【2024年度第3四半期決算説明会資料】
A. 2024年度第3四半期決算概要
A-1. 2024年度第3四半期業績
2024年度第3四半期は、売上高が8,049億円、営業利益が+922億円、経常利益が+2,888億円、四半期純損益が+2,847億円となりました。9カ月間の平均為替レートは152円27銭です。いずれも前年同期比で増収、増益になりました。営業利益においては、ドライバルク、自動車船事業が業績を牽引しました。経常利益および四半期純利益については、OCEAN NETWORK EXPRESS(ONE社)が運営するコンテナ船事業において、短期市況が安定的に推移したことで大きく増加しています。主な財務指標は自己資本が1兆7,073億円、有利子負債は3,429億円、DER20%、自己資本比率75%となりました。引き続き財務体質は健全な形を維持していると考えています。
A-2. セグメント別第3四半期業績
第3四半期までのセグメントごとの経常利益について、ドライバルクセグメントは+162億円となりました。エネルギー資源が+63億円、製品物流が+2,697億円となりました。この中にはコンテナ船事業の+1,938億円も含まれていますので、コンテナ船事業を除いた自営事業の製品物流セグメントの経常利益は+759億円となりました。全社合計の経常利益は+2,888億円です。
事業ごとの変動ポイントについては、後ほど、通期業績見込みと合わせてご説明しますが、各セグメントとも前年同期比で増益になりました。特に自営事業の経常利益については、全社の+2,888億円からコンテナ船事業の+1,938億円を引いた+950億円ですが、前年同期と比べて300億円を超える増益となっています。
脚注のとおり、当社は為替の動向によって業績数字が変動するという特徴があります。特に24年度第3四半期は、経常利益が+1,015億円でしたが、9月の末時点の為替レートが143円だった一方で、12月末時点が158円となり、為替は15円の円安方向に振れました。この円安効果によって、第3四半期では149億円の為替差益が出ています。
B. 2024年度通期業績予想と取組み
B-1. 2024年度通期業績予想及び変動要素
2024年度の通期業績見込みについては、売上高1兆500億円、営業利益が+1,060億円、経常利益が+3,000億円です。当期純損益は+2,950億円です。期中の平均為替レートは152円39銭、バンカー価格は608ドル/トンです。3月の期末想定レートは150円で見ています。
前年同期との業績比較では、増収、増益で11月5日に公表した中間決算時の通期業績見込みと比較しても、売上高200億円、経常利益、当期純損益については600億円の上振れです。各セグメントの状況について、基本的には営業利益はドライバルクと自動車船事業が牽引、経常利益についてはコンテナ船事業が大きく引っ張っているという構図は、第3四半期の実績と変わりません。
前提と変動影響について、為替レートの変動影響は1円の変動でプラスマイナス10億円です。1円の円安で経常利益が10億円改善、1円の円高で10億円悪化となります。
また、本年度、24年度の株主還元について、配当は100円/株ということで、中間決算時に公表させていただいたものから変更ありません。一方で、自己株式取得については、3,600万株、あるいは900億円を上限として現在も実施中です。中間決算の際の公表に基づいて、2月末までの期間において、取得価額の上限か取得株数の上限かいずれかの条件に達するまで自己株式取得を進めていきます。中計期間全体における株主還元については、後ほどご説明します。
B-2. セグメント別通期業績予想
2024年度のセグメント通期業績予想について、経常利益はドライバルクが+145億円、エネルギー資源+65億円、製品物流+2,850億円です。このうち+1,970億円がコンテナ船事業なので、差の+880億円がコンテナ船以外の自営事業の製品物流の経常利益です。全社で+3,000億円の経常利益予想になっています。
前年同期比では、エネルギー資源においては一過性の損失があり、マイナスになっていますが、それ以外のドライバルク、製品物流、コンテナ船事業ともに、対前年同期比で改善しています。
