【2023年度第2四半期決算説明会資料】

A. 2023年度第2四半期決算概要

A-1. 2023年度第2四半期業績

 上期の実績は、売上高が4,589億円、営業利益+446億円、経常利益は+852億円。昨年の好調なコンテナ船の好業績を反映して大きな額の差となり、前年同期比では4,822億円減少です。一方、第1四半期の公表数値と比べますと152億円の改善、自動車船を中心とする製品物流と、円安に動いた為替が主な要因となります。当期純利益は+631億円で、第1四半期公表数値比では81億円の改善です。為替レートは139円93銭、燃料油価格は605ドル/トンです。 バランスシートですが、自己資本が1兆5,837億円、有利子負債が3,570億円、DERが23%、自己資本比率が74%となりました。 

 

A-2. セグメント別第2四半期業績

 ドライバルクの上期経常利益は+28億円で、第1四半期公表数値比2億円悪化となりました。年初は中国のゼロコロナ政策終了後に一時的に荷動きがリバウンドしましたが、4月以降は不動産を中心に中国経済の回復の足取りが遅いということで、需要は減少しました。供給サイドでは、コロナの影響が剥離することで滞船、停船が減少し、本船の稼働率が上がることによって実質供給が増え、上期、特に第2四半期は市況が低迷しました。

 エネルギー資源の経常利益は+52億円で、LNG、油槽船、電力炭船を中心に、中長期契約をもとに安定的な収益を確保しました。

 製品物流の経常利益は全体で+798億円、そのうちコンテナ船については+362億円で、第1四半期公表数値比ではそれぞれ133億円、77億円の改善になりました。製品物流については、自動車船が中心ですが、部品不足の解消によって荷動きが回復基調ということで、運賃の修復、運航効率の改善に努めた結果、改善しました。コンテナ船については、8月の需要期、荷動きが一時的に回復しましたが、残念ながら力強さが見られず、市況の大きな改善は見られませんでした。しかしながら、為替そして金利収入の増加などに助けられた結果となります。

 

 

B. 2023年度通期業績予想と取組み

B-1. 2023年度通期業績予想及び変動要素

 通期の業績見通しについて、売上高は9,300億円で、第1四半期公表数値比で300億円の増加となる見込みです。営業利益は+920億円で、第1四半期公表数値比で30億円の改善です。経常利益は1,350億円と、第1四半期公表の数字を維持した予想となります。一方、当期純損益については1,050億円で、第1四半期公表数値に対して150億円の悪化となっています。為替レートは下期平均で140円、期末も140円の前提、燃料油価格は通期で624ドル/トンという前提です。経常利益については、円安に動いた為替や自動車船が堅調であったということで、全体ではコンテナ船の下ぶれをカバーしていくという見通しです。当期純利益については、グループ関係会社の税金費用や課税所得を全面的に見直した結果、税金費用が膨らんだことを主因として、第1四半期公表値から150億円下回る1,050億円の見通しです。こちらはいずれも一過性の要因によるもので、キャッシュフローに与える影響は限定的で、また株主還元等にも影響を与えるものではありません。株主還元については、後ほど細かくお話しいたしたいと思います。なお、為替レートの1円変動による影響はプラスマイナス9億円という想定です。

 

B-2. セグメント別通期業績予想

 ドライバルクは経常利益+85億円ということで、第1四半期決算公表数値をやや下回る予想です。第3四半期は大型船では鉄鉱石の出荷シーズンに当たり、またギニアのボーキサイトも堅調、中小型船においては北米や南米からの穀物も好調です。一方で供給サイドは、パナマ運河の渇水による通峡制限などもあり、需給バランスはタイトです。したがって、市況は堅調に推移するだろうというのが現在の足元の見通しですが、第4四半期については、季節要因による荷動きの減少や市況の軟化を例年どおり想定して織り込んでいます。

