A. 2020年度第3四半期決算概要

 

A-1:2020年度第3四半期業績

 2020年度第3四半期業績ですが、9カ月累計では。売上高4,687億円、営業損失▲32億円、経常利益+429億円、当期純利益+632億円でした。また期中の平均為替レートは106円14銭、バンカー価格は347ドル/MTでした。前年同期比では、売上高は985億円の減収、営業損益は248億円の減益、一方、経常利益は184億円の増益、当期純利益も380億円増益でした。昨年12月28日の適時開示との比較では、経常利益、当期純利益とも30億円前後上振れとなっております。

 主な変動要素について、経常利益に関しましては、当社の持分法適用会社Ocean Network Express(以下、ONE社)の運営するコンテナ船事業において、旺盛な貨物需要並びに市況の安定により税引き後利益が積み上がり、その分の持分法投資利益が当社の経常利益に反映されております。当期利益に関しましては、このONE社の増益分に加えまして、当社が北米西岸に保有しておりました海外ターミナル事業を運営するINTERNATIONAL TRANSPORTATION SERVICE, INC.(以下、ITS社)の保有株式売却に伴う売却益が特別利益として当期純利益の増益に寄与しております。

 主な財務指標ですが、当第3四半期末時点の自己資本は1,631億円、2019年度末比620億円改善しております。有利子負債は5,360億円、同前年度末比75億円の減少となりほぼ横ばいでした。現金及び現金同等物は1,437億円、同前年度末比318億円増加しており、コロナ禍の対応も含めまして流動性を高めにしております。NET DERは238%、同前年度末比185ポイント改善。自己資本比率は17.7%、約18%でして、これも前年度末時点の11%に比べて6%改善しております。脚注にございますとおり、当社の劣後ローンについて、格付機関より資本性評価50%を取得しており、それを勘案した場合の自己資本比率が22%相当となります。

 

A-2:セグメント別第3四半期業績

 セグメント別の第3四半期業績ですが、経常損益で申し上げますと、ドライバルクセグメントは▲76億円の損失。エネルギー資源セグメントは+40億円の利益。製品物流セグメントは+519億円の利益、そのうちコンテナ船事業で+517億円の利益となっています。したがって、コンテナ船事業以外の製品物流セグメントでは+2億円の利益となります。

 

 

B. 2020年度通期業績予想と取組み

 

B-1:2020年度通期業績予想及び変動要素

 2020年度通期業績予想と変動要素についてですが、通期予想は売上高6,120億円、営業損失▲210億円、経常利益+500億円、当期純利益+650億円、為替レートは105円73銭と、バンカー価格358ドル/MTという想定です。前年同期比で経常利益は426億円の改善、当期純利益は597億円の改善、前回第2四半期公表比、経常利益は500億円、当期純利益は450億円と大幅に改善しております。前提になります為替レートと変動影響等は下に記載しています。

 配当に関しましては、現時点では未定としております。通期業績の見直し、財務状況等を総合的に勘案した上で、改めてお知らせ申し上げます。現時点で期末配当予想が未定であることに関しましては、株主の皆様におわび申し上げたいと思います。

 

B-2:セグメント別通期業績予想

 セグメント別通期業績予想ですが、ドライバルクセグメントは、大型船が第3四半期にて、中国の旺盛な鉄鋼需要に支えられて主要生産国での粗鋼生産回復による船舶需要が高まり大型船市況は高騰したものの、鉄鉱石の積み地であるブラジルにおける悪天候や、採掘施設の補修による出荷量の減少などが影響して、期末に向けて市況は大きく下落しました。同じドライバルクの中・小型船は、市況は北米積み中国向け穀物輸送需要が高まったことに加え、インドや日本、韓国向けの豪州炭の需要が旺盛になったことが下支えとなり、第3四半期は強含みで推移しました。第4四半期以降については、海上輸送需要には復調の兆しは見られますが、いまだ新型コロナウイルスの感染再拡大あるいは変異種の登場が世界経済に悪影響を及ぼすリスクが去ったとは言い切れない状況です。また、船員交代の制約など効率的な運航を妨げる影響などが予想されますので、まだドライバルク市況の動向には不安定感が残ると認識しております。このため通期では前年度比121億円悪化、しかも前回公表比10億円の悪化となる▲80億円の経常損失を見込んでおります。

 次のエネルギー資源セグメント、LNG船や油槽船を中心としますこちらのセグメントは、長期の傭船契約のもとで順調に稼働しており、通期でも安定的な収益貢献を見込みます。一方、オフショア支援船事業は、油価下落の影響により市況が回復せず、第4四半期も同様の状況が続くのではないかと見ております。引き続きコスト削減等々により、収支改善に努めてまいりたいと思います。また、ドリルシップ事業は、2022年の現行傭船契約満了後の市況予想等を踏まえ、一過性の収益悪化の可能性があると見ております。以上の要素により、エネルギー資源セグメント全体では前年度比で89億円悪化、前回公表比5億円の改善となる、+10億円の経常利益を想定しております。

 製品物流セグメントですが、まず自動車船事業では新型コロナウイルス感染症拡大影響により世界的な自動車販売の低迷、それによる各国工場での生産停止などにより、特に期初において海上輸送量は急減しました。そのため停船あるいはサービスの一部見直し、余剰船の処分等、コスト削減の対応を実施しております。足元の自動車船の海上輸送需要は、回復傾向にはあるものの、通期では、上期の積高減少の影響は大きく、前年度比大幅な積高量の減少となる予定です。第4四半期以降も、既に完了している余剰船処分などに加え、荷量の回復に合わせた最適な船隊整備と配船合理化を継続してまいりたいと思います。

