2022年度第2四半期決算説明会資料】

A. 2022年度第2四半期決算概要

A-1. 2022年度第2四半期業績

 上期の売上高は前年同期と比べて1,253億円改善の4,829億円、これは自動車船事業を中心とした増収や円安による効果が主な要因です。営業損益は、自営事業を中心に収支が改善したこともあり、前年同期比で428億円改善の+530億円です。自営事業については、高コスト船の処分や船隊適正化など構造改革が前年度で完了したことなど収支改善策の取り組みに加えて、コロナ禍からの荷況や市況の改善や、急速に進んだ円安など3つの要因が相まって、このような実績となりました。経常損益については、前年度に引き続き大きく収支が改善したコンテナ船事業が牽引し、3,295億円改善の+5,675億円、当期純損益については、3,194億円改善の+5,654億円となりました。

 主な財務指標について、自己資本は前期末比6,431億円改善の1兆5,277億円、DERは同比22ポイント改善の26%、ネットDERは同比9ポイント改善の11%、自己資本比率については同比14ポイント改善の70%となっています。

 

A-2. セグメント別第2四半期業績

 ドライバルクセグメントは、上期の経常損益が前年同期比で201億円改善の+260億円、これはコロナ禍からの経済回復、需要の回復、荷況の回復が大きな要因ですが、加えて先ほど説明した高コスト船の処分や船隊適正化が進んだことにより、収支の積み上げが具現化しました。エネルギー資源セグメントは、前年同期比83億円改善の経常利益+92億円となりました。製品物流セグメントは、前年同期比2,987億円改善の+5,369億円の経常利益となりました。コンテナ船事業は、今年前半までは輸送需要も旺盛に推移し、加えてサプライチェーンの混乱に伴い需給バランスが逼迫し大きく締まったことによって、短期運賃市況を中心として運賃レベルが高水準で推移しました。コンテナ船事業が大きく改善したことに加えて、自動車船事業の収支改善も非常に大きく、未だ半導体など部品不足の影響は残っているものの、コロナ後の荷況回復ということで欧米系及び日系メーカーが生産を回復しています。加えて、中国から新たに増えてきた輸出が寄与している形となります。

 

 

B. 2022年度通期業績予想と取組み

B-1. 2022年度通期業績予想及び変動要素

 通期業績予想は、売上高が前年同期比1,630億円改善の9,200億円、これは自動車船事業の増収及び円安による効果が大きな要因となります。営業損益は、自動車船及びドライバルクに加えて内航近海事業なども改善し、前年同期比624億円改善の+800億円です。経常損益は前年同期比525億円改善の+7,100億円、当期純損益は前年同期比576億円改善の+7,000億円ということで、2期連続の最高益を見込みます。

 為替前提は、通期で132円02銭ですが11月以降は130円という前提で収支を試算しています。為替変動は1円変動に対する影響額がおよそ52億円ですので、仮に今後下期通して135円で為替が推移した場合、通期の経常損益が260億円押し上げられ+7,360億円になるということです。

 

B-2. セグメント別通期業績予想

 ドライバルクセグメントは、前年同期比93億円改善の+330億円の経常利益を見込んでいます。上期はコロナ後の経済回復による荷況回復がありましたが、足元ではゼロコロナ政策を続けている中国の鉄鋼需要が若干調整モードに入っており、下期は大型船を中心に市況は一定程度調整される前提にて収支予想を立てています。

 エネルギー資源セグメントは、LNG船、電力炭船、大型原油タンカー(VLCC)などが、中長期契約のもと安定的に稼働しています。

 製品物流セグメントは、全体では前年同期比342億円改善の+6,750億円の経常利益を見込んでいます。コンテナ船事業は前年同期比で108億円悪化の経常利益+6,130億円、コンテナ船以外の自営事業では差し引き前年同期比450億円の改善を見込んでいますが、最大の要因は自動車船事業の収支改善です。欧米及び日系メーカーを中心に、徐々にコロナ後の生産回復が続いているものの、半導体不足などの影響が残る中、EVのみならずガソリン車も含めて中国からの輸出が強く伸びました。例えばコロナ前の19年度は中国からの輸出が60万台程度でしたが、恐らく今年は4倍近い240万台程度まで伸びる見込みで、非常に大きな伸びが期待されます。中国からの輸出は足の長い欧州向けや中近東向け、南米向けにも輸出されていますので、自動車船全体としては需給バランスが非常にタイトに推移しています。当社も収支や運航効率の改善に加えて、運賃修復についても積極的に取り組んできた結果が収支に現れてきています。