 エネルギー資源輸送は経常利益+80億円で、LNG船、電力炭船や油槽船を中心に安定的な収益を上げる見通しということで、第1四半期公表数値から予想は変えていません。

 製品物流は全体では経常利益+1,250億円ということで、第1四半期決算公表数値から変わらない想定ですが、コンテナ船については第1四半期公表前提+490億円から+430億円に、60億円の悪化を想定しています。自動車船は、半導体など部品不足の影響は下期ではほぼなくなり、生産販売についてはさらなる増加基調を想定しています。全米の9月までの販売台数も1,560万台ということで、前年同期比で12%増加しており、足元の在庫もコロナ以前の4万台に比べて2万台と低いレベルで推移していて、いまだ強い需要があります。海上輸送量の増加理由の一つである中国製完成車の輸出も引き続き堅調です。EUによる中国製EVへの補助金調査については状況を注視していきますが、結果が出るまでには1年程度かかる見込みであり、今期については需給タイトの状況に変わりはないという想定です。コンテナ船については、期首には欧米を中心に消費の回復や在庫整理が一定程度進むと見ていましたが、残念ながらインフレの高止まりや消費低迷により、本格的な回復は来期以降に延びるというのが最新の見通しです。加えて新造船の供給増もあり、下期については、市況は上値が重い展開を予想しています。ただし夏場と比べて、OCEAN NETWORK EXPRESS(ONE社)が所属するTHE Allianceも含めて、各社とも需要の減退に合わせて積極的に減便対応をしています。通常、需要閑散期に入って運賃が下落する動きになりますが、足元においては11月の値上げを各社が発表して取り組んでいる状況です。こういった需要に合わせた減便の対応を見ると、今後、来年の契約更改を迎える時期が近づいてくる中、各船社が慎重な対応をしているものと当社としては見ています。ONE社全体のPL見通しは、下期の税引き後利益を+5億ドルから+1億5,100万ドルに下方修正したことにより、年間の税引き後利益が+12億ドルから+8億5,100万ドルになるというのが最新の予想です。

 

B-3. 自営事業のポイント(前年通期実績比)

 コンテナ船を除く自営事業について、2022年度の実績+892億円の経常利益に対して、今回の2023年度最新予想経常利益は+985億円ということで、93億円の改善を予想しています。ドライバルクは先ほどお話ししたとおり、昨年までの好調な市況が軟化しており、およそ146億円の市況や荷況の悪化影響が出てきます。製品物流については、物流、フォワーディングはコンテナ船同様に市況の影響を受け、また近海・内航についても国内における荷動きが鈍いということで、いずれも悪化要因はありますが、一方で堅調な自動車船が牽引することで、製品物流全体では138億円の改善となります。また一過性の為替影響に伴う124億円の改善もあり、全体では93億円改善の+985億円というのが、今期の自営事業の経常利益の最新見通しです。

 

 

C. 中期経営計画の状況・進捗

C-1. 中期経営計画のポイント

 昨年度から開始し、今年2年目の中期経営計画の進捗状況について、お話しします。中期経営計画で設定した事業戦略、資本政策、機能戦略、これは着実に実行に努めていきますが、先ほどお話ししましたとおり、2026年度の+1,400億円の経常利益目標のうち自営事業の+700億円の経常利益に対して、今期+985億円ということで、現時点で上回る見通しです。当社は、2026年度の最終年度の目標として設定した経常利益+1,400億円について、いま一度自営事業、とくに成長を牽引する役割を担う3事業を中心に、この目標値の目線を上げて、さらなるステップアップにつながる事業戦略の検討及び数値目標の見直しに取りかかったところです。当社として、もう一度、どこまでできるかという点について検討に入ったところですが、今期末の通期決算発表までには取りまとめたいと考えています。

 一方、自営事業のみならずONE社についても、シンガポールの運営会社と他の株主とともに、現在新たな事業計画の策定に入っていますが、当社としても投資計画、資金計画、資本政策を含む事業計画の策定についてまとめるべく、株主としてしっかりサポートして取り組んでいます。

 

C-2. 【事業戦略】鉄鋼原料・自動車船-成長戦略の進捗

 次に成長を牽引する役割を担う3事業を中心に、成長戦略の進捗について報告します。今年5月に開催しました、当社の事業説明会での内容を踏まえアップデートします。

 鉄鋼原料については、顧客密着と環境営業を梃子に、当社のコアな顧客となる日本、韓国の鉄鋼会社に加えて、今後成長が見込まれるインド及び中東市場、そして資源メジャーなどのお客様に積極的に営業をかけることによって、持続的な収益、成長を積み重ねていくということに取り組んでいます。業界全体で、今後燃料転換がどこに行くか方向性を見きわめている状況ですが、当社がお話ししているお客様に関しては、JSW、EGA、Anglo American、BHPなどが中心ですが、今後の燃料転換に非常に関心が高く、当社は定期的に具体的な低炭素や脱炭素化に向けた取り組みについて協議を進めています。足元では、これまで少し船価が高止まりしていたということで動きが緩慢でしたが、中国を中心に船価上昇も一定の軟化のきざしもある中で、今後当社は突っ込んだ議論がさらに進められるよう、LNG燃料船やアンモニア燃料船等を踏まえて、これらのお客様とさらに協議を進めて、実現に向けて取り組んでいきたいと考えています。

