【2020年度本決算 決算説明会資料】

A. 2020年度決算概要

A-1:2020年度通期業績

 当期の決算はプラス、マイナス双方でコロナ禍影響を受けた決算となりました。ドライバルクや自動車船事業などは一時的な需要の低迷によってネガティブな影響を受けた一方で、在宅勤務など行動変容、それに加えて巣ごもり特需などによるプラスの影響を受けたコンテナ船事業と、まだら模様を呈しています。最終的にコンテナ船事業が牽引する決算内容となります。売上高は6,255億円で前年度比1,098億円の減収。営業損益は▲213億円の損失で、同比281億円の悪化。経常損益は+895億円の利益と、同比821億円の改善。当期純損益は+1,087億円の利益で同比1,034億円の改善となります。平均為替レートは105円79銭、燃料油価格は363ドル/MTです。

 主な財務指標は、当期末の自己資本は前期末に対して倍増の2,182億円。有利子負債は、前期末比365億円減少して5,070億円。現金及び現金同等物期末残高は、月商の3カ月分を確保するレベルである1,300億円。NET DERは、前期末比252ポイント改善の172%。自己資本比率は、前期末比11ポイント改善の22%となりました。期末配当につきましては、引き続き財務体質の強化に取り組むということで無配とさせていただきたいと思います。

 

A-2:セグメント別通期業績

 ドライバルクセグメントでは、大型船は期首には新型コロナウイルス感染拡大による経済活動の低迷で大きな影響を受けました。日本では、鉄鋼メーカーが3割の高炉休風を進める中で荷量が減少し、これに市況悪化が加わったことで、上期は大変厳しい状況でした。しかしながら、下期に向かって中国の粗鋼生産が回復するなど、徐々に市況が回復しました。中小型船も同様に、上期はコロナウイルス感染症拡大により世界的に荷動きが停滞して大きな影響を受けましたが、その後北米、南米出し双方の中国向け穀物や、中国での寒波による石炭導入需要の高まりなどもあり、下期に向かって市況が徐々に回復してきたのは、大型船と同様の状況です。しかしながら特に上期での市況低迷による影響が大きく、前期比で減収減益となる、▲91億円の経常損失を計上しました。

 エネルギー資源セグメントでは、オフショア支援船事業は、上期は原油価格の下落に加えて、下期も需要が低迷し、市況も低迷したことで収支が悪化しました。加えてドリルシップ事業では、現行契約終了後の市況予想を踏まえて損失を計上したため、全体では減収減益となる+11億円の経常黒字となりました。

 製品物流セグメントでは、自動車船事業では、ドライバルク同様に、上期に大きな影響を受けました。世界的な自動車販売が低迷して、上期は輸送需要が4割減少しましたが、下期に向かっては、下期全体で前年度比1割前後の減少まで回復しました。本船を止める停船や、サービスの一時的な見直しも鋭意行いましたが、全体では上期の減収減益が大きく、経常損失を計上しました。

 

【OCEAN NETWORK EXPRESS (ONE社) 決算説明資料】

 ONE社については、新型コロナウイルスの影響が逆にプラスに寄与した部分があります。昨年前半は新型コロナウイルスの経済低迷に伴い輸送需要が一旦落ち込みましたが、その後在宅勤務による行動変容や巣ごもり需要、これは「コト消費」から「モノ消費」に各国が財政出動という形で給付金を支給する中、消費性向が非常に高まったこともあり、輸送需要は昨年後半にかけて非常に伸びました。特に昨秋以降は、アジア出し北米向けの荷動きは前年同期比3割、アジア出し欧州向けも同比1割以上ということで、非常に高い水準で伸びました。一方で、サプライチェーンの混乱という意味では、新型コロナウイルスの感染拡大による労働者不足、これはコンテナ船では複合一貫輸送を行うため、海上輸送はその一部であり、その後港湾ターミナルで荷物を揚げ、内陸に向かうために鉄道へ接続した後、トラックに載せてお客様の倉庫まで行くことになりますが、コロナ禍影響により、各ポイントにおいて労働者が不足して遅延や混乱が生じ、最終的にはスペース不足に加えてコンテナBOXも足りなくなる状況を背景として、短期運賃市況が高水準で維持されました。その結果ONE社の2020年度通期税引き後損益は、第2四半期が+$515mil、第3四半期が+$944mil、第4四半期が+$1,858milと、ほぼ倍増して推移しました。