11月5日の中間決算公表時との比較においても、全セグメントにおいて改善しています。ドライバルクが15億円の改善、エネルギー資源も15億円の改善、製品物流については575億円の改善ですが、この内コンテナ船事業で520億円の改善があり、コンテナ船以外の自営事業の製品物流では55億円の改善となります。
対前年同期比、対前回公表比ともに改善していて、順調に進捗していると考えています。セグメントごとの主な変動ポイントについて、ドライバルクにつきましては足元第4四半期で若干市況が下振れていますが、今回の収支計画には反映しています。
エネルギー資源については、基本的に長期安定契約をベースにした事業運営なので、第4四半期も含め、引き続き安定して推移していくだろうと見ています。
製品物流セグメントは、自動車船事業については、オーストラリア等での港湾混雑による滞船等によって、配船効率悪化による輸送台数の減少はありますが、ファンダメンタルにおいて大きな変化はありません。引き続き効率配船に努めて、安定収益を実現していきます。
コンテナ船事業については、短期運賃の市況や、旧正月後の荷動き動向など季節要因、また今年2月以降のアライアンスの再編影響などがどうなるかがポイントになると思っています。引き続きONE社にて効率的なオペレーション、需要に合わせた配船などを励行していきます。
下期の収支について、第3四半期から第4四半期にかけて、収益の段差が非常に大きくなっています。第3四半期の経常利益+1,015億円に対して第4四半期が+112億円と、900億円の段差があるように見えます。これは、コンテナ船事業が第3四半期から第4四半期にかけて収益見込みが非常に大きく悪化していることが一つの要因です。第3四半期+574億円だった経常利益が、第4四半期見込みでは+32億円と、約540億円悪化しています。900億円の段差のうち、約6割の540億円がコンテナ船事業の見通しによるところです。
残りの4割について、大半は為替の影響によるものです。第2四半期(9月末)の為替は143円と、最近においては円高水準でしたが、第3四半期末(12月末)の為替が158円で、15円の円安に振れました。第3四半期決算では、この15円の円安による外貨建て債権債務の評価益が取り込まれた数字になっています。
一方で、第4四半期末(25年3月末)の為替は150円で想定しているので、第3四半期末(12月末)の158円から8円の円高となり、こちらは逆に8円の下方向に働いています。第3四半期は為替で上振れ、第4四半期は為替で下振れと、双方向に段差が広がるような構造になっていることが、大きな要因として挙げられます。これらは、外貨建て資産の評価損益であり、キャッシュフローに影響があるものではありません。為替動向による一過性の損益影響です。
よって、コンテナ船事業の見方はありますが、それを除けば大半は、一過性の要因によるものと整理できると考えています。
自営事業の収支目線は、今年度24年度については全社で経常利益+3,000億円のうちコンテナ船が+1,970億円、自営事業は差し引きで、+1,030億円となります。
当社は、2026年度の中期経営計画の最終年度の目標としている経常利益+900億円、さらには2030年度に向けた経常利益+1,100億円に向けて取り組んでいます。今年度第3四半期と第4四半期の間で、為替による凸凹や季節要因等はありますが、大きく見れば、自営事業は2025年度以降も、これらの目線に沿った形で、しっかり稼いでいけると考えています。全社業績の観点では、これらに加えて、コンテナ船事業の動向がどうなっていくのかがポイントになると考えています。
C. 中期経営計画の状況・進捗
C-1. 【資本施策】資本政策の進捗と企業価値向上に向けて
稼ぐ力の強化と投資計画については現在、来年25年度以降の収支計画を取りまとめている中、さまざまな検討、精査をしています。従って、現時点において大きな数字の変更はしていません。
営業全体のキャッシュフローについては、今期の上振れも踏まえてどのように25年、26年が推移していくのかをしっかりと見極めているところです。