 自動車船については、先ほどお話ししたとおり、堅調な需要を背景に環境対応を進め、お客様とともに中長期的な関係を築くことで、さらに持続的な成長を促したいということで取り組んでいます。足元でもスペースが足りない状況の中で、新造船の竣工は2024年以降増加する見通しですが、荷動きの増加や回復に加えて、環境規制に伴う減速運航や老齢船の退役については、当社想定である船齢25歳まで使う前提でも2026年までは供給不足が継続するというのが現状の当社見通しです。したがって当面需給はタイトという中で、足元のスペースがなかなか出てこないということで、お客様からは強くスペース提供の要望を受けており、契約も複数年にまたがるものにつながっているのが足元の状況です。当社が発注したLNG燃料船は今年以降合計10隻竣工してきますが、お話ししていてもお客様の環境への意識は非常に高いと感じます。来年はヨーロッパの国境炭素税と言えるEU-ETSがいよいよ導入されるタイミングにちょうど重なるということで、非常に関心も高まっている中で、LNG燃料船導入に係る必要な追加コストについては、現状お話しさせていただいている中でお客様より十分な理解を得られつつある感触を得ています。LNG燃料船のみならず、先ほどの鉄鋼原料同様に、次世代のゼロエミッション船についても、お客様とも具体的な協議を始めているところです。

 

C-3. 【事業戦略】LNG輸送船・新規事業領域-成長戦略の進捗

 LNGについては、皆様記憶に新しいと思いますが、一時期は脱炭素の流れがもっと再生エネルギーに進むだろうということで、不確実性がついて回っていましたが、ロシア・ウクライナ情勢により状況が一転して、現在ではエネルギーの安定供給という観点から焦点が当たっています。相対的に環境負荷が低いクリーンなエネルギーということで、LNGには大変強い焦点が当たっていて、新たなプロジェクトが始まります。また、増産を計画しているカタールなども売買契約が15年から27年と長期化していることもあり、お客様からはプロジェクトを前提に中長期契約の問い合わせの商談が増えつつあります。22年度の44隻から26年度の67隻、これはもう順調に当社としては目標達成に入ってきていまして、さらに30年度には75隻以上の船隊も、今ではある程度視野に入ってきている状況です。既に発表のとおり、三菱商事子会社であるDGIやペトロナス、その他の国内外のお客様と中長期契約の商談が漸次進み、また契約も締結している中、当社としては着実に安定収益の積み上げに今後も務めていきたいと考えます。また、技術、営業と一体となった顧客とのサポートを進めるということで、今年6月にシンガポールにKME(K LINE MARINE & ENERGY)という組織を新たにつくりました。これはLNGの輸送品質を高めるために力を入れていくのみならず、さまざまなお客様からの環境対応への問いかけにも応えられる組織です。

 最後に新規事業領域ですが、当社は中計で掲げているとおり、海運を主軸としています。海運事業で培った豊富な経験とノウハウを生かした低炭素、脱炭素に資する事業への参画を一つずつ進めていきます。液化CO2の輸送事業で言えば、来年からいよいよ開始する世界初のフルスケールであるCCS(Carbon Capture and Storage)事業、Northern Lightsでは2隻の液化CO2輸送船を使って、年間80万トンの液化CO2を海上輸送しますが、その運航及び船舶管理を当社が行うこととなります。これは今普及している、いわゆる中温中圧、温度で言えばマイナス20度で液化CO2を輸送する船となりますが、今後はより大量かつ長距離、例えばオーストラリア、マレーシアに日本から液化CO2を運ぶことになると必要になってくる低温低圧(マイナス50度前後で液化CO2を輸送する)技術について当社は経産省での補助金も得ながら、積極的に検討を進めています。これらを踏まえて国内外の複数の案件やプロジェクトへの参画について検討を進めています。また、将来の新たなエネルギー輸送事業としてのアンモニアは石炭火力発電での混焼、水素についてはLNGとの混焼など他にもさまざまな用途がありますが、それらについても検討を進めていまして、水素については大型水素船の保有、運航を企画するJSE Oceanへの出資を9月にご案内したとおりです。

 

C-4. 【資本政策】企業価値向上へ向けた取組みとPBRの関係性

 資本政策の進捗について、さまざまな形で、企業価値向上に向けた取組みによってPBR1倍以上を目指していきたいと考えています。当社のPBRについて、ようやくバランスシートの改善が落ちつきつつありますが、足元ではまだ0.8倍強です。PBRの要素分解ということで、企業の成長期待を表すPERと経営の収益性、効率性を表すROEとに分解できます。