 製品物流のうち物流事業ですが、こちらも、期初には新型コロナウイルス感染症拡大影響により貨物需要が大きく減少しました。近海内航事業も、鉄鋼製品や木材などの輸送需要が減少し、フェリー事業も低迷して大きな影響を受けました。現状では国内、海外ともに新型コロナウイルス感染症再拡大の懸念はあるものの、コンテナの旺盛な荷動きは、当座は継続するものと見られ、また、巣ごもり需要によるEコマース関連貨物の荷動きも足元では好調であることなどから、全体では堅調に推移し、収益は安定していくものと予想しております。なお、ターミナル事業の北米西岸のITS社については、2020年12月にマッコーリー社が運営するインフラ投資ファンドへの譲渡が完了しております。

 コンテナ船事業では、当社持分法適用会社のONE社が旺盛な輸送需要に支えられ、また需要変化に対応した機動的なオペレーションに加えて運賃水準が高水準で推移していることが寄与し、前年度比で増益となっております。第4四半期以降については、足元ではなお高い運賃水準を維持していますが、今後サプライチェーンの混乱がどう収束していくか、積高がどのように変化していくか、それによって運賃がどういう影響を受けるかという要素に、まだ不透明な部分があり、ONE社でも市況動向を注視して、機敏かつ着実な事業運営を行ってまいります。

 以上、製品物流セグメント全体では前年度比で679億円改善、前回公表比535億円改善となる、+650億円の経常利益を見込んでおります。

 

B-3:セグメント別通期業績予想

 資料9ページの滝グラフは、前年の通期実績と最新の通期見込みの差異要因を、事業部門別に示しているものです。全体では、2019年度+74億円の経常利益が今年度予想では+500億円となります。部門別の内訳では、ドライバルクセグメントは2019年度+41億円の経常利益から、2020年度は▲80億円の経常損失に落ち込むので、前年比121億円悪化することになります。同じくエネルギー資源セグメントは2019年度+99億円の経常利益から、2020年度+10億円の経常利益になるので89億円の悪化。製品物流セグメントは、コンテナ船事業を除いた前年度実績は+75億円の経常利益、今年度は、製品物流セグメント全体の数字からコンテナ船事業の数字を差し引くと▲10億円の経常損失になりますので、86億円の悪化となります。コンテナ船事業に関しましては、2019年度▲104億円の経常損失でしたが、今年度は+660億円の経常利益になる見通しですので765億円の改善となり、これらを合わせて、426億円改善し、500億円ということになります。

 全体的に総括しますと、コンテナ船事業以外の当社事業は、上期においては著しいマイナス影響を受けました。一方、下期以降は荷況、市況ともに全般的に回復傾向にあり、一過性要因による下期の減益要因を除けば、当社事業の業績は改善傾向にあると言えます。一方、世界各国では、なお厳しい入国制限を実施しており、本船の乗組員交代のために、本来であれば通れる最短航路を離れる離路や、上陸前の本船滞留期間の長期化、それから海上職員への臨時手当なども必要になりますので、コロナ禍対応による直接費用として20億円を見込んでいます。

 

 

OCEAN NETWORK EXPRESS (ONE社) 決算説明資料

 

同社業績は既に開示されており、当社業績への貢献度もご説明しましたが、現在サプライチェーンが非常に混乱している中で、ONE社がどのような対応を行っているかご説明します。

 コンテナ船事業のサプライチェーンは、港から港までの動きが非常に広大でして、まず荷主が船社からコンテナを借りて貨物を詰め、それを積み地のターミナルに搬入します。積み地ターミナルで船舶にコンテナが積載されて、船舶が海上輸送をして、揚げ地ターミナルでコンテナを陸揚げし、今度は受け荷主がそのコンテナをピックアップ、その後貨物が搬入された後で、空となったコンテナを揚げ地のターミナルに返却します。そしてその空コンテナをまた積み地に戻すという、非常に長期にわたるサプライチェーンになっていますが、今起きていることは、まず港湾の荷役効率が非常に落ちています。特にカリフォルニアなどでは、港湾労働者が新型コロナウイルスに感染して、労働力そのものが減っている状況下で、荷役がなかなか進まず船舶の停泊時間が長期化しており、沖待ちのために、ロサンゼルスやロングビーチでは船舶が何隻も滞船している状況が続いております。一方、揚げ地では、鉄道の混雑やトラックの不足により、せっかく空コンテナがターミナルにあるものの、なかなか回収できない、あるいはお客様のサイトから出てこない状況がございます。このために本船スペースやコンテナそのものが不足しており、積み地においてコンテナが出てこない、あるいは船舶のスペースがないということで、お客様に非常にご迷惑をおかけしている状況です。

 ONE社の取り組みを申し上げますと、まず短期傭船でコンテナ船を確保して、積み地に滞留している荷入りの貨物を揚げ地へ輸送し、揚げ地では空コンテナを積載して積み地に持ち帰ることを実行しております。それからコンテナそのものについても、コロナ禍の影響でコンテナ製造工場の稼働が悪化していたのですが、下期に至り相当量の新規コンテナの発注を行い、これを適宜マーケットに投入する形になっております。それに加えて、ソフト面では、問い合わせが非常に多くなっておりますので、セルフサービスのプラットフォームなどを開設して対応しております。先ほど申し上げたようにサプライチェーンの中で、ONE社、コンテナ船社が占める割合は限られるのですが、その中では最も効果的な施策を非常に精力的に行っておりますが、サプライチェーン全体でのコンテナ回しが改善しないと、なかなか今の状況は改善しないことがございます。一部メディア媒体では、どうもコンテナ船社に焦点が当たったような報道もなされておりますが、こうした全体像があることをご理解いただければと思います。