【2024年度第1四半期決算説明会資料】
A. 2024年度第1四半期決算概要
A-1. 2024年度第1四半期業績
今年度は中計の折り返しである3年目となります。その3年目のスタートとなる第1四半期ということで非常に重要な節目でありますが、まずはしっかりとしたスタートが切れたと考えています。
2024年度第1四半期業績は、売上高は2,676億円、営業利益は+307億円、経常利益は+748億円、当期純利益は+725億円という結果でした。いずれも前年同期比でプラスですので、まずは順調なスタートかと思います。セグメント別の状況では、基本的にはドライバルク事業、自動車船事業ともに堅調な市況に支えられました。コンテナ船事業についても、紅海情勢による供給の制約及び旺盛な貨物需要のリバウンドということで、短期市況が非常に好調に推移しました。
主な財務指標ですが、自己資本は1兆6,319億円、有利子負債は2,842億円、DERは17%、自己資本比率は76%となりました。自己資本については、2023年度末と比較して400億円ほど積み増しされている状況です。それ以外はあまり大きな変化はないですが、引き続き健全な財務体質を維持していると考えています。
スライドには「2023年度は会計方針変更による遡及適用後の数値を記載」というリマークがついています。決算短信に詳しく記載はありますが、海外関係会社等の収益及び費用を円転するときの為替レートの換算方法を2024年度から見直しています。見直しに当たり、以前から遡及して見直していること、及び今年度と前年度の比較をするためにも、スライドの2023年度の数字は新基準での数字になっています。したがって5月決算発表時に前年度の実績として使っていた数字とは若干違っているところがありますが、その点含み置き下さい。
A-2. セグメント別第1四半期業績
ドライバルクの経常利益は+76億円、ケープサイズ及び中小型とも非常に市況が堅調でした。
エネルギー資源の経常利益は+12億円、一過性の減益要因はありましたが、基本的には長期契約に基づく安定収益のセグメントですので、きっちりと長期契約の部分は利益を上げています。
製品物流全体の経常利益は+664億円、うちコンテナ船事業が+410億円ですので、それ以外の自営事業、つまり自動車船、物流・港湾及び近海・内航事業は、+254億円になります。こちらも非常に堅調に推移しているということで、しっかりとした利益を上げています。コンテナ船事業については、非常に好調な短期市況もあり大きく利益を伸ばしています。
全体では+748億円の経常利益で、これは前年同期比276億円の改善です。一過性の損失があったエネルギー資源以外は、全て前年同期比で増益になっています。
B. 2024年度通期業績予想と取組み
B-1. 2024年度通期業績予想及び変動要素
2024年度通期の業績予想について、7月25日に適時開示という形で既に上方修正を発表しましたが、その数字から変更はありません。売上高は1兆200億円、営業利益は+1,020億円、経常利益は+2,200億円、当期純利益が+2,100億円です。期中の平均為替レートが147円18銭となります。こちらも対前年比で、売上高、営業利益、経常利益、当期純利益の全てを上方修正しています。加えて5月7日に公表した計画値と比較しても、それぞれ全て上方修正しています。そういう意味では、今期も下期は不確定なところもありますが、現在の見込みのとおり推移すれば、中計の中間地点としては、しっかりとした利益を上げていくことができるのではないかと考えています。
前提の為替は、通期で147円18銭、基本的には7月までは実績ベース、8月、9月は150円という為替前提になっています。下期は140円ですので、そういう意味では、現在の足元の為替よりは円高で見ています。為替レートのセンシティビティは、1円の変動で16億円です。当社の場合は円安になれば利益が上がり、円高になれば利益が減りますので、1円の円高になれば16億円の悪化となります。
B-2. セグメント別通期業績予想
セグメント別の通期業績予想について、ドライバルクの経常利益は+150億円で、前回5月の公表値から変更ありません。エネルギー資源の経常利益が+60億円で、前回公表比10億円の改善です。製品物流の経常利益は全体で+2,040億円ですので前回公表比840億円の改善ですが、うちコンテナ船事業が+1,280億円で830億円の改善、コンテナ船事業以外の自営事業が10億円の改善です。全体で前回公表比850億円改善の+2,200億円となります。全てのセグメントで5月の公表より上ぶれている、あるいは横這いで、基本的には計画値どおり進捗しています。コンテナ船事業によるポジティブな影響はありますが、それ以外に大きな事業環境や数字の変更はないというのが現在の見立てです。
ドライバルクについては、足元では中国向けの鉄鉱石の荷動きが堅調です。中国経済については若干心配するところもありますが、現状では荷動き等に大きな影響は出ていません。
エネルギー資源については、基本的に長期契約に基づく安定収益事業で、しっかりと想定どおり稼いでいます。
製品物流の自営事業、特に自動車船事業については、タイトな需給環境が続き、好調な状況が継続する見立てです。
コンテナ船については供給面で紅海の状況がどうなるのか、需要面で上半期は荷動きが回復してきていますが、それが下半期にどうなるのかが注目点、若干の不確定要素であり、注意して見ていく必要があります。
B-3. 海運業を取り巻く環境