 まずPERは企業の成長期待として、先ほどご説明したとおり、中計最終年度の経常利益について+1,400億円以上の新たな目標を設定し取り組んでいきます。それに向けて具体的な事業戦略、施策を積み上げた上で、実績も積み上げ、市場に訴求していくことで、いわゆる稼ぐ力を強化していくことが一つです。成長期待を妨げる要因としては、海運というとどうしてもボラティリティや投資規律の有無などが問われるところです。したがってガバナンスの強化ということですと、これまで何度もお話ししてきたとおり当社の投資規律の維持徹底ということでは、好調なときは抑制的に、市況が悪いときは戦略的にという投資行動を遵守し、過去の反省も踏まえて徹底していきます。それとともに、ガバナンスという意味と、多様な株主を意識した経営ということでは、社外取締役の構成比率が今年からボードメンバーの過半数を超えています。また、ボラティリティの低減という観点からは、当社は海運を主軸として低炭素、脱炭素化を収益の機会として取り組んでいく中で、事業の多角化ではなく、成長を牽引する役割を担う3つの事業を中心に、ボラティリティや成長の時間軸が異なる事業も組み合わせて、当社の限られた経営資源、これは人も含めてですが、分散させることなく集中させることで、市況への耐性を強化してボラティリティの低減に努めていきます。これらによって成長期待に応えられるよう、また、将来のキャッシュフローの創出力を訴求できるよう、今後取り組んでいきます。

 ROE、すなわち経営の収益性、効率性については、当社は常に10%以上ということで投資案件、全てのプロジェクトに取り組んでいますが、最適資本構成という観点から従前よりお話ししているとおり、競争力ある資金調達を可能とする財務の健全性と資本効率を両立させた上で、成長に必要な、企業価値向上に必要な投資を行います。その上で、機動的、積極的な株主還元をこれまでも実施しています。一例で言えば、昨年及び今年の8月には二度にわたって、総額およそ1,457億円を費やして17%相当の自己株式取得を実施しました。評価については、当社が想定する本源的価値などのさまざまな考え方がありますが、自己株式取得後の当社の株価の上昇率がEPS上昇率と比較していずれも大きく上回っている中、当社の企業価値向上や最適資本構成につながっているのではないかと考えています。これらをサポートして、管理してPDCAを回すために、スライドの右手にある、経営管理の更なる高度化によって、事業別の資本コスト、キャッシュフローを意識した事業別の経営管理体制を導入して進めています。事業別の経営管理をしっかり進めることで、先ほどお話しした投資規律の維持も徹底していくことになります。

 

C-5. 【資本政策】資本政策の進捗と企業価値向上に向けて

 これらの資本政策について、繰り返しになりますが稼ぐ力の強化については、経常利益目標の+1,400億円の目線を、もう一度どこまで上に持っていけるのか、今後検討を深めていく中で、中計で掲げた営業キャッシュフローの1兆2,000億円については、計画どおり順調に進捗しています。投資計画についても、先ほどお話しした通り、成長を牽引する役割を担う3事業、ここに8割弱が投入されます。一方で低炭素、脱炭素化を収益機会として取り組む環境投資に関しては、新燃料船も含めておよそ6割を投入します。これらを全部合わせて、6,300億円の投資を行う計画にも変更はありません。株主還元政策については、後ほどまたご説明します。こういった取組みによって企業価値を向上させてROE10%以上を目指し、PBR1倍以上や2026年度ROIC目標の6~7%という目線も達成していきます。

 

C-6. 【資本政策】株主還元政策

 株主還元政策ですが、今期の配当は期首に発表したとおり、中間配当については一株当たり100円を実施、期末配当については一株当たり100円を予定するということで、年間の配当一株当たり200円については変更ありません。自己株式取得については、8月に発表した自己株式取得ですが、600億円の計画に対して562億円により11,676,000株の自己株式取得が終了しました。これは10月18日にご案内したとおりです。600億円の予定に対して562億円ということなので、差額の38億円については、500億円以上と設定していた追加還元の原資に加えて、538億円以上ということで改定しています。来期以降の基礎配当一株当たり120円も変わりません。今お話ししたとおり、追加還元については500億円から538億円以上ということで、今後も機動的な還元を目指しますが、事業を取り巻く環境、業績の動向、投資などの資金需要のタイミングを踏まえて、適切に判断し、機動的及び積極的に実施していきたいと思います。

 

C-7. 事業環境の変化

 事業環境の変化については、ロシア・ウクライナ、イスラエルとハマスのパレスチナ問題、経済のデカップリング、これらによるサプライチェーンの変更。また、世界経済については高金利政策の継続によるインフレの進行、また、中国も景気変動が少し気になるところです。エネルギー政策についてもこの1年で大きく変わったとおり、どうしても流動的なエネルギー政策が実情であり、加えて大型外航船についても新たなCO2規制、EU-ETSのような規制がどんどん出てきます。これらに対して当社としても粛々と対応していかなければいけない状況ですが、ご説明したような当社が掲げた中計での事業戦略、資本政策、機能戦略を着実に実行することで、当社の企業価値及び持続的な成長を実現していきたいと考えています。