【2021年度本決算説明会資料】

A.2021年度決算概要

A-1:2021年度通期業績

売上高が前年度比1,315億円増収の7,570億円。営業利益は同比389億円改善の+177億円。経常利益は5,680億円改善の+6,575億円。当期純利益については同比5,337億円改善の+6,424億円。通期の平均為替レートは112円6銭、燃料油価格は551ドル/MTです。

主な財務指標について、当期末の自己資本は8,846億円、有利子負債は4,235億円という結果となり、自己資本比率は56%、NET DERは20%とそれぞれ大きく改善しています。

当期の期末配当については、前回予想の1株300円に追加配当の300円を加えて、通期で1株600円とする予定です。

 

A-2:セグメント別通期業績

ドライバルクセグメントは、通期荷動き回復に加えて、感染対策強化に伴う滞船など需給がタイトに推移したこと、また船隊適正化によるコスト削減が奏功しまして、前年度比329億円改善の経常利益+237億円。エネルギー資源セグメントは、前年度はドリルシップなど一過性の要因がありましたが、これに加えて電力炭の需要も回復したことで、同比37億円改善の経常利益+48億円。製品物流については、一番大きいコンテナ船について、サプライチェーンの混乱に伴う船腹需給の逼迫、これに伴って市況水準が高水準で推移してきたこともあり、同比5,200億円改善の経常利益6,238億円。その他自動車船、物流、内航近海、いずれも全て回復、その中で改善額がおよそ3分の2を占める自動車船も含めて、製品物流全体では同比5,363億円改善の経常利益+6,408億円となりました。

 

A-3:2021年度事業総括 インサイト

①自営事業の4事業で前年度比収支改善しております。②コンテナ船については、前年度比5,200億円の改善。③業績の改善を背景に、不採算事業であるオフショア支援船事業、不採算船の売船及び処分による構造改革を前倒しで実施したことによって260億円の特別損失を計上しました。一方で、ポートフォリオ戦略に基づくノンコア事業の売却によって200億円の特別利益を計上しました。その結果、④財務基盤が大きく改善しました。

 

B.2022年度通期業績予想と取組み

B-1:2022年度通期業績予想及び変動要素

通期の売上高が7,800億円。営業損益は、主に自動車船事業の回復を旨として、前年度比233億円改善の+410億円。経常損益は同比1,875億円の減益となり+4,700億円を見込みます。この主要因はコンテナ事業ですが、後ほどご説明します。当期純利益は、同比1,825億円減益の4,600億円を見込んでいます。平均為替レートについては、5月以降115円の前提です。為替変動による影響は、1円当たりの変動で45億円の影響です。配当について、今期2023年3月期の株主還元については、基礎配当として1株当たり300円に加え、1,000億円以上の追加的な株主還元策を検討しています。追加還元策については配当に加えて自己株式取得も検討する予定です。

 

B-2:セグメント別通期業績予想

ドライバルクセグメントは、前年度に比べてコロナ影響により供給が引き締まった状況も徐々に緩和していくことで、高水準にあった市況も調整されていくだろうと見ていますが、一方で前年度の構造改革の効果と、市況が高いレベルのときに契約更改を進めたことで、前年度並みの収支となる経常利益+240億円を見込んでいます。エネルギー資源セグメントについては、オフショア支援船事業の撤退やケミカル船事業の撤退もあり、前年度比12億円改善の+60億円の経常利益を見込んでいます。製品物流セグメントでは、自動車船はこれまで取り組んできた不採算航路の整理に加えて運賃修復が大きく進み、内航近海も不採算航路の休止に加えて近海航路の市況改善によって向上していくと見ています。コンテナ船は東西航路、北米、欧州向けの5~6割を占める年間契約について、前年度比で大きく改善しています。一方、短期運賃は8月以降にサプライチェーンの混乱が徐々に収束し、下期にかけて下落するという前提としています。これらを合わせて、製品物流セグメントで4,510億円の経常利益を見込んでいます。