 

【2020年度本決算 決算説明会資料】

A. 2020年度決算概要

A-2:セグメント別通期業績

  物流事業は、一旦物流需要は低迷しましたが、その後E-Commerce関連を中心に荷動きが堅調に推移し、前年度実績を上回りました。近海・内航事業は、新型コロナウイルスの影響で人の流れが大きく制約されたことで、フェリー事業を中心に収支が悪化しました。

 

B. 2021年度通期業績予想と取組み

B-1:2021年度通期業績予想及び変動要素

 当期の通期業績予想については、新型コロナウイルスの変異株の出現など再拡大の可能性の懸念もあり、総じて予断を許さない状況と見ているものの、欧米を中心にワクチンの普及が進み、世界の経済活動は徐々に回復軌道に戻ると想定しています。通期の売上高は5,700億円。通期の営業損益は収支均衡と、前期比213億円の改善。経常損益は+450億円の利益を見込みます。当期純損益は、不採算船や事業の構造改革を一部一定額織り込んでいることから、+350億円の利益を見込んでいます。平均為替レートは105円81銭、燃料油価格は431ドル/MTの前提です。当期の決算は、前年度下期から回復途上にあるドライバルク、自動車船事業、ともに黒字基調に戻り、エネルギー資源及び物流事業を加えた本体4部門全てが利益を稼ぐ体制に戻るのが特徴となります。配当については、現時点で未定とさせていただきたいと思います。

 資本政策については、カーボンニュートラルに向けた将来の成長戦略に必要な投資を行う一方、継続的な財務体質の強化も推進していく中で、早期復配に向けても引き続き取り組んでいきたいと考えています。事業ポートフォリオの見直しでは、先日発表しました通り、CENTURY DISTRIBUTION SYSTEMS, INC.(CDS)社を売却する一方で、低炭素化、脱炭素化に向けた事業への取り組みに傾注するため、こちらも先日発表しました通り、川崎近海汽船(株)と共に、洋上風力発電を対象とした作業船事業の合弁会社を立ち上げました。加えて、カーボンニュートラル推進の観点から、事業領域の転換として不採算船事業の構造改革、抜本的な対策を検討しており、一定額を当期の当期純損益予想に織り込んでいます。

 

B-2:セグメント別通期業績予想 

 ドライバルクセグメントは、各国における財政出動、経済支援政策、また、感染拡大抑制施策によって緩やかな回復基調が期待される一方で、新造船竣工量は限定的、且つ環境規制が今後強まっていく中で、スクラップ(解撤)船も増加するのではと見ており、船腹需要は基本的に引き締まっていくと見ています。ただし、中国は粗鋼生産量を調整することも発表しており、この動向は要注意です。第4四半期の市況は、例年通り需要閑散期となり、軟化する前提で予想を立てており、前期比で186億円改善となる+95億円の経常利益を見込んでいます。

 エネルギー資源セグメントは、ドリルシップ事業での一過性損失が剥落すること、電力炭船事業なども収支が改善し、中長期契約による安定収益とあわせて、前年比30億円改善となる、+40億円の経常利益を見込んでいます。

 製品物流セグメントでは、自動車船事業において、昨年落ち込んだ自動車販売台数も、当期は前年度比1割程度改善すると見込んでいます。一方、半導体不足の影響が懸念されますが、通期では、その影響分も取り戻す前提で収支予想を立てています。これまでずっと取り組んできました、航路網の再編、船隊規模の適正化、運賃修復がしっかりとかみ合い、今年度は黒字基調に戻る想定です。

