【2023年度第1四半期決算説明会資料】

A. 2023年度第1四半期決算概要

A-1. 2023年度第1四半期業績

 2023年度第1四半期業績は、売上高は2,222億円、営業利益+196億円、経常利益+491億円、当期純利益が+385億円という結果でした。

 前年同期、2022年度第1四半期との比較では、営業利益は主に自動車船事業での輸送台数増加によって7億円改善しました。一方、経常利益は、主にOCEAN NETWORK EXPRESS(ONE社)の、2022年度までにおける供給制限によってもたらされた高い運賃水準が下落し、かつ積高はまだ巡航速度に戻っていない状況で、前年同期比で2,182億円悪化しました。

 主な財務指標ですが、自己資本は1兆5,701億円、有利子負債が3,588億円、DERは23%、自己資本比率は74%となりました。

 

A-2. セグメント別第1四半期業績

 ドライバルクの経常損益は、実績が+15億円、前年同期が+145億円で130億円の減益です。2022年度が非常に良かったので、それとの比較で減益となりました。

 エネルギー資源は+24億円の経常利益、前年同期比で31億円悪化しました。

 製品物流全体では+459億円の経常利益、前年同期比では2,027億円の減益です。そのうちコンテナ船事業は+255億円の経常利益で、前年同期比で2,127億円の減益です。製品物流のコンテナ船事業を除いた部分は第1四半期実績が+204億円で、前年同期比では100億円改善しています。

 第1四半期の評価ですが、前年同期比では悪化しましたが、前回5月8日に公表した今年度の収支予想における第1四半期の予想と比べると収益は改善しています。主に円安の効果が大きいですが、ONE社の収支の改善、自動車船事業部門の収支改善によって、期初の予想における第1四半期の数値と比較して、実績は改善しています。

 

 

B. 2023年度通期業績予想と取組み

B-1. 2023年度通期業績予想及び変動要素

 2023年度の通期予想は、売上高が9,000億円、営業利益が+890億円、経常利益が+1,350億円、当期純利益が+1,200億円となっています。前回5月8日発表の公表値との比較では、売上高で300億円改善、営業利益で40億円改善、経常利益が50億円改善、当期純利益は前回公表から変更ありません。

 概況について、自動車船が堅調に推移する見込みで、営業利益は前年同期比102億円の改善を見込みます。経常利益はコンテナ船が巡航速度に戻る過程にあり、1,350億円を見込みます。

 前回公表値との差について、経常利益50億円改善の内容は、為替前提を見直した結果、前回は下期125円でみていたものを135円としたため、為替の評価益が出ています。もう一つのプラス要素は、自動車船事業の収支改善です。一方、マイナス要因はドライバルクとコンテナ船の下方修正があり、これらを合わせて経常利益が50億円改善しています。経常利益の改善に対して当期純利益が据え置きであることの背景は、主に税コストです。前回公表以後に見直し、現在の会計・税務ルールに照らすと税コストが前回公表より多くなるということで、当期利益は前回公表と変わらない数値になりました。

 前提については、為替レートは下期を135円と見ることにより期中平均136円4銭、バンカー価格は613ドル/MTです。この前提による第2四半期以降の9カ月間における変動影響は、為替は1円変動することで経常利益が12億円変動します。バンカー価格は、トン当たり10ドル変動することで経常利益は6,000万円変動するセンシティビティになっています。

 還元については、配当は前回公表どおり200円/株です。内訳は1株当たり120円の基礎配当と追加配当80円で、この点について今回変更はありません。一方、追加還元について、上限金額を600億円、取得する株式の総数の上限を1,167万6,000株という形で自己株式取得を実施することを本日開示しております。前回公表した500億円以上の追加還元について、規模を考えると、方法としては自己株式取得が好ましいという判断のもとに、決定したものです。

 

B-2. セグメント別通期業績予想

 ドライバルクは通期の経常利益が+90億円で、前回5月8日公表値からは30億円の下方修正をしています。これは、期初の段階では中国経済の回復が夏場ごろから本格化するだろうという前提だったのに対して、その回復が若干遅れていて、大型船の中国向けの鉄鉱石や石炭の輸入、また中小型船の穀物の輸入等が現状では想定より伸びていないことによります。