 

OCEAN NETWORK EXPRESS ONE社) 2022年度第2四半期決算説明資料】

 第2四半期の税引後損益は、前年同期比で13億2,000万ドルの改善となる+55億2,100万ドルです。ヨーロッパは少し早い段階から前期比で荷動きの伸びが鈍化、減少していますが、北米航路も8月、9月頃から徐々に鈍化し前期比でマイナス成長になってきたものの、上期は前半を中心にサプライチェーンの混乱が継続したことで需給バランスはタイトに推移し、運賃市況は高水準を維持しました。その結果、第2四半期の税引き後利益は+55億ドルということで、ほぼ第1四半期並みの実績となりました。

 今後の見方について、5ページに今後の見通しが説明されています。各国の水際対策の緩和によって人の流れが元に戻ってきている中、モノ消費からコト消費に戻りつつあります。また消費財の在庫も積み上がりつつあり、懸念としてはインフレによる消費意欲の減退で、アジア発北米向け航路では9月以降も前年同期比で5%強の荷動き減少が見込まれ、ヨーロッパ向けも同様に荷動き減少が今後も続くものと見ております。

 従いまして6ページの業績見通しでは、下期は短期運賃市況や需要の減退、サプライチェーンの混乱が徐々に解消されていくことにより、今年前半まで続いたタイトな需給バランスの緩和が継続されていくと想定にて、短期運賃市況を中心に軟化、調整されていくことを織り込み、通期では+152億6,900万ドルの税引き後利益を見込んでいます。これは前年同期比で14億8,700万ドルの悪化です。今後の中長期契約の更改が迫る中、短期運賃市況の動向は一定程度の調整はやむを得ないとして、どこで反転の兆しを見せるのかなど、当社としても今後の動向を注視しています。

 

B-3. 自営事業改善ポイント(2021年度比)

 自営事業改善のポイントについて、2021年度実績との比較ですが、前年度の自営事業の経常利益455億円に対して今年度は625億円改善の+1,080億円の経常利益予想となります。そのうち、為替影響が267億円、市況・荷況・その他が48億円ですので、為替と市況など外部要因によるものがおよそ半分の315億円です。残りの310億円が事業収支改善のための様々な施策や構造改革も含めた効果が現出しています。自動車船については、2020年コロナで一旦市況が大きく落ち込んだ際に小型船や老齢船、コスト競争力に劣る船を処分して、その後大型船への入替を進めたことに加え、航路網も採算性を重視して再編や見直しを行いました。また、これまで取り組んできた建設機械をはじめとするHigh & Heavy貨物の取り込みや需給バランス改善に伴う運賃修復への取り組みを地道にしっかり取り組んできました。その効果が現出し、コンテナ船を除く製品物流セグメント全体の450億円改善の大きな部分を自動車が占めています。加えて内航近海事業についても、コロナ後の需要回復も相まって収支が改善してきています。

 

 

C. 中期経営計画の状況・進捗

C-1. 資本政策の進捗

 資本政策の進捗について、当社が2022年5月に発表した中期経営計画では、まず最適資本構成を常に意識しながら、資本効率と財務の健全性を確保し、キャッシュフローを踏まえ企業価値向上に必要な投資を行います。その上で積極的に自己株式取得も含めた株主還元を進めることによって、中長期的な企業価値の向上を図ることを基本方針としています。2022~26年度の現中計期間において4,000億~5,000億円規模の株主還元を実施し、2022年度は8月に公表済みの中間配当及び期末配当に加えて、1,000億円以上の追加還元を行う方針を示してきました。

