の後ろ倒し、船価動向からの代替投資の一部後ろ倒し、事業・資産の売却に伴うキャッシュインの増加などから、投資キャッシュフローが1,300億円減少となりました。

  今後も当社の強みを活かした形で、顧客パートナーとの連携も含め、事業成長に向けて取り組んでいきます。

 

C-5. 【資本政策】株主還元政策

  中計期間の還元総額は8,000億円以上を予定し、500億円の増額は機動的な追加還元とし、手法、時期については決定次第公表します。一方、2025年度の配当は追加配当を80円に増額し、1株当たり120円とします。これは従来の中計期間還元総額7,500億円の余資を元にしています。

 

C-12. 海運業を取りまく環境

  足元の海運業を取りまく環境について、重要な3つのポイントを説明します。

  1つ目は米国の関税政策です。米国の関税政策は引き続き状況の進展を見定めていく必要がありますが、基本的に、米国入れ出しの貿易量の減少および米国内の生産の進展も含めてトレードパターン変更の可能性の2つが、大きな影響と考えています。関税の最終的な負担者はアメリカ国民になるものと考えられ、本格的な経済停滞までこの政策を続けるのかという点について疑問もまだ残っていて、影響の期間がどの程度になるかにも注目する必要があると思います。当社の2025年度の業績見込みは、現時点で考え得る影響が1年を通して続くものとして算出しています。当社の場合、影響の大きい事業は製品物流のコンテナ船と自動車船になると考えていて、両事業を中心に短中期的な船隊調整やサービスパターンの変更などの検討を準備しているところです。ただし、今後も政策と影響の予見性が定かでない中、対応状況や今後の進展に留意していきたいと思います。

  次に、USTRの中国関連船の対抗措置ですが、本件は今年の10月から発効予定です。大きく中国船社、中国の建造船、自動車船では米国建造船以外、LNG輸送での米国建造船の使用がポイントになっています。当社事業でも中国の建造船など関連船も一部ありますが、ドライバルク、エネルギー資源事業では短期的には影響は限定的と考えています。コンテナ船事業では、米国航路での投入船の入れ替えにより影響を限定的に出来る見込みです。一方、自動車船事業では全ての米国航路のサービスが影響を受ける見込みで、大きな懸念を持っています。お客様や関係業界と解決に向けて協議をしていく必要があると考えています。なお、当社の2025年度業績見込みでは、本USTRの影響は織り込んではいません。

  最後にスエズ運河通峡について、中東情勢は残念ながらホーシー派への米軍攻撃の継続など緊迫化の度合いに変化は見られません。本日、様々な報道が出ていますが、当社としては何より本船の安全、乗組員の安全、また貨物の安全を第一に考えて判断したいと考えています。状況は引き続き注視していきますが、今年度の当社の業績見込みに関しては、スエズ運河は年を通して通峡せず、喜望峰経由の前提で作成しています。