2022年度第3四半期決算説明会資料】

A. 2022年度第3四半期決算概要

A-1. 2022年度第3四半期業績

 第3四半期の実績について、売上高が7,288億円、営業利益+806億円、経常利益+6,419億円、当期純利益が+6,382億円という結果になりました。

 主な財務指標は、自己資本が前期末比5,928億円改善の1兆4,774億円、有利子負債は478億円減少し3,757億円、DERは23ポイント改善の25%、自己資本比率は15ポイント改善の71%という結果になりました。

 

A-2. セグメント別第3四半期業績

 セグメント別の第3四半期業績について経常利益の数字をご説明します。ドライバルクが+231億円で、前年同期比83億円の改善。エネルギー資源が+93億円で、前年同期比72億円の改善。製品物流全体で+6,159億円で、1,906億円の改善です。コンテナ船事業については+5,646億円の経常利益、前年同期比1,487億円改善しました。コンテナ船事業を除いた製品物流セグメントは、+513億円、前年同期比419億円改善しています。市況、概況等は、後ほどまとめてご説明します。

 

 

B. 2022年度通期業績予想と取組み

B-1. 2022年度通期業績予想及び変動要素

 2022年度通期の業績予想は、売上高が9,400億円、営業利益+850億円、経常利益+6,600億円、当期純利益+6,500億円です。為替レートは通年で134円17銭、バンカー価格は772ドル/MTという前提です。

 売上高9,400億円は前年同期比で1,830億円の増加、営業利益も前年同期比で674億円増加の+850億円です。この2つの数字が高いというのは、自営事業の売り上げと利益が上がっているということです。ご参考まで、当社の売上高のレコードは2015年3月期の1兆3,524億円、営業利益のレコードは2008年3月期の+1,296億円です。できることであれば、これからも中計のもとで自営事業を伸ばしていって、これらのレコードを更新できればと考えています。経常利益+6,600億円、当期純利益+6,500億円は、下方修正はしましたが、なおこれまでのレコードの記録になる数値です。

 第2四半期の公表数値比で経常利益、当期純利益とも500億円下方修正をしていますが、これは通期業績の主な変動ポイントの一番下の行に記載の通り、3つの要因があります。一番大きいのがコンテナ船市況下落によるONEの持分法適用利益の下方修正です。次に期末の想定レートを今まで130円としていたものを今般128円に、今の円高の状況に鑑みて変更したので、経常利益が下方修正されております。最後に、第3四半期において150円近辺ぐらいから急激な円高が進行したために、一部の外貨建て資産の評価において一過性の為替の差損が発生しています。こちらは既に確定しているので、これ以上ドル円の変更によって影響を受けることはありません。このような3つの原因により、合計500億円の下方修正をしています。自営事業の収支が下がったということではなく、むしろ自営事業は第2四半期と比べて改善しています。

 為替の変動影響は、1円変動により経常利益が48億円動き、相変わらずセンシティビティが高い状況です。一方、燃料油価格については10円の変動でも経常利益への影響はプラスマイナスゼロです。バンカー・アジャストメント・ファクターが全船種において効果を上げているので、バンカー価格変動の影響は受けない体質になっています。

 株主還元について、期末配当予想を前回1株当たり100円としていましたが、今回200円増額して期末配当予想を1株当たり300円としたいと思います。中間配当100円、こちらは既に実行済みですが、これと合わせて株式分割後基準で通期1株当たり400円となる見通しです。株式分割前基準では、1株当たり1,200円の配当になるということです。

 

B-2. セグメント別通期業績予想

 セグメント別の通期業績予想です。ドライバルクが経常利益+240億円、エネルギー資源が+100億円、製品物流全体で+6,360億円、そのうちコンテナ船事業が+5,700億円、コンテナ船事業以外の製品物流セグメントは+660億円の経常利益を想定しています。

 ドライバルクは、マイナス要因としては、足元は季節的要因も作用して、市況は今軟調に推移しています。また、中期的に見て、中国の鉄鋼需要の先行きの不透明感があります。さらに欧米のインフレ高進による市況の悪化懸念といったものが、マイナス要因として挙げられると思います。一方、プラス要因としては、ロシア・ウクライナ情勢の影響などもあり、ドライバルクの貨物の海上輸送のトンマイルが戦前より伸びているということは、その面だけ見るとドライバルクの市況にはプラスの要因になろうかと思います。次に供給面については、新造船の竣工量が限定的で、各船社発注を手控えていて、そういう意味では需給環境は悪くないということが言えると思います。今後の見方については、足元の季節的要因、並びに中国の経済の不透明さによる非常に大きな落ち込みは解消していくだろう、春先ごろから中国経済の回復をにらみながら、23年度の後半に向けて強含んでいくのではないだろうかという見方が一般的かと思います。先ごろIMFが世界のGDPの見直しをしまして、中国のGDPを0.8%上方修正して5.2%としました。このような材料をにらみながらエクスポージャーを管理して、既存船隊の効率的な配船を行っていく方針です。