 今般、その追加還元については、規模感も鑑みて、全額を自己株式取得とすることが望ましいと判断しました。当社株式の流動性及び市場価格に与える影響も鑑みて、当社の大株主であるエフィッシモ社及びみずほ銀行に自己株式取得への協力を打診しました。両社からは概ね持分割合に相当する数量につき自己株式取得に応じて頂けるという意向を確認しました。このような意向の確認については、当社株式の流動性及び市場価格への影響を一定程度緩和し、この両社以外の当社株主の皆様にも市場での売却機会を付与していく点で、当社及び当社株主の皆様にとって望ましいと判断し、自己株式取得を実施することを決定しました。

 

C-2. 株主還元政策(2022年度)

 自己株式取得の取得価額の総額は上限1,000億円、取得する株式の総数の上限は35,236,000株を上限として実施します。取得方法については自己株式立会外買付取引(ToSTNeT-3)及び東京証券取引所における市場買付けを、2022年11月8日から2023年3月31日の期間で実施します。今回取得する自己株式については、原則として消却することを予定しています。なお、配当については既に8月に公表している通り、中間配当は株式分割前の基準で1株当たり300円、期末配当は株式分割前の基準では1株当たり300円ですが分割後の基準では1株当たり100円を実施予定です。また期末配当については、下期業績動向及び株主還元方針に基づいて、今後の営業キャッシュフロー及び資金需要を考慮の上、追加的な還元策も含めて今後検討していきます。

 

C-3. 中期経営計画の進捗概要

 現中計では低炭素・脱炭素化を成長の機会として当社の成長戦略を策定し、鉄鋼原料船事業、自動車船事業、LNG輸送船事業を、成長を牽引する役割を担う3事業とし、経営資源を集中的に配分することにより収益基盤を強化することを目指しています。その意味では様々な新技術の提供も含めた環境対応や、顧客密着による低炭素・脱炭素化への取り組みが非常に重要であるため、営業体制の強化や新たなチームの設立など組織変更を進めています。機能戦略については、低炭素化に大きく貢献する風力を利用したSeawingの開発と運用準備は着実に進捗しています。また、当社にとって非常に重要な安全運航・船舶品質管理は拡大するアジア市場において地域密着と顧客密着を実現して多様なニーズに応えるべく、まずシンガポール拠点の拡大と強化を予定通り進めています。デジタルトランスフォーメーションについても、当社の最も重要な安全運航・船舶管理においては、船上の働き方として様々なデバイス活用を可能とするWi-Fi機能を各船に充実させ、サイバーセキュリティ対策を本船上まで施した上で対応を進めています。人材育成についても、当社の事業ポートフォリオ戦略を支える人材の確保と育成は、多様化も含めて非常に重要な取り組みであり、着実に進めています。

 当社の成長を牽引する役割を担う3事業については、皆様に詳細や進捗を理解して頂くために、来年5月頃に事業説明会を別途開催したいと考えています。

 

C-5. 事業戦略の進捗(成長を牽引する役割)

 鉄鋼原料船事業は、LNG燃料船のみならず次世代のゼロエミッション船による燃料転換ニーズも捉えて、お客様と様々な働きかけを行っています。中東最大のアルミニウム精錬会社であり、当社とは30年を超える取引があるEGA(Emirates Global Aluminium)社や、インドを代表する製鉄会社であるJSW社と脱炭素化に向けた共同研究や包括協議に関する覚書を締結しました。インドは国土が広く陸上の交通網が発達していない国で内航輸送が非常に重要な位置を占めるのですが、JSW 社とは内航輸送でも当社はパートナーとして中長期契約を締結しています。また、Seawingについては今年12月にケープサイズバルカーへの初号機の搭載を始めるとともに、2年後には2号機をLNG燃料焚き船に搭載を進めることを決めています。加えてNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)のグリーンイノベーション基金事業を利用したアンモニア燃料船の開発や取り組みも、お客様との共同研究の中で精力的に進めています。

 

C-6. 事業戦略の進捗(成長を牽引する役割)