 物流事業は、フェリー事業ではコロナ禍の影響が一定程度残るものの、全体としては、コロナ禍で一旦落ち込んだ需要が回復するとして前年度並みの業績を見込んでいます。

 コンテナ船事業は、経常収支で前年度比708億円の悪化としています。ONE社としては、欧米諸国を中心にワクチン接種が進んで事態が鎮静化している一方で、アジアを中心に変異株も出現するなど、感染再拡大の状況もあり、もう少し新型コロナウイルスの感染状況を見定めたいとして、今回は通期業績予想を開示していません。しかしながら当社としては、基本的にONE社が見立てた前提をベースに業績予想を作成して、当社コンテナ船事業全体では前年度比708億円の悪化を見込んでいます。その結果、製品物流セグメント全体では、前年度比646億円悪化となる+400億円の経常利益を見込んでいます。

 

B-3:2021年度の改善ポイント(2020年度比)

 荷況回復及び、市況改善をあわせて166億円の改善とありますが、これはコロナ禍影響からの回復に伴う収支改善が自営4部門においてこれだけ現出するという想定です。配船効率化・航路合理化、及び船隊規模適正化をあわせた97億円の改善は、昨年度公表した経営計画での様々な取り組みが奏功した自助努力によるもので、こちらも4部門を中心に現出する想定にて、合計で260億円強、収支が改善する見通しです。

 

 

【2021年度経営計画ローリングプラン】

2021年度経営計画テーマ

 新型コロナウイルス感染拡大の始まった1年前はトンネルの先がまだ見えなかったというのが本音でしたが、この1年を通して感じたことは、サプライチェーンの一翼を担う当社の社会的使命を再認識しました。これを更に強化していく必要があるということで、「海と技術で世界をつなぐ」というテーマを掲げています。

 昨年度は新型コロナウイルス影響を最小化するべく、ダメージコントロールに専念しました。海上物流は人々の生活を支えるインフラであり、原材料からエネルギー資源、自動車、消費財に至るまで重要なインフラとして、当社は決してその物流を止めないということで取り組んできました。

 このインフラとしての重要性が変わらない一方、現実問題として需要は一時的であれ大きく変動し、市況も大きく変動したことで、当社はそのような大きな変動に備えてリスクを適切にとり投資規模も身の丈に合わせるということで、リスク・リターン管理の高度化にこれまで取り組んできましたが、今後更に進めていく必要があります。また、当社のお客様はインフラをリードするお客様ですが、そうしたお客様に安定したサービスを提供し、安定したリターンを上げるという考えの下、船隊規模適正化の取り組みは今後も継続していきます。“技術”という意味では、ハード、ソフト両面で考えており、サービスの改善には技術が不可欠であり、持続可能な社会の実現という意味では、環境負荷の低減を図るための様々な技術の研究導入であり、また、DXを活用した最適運航や顧客利便性の改善に、当社としてしっかり取り組んでいかなければいけないと考えています。

 

2020年度経営計画振り返り ~継続的な企業価値向上へ向けて~

 2020年度の振り返りでは、船隊規模適正化として、筋肉質の船隊規模へ変えて過度なエクスポージャーを持たないということで、2025年までにドライバルクと自動車船を中心に50隻を減らす計画でしたが、2020年度はそのうち半分となる25隻の削減を実施しました。今後は減らすだけでなく、これはコスト面、環境対応面の2点において、競争力のある船隊に入れ替えていくことが必要と思っています。

 安全・環境・品質に対する取り組みも、LNG燃料焚き自動車船の竣工や、LNG燃料供給事業の参画など、着実に取り組みを進めました。

 流動性確保についても月商3カ月分以上を安定的に確保しています。

 自己資本拡充については、ONE社の業績改善が大きいのですが、それに加えて、当社北米西岸ターミナルの事業売却を完遂したことで、2020年代半ばの目標として掲げた自己資本額1,500億円を大きく前倒しで達成し、2,100億円レベルまで積み上げています。財務体質強化は、継続課題として取り組みたいと考えています。

 

2021年度経営方針 事業戦略 ~継続的企業価値向上へ向けて~持続可能な社会との両立のために 

 自営事業4本柱をしっかり競争力のあるものに仕立てていくということで、重要なインフラを担うお客様が当社顧客の中心となる中、安定収益額は、今年度100億円強のレベルまで戻る想定ですが、これをまず200億円レベルまで引き上げるのを喫緊の課題として取り組んでいきます。その為の船隊規模適正化や、競争力ある船隊への入れ替えについては前述の通りです。