 エネルギー資源については、運航船のほとんどが中長期の契約のもとにあり、市況の影響は相変わらず極めて限定的であることに変わりはありません。したがいまして安全運航を心掛けて、本船が不稼働になるようなことがないような形で運営をしていくことが一番重要ではないかと思っています。

 自動車船は、マイナス要因としては半導体、部品の供給不足、これによって自動車の製造そのものが減産の状態にあるということです。また、ロシア・ウクライナ情勢の影響により、主に欧州における販売不振の懸念もまだ払拭されていません。

 資料の15ページをご覧ください。このような状況で当社自動車船の輸送台数の2022年度通期予想は325万2,000台です。これは2021年度輸送台数通期実績の288万6,000台よりは伸びていますが、資料に記載はありませんが、2019年度、コロナ前の輸送台数実績が332万8,000台で、これには追いついていない状態になっています。

 自動車船のプラス要因については、今何と言っても自動車船が不足しており、船舶の需給はかつてなく逼迫しています。したがいまして今後は需給面からは、23年度に向けては今の底堅い市況が継続するという見方が一番強いと思います。一方、船が足りない状況なので、お客様の需要に見合った船隊の確保が大きな課題になるだろうと見ています。

 物流・近海内航については、上期はコロナ禍の影響により、結果的に業績が堅調に推移した形になっています。下期はそちらが落ちついてくるので、フォワーディング、近海内航事業は若干市況が軟化するのではないかと見ています。

 コンテナ船については、ONEのところでまとめてご説明します。

 

B-3. 自営事業改善ポイント(前年通期実績比)

 自営事業の改善ポイントです。2021年度と比べて、2022年度予想において当社自営事業がどれだけ改善するか、その原因は何かを示したものです。2021年度の自営事業の経常利益+455億円が、今期末では+1,000億円になるであろうという見方をしています。為替影響を除いた収支改善は406億円、為替影響を含めると545億円の改善です。この545億円は、第2四半期公表資料では625億円としていましたので、若干前回よりは少なくなっています。ページの一番下に545億円の改善の内訳を記載しています。まず為替影響で139億円、次に自営事業の収支改善で334億円、最後に市況・荷況・その他で72億円の改善です。ドライバルクは前年に比べて市況が悪化しているので-137億円ですが、それを含めても72億円市況・荷況で回復しているという分析です。

 部門ごとの改善理由について、ドライバルクは不経済船処分を昨年度までに完了しまして、船隊の適正化、低コスト化が図れたことが原因です。エネルギー資源も、オフショア支援船事業やケミカル船事業などの採算性の低い事業からの撤退を完了し、中長期の契約の積み上げで安定収益を志向していくことができるようになったということだと思います。自動車船に関しては、主に当社としては大型船確保によってスペースの供給力と船隊競争力を確保しました。その状況下で今のような需給の逼迫という状況が起きていて、結果として契約更改の都度、運賃の適正化、運賃修復が実現できており、そのために収益性が回復しているということです。近海内航については、完全子会社化によるグループシナジーはスタートしたばかりですが、確実に効果が上がると思いますので、今後の収益改善が期待できる要素だと考えています。

 

 

C. 中期経営計画の状況・進捗

C-1. 株主還元政策の進捗(2022年度)

 株主還元政策の進捗状況です。先ほど概況を説明しましたが、これまでの公表値は一株当たり中間配当100円、期末配当予想100円としていましたが、期末配当予想を200円増額して一株当たり300円、通期で400円の予定とします。この増配の考え方について、当社は中期経営計画において基本的な株主還元の考え方を示しています。2026年度までの中期経営計画期間に関して、キャッシュイン・フローを確保した上で、ポートフォリオ経営で自分たちの得意な分野での投資を増やして企業価値を上げていく、そのような課題を持っていますので、そこへの投資をまず最優先で決めて、財務の安定性を確保した上で、適正資本以外のものは株主還元をするというのが、基本的な考え方です。今般の見直しに関しても、今年は中期経営計画の初年度に当たりますが、幸いにも期初の予想よりも利益水準並びに営業キャッシュ・フローが大きく上ぶれていますので、その部分を資本構成の適正化並びに資本効率の改善という観点から配当に回すということで、配当の増額を発表しています。また自己株式取得については、取得価額の総額の上限として1,000億円ないしは株式の総数の上限として3,523万6,000株、このいずれかまで自己株式を取得することをアナウンスしましたが、実行に移しています。2023年1月末時点において、金額ベースで784億円(78.4%相当)、株数で3,179万株相当の取得を既に完了しています。以前からのアナウンスの通り、取得した自己株式については原則として消却することを予定しています。

