2019年度決算についてご説明いたします。

 

A. 2019年度 決算概要

 

A-1. 2019年度決算概要 通期実績

 2019年度通期実績ですが、売上高は前年比1,014億円減7,353億円。営業損益は、前年比316億円改善の+68億円、経常損益は、前年比563億円改善の+74億円、当期純損益は、前年比1,165億円改善の+53億円となりました。当期純損益につきましては、既に開示している投資有価証券評価損、その他減損による特別損失により、前回公表値を下回ったものの、+53億円の利益を計上しました。為替レートは109円13銭、燃料油価格は467ドル/MTです。

 2019年度実績の主な改善要因については、従来ご説明してきた通り、3つの課題である自動車船事業の高度合理化・運賃修復効果による黒字化、構造改革効果による船隊コスト競争力の強化、そしてONE社の収支改善に着実に取り組んだ結果によるもので、加えてエネルギー資源セグメントを中心とした中長期契約の積み上げが貢献しました。

 主な財務指標は、2019年度末時点の自己資本額は1,011億円、有利子負債は5,435億円、DERは538%、NET DERは423%です。自己資本比率につきましては前期末より0.4ポイント改善となる11.3%となりました。また、2019年4月に調達しました劣後ローンの資本性を加味すると、同比率は15.5%相当となります。期末配当については、株主の皆様への還元を重要課題と認識する一方、今後の新型コロナウイルスによる業績への影響、継続課題である財務体質の改善、将来の成長に向けた投資などを総合的に勘案した結果、大変申し訳ございませんが、期末配当は無配とさせていただきます。

 

A-2. セグメント別 通期業績

 ドライバルクセグメントでは、上期の市況は一時回復基調を辿りましたが、下期に入り、大型船はブラジル出し鉄鉱石の出荷量の減少、中小型船は南米出しの穀物や中国向け一般炭の荷動き鈍化による輸送需要減少の影響を全船型で受け、市況は軟調に推移しました。このような状況の中、運航コストの削減、配船の効率化に努めましたが、SOxスクラバー設置工事による船舶不稼働もあり、ドライバルクセグメント全体では前期比▲4億円の減益となりました。

 エネルギー資源セグメントでは、新規契約が加わったLNG船及び電力炭船は、中長期の傭船契約を中心とした事業展開のもと順調に稼働し、安定的に収益に貢献しました。油槽船事業においては、石油製品船からの撤退完了やVLCCのコスト組み替え、市況エクスポージャーの縮減など、ポートフォリオ整備を行うことで安定収益拡充に向けた改善策を実施しました。オフショア支援船においても、市況は最悪期を脱し、為替ヘッジを進めるなど、収支は改善しました。以上の結果、エネルギー資源セグメント全体では、前期比で減収となるも+74億円の増益となりました。

 製品物流セグメントでは、自動車船事業は、2019年度の課題として取り組んだ航路の合理化及び運航効率の改善、運賃の修復、船隊規模の最適化などを進めてきた結果、黒字に転換いたしました。

 物流事業は、米中貿易摩擦による航空貨物取扱量の減少、期末にかけて新型コロナウイルス感染症の影響などにより貨物量が減少し、物流事業全体では減収減益となりました。

 持分法適用会社であるONE社については、統合2年目に入りきめの細かなマーケティング、営業活動の積み上げにより、上期は積高、消席率の回復、貨物ポートフォリオの改善を果たしました。また航路改編・合理化による運航費削減や変動費削減活動による収支改善の取り組みを実施しました。下期は、新型コロナウイルス感染症の影響による荷動きの低迷が見られましたが、柔軟な減便を行うことで対処し、前期比で減収増益となりました。

 以上の結果、製品物流セグメント全体では、前期比で減収となりましたが、+463億円の増益となりました。

 その他事業及び本部・調整につきましては、グループを挙げて販管費削減などに取り組んだ結果、前年比+30億円の改善となりました。

 

A-3. 業績変動のポイント [前期比較]

 決算説明会資料5ページは、経常損益の前期通期実績と当期通期実績差異要因を滝グラフにて示したものです。コンテナ船事業では+384億円の改善となり、内訳は、ONE社の持分法投資損益の改善が+241億円、コンテナ船本体事業の改善、これは主に前期に計上された一過性の空コンテナ回送費用が剥落したことにより、+49億円の改善、2018年度実施の構造改革効果+94億円が主な要因となります。コンテナ船以外の”K”LINE事業では、+179億円の改善となり、内訳は、ドライバルクにおける構造改革効果が+16億円、収支向上策による改善が+27億円、先程ご説明した自動車船事業については想定通り+50億円の改善、ドライバルク・エネルギー資源において、主に中長期契約の積み上げ及びポートフォリオの見直しにより、+66億円の改善が主な要因となりました。