 新たな事業領域への挑戦については、例えば、アジア域内の小型LNG船輸送事業や、LNG燃料供給船等周辺事業も含めての参画に加えて、低炭素化・脱炭素化に資する事業ということで、川崎近海汽船(株)と共同で立ち上げた洋上風力支援船事業、また、将来、具現化する時期はまだ先になると思いますが、アンモニア、水素、CO2なども含めた、新エネルギー輸送需要事業としての取り組みも今後図っていきたいと考えています。加えて当社自身のサービス・品質を高める、環境負荷の低減を図るための様々な技術の活用、DXの活用は更に強化していきたいと思います。

 アジアを中心にグローバル展開を加速ということについては、成熟市場である日本のみならず、成長市場への事業領域を広げていくことで、これまでコンテナ船事業を通じて多くのパートナーが当社の各拠点にございますので、パートナーと力を合わせながら自営4部門の事業を更に強化していきたいと思います。

 コンテナ船事業の競争力向上については、前期ONE社の業績は大きく改善しました。今後当社として、どこまでがコロナ禍特需によるものなのか、また、業界再編の動きや、ONE社の実力がどこにあるのかも含めてしっかり見極めたいと思います。現時点では設立当初に見込んだシナジー効果、ベストプラクティスの実現が着実に結実しつつあると感じていますので、株主として、人も含めてしっかりONE社へのサポートを継続して、企業価値を高めていくことに取り組んでいきたいと思います。

 

2021年度経営方針 事業戦略 ~アジアを中心としたグローバル展開の加速~

 インフラとして海運の重要性、重要な役割は変わらないと申し上げましたが、一方で大きく変わっていくのはエネルギー政策、環境対応です。また、自動車については、今後EV化の進展が加速度的に進む可能性もある中で、生産拠点がどうなるのか、日本のみならず中国、北米、欧州、東南アジア、この辺も視野に入れながら、自動車船事業としてどう対応していくのかをしっかり検討し、当社事業を、お客様の変化にあわせてより強化していかなければ考えています。

 

脱炭素とサステナビリティ経営への取組み ~環境投資について~

 低炭素化、脱炭素化に向けた取り組みとして、合計でおよそ1,000億円規模の投資を見込んでいます。これは環境関連技術開発、SOxスクラバーやバラスト水処理装置、風力を利用した推進を支援する船上の設備、あとは低炭素に資する新規事業、LNG燃料やLPG燃料などの代替燃料焚き船舶建造に係る費用などを織り込んだ金額になります。

加えて、今回インターナル・カーボン・プライシング(ICP)という新たな評価方法を導入して、今後投資判断の指標の1つとして使用していくことを考えています。

 

事業計画 ~中長期的な経営目標~

 中長期的な目標としては、2020年代半ばまでに経常利益300億円、2030年度までに500億円。自己資本が2020年代半ばまでに3,000億円以上、2030年度までに4,000億円以上。自己資本比率は2020年代半ばまでに30%以上、2030年度までに40%以上を掲げ、その中でROE10%以上を目指すものです。この経常利益目標300億円の内訳ですが、ONE社については、同社は新たな事業計画を現在策定中ですので、仮置きの数字となりますが、当社としては自営4部門でまず200億円を安定的に稼ぐ体制をしっかり確立することが大事だと考えています。そうした前提での今回の利益水準になります。

 

事業計画 ~投資計画~

 今年度から5年間の総投資額を営業キャッシュフローの範囲内に抑制し、2,500億円規模を見込んでいます。まず中長期契約に基づいた投資、安定収益事業を中心とした代替投資が全体の5割強を占め、残る45%については、成長分野、例えば新たなLNG船の建造、それと環境対応ということで、LNG/LPG代替燃料焚きの費用、その他低炭素化に資する新たな環境負荷物の設置、その他の研究開発及び設置費用などを織り込んでいます。