【2021年度第1四半期決算説明会資料】

A. 2021年度第1四半期決算概要

A-1:2021年度第1四半期業績

 第1四半期の売上高が1,747億円、営業利益が+24億円、経常利益が+884億円、当期純利益が+1,020億円という結果でした。営業損益段階では、ドライバルクならびに自動車船事業の収益回復が業績改善に寄与しております。経常損益段階では、ONE社のコンテナ船事業における旺盛な貨物需要に伴って経常利益が押し上げられております。特別損益段階では、当社の物流子会社であったCENTURY DISTRIBUTION SYSTEMS, INC社の保有株売却により特別利益を計上しています。この結果、第1四半期末の主な財務諸表は自己資本が3,214億円。有利子負債と現金及び現金同等物期末残高はあまり大きな変化はなかった為、自己資本の改善により、DERが前期末比70ポイント低下の162%となり、ネットDERも118%へと改善しました。自己資本比率は30%。格付機関より資本性評価50%を取得している劣後ローンを加味しますと33%相当にまで上昇しています。

 

B. 2021年度通期業績予想と取組み

B-1:2021年度通期業績予想及び変動要素 

 通期業績予想は、売上高6,300億円、営業利益+40億円、経常利益+2,750億円、当期純利益+2,650億円を想定しています。前年同期比では、営業利益段階で253億円の改善、経常利益段階で1,855億円の改善、当期純利益段階で1,563億円の改善となっています。為替前提は通年で106円67銭、燃料費価格の前提は455ドル/MTとなっています。センシティビティ(変動影響)は、為替レートが1円の変動で、この第2四半期以降9カ月間で4億円変動いたします。燃料油価格は10ドルの変動で0.1億円、1,000万円程度と限られます。配当については、今日の段階では、中間・期末配当は未定とさせていただきます。

 

B-2:セグメント別通期業績予想

 ドライバルクセグメントでは、大型船の市況は中国をはじめ各国の堅調な鉄鋼需要が継続しました。中・小型船の市況では中国の旺盛な穀物輸入の需要、各国の産業活動の回復などにより石炭の需要も堅調に推移して市況は上昇しています。第1四半期は、コロナ禍の影響などで収益が取り込み切れていない部分がありましたが、今後のプラス要因として、船舶需給のバランスは改善傾向にあること、全世界でコロナウイルス感染症のワクチン接種が浸透していること、各国の財政支援策や景気支援策が継続されていることが挙げられます。こうしたプラス要因を背景として、ばら積み貨物の海上輸送量は堅調に推移しており、振幅はあるものの総じて好調に推移しています。一方、マイナス材料としては、新型コロナウイルス変異株の拡大、これによる物流の停滞、本船の停滞。それから中国政府による鋼材生産の抑制政策が、下期以降に注視が必要な要因だと思います。以上、ドライバルクセグメント全体で、通年では前年比で216億円の改善となる+125億円の経常利益を見込んでいます。

 エネルギー資源セグメントでは、オフショア支援船事業以外のセクターに関しては中長期契約でカバーされており、安定的な収益を確保する見通しです。一方、オフショア支援船事業は市況低迷が継続しており、引き続きコスト削減ならびに為替ヘッジ等によって収支改善に努めてまいります。以上、エネルギー資源セグメント全体で、前年比29億円の改善となる+40億円の経常利益を想定しています。