 そのために市況前提も下方に見直しをしました。15ページにドライバルクのフリーポーションの船の市況前提を示しています。今回の見直しで、CAPEの通期予想を1万5,400ドル/日にしていますが、前回公表ではこれが1万8,250ドルという水準でした。PANAMAXも、前回公表では1万5,500ドル/日と見ていたものを、今回1万2,750ドル/日に、HANDYMAXは前回1万4,000ドル/日と見ていたものを、今回1万1,450ドル/日に、SMALL HANDYは前回1万2,250ドル/日と見ていたものを今回1万600ドル/日と、それぞれ下方修正しています。

 以上のような状況でドライバルクに関しては、下期の経常利益+60億円は据え置きですが、通期経常利益は+90億円と予想、前回+120億円から30億円の下方修正をしています。

 エネルギー資源は、通期の経常利益予想は+80億円です。こちらは前回公表の通期予想と変わっていません。中長期の契約で固まっているので、市況その他の影響は受けづらい体質になっています。

 製品物流の通期経常利益の予想は+1,250億円で、前回公表値+1,180億円から70億円の改善です。一方、コンテナ船事業は+490億円の通期経常利益予想で、前回500億円の公表に比べて10億円悪化しています。よってコンテナ船事業以外の製品物流は前回公表と比べて80億円改善していることになります。製品物流のうち自動車船事業については、船腹不足の状況は変わっておらず、むしろ加速しています。特に日本などのOEMの部品不足や半導体不足の状況が解消されつつあり、生産計画が正常化していることに伴い、需給はますますタイト化している状況です。新造船の着工件数は、巷間170隻程度あると言われていますが、現在の世界の自動車専用船フリートでは老齢船が多いため、恐らくこれらの新造船が竣工してきても老齢船のリプレイスで解消してしまうのではないかという見方を当社は持っております。急速に船舶の需給状況が改善する状況にはないと、考えています。

 コンテナ船事業についての当社見通しは、前回5月8日公表時は経常利益予想で上期が+270億円、下期+230億円、通期+500億円としていました。今回、上期+285億円、下期+205億円、通期+490億円と10億円の下方修正をしています。当社によるONE社全体の収支予想は、約1,100百万ドルを上げるだろうと見ています。前回公表の段階では約1,200百万ドルの予想だったので、100百万ドル程度悪化するだろうという前提のもと、当社におけるコンテナ船事業の収支も修正しています。

 四半期ごとに見ると、第1四半期実績は+255億円の経常利益ですが、これは前回公表の当社予想から改善しています。改善要因は、4月、5月において、特に北米航路で前年度の長期運賃契約が残っていたので、それらが収支の押し上げに貢献したということです。積高も予想より堅調であったこともあり、+255億円の経常利益を確保しました。

 第2四半期の経常利益予想が+30億円と大きく落ちますが、これは6月で短期の運賃が非常に急落したことに加え、前年度の長期運賃契約の効果が切れたことがあって、6月以降、第2四半期の運賃水準が下落したことがまず大きな原因です。また、積高も予想を下回っている状況で、これを踏まえてONE社としては、それまで第1四半期でもとに戻していた減便を再開することで対応しているところです。このような背景に加えて、採算手法上の話になりますが、為替前提の水準を円安方向に修正しました。当社のコンテナ船事業の収支は、期末の為替レートで円に換算して評価替えする手法をとっており、為替前提が円安になった分、全般的に通期での収支がよくなるのですが、第1四半期は期末の数字が確定しているので、この数字は変えられません。結果、特に第2四半期において前四半期の円安部分の効果が剥げ落ちてしまい、全体としては整合しますが、第2四半期だけ見ると、収支が実態より悪化して見えます。この点、市況要因にプラスアルファで第2四半期予想を悪くしています。

 下期の経常利益は前回公表時230億だったものを205億にしていますが、これは第2四半期の運賃市況に鑑みて下期における運賃水準も若干下方に見直したことが背景にあります。