 自動車船事業は、需給バランスが非常にタイトになりつつある中で、当社は既存のお客様であるOEMとコロナ禍においても輸送基盤の拡充を行いながら、中国を中心とした新たなBEVの需要にもしっかり取り組むことにより、収支の底上げを図っています。運賃修復や建設機械をはじめとするHigh & Heavy貨物の着実な取り組みを続けています。また鉄鋼原料船事業と同様に、お客様と環境対応や新たなゼロエミッション燃料の活用も含めた協働体制を協議するために、組織営業・環境営業体制を新たに強化して、チームを新設して取り組んでいます。具体的に複数のお客様と話を始めておりまして、具体的な進展があれば当社として開示していきます。今年4月から当社としては国内初となる完成車ターミナルを横浜港で運営を開始しましたが、国産車のみならず外国車の積み替えにも活用しており、現状はフル稼働の状況です。

 

C-7. 事業戦略の進捗(成長を牽引する役割)

 LNG輸送船事業は、当社として拡大するアジアの需要をしっかり取り込むということです。今朝も追加契約の5隻分を発表しましたが、世界最大の事業規模を誇るQatarEnergy社向け合計12隻の大型長期定期傭船契約・造船契約の締結を終えました。またマレーシア国営石油会社のPETRONAS社とは、中型船2隻が既に竣工しています。他にも様々なプロジェクトに対応している中、当社として現在の44隻を2025年までに70隻程度に、中長期契約をベースとして船隊規模を拡充していく計画は予定どおり進んでいます。

 

C-8. 事業戦略の進捗

 近海内航事業は、今年6月に完全子会社化を進めた川崎近海汽船が、当社の国内輸送、海上輸送におけるグループ会社のリーダーとして、シナジー創出の最大化を図るため、幾つかのテーマで国内主要関係会社も含めてワーキンググループを組成して共に取り組んでいます。これも結果が出ましたら、皆様にお知らせします。

 

C-9. 事業戦略の進捗

 コンテナ船事業は、当社として経営、オペレーション両面を支える人材を引き続きONE社に供給することが一番大事であり、株主としてONE社のガバナンスへの関与を強化していきます。これは今後自社で船隊整備を進めるONE社の海技力・船舶管理能力の強化も含まれます。株主としてONE社の中長期的な企業価値向上に向けた事業計画の策定、実行へのサポートを引き続き強めていきます。

 新規事業は、シンガポールにおいて次世代ゼロエミッションの有力候補の1つであるアンモニア燃料供給の実現に向けて、Maersk社、シンガポールの海事局であるMPA、Keppel社や住友商事などと共に共同プロジェクトを推進しています。風力発電支援船事業については、日本のマリコンをリードする五洋建設社と共に、洋上風力発電支援船の保有船舶管理において協業するということで、覚書を署名するだけでなく具体的な協議を開始しています。

 

C-12. 川崎汽船グループを取りまく事業環境

 海運を取り巻く事業環境については、より不透明感が強まっている状況です。米国では労働力不足に端を発したインフレや加熱した景気を冷やすために、昨日FOMC(連邦公開市場委員会)は金融政策として金利の引き上げを決定していますが、景気下押しの懸念があります。またロシア・ウクライナ問題をきっかけに天然ガス供給が悪化してエネルギー資源価格が高騰しています。加えて中国のゼロコロナ政策は、現状では来年3月の全国人民代表大会までは続く見立てですが、その後遅滞なく解除されるのか懸念されます。これらは経済環境、事業環境に大きな影響を与えるリスクとして、当社として注視する必要があります。その中でも当社としてはこれまでどおり脇を固めてしっかり対応していきます。特に中計に基づいた対応として、前年度に既に船隊適正化、高コスト船の処分を終えており、各事業部門のエクスポージャー管理もしっかり進める手法を導入していますので、市況耐性を強化していきます。ポートフォリオ戦略をしっかり進めることによって、各事業の特性に応じた資金配分よって収益力を引き続き強化していきます。その上でエネルギーミックス転換期においてお客様と共に低炭素・脱炭素化に向けた取り組みを進めて、当社として常に選ばれる会社を目指します。この方針については大きく変わりありません。