2021年度第3四半期決算説明会資料】

A. 2021年度第3四半期決算概要

A-1:2021年度第3四半期業績

 売上高5,565億円、営業利益+233億円、経常利益+4,336億円、当期純利益+4,233億円という結果でした。主な財務指標は、自己資本が第3四半期末時点で6,556億円になりました。有利子負債は4,435億円にて、前期末比635億円減少しました。現金及び現金同等物が1,059億円にて、同比241億円減少しております。有利子負債と現金及び現金同等物の減少についてご説明します。当社は今年度トランジション・リンク・ローンを組成し、約1,000億円の資金調達をしました。その内容は、現金をドローダウンするだけでなく、クレジットラインの形でいつでも自由に引き出したり返済したりできるという利便性を持った融資です。従いまして手元資金の状況に応じて有利子負債を返済して現預金を少なくする、あるいはその逆が調整できる形となったことから、有利子負債も現預金も減少しましたが、手元流動性は、この現預金1,059億円の他に1,400億円程度のクレジットラインがありますので、流動性は潤沢です。自己資本比率は第3四半期末時点で49%です。

 

A-2:セグメント別第3四半期業績

 ドライバルクセグメントは、経常利益+147億円。エネルギー資源セグメントは経常利益+21億円。製品物流セグメントは経常利益+4,253億円、内数のコンテナ船事業の経常利益は+4,159億円ですので、過半以上がコンテナ船事業からもたらされています。

 

B. 2021年度 通期業績予想と取組み

B-1:2021年度通期業績予想及び変動要素

 売上高7,300億円、営業利益+180億円、経常利益+5,400億円、当期純利益+5,200億円。通期平均為替レートが111円15銭、燃料油価格が535ドル/MTです。前年同期比では経常利益が4,505億円の増加、当期純利益が4,113億円の増加となります。前回11月公表時と比べて、主にONE社からの利益貢献により、経常利益、当期純利益ともに1,500億円、収支が改善する予想です。

 上期に当社の物流子会社のCDS社を売却して、特別利益を計上いたしました。一方、下期は、不定期船、オフショア支援船事業などの不採算部分を清算し、特別損失を計上しています。変動影響は、為替レート変動が、1円変動で±49億円の影響となっていますが、これは期末決算日の為替レートによって影響を受けることとなっており、現時点で当期末の為替レートは1ドルあたり110円と想定しています。従いまして、仮に当期末の為替レートが1ドルあたり115円程度の円安水準となると、この49億円掛ける5円分の収支が上振れることとなりますが、そのような可能性のある数字とご理解ください。配当については、現時点では2021年11月4日に発表したとおり1株当たり300円の予想を継続しますが、この点は後ほど詳しくご説明いたします。

 

B-2:セグメント別通期業績予想

 ドライバルクセグメントは、前年比で291億円改善の、+200億円の経常利益を予想しています。各国の財政支援や景気刺激策を受け、世界経済は回復を続けており、エネルギー不足による石炭や、穀物ないしはマイナーバルクといった貨物の輸送需要が安定して強いことに加えて、コロナ対策での検船体制の強化や、荒天遭遇による滞船などが結果的に船舶供給量を抑制することになり、市況は総じて高い水準で推移をしています。一方、ネガティブな要因としては、足元、季節性要因で一過性の市況の急落が起きたり、あるいは中国における鋼材生産制限による輸入へのマイナス要因が出たこと。また、短期間でしたが、インドネシアの石炭の輸出禁止措置もあり、若干マイナス要因はありますが、総じて全体的な世界の経済動向はドライバルクに追い風となっており、経常利益+200億円の予想としています。

 エネルギー資源セグメントは、+35億円の経常利益予想ですが、前期比で25億円の改善を想定しています。長期契約で固めている商売が多くあり、LNG船、電力炭船、VLCC、LPG船は長期契約によって、市況変動によらず安定的な収益を計上しています。特記事項としては、昨年12月17日にプレスリリースしたとおり、当社のオフショア支援船事業の船舶を売却し、同事業会社の清算を決定しており、経常ベースで幾許かの改善要因になっています。

 製品物流セグメントは、自動車船事業において、足元での半導体不足、またコロナ禍影響により、主に東南アジアの部品工場で労働力不足による部品不足もありましたが、基調としてはコロナウイルス感染症の影響から回復をたどっています。期初に想定した利益水準よりは若干下回るものの、前期比で黒字を計上して、回復基調をたどっています。自動車船事業以外の製品物流セグメントは、コロナ禍影響からの回復と、コンテナ船でのスペース逼迫による影響を受けて、港湾事業や海外物流事業では収益が大きく回復しています。

 