 

C-2. 川崎汽船グループを取り巻く事業環境

 資料12ページをご覧ください。事業環境について、記載ある3つのような課題が、当社にとっての事業環境上のリスクだと考えています。まずは世界経済の分断、次にエネルギー価格の高騰あるいは乱高下、最後にゼロコロナ政策解除後の中国の経済がどうなるかということです。対応策としては、こういったリスクのためにということではなく、当社の経営計画を進める上での構造改革によって、これらのリスクが起きたときに大きなロスの要因になる不経済船や不経済事業からの撤退を済ましており、ある程度の市況耐性は既に準備ができているという認識です。その上で、こういったリスクがあっても中計のポートフォリオ戦略に基づき、当社として競争力のある事業分野に経営資源を集中して投入し、低炭素、脱炭素という新たな海運業の需要を取り込んで事業を進めていく方針に変わりはありません。

 

 

OCEAN NETWORK EXPRESS (ONE)  2022年度第3四半期決算説明資料

 ONE社の第3四半期は、税引き後利益で27億6,800万ドルの利益を上げることができました。これは前年同期比で21億2,000万ドルの減少という、ほぼ半減に近い状況ではありますが、一方で2022年11月の公表数値と比べると増益になっています。

 まず需要から説明しますと、積高は、ピークシーズンであるはずの第2四半期から勢いが衰え始めていて、第3四半期に至ってその傾向がより顕著になっています。背景としては、まず北米においては商品在庫が積み上がっていて、なかなか米国における輸入が伸び悩んでいること、欧州においては、インフレ並びにエネルギー価格の高騰で消費意欲の減退が生じて、荷動きが落ちているのではないかと見ています。航路別積高・消席率の表をご覧ください。北米の往航のピーク、普通は第2四半期がピークになるわけですが、積高は57万8,000TEUで第1四半期の57万7,000TEUと横ばいになっており、ピークの伸びが見られない状況でした。それから第3四半期に至って、消席率で見ると、80%まで下落しています。一方、欧州往航ですが、2021年度を見てみると、大体四半期当たり40万台のTEUを維持していますが、2022年度の第2四半期から30万台に落ちています。消席率そのものは90%以上を保っていますが、これは船隊投入量を調整してこのような数字になっているものです。一方、供給面で見ると、世界規模での港湾混雑の解消が進んでおり、サービス頻度が増加して実質的に供給が増えています。待機船腹量も、半年ぐらい前は全船腹の15%程度船が停まっていましたが、今は2~3%までに減少しています。

 このような状況があり、平均運賃は今低下しています。例えば北米往航の運賃指数は、この表でのピークは2022年度の第2四半期、ついこの間まででしたが、そこで389を記録してから第3四半期に至って264と、かなり速いスピードで下落しています。一方、欧州往航は、ピークが2021年度の第4四半期の552です。これがしばらくは同じような水準を保っていましたが、第3四半期に至って303まで急落をしているということです。ただし、この運賃の下げ幅というか下げるスピードは緩やかになってきていて、主要航路である北米航路、欧州航路においては、運賃に関して底を打ったのではないかという見方をしています。

 ONE社の通期見通しについて、2022年度の税引き後利益は、147億2,800万ドルという見通しを立てています。これは、前回11月の予想に比べて5億4,200万ドル下方修正をしています。

 こういう状況に対してどのような対応をしていくかについて、5ページをご覧ください。ONE社が打つべき対応について、積高が戻るか運賃が上がるかというのは別の次元ですが、ONE社として今できることとして、表のOperation excellencyに記載の通り、まず減便です。また、喜望峰ルートの適宜利用について、これは船を停めておく、アイドリングしておくことによって船質が下がったりコストがかかったりするということよりも、コストの高いスエズ海峡を通らずに、喜望峰を回ってゆっくり航海することによって経済性が上がるという選択肢も検討しているということです。それから減速航海です。また、一時非常に不足していたコンテナ等々も、今のような状況で余ってきていることもあるので、その余剰のリースコンテナを返却することや、空のコンテナを消費地のヨーロッパやアメリカから中国やアジアへ持って帰るといったことを、地道に今やっておくことがいいのではないかということです。

 肝心の2023年度以降のコンテナ船の市況について、現時点では不透明感が強いですが、需給の面では、2023年度は0~3%程度の伸びではないかと考えています。供給は船の竣工だけを見ると9%ぐらいの伸びがありそうですが、恐らく減速航海したり、あるいは船をスクラップしたりということで、恐らく5~7%程度にとどまるかと考えています。需要の伸びをかなりコンサバに0%、今年並みとしますと、需給ギャップとしては5~7%程度ではないかと見ています。ただし24年以降、23年度末ぐらいからコンテナ船の新造船が出てくるので、その段階で見方をある程度改める必要があると考えています。