 

B-3:ロシア・ウクライナ情勢

ドライバルクセグメントについてはウクライナ・ロシア出しの石炭や穀物、製品輸送においてはロシア向けの完成車、コンテナ船においては貨物など局地的な影響は出ていますが、いずれも全体に占める割合は小さく、現時点では他の貨物で吸収可能な範囲です。一方で、エネルギー価格の高騰やインフレ対策、アメリカの金融引き締めなどによる実体経済への影響、景気の下押し要因となって需要を冷やす動きにならないかを懸念しており、今後も注視していきます。

 

 

【2022年度中期経営計画】

中期経営計画の策定にあたって

社内外の事業環境の変化、業績の改善により、我々のよって立つ経営ステージが大きく変わったと考えています。その中でも大きく2つの課題を認識しています。まずは財務体質の抜本的な改善を果たした今、資本の有効活用と成長戦略が企業価値向上に向けた中心的な課題となるということ。2つ目は、短期的には新型コロナウィルスやウクライナ・ロシア問題、アメリカの金融引き締めなどの事業環境の変化に適切に対処する一方、長期的には社会の低炭素・脱炭素化、環境対応を見据えた経営の重要性がより高まるということ。

この2つの課題に取り組むため、昨年夏以降、全社プロジェクトを通じて、企業価値向上策について多面的な視点で慎重に検討を進めてきました。将来像を描くに当たっては、成長戦略のみならず、過去の苦い経験の振り返りも含めて、同じ過ちを繰り返さぬよう、船舶投資ガイドラインの設定など投資規律も高め、守りと攻めの両方の検討に時間を費やしてきました。また、資本政策・株主還元政策においては、第三者有識者のご意見もいただきながら検討、今回の中期経営計画に反映させております。

 

川崎汽船グループの目指す姿 前年度経営計画に対する評価

前年度の5つの課題に着実に取り組み、いずれも一定の成果を上げることができました。その中で低炭素・脱炭素化を捉えた自営事業の成長戦略の具体化、企業価値向上に向けた資本政策への取り組みの2点が課題として浮かび上がってきました。

 

川崎汽船グループの目指す姿 川崎汽船グループを取りまく事業環境

我々を取り巻く事業環境は、地政学的な要因による分断、アジアの台頭など、依然不確実性が多い状況に変わりはありません。しかし、大きな流れとしてエネルギーミックスの転換期にあり、海運という社会インフラの一翼を担う者として、GHG削減など環境負荷の低減、代替燃料への移行、そして新たな輸送需要の創出への対応が当社の持続的成長と企業価値向上につながると考えます。これらの知見を持つ当社グループにとっては、チャンスと捉え取り組みます。

 

川崎汽船グループの目指す姿 新たな「企業理念」「ビジョン」「大事にする価値観」

新たな経営ステージに入るに当たって、役職員が同じ目的意識を持って経営と執行を推進するため、企業理念、ビジョン、大事にする価値観につき、再度徹底的に議論をして見直しを行いました。まずは、当社グループは海運を主軸とする物流を対象事業領域とすることを再確認しました。その事業領域において、自社・社会の低炭素・脱炭素化の推進を通じた企業価値の向上を目指します。その実現のために、成長を牽引する役割を担う事業へ経営資源を集中します。そして低炭素・脱炭素化の推進など、環境に向けた活動をともにできる顧客とのパートナーシップを深めることで、成長機会を追求していきます。

 

川崎汽船グループの目指す姿 川崎汽船グループの長期経営ビジョン

社会の低炭素・脱炭素化への貢献と収益成長を両立させるために、成長を牽引する役割を担う事業に経営資源を集中させることが必要です。それによって、コンテナ事業と自営事業の二本柱で市況耐性が高く持続的に成長する企業を目指します。投資については、資本コストを意識して、適切な資本政策のもと実施していきます。

 