OCEAN NETWORK EXPRESS (ONE社)  2021年度第3四半期決算説明資料

 2021年度上期実績は、税引き後利益が+6,760百万米ドル。第3四半期実績は、+4,889百万米ドルの利益です。第4四半期の予想は+3,750百万米ドルの税引き後利益です。運賃水準の見方は1月に一番高い運賃相場との想定で、その後季節性要因もあり3月に向けて下落していくという見方をしています。一方、北米での港湾関連費用、荷役費が若干上振れる想定をしていますが、大きな下振れ要因のない予想になっており、あまりに保守的な数字ではないと評価しています。

 コンテナ船事業の現況ですが、サプライチェーンの混乱はなかなか収束していない状況です。ONE社もいろいろな手を打っており、例えばリーファーコンテナのみならずドライコンテナも昨年12月末では約170万本投入しており、昨年9月末比で8,000本ぐらい増えています。一方、船腹は用船マーケットで船舶が枯渇をしており、2022年の新造船竣工まで待たなければいけない状況にあります。

 この先の見通しは、誰も答えを持っていない状況ですが、そもそも現状のサプライチェーン混乱の原因がコロナ禍ですので、こちらの終焉を迎えないと、なかなか抜本的なサプライチェーンの正常化には向かわないのではという見通しです。欧米ではピークアウトしたとの報告もありますが、やはり現状のオミクロン株の感染拡大、その去就如何でサプライチェーンの混乱、それに伴う運賃の正常化も、タイミングが変わってくるのではという見方をしています。

 

B. 2021年度 通期業績予想と取組み

B-3:2021年度自営事業セグメントの改善ポイント (2020年度比)

 2021年度のコンテナ船事業以外の当社自営事業における、店費前の経常利益は+370億円を想定しています。2020年度は▲62億円の経常損失でしたので、約430億円程度改善する見通しです。そのうち、市況や荷況の回復によって+335億円、コロナ禍の影響から脱して収益の改善が見込まれる一方、自助努力の施策効果として+97億円程度の改善を見込み、合算して、+370億円程度の経常利益を確保できる見通しです。

 

 

C. 次期中期経営計画について

C-1:2021年度経営計画進捗

 当社の2021年度経営計画目標とその達成状況ですが、ほとんど目標としていたものが達成できたという自己評価をしています。大きなポイントは3つございます。まず、ONE社収支の大幅な改善。それから自営事業も店費前で+370億円の経常利益を上げる形となり、業績が著しく改善しました。それと将来のキャッシュフローの創出についての展望も開けてきた状況です。継続的な財務基盤の拡充については、2030年の財務指標として目指していました、経常利益+500億円、自己資本4,000億円、自己資本比率40%、ROE10%以上を、10年前倒しで達成することができました。それに加えて、今年度以降に取り組もうとしていた当社の様々な課題への対応も果たすことができました。50隻の船隊規模適正化の実行、これは主にドライバルクと自動車船です。それから不採算船・事業の構造改革は、当社の経営課題でしたが、KOAS社によるオフショアの支援船事業を、清算することができました。それからノンコア事業の整理は、例えばCDS社の売却や、ITS社の売却などコンテナ船由来の事業についての整理を、非常に経済的に有効な形でできたものです。これにより財務体質の大幅な改善ができました。そして企業価値向上に向けて成長に軸足を置いた中期経営計画を策定することを決めており、5月の発表に向けて今準備中です。2021年度までは財務基盤の拡充が喫緊の経営課題でして、どうしても守りの姿勢を維持せざるを得なかったわけですが、当社の財務基盤の拡充並びに、ONE社と当社自営事業の収益性の向上により、ようやく成長を目指した攻めの姿勢に転ずることができるという認識を持っています。

 成長を基軸とした中期経営計画と、当社の株主還元策もこれとリンクする形で現在策定中です。配当性向が決まっていて、現状の決算予想に基づいてオートマチックに増配をするという形でのアナウンスメントは現時点ではできませんが、5月の中期経営計画並びに本決算の発表の折に、改めて当社としての株主還元策を発表したいと思っています。

 

C-2:次期中期経営計画の考え方

 メガトレンドとしての脱炭素・低炭素を念頭に置いた上で「長期経営ビジョン」を描いて、当社の強みを生かせる成長市場を見定め、「ありたい姿」に向けた中期経営計画を策定するものです。未来創生プロジェクトという名前で、昨年末まで7カ月ぐらいかけて、会社全体での大きなビジョンを描き切ることができました。現状ではそこからスピンオフした幾つかの大きな具体的な課題に対してタスクフォースチームをつくって取り組んでいるところです。これより、将来の成長に合わせて、各事業の役割を明確にした上で、成長投資に向けた資源分配をする形で、新しい中期計画を策定しているところです。