当社の業績にスエズ運河の状況が非常に大きな影響を与えていますので、各事業別にどのような影響があるのか、どのような見立てなのかを取りまとめています。船会社としては、乗組員を始めとする人命、船及び貨物の安全は、何事にも代えられないものだと考えています。したがって、紅海の状況の見きわめについては、安全をしっかりと確信できた上でないと、元に戻すことは難しいと感じています。安全、安心、これは譲ることのできない大事な価値観、大切なことだと思っていますので、その点はしっかりと状況を注視していきたいです。
C. 中期経営計画の状況・進捗
C-1. 【資本施策】資本政策の進捗と企業価値向上に向けて
中計については、さまざまなKPIを公表しています。一部については、前回5月の決算公表時に上方修正したものもあります。スライドの左側に、稼ぐ力の強化、投資計画などいろいろと記載していますが、当社は、このような施策一つ一つに取り組んでいるところです。
まず稼ぐ力の強化ですが、こちらは5月に中計最終年度である2026年度の経常利益の目標を1,600億円に上方修正しました。先ほどお話ししましたとおり、今年度の経常利益予想が既に2,200億円ということで、まずはその目標値も上回っているところです。この1,600億円の経常利益を前提にして、営業キャッシュフロー1.4兆円ということもお伝えしていますが、今回、今年度経常利益の上方修正もあります。したがって、営業キャッシュフローの上ぶれも一定程度は見込める状況だと考えていますが、これについては後ほど、いかにこれを有効に活用していくのかという点について、成長のための投資や株主還元など、どのような使い方が企業価値の向上に最適なのかを見定めた上で、時機を逸することなくいろいろな対策を立てて施策を実行していきたいと考えています。
続いて投資計画についてです。こちらも5月の段階で上方修正して、投資計画7,400億円としています。こちらも現時点で変更する予定はなく、順調にさまざまな案件に取り組んでいる最中です。5月に公表いたしましたとおり、順調に進んでいるとご理解いただければと思っています。
次に最適資本構成です。企業価値向上に向けた最適資本構成ということで、かねがね当社は財務の健全性と資本効率を両立させる最適資本構成について、自営事業とコンテナ船でそれぞれどのようなポイントなのか、きっちりと見きわめる必要があろうということで検討を進めています。現時点で具体的な数字はまだご案内できる状況にありませんが、さまざまな検討を社内で進めて、引き続き重点課題として取り組んでいる状況です。
株主還元については先ほどもお話ししましたが、次のスライドで併せてご説明させていただければと思っています。
いずれにしても、当社の企業価値向上に向けて、ROE10%を達成して、PBR1倍以上を維持、向上するということです。これを何とか安定的に達成していくための、成長のための投資や、最適資本構成、株主還元を引き続き検討していて、その検討が深まっている状況だとご理解いただければと思います。
C-2. 【資本政策】株主還元政策
株主還元政策についてです。先ほどお話ししましたとおり、営業キャッシュフローの上ぶれを一定程度見込んでいます。そのような営業キャッシュフローの上ぶれも含めて、投資キャッシュフローあるいは株主還元をどうするのかという点などについては、昨今の状況を踏まえて、きっちりと遅れることなく検討した上で、速やかに公表するととともに実施していきたいと考えています。現時点においては、中計全体で、還元総額7,000億円以上という点は変わっていません。株主価値向上のために適切な配当と機動的な自己株式取得を積極的に実施していきます。この7,000億円以上という点について、先ほどからお話ししているキャッシュフローの上ぶれの見込みも含めて、どうしていくのか、検討していきたいと考えています。
まず2024年度については、配当としては前回5月の段階で年間85円、中間と期末でそれぞれ42.5円ということで公表しています。これを現時点では変更なしで進めたいということです。自己株式取得については、前回5月の時点では上限1,000億円、あるいは3,955万6,000株の自己株式取得を行うこと公表していました。これにつきましては7月24日にご案内のとおり、先に株式数が上限にヒットする形で終了しています。買付額は909億円ということで、当初の1,000億円からは約100億円近く下回った金額で、一旦自己株取得は終了しています。こちらもご案内のとおりですが、取得した自己株式は8月7日に消却予定です。
先ほどお話ししましたとおり、中計全体の株主還元方針は現時点では7,000億円以上で変わらないということで、5月の段階で、機動的な追加還元として500億円以上を引き続き検討していくことや、2025年度、2026年度も85円の配当を行うということをご案内しています。繰り返しになりますが、足元の営業キャッシュフローの状況や900億円に終わった自己株取得の部分も踏まえて、機動的な追加還元も含めたキャッシュアロケーションについては、早急に検討していきます。
スライドの一番下に記載しているとおり、当社としては従前どおり、「最適資本構成を常に意識し企業価値向上に必要な投資及び財務健全性を確保のうえ、適正資本を超える部分についてはキャッシュフローを踏まえて積極的に自己株式取得も含めた株主還元を検討」するということで、この点についてはしっかりと検討していきたいと思います。
C-3. 事業環境の変化
事業環境の変化については、地政学や、あるいは世界経済など、さまざまなマクロなダイナミクスが大きく変わっている状況と認識しています。船会社である当社にとっては、地政学に起因する経済のデカップリング、インフレ、あるいは最近で言うと金利も含めた世界経済の動向、各国の脱炭素、低炭素も含めたエネルギー政策などは、経営及び業績にさまざまな意味で非常に大きな影響を与えてくると考えます。引き続き当社としても状況をモニターして、必要な対応をしていきたいと考えている次第です。