川崎汽船グループの目指す姿 企業成長・企業価値最大化に向けた対応方針

企業成長・企業価値最大化に向けた対応方針は5つあります。自営事業においては成長を牽引する役割を担う事業である鉄鋼原料事業・LNG輸送船事業・自動車船事業への重点配分を行います。2つ目として、株主としてOCEAN NETWORK EXPRESS社(以下、ONE社)の企業価値の向上をサポートします。このことによって、自営事業、コンテナ船事業の市況変動耐性を強化します。3つ目として、経営管理の高度化、投資規律を維持していきます。4つ目として、資本コストを意識した経営によって企業価値の向上を図っていきます。最後に、キャッシュフローの最適配分、キャッシュフローを意識した最適資本構成を常に進め、資本効率と財務の健全性を両立させます。

 

川崎汽船グループの目指す姿 低炭素・脱炭素社会への貢献:GHG削減に向けた活動指針

低炭素・脱炭素化への取り組みは、インフラを担う企業の責任であると同時に、適切な取り組みにより、当社の事業成長の原動力につながると考えております。国連の海事機関IMOでは、2030年のCO2の排出効率目標を2008年比で4割削減としていますが、当社は独自の目標として5割削減を掲げている中、具体的な施策による目標達成が既に視野に入っています。カーボン・ディスクロージャー・プログラム(CDP)の気候変動リストに6年連続で認定されていますが、海運では世界で2社のみということです。地に足のついた活動が非常に高い評価をいただいているものと自負しております。

 

川崎汽船グループの目指す姿 経営管理指標

企業価値向上に向けた取り組みを定量的に管理していくため、株主価値をはかるROEが持続的に10%以上を達成するようにします。稼ぐ力の指標としての経常利益は、本中期経営計画期間の最終年度である2026年度には、当社が主体的に関与する自営事業と株主として関与するコンテナ船事業の収益をバランスさせ、1,400億円の経常利益を上げます。最適資本構成として、資本効率の最適化と、不況時においても戦略的な資金調達が可能となる財務の健全性を両立させます。最後に株主還元方針として、中期経営計画期間で4,000億~5,000億円規模の株主還元を進めます。最適資本を常に意識し、企業価値向上に必要な投資及び財務の健全性を確保の上、適正資本を超える部分については、キャッシュフローを踏まえて積極的に自己株式取得を含めた株主還元を進めます。

 

川崎汽船グループの目指す姿 ポートフォリオ経営

環境投資などさまざまな投資が必須となる中、限りある経営資源を集中的に配分させることが企業価値の最大化につながると考えます。この目標を達成するためのアプローチがポートフォリオ戦略です。市場の成長性、その中における自社の競争優位性をベースとした収益力の成長性の軸と、比較的少数の特定顧客と深く大きくお取引するのか、あるいは多種多様な顧客と広くおつき合いするのかという、顧客とのパートナーシップの2軸で、それぞれの事業ポートフォリオの役割を再定義しました。この中で成長を牽引する役割を担う事業に重点的な投資を行っていきます。

 

次期中期経営計画(5か年)2022年中期経営計画のポイント

5か年の中期経営計画の3つのポイント、経営資源の集中的な配分による事業の成長、事業戦略を実現する強固な事業基盤の構築、資本政策の明確化について、ご説明します。

 

次期中期経営計画(5か年)①全社戦略:本中計の前提となるポートフォリオ上の事業区分

まず全社戦略ですが、戦略的な方向性に基づき各事業の役割を明確化した上で、資源配分のめり張りをきかせます。成長を牽引する役割を担う鉄鋼原料事業・自動車船事業・LNG輸送船事業の3事業については、顧客と低炭素・脱炭素化の足並みをそろえることで会社収益の柱にしていきます。既存顧客のみならず、新規顧客でのシェアも獲得することで、市場成長を上回る成長を遂げていきます。経営資源の配分としては、投資総額の約8割近くをここに投じていきます。