投資計画については現在7,400億円と公表していますが、船価の動向、顧客の動向、お客さまからのニーズがどのタイミングに出てくるのか、プロジェクトのタイミングも含めながら、中期経営計画の期間内においてどうなるか精査中です。しかし、基本的な投資方針としては、多少の期ずれがあっても、企業の成長のために必要な投資はやっていくという方針は変わらないので、しっかりと投資を行っていきたいと考えています。
最適資本構成については、引き続き社内でコンテナ船、ONE社の必要資本レベルを含めて検討を深めている状況です。
株主還元策は、従前は中計期間中において7,300億円以上でしたが、今回7,500億円以上と200億円を積み増しました。具体的には25年度、26年度において配当を85円/株から100円/株に引き上げる増配となりました。当社の株主還元に対する考え方は変わっていません。最適資本構成を意識しながら、必要な投資をしっかりと行い、その上で財務の健全性を維持し、適正な資本を超える分についてはキャッシュフローに基づいて株主還元を積極的に行っていくというものです。今回もさまざまな見直しをしていく中で、200億円程度の株主還元の上乗せは、十分可能だろうという判断です。その上で現在、自己株式取得も実施中という状況の中、当社の従前からの方針である、さまざまな株主の方の要望に配慮した形での株主還元ということで、キャピタルゲインを重視される方、インカムゲインを重視される方、さまざまな株主の方がいるので、今回は中計期間内は年100円/株の安定配当の計画としました。引き続き、株主還元については、キャッシュフローも踏まえて継続的に追加還元も含めて検討していきたいと思っています。どのようなタイミングで、どのような手法で、どのような規模感で株主還元をしていくのが最も企業価値の向上に資するかについては、常に検討しながら、適時、決定したことがあれば共有していきたいと考えています。
C-3. 事業環境の変化
どのようなリスクが海運業という事業に対してあるのか、従前からのとおり地政学も含めた経済のデカップリングや世界経済の動向、エネルギー政策の動向などが非常に大きな影響を与えるものと認識しています。
C-4. 海運業を取り巻く環境
足元の課題であり当社が注視している2つの大きなポイントである、アメリカの政権交代と中東情勢にフォーカスして詳しく資料としてまとめました。個々の説明は割愛しますが、大きなところでアメリカの政権交代に関してご説明すると、エネルギー政策と、関税に代表される通商政策、並びにアメリカの景気が新政権の動向によってどうなっていくのか、この3つが非常に大きいポイントです。
エネルギー政策については、当然のことながらLNG等の化石燃料の増産につながり輸出増になって当社の事業機会に資するという見方があります。一方で、自動車船事業において、例えばEVの販売動向や、どのような車が売れるのかということは、しっかりと見ていく必要があります。
通商政策においてはサプライチェーンがどう変わっていくのかがコンテナ船と自動車船で特に大きな影響が出る可能性があるので注視していきたいと思います。
米国経済については、一義的には消費動向においてコンテナ船と自動車船が大きな影響を受けると考えています。一方でエネルギー資源についても、インフレが仮に進行するとプロジェクトの遅れなどが想定されるので、それらを見極めていきたいと考えています。ただ、当社としては従前からのとおり、当社の強みを生かしながら環境対応をリードして、顧客と共に脱炭素、低炭素を進めることによって事業を成長させていく、発展させていく、企業価値を向上させていくことは変わりません。しっかりとその軸を持った上で、今後予見が難しい状況ではありますが、それぞれの状況については注視しながら必要な対応を取っていきたいと考えています。
中東情勢については、イスラエルとハマスの外交交渉が現在インプロセスということで、海運業界にとってはスエズ運河の復帰がいつになるのか、どうなったらスエズに戻るのかの関心が非常に高いと思います。当社としては、船舶、乗組員、お客様からお預かりしている貨物、これらの安全が十二分に担保されないと、なかなかスエズ復帰にはならないと考えています。従って、様々な状況を総合的に判断しながら、当社自身が確信を持てるまでは喜望峰経由を継続していくことになると思います。何が判断材料になるのかは、なかなか決められないので、状況を総合的に判断しながら、しっかりと慎重に見極めていきたいと考えています。