 このONE社の収支予想、果たしてコンサバなのか、あるいは楽観的なのかは議論がありますが、ご説明したようなコスト削減プランの効果は織り込んでいます。この効果がこれから大きく変わることはないでが、一方で夏場以降、各社いわゆるGRIという名称で運賃修復をお客様に申し入れしていますが、この運賃の値上げ効果は、未だ収支に織り込んでいません。もしこの運賃修復が実現し持続できれば、その分上方修正する余地のある数字だとご理解ください。

 

B-3. 自営事業のポイント(前年通期実績比)

 自営事業の経常利益について、前年通期実績比を要素別に説明します。右側の赤い棒グラフがコンテナ船以外の当社自営事業の2023年度経常利益の見通しで、現状+930億円です。一方、2022年度の自営事業の経常利益の実績は+892億円でした。これは5月の前回公表では+940億円という数字を開示していましたが、今般一般管理費の事業部門配賦金額を改め、事業部門が多く負担する形にした結果、+892億円という実績になったものです。

 2023年度は+930億円の経常利益になる見込みで、前年度と比べて改善します。その内訳は、まず一過性としているプラス要因の55億円、これは主に為替影響です。ドライバルクは122億円の悪化、エネルギー資源もわずかですが12億円悪化します。製品物流は、主に自動車船で117億円の改善要因があり、これらを合計して前年同期比38億円改善して、+930億円になります。一方、前回公表時点では、当期の自営事業の経常利益を+880億円と見ていたので、ここからも50億円改善する予想になっています。

 

C.中期経営計画の状況・進捗

C-1. 事業環境の変化

 当社の事業環境に対する認識は大きく変わっていません。まず経済デカップリングに記載ある通り、米中、それからロシア・ウクライナ、中国、台湾、北朝鮮などの東アジアなどの地域における地政学リスクは継続するだろうとみています。世界経済については、欧米の景況感、インフレ、それから大きいものとして中国経済の回復の遅れ、これらがリスク要因であるという認識です。エネルギー政策は、環境のためのコスト負担が増えることもありますが、それ以上に新しい規制に対して各社の事業体制や、ビジネスモデル等々を変えていかなくてはいけないと考えています。そういう意味合いでの負担もある、というのが基本認識です。

 そうは言いながら、中計に基づいた対応としては、長期の経営ビジョンに基づいて、ポートフォリオ戦略を軸にして、自社・社会の低炭素・脱炭素を事業機会として捉えて成長していく、という方針に変わりはありません。

 

C-2. 【資本政策】資本政策の進捗と企業価値向上に向けて

 資本政策についても、基本的な考え方の枠組みは中計と変わっていません。一方、いろいろなKPIや数値目標は都度アップデートしますので、それらを要約しました。

 稼ぐ力の強化として、営業キャッシュフロー1.2兆円以上を目指します。投資計画は、現時点で成長投資のための枠として6,300億円を維持していきます。株主還元政策に関しては5,000億円以上という方針で、こちらも変わっていません。

 企業価値向上については、従来ROE10%以上、2026年度の目標としてROICを6%~7%にすることを掲げていいました。今回、新たにPBR1.0倍以上を目指すという形で数値として標榜していますが、この点のみ従来と違っているところです。

 

C-3. 【資本政策】株主還元政策

 配当は年間配当200円で前回と変わらず、自己株式取得は取得価額の総額の上限600億円、取得する株式の総数の上限1,167万6,000株、いずれかの上限に達するまで継続します。取得方法としては、前回同様、自己株式立会外買付取引(ToSTNeT-3)と、これだけで全ての自己株式取得が果たせない場合は、東京証券取引所における市場買付を予定します。全体の自己株式取得の期間は8月3日から10月31日までで、ToSTNeT-3に関しては、本日開示の通り、8月3日から8月9日までを取得予定期間としています。

 株主還元の実績と今後の計画についての変更点としては、従来2023年度における追加株主還元を500億円以上としていたものを、今回自己株式取得の形で600億円(上限)にしました。全体の追加還元については1,100億円以上としており、こちらは現時点で変更していません。結果として、2026年度末までに残る500億円以上の追加株主還元を実施することとしています。