スムーズなエネルギー転換をサポートし新たな事業を担う役割は電力炭、石油、LPGなどエネルギー原料の輸送ですが、顧客需要に応じた資産の持ち方を協議して、事業リスクの最小化を図りつつ、新エネルギーの輸送需要へ対応していくことを考えています。我々の事業ポートフォリオを進める中で、M&Aや事業売却など、今後も資産の入れ替えについては継続的に検討していきます。

 

次期中期経営計画(5か年)①成長を牽引する役割:鉄鋼原料事業の成長戦略

鉄鋼原料事業の成長戦略ですが、環境ニーズをつかむことで、これまでの顧客基盤の中心であった日韓の鉄鋼メーカーに加えて、資源メジャーをはじめとする海外顧客の需要獲得を果たしていきます。GHG削減のニーズは非常に強く、船会社としてもScope3の削減に協力して、長期的な取引関係をさらに強化していきたいと考えます。LNG焚き船など代替燃料船のニーズの獲得、またそのために環境技術を含めた組織営業力の向上など、営業組織体制の見直しも含めた取り組みにより、顧客のパートナーとしての地位を獲得していきます。

 

次期中期経営計画(5か年)①成長を牽引する役割:自動車船事業の成長戦略

低炭素・脱炭素化のニーズは鉄鋼メーカー並み、もしくはそれ以上に強いということで、代替燃料船、燃料供給ネットワークの確立を着実に進めます。加えて、今後EV化による産業構造変化にも対応していく必要があると考えています。中国をはじめとする新興Battery Electric Vehicle (BEV)メーカーとの取引拡大のために、海外拠点も含めて組織営業力を強化していきます。完成車物流なども強めることで、これらの新興BEVメーカーの取り込みを積極的に進めていきたいと考えています。

 

次期中期経営計画(5か年)①成長を牽引する役割:LNG輸送船事業の成長戦略

移行期の代替エネルギーとしての需要が強いLNGは、将来の需要のピークが2040年から40年の半ば、それまでは年率4%前後の需要増加が見込まれています。そのような状況の中でLNG輸送船の船腹需要を取り込んでいきます。そのために供給サイドでの顧客の取り組みのみならず、中国、マレーシア、インド、インドネシアなど今後成長が見込める市場でも、大型船や中型船も交えて案件を確保していきます。そのために海外拠点での営業強化と船舶管理機能の外地展開を行い、コマーシャルと安全運航、両面でのサポートを強力に推進していきたいと考えています。

 

次期中期経営計画(5か年)①スムーズなエネルギー転換をサポートし新たな事業機会を担う役割:電力炭、VLGC・VLCC事業の事業転換への道筋

電力炭船、LPG船、タンカーについては、既存エネルギーの供給責任・輸送責任を、高い輸送品質の提供とともに果たしていきます。その中で、顧客と共同で船舶資産リスクを軽減していくことに努めます。それに加えて、今後創出される新エネルギー輸送需要に応えて、成長機会をつかむ必要があります。具体的にはアンモニア、水素、液化CO2輸送など、新規需要に備えていきます。アンモニアについては、これまでも輸送船舶保有、管理の経験があるので、これらのケイパビリティを十分に活用していくことができると考えています。

 

次期中期経営計画(5か年)①稼ぐ力の磨き上げで貢献する役割:バルクキャリア、近海内向・港湾・物流事業の収益成長

稼ぐ力の磨き上げで貢献する役割を担う事業として、バルクキャリア、近海内航・港湾・物流事業があります。バルクキャリアについては、構造改革の結果、船隊ポートフォリオの適正化が進み、また、高い運航効率と併せて、市況耐性を抜本的に改善できました。さらに手綱を緩めることなく、シンガポールに拠点を移し、成長が見込めるアジア、中東市場での営業強化と、保有船舶のライトアセット化を進めます。完全子会社化を予定している川崎近海汽船は、当社グループの内航の中心に据えることで、グループ間のシナジーを最大化させてモーダルシフトを促進したいと考えます。物流事業は、完成車物流や内航フェリー、洋上風力発電支援船事業などをはじめ、当社が主軸として力を入れていく事業、当社の成長を牽引する役割を担う事業とのシナジーの最大化を追求できる事業領域に、より注力していきます。