 製品物流セグメントでは、自動車船事業は新型コロナウイルス感染症拡大の影響からの回復基調を継続して輸送需要は堅調に伸びており、第1四半期は損失が縮小しました。第2四半期以降は、コロナ禍影響からの回復傾向は加速する見通しです。加えて昨年度から取り組んでいる船隊規模適正化、航路再編などの運航効率の向上の結果が現出してくるものと見ています。足元の懸念材料は、半導体不足による自動車生産への影響、新型コロナウイルス変異株の拡大によりアジアにある部品工場の生産が停滞するリスクがあると思います。物流事業では、国内物流・港湾事業、海外、国際物流事業等もコンテナ船海上輸送需要の逼迫に伴い、航空や内陸での輸送手段等に貨物がシフトしたことにより堅調に推移しています。近海・内航事業については、7月30日に弊社子会社の川崎近海汽船が、主に近海事業の収支改善の見通しの下、通期経常利益の業績予想を従来の2億円から8.5億円へ上方修正しました。製品物流セグメント内のコンテナ船事業ですが、荷量が旺盛な状況は変わっておらず、業績改善の最大の要因になっています。第1四半期は、前年同期比で世界全体の荷動きが20%、アジア-北米航路では40%増えています。第2四半期以降も今の堅調な輸送需要が減少する兆候は見られない状況です。一方、問題となっています、サプライチェーンの混乱ついては、ONE社も臨時船の投入やオペレーションの改善などの取り組みは継続していますが、こちらも事態が大きく改善する兆しは残念ながら見えていない状況です。コンテナ船事業にて上期に+1,925億円の経常利益を想定する一方、下期は+665億円と半分以下と想定していますが、下期は例年荷動きが鈍化するスラックシーズンに入ることと、ワクチン接種の浸透に伴ってサプライチェーンの混乱が解消に向かうであろうという前提の下、上期と下期の予想に差が出ています。以上、製品物流セグメント全体では、前年比で1,619億円の改善となる、+2,665億円の経常利益を見込んでいます。コンテナ船事業以外の当社自営事業では、+75億円の経常利益を想定しています。

 

B-3:2021年度自営事業セグメントの改善ポイント (2020年度比)

 2020年度のコンテナ船事業以外の当社自営事業の経常収支は▲62億円の赤字でした。これが今期末は+240億円の経常利益となる想定ですが、改善要因は荷況回復で98億円、市況改善で100億円、配船効率化と航路合理化で42億円、さらに船隊規模適正化で55億円、その他7億円となります。当社自営事業もコロナ禍の影響を脱し、これまでの船隊規模適正化等々の効果を織り込んで改善に向かっていることを示しています。

 

B-4:企業価値向上への取組み

 過去に当社が取り組んできた企業価値向上への取り組みについての振り返りになります。まずONE社設立によるコンテナ船事業の構造改革を今期完遂ができた、その歩みになります。シナジー創出を達成し、更にそれ以上に現状は効果を享受しているわけですが、それを踏まえたONE社としての事業計画・投資計画・配当方針は、現在、資本政策全体の取りまとめに入っています。当社自営事業の収益力については、先ほどお示ししたように今期は240億円程度を想定しており、コロナ禍の影響で昨年度は赤字となりましたが、こちらも安定収益の積み上げという元々志向していたものを、着実に達成していくところです。当社としては、自己資本の改善、ROEの改善について、当初5年10年かけて達成しようとしていた目標が、今期中にも達成できる見込みとなり、企業価値向上に向けた経営課題として、これまでは先行きが不透明なために策定を敢えて後ろ倒そうとしていた成長戦略と資本政策を前倒しで実行していこうと考えています。中でも、成長戦略、財務体質の一層の強化、さらに株主還元といったものを織り込んだ新しい経営計画を来期の発表に向けて準備に着手したところです。

 

B-5:主要コンテナ船会社 2020年度通期 収支実績比較

 主要コンテナ船社である、ONE社と同業他社3社の通期収支実績や時価総額などを比較したものです。一番左がONE社、A社は世界最大のヨーロッパ系のコンテナ船社、B社はONE社と同規模のドイツ系のコンテナ船社、C社は台湾のコンテナ船社です。ONE社のEBITは3,831百万ドル、EBITマージンが26.6%です。アジア-北米航路が前年度好調でしたので、その比率の高い船社のEBITマージンが高くなっており、従ってONE社と台湾系のC社が高くなっています。ここでお示ししたいのは、ONE社は非上場ですので、時価総額の数字はないわけですが、A社の時価総額が日本円で5兆円以上、収益規模、船隊規模等々がONE社とほぼ同規模のB社の時価総額が4兆円以上になっており、潜在的にはONE社の企業価値も同等レベルのものになり得るのではないかというポテンシャリティーを示しているものとお受け止めください。