 

次期中期経営計画(5か年)①株主として事業を支え収益基盤を安定させる役割:コンテナ船事業

当社が株主として事業を支えるコンテナ船事業が、当社グループにとって重要なセグメントであることは言うまでもありません。足元のコロナという特殊な事情により高騰した運賃については、徐々に巡航速度に落ちつくと見ていますが、一方、需要も増加する中、持続的な成長も見込めます。株主として、人材の提供含め企業価値向上のために必要な支援はしっかり行います。また、初期の創成期から成長期、成熟期へと移る中で、適切な評価が得られるよう事業計画の明確化、発信も後押ししていきたいと思います。

 

次期中期経営計画(5か年)①(参考)世界の主要コンテナ船社ONE社のEBITDA・マルチプル

世界の主要コンテナ船社とONE社のEBITDAを比較すると、同業他社に比べて高水準にあり、ONE社が創成期を脱して、邦船3社のベストプラクティス実現による巡航速度に入ってきたものと見ています。適切な市場とのコミュニケーションによって、当社グループの企業価値に反映されるよう今後も努めていきたいと思います。

 

次期中期経営計画(5か年)①当社の強みを生かせる分野での新規事業領域の拡大

当社の強みを生かせる新規事業領域については、基本的には低炭素・脱炭素化に資する分野に焦点を当てています。当社としては、知見の獲得やシナジーがない純投資的な案件には、基本的には手を出さない方向です。現時点での取り組みとして、日本最大の牽引力150トンを誇るアンカーハンドラー(海洋構造物を支援する作業船)などを保有している川崎近海汽船及び国内グループ会社と昨年6月にケイライン・ウィンド・サービスという事業会社を立ち上げました。洋上風力発電支援船に係る事業について、当社グループの知見、ネットワークを大いに活用できる事業として、積極的に取り組んでいるものです。

 

次期中期経営計画(5か年)②事業基盤:機能戦略の全体像

事業戦略を実現していくため一番大事な人材の投資を進めることで、デジタルトランスフォーメーション、環境・技術、安全・船舶品質管理など、事業基盤の強化を進め、当社ならではの技術、専門性をしっかり磨いていきたいと思います。

 

次期中期経営計画(5か年)②人材への投資:事業ポートフォリオを支える人材の確保・育成×ダイバーシティ

人材への投資については、海運のプロフェッショナル経営人材を育て、海技系の人材をも育成します。また、多様性の観点からは、海外展開するドライバルク、エネルギーなど、シンガポールをはじめとする海外拠点の強化など外国人材も積極的に登用することで、競争優位性を強めていきたいと考えています。また、女性管理職についても、15%を目指します。

 

次期中期経営計画(5か年)②デジタルトランスフォーメーション

デジタルトランスフォーメーションについては、当社が強みとする、成長を牽引する役割を担う事業分野における顧客との関係を強化、サポートするために、貨物情報やCO2排出量などの情報共有を積極的に進めていくことでパートナーシップも深めていきます。また、安全運航、最適運航の支援を、ハードのみならずDXなどソフトも活用しながら、内外のパートナーと共同で実現のために取り組んでいます。

 

次期中期経営計画(5か年)②環境・技術、安全・船舶品質管理

環境・技術、安全・船舶品質管理につきましては、顧客にさまざまな省エネ技術、オプションの提供や導入を勧められる会社であることを目指します。また、海運会社として最重要である安全運航・船舶管理についてはアメリカ、ヨーロッパ、シンガポールの3拠点体制を新たに強く構築し、グローバルな展開によって顧客密着型のサポート体制も推進していきます。

 

次期中期経営計画(5か年)③収支目標

収支目標につきましてはこれまでご説明した戦略を推進することで、自営事業の収益成長を実現します。具体的には、自営事業の収益を中期経営計画最終年度の2026年度には倍増させたいと考えています。それを牽引するのが鉄鋼原料事業・自動車船事業・LNG輸送船事業などの経常利益で、この利益を倍増させて自営事業の3分の2を占めるところまで持っていくことで、自営事業の収益とコンテナ船収益を同程度まで拡大させたいと考えています。2021年度の経常利益が340億円とありますが、急激な円安進行に伴って一時的な為替差益が80億円程度含まれているので、実力は経常利益260億円程度とすると、2026年度の550億円は、その倍増以上の数字という目標になります。

 

次期中期経営計画(5か年)③キャッシュアロケーション

2021年度から2026年度で累計およそ9,000億~1兆円の営業キャッシュフローを見込んでいます。投資に約5,000億円、負債については金利負担の高い運転資金の返済を進める一方、競争力のある設備資金への借り換えを行うことで、負債も適切に活用し、その上で4,000億~5,000億円を株主還元に配分する予定です。

 

次期中期経営計画(5か年)③“環境”と“成長を牽引する役割”に重点を置いた投資計画

投資の中身ですが、環境と成長を牽引する役割を担う事業に重点を置き、鉄鋼原料事業・自動車船事業・LNG輸送船事業の3事業に事業投資の約8割弱を投入します。一方、環境投資については5,200億円のうち3,100億円を計画しており、代替燃料船などを含めた環境投資は全体のおよそ6割になります。成長を牽引する役割を担う3事業に投資を集中させることにより、同3事業の経常利益を倍増させ、2026年時点の利益水準は自営事業の3分の2を占める位置まで成長させる。

 

次期中期経営計画(5か年)③株主還元政策

株主還元政策につきましては、各年度のキャッシュイン、事業への必要投資を検討した上で、基礎配当に加え、機動的に追加配当、自己株買いを実施していくことを考えています。2021年度については、1株当たり600円の配当を予定しています。2022年度については、1株当たり300円の配当に加え、1,000億円以上の追加還元として、追加配当と自己株買いを検討していきます。2023年度以降については、最適資本構成を常に意識して、企業価値向上に必要な投資、財務の健全性を確保の上、適正資本を超える部分についてはキャッシュフローも踏まえたうえで、積極的な自己株式取得も含めた株主還元を進める考えです。

 

次期中期経営計画(5か年)③経営管理の更なる高度化

5,000億円という大きな投資を実施する中、事業別責任会計という形で管理会計を新たに導入し、資本コスト、キャッシュフローを意識した経営管理体制、経営管理の高度化をさらに進めるとともに、過去の反省も踏まえた船種ごとの投資ガイドラインの設定、投資規律を維持していくことを考えています。

 

次期中期経営計画(5か年)新中期経営計画のまとめ

財務体質が大きく改善した中、当社は新たな経営ステージに入りました。当社は海運を主軸とする事業、その中で低炭素・脱炭素化、環境対応の需要を積極的に取り込むことで、企業価値を向上させていきます。そうすることによって、2026年度には自営事業とコンテナ船の二本柱で、バランスのとれた1,400億円の経常利益を達成していきます。自営事業については成長を牽引する役割を担う、鉄鋼原料事業・自動車船事業・LNG輸送船事業の3事業に、経営資源を重点的に配分する。一方で、コンテナ船事業には株主として積極的に関与し、ディスクロージャー(情報開示)も適正に発信していきます。資本コストを意識した事業別評価、事業別管理会計による経営管理の高度化を引き続き進めるとともに、資本規律、財務規律、投資規律の徹底に努めていきます。最適資本を常に意識した上でキャッシュアロケーションを、成長投資と株主還元を重視した形で進めていきたいと考えています。