 

A-4. 2019年度の主な取組み進捗状況

 中期経営計画で重要課題としたテーマや、適合油規制の対応を中心とした第4四半期における進捗ですが、ポートフォリオ戦略転換は、先程ご説明した通り、エネルギー資源セグメントにてLNG船・電力炭船を中心とした安定収益型船隊の拡充に努めており、今年2月にはマレーシア国営石油会社であるPETRONASグループ向けのLNG船2隻の長期定期傭船契約を締結するなど、安定収益を積み上げております。加えて石油製品船からの撤退を完了しました。コンテナ船につきましても先程のご説明の通り、2019年度のONE社の通期実績は黒字化を達成しました。

 ESGへの取り組みは、SOx規制の対応は、規制を遵守しながら本船運航を止めないという方針の下、取り組み、大きなトラブルもなく、当初の計画通りに無事移行しました。規制適合油への切り替えもほぼ予定通り完了し、今年度の規制適合油調達状況も、主要な補油地では必要量の大半を既に確保しています。SOxスクラバーの設置につきましては、お客様からの要望がある大型船を中心に、当社運航船のおよそ1割程度の船舶への搭載を予定しており順次進めております。規制適合油となり、これまでより価格が高くなることについてこれまでもご説明しておりますが、お客様には環境保全のための社会的費用として適正な負担をお願いし、丁寧に説明することでご理解をいただいています。

 

 

B. 2020年度通期業績予想と取組み

 

B-1. 2020年度通期業績予想について

 新型コロナウイルス感染症の世界的拡大に伴う世界経済や海上荷動きへの影響が現時点では見通せず、当社グループの事業についても合理的な将来見積もりが困難となっているため、2020年度通期業績予想及び配当予想については、現時点では未定とさせていただきます。業績への影響を慎重に見きわめた上、合理的な予測が明らかになり次第、速やかに公表する予定です。

 

B-2. 外部環境認識

 グローバル経済活動の鈍化、景気の後退により、IMF(国際通貨基金)は2020年暦年の世界経済のGDPの成長予測をマイナス3%としており、WTO(世界貿易機関)は、今年の世界貿易量は13~32%の減少を予測、第三者機関であるClarksonsの予測では、原材料、完成品を中心とした海上荷動き・輸送需要の成長率はマイナス4.7%の減少、またコンテナ船関連については11%前後減少との予測を出しております。

 

B-3. 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響

 当社本体事業で影響を俯瞰した場合、ドライバルク事業と自動車船事業が影響を受ける中心となると見ています。お客様の生産計画や出荷計画が立たない中、その原材料、完成品の輸送を担う当社も、現時点では蓋然性の高い見積もりを立てるのは難しい状況となっています。

 ドライバルクについては、自動車メーカーの製造ラインの休止、建設現場の一時休止などの影響により、短期的な鋼材需要が減少しており、専用船には大きな影響は出ない見通しですが、大手鉄鋼ミルなどの高炉休風による2~3割の減産により、短期的な需要減退に対応したCOA履行先送りなどによる市況低迷の影響をより受けることで、特に第1四半期を中心とした上期に大きな影響が出ると思われ、特に厳しいのではないかと見ています。

 自動車船につきましては、自動車メーカーからも、第1四半期の出荷は半数以下となる可能性が高いのではと聞いており、欧米は3月から4月にかけて、日本は4月から5月にかけて製造ラインの多くを休止しており、欧米諸国を中心としたロックダウン(都市封鎖)による需要減退の影響は、上期が最も大きく、下期も一定程度引きずるのではと見ています。

 エネルギー資源セグメントの中長期契約については基本的に影響を受けませんが、原油価格下落に伴う影響としては、KOAS社のオフショア支援船事業への影響が懸念されるところです。

 コンテナ船については、ONEの真価が問われるときと考えています。統合によるコスト競争力は予定通り発現しておりますが、東西航路の主要船社が半減したことで、タイムリーに減便が実施され、需要に即したスペース供給がなされる状況となっており、現時点ではかつてのような市況の大崩れは見られませんが、今後の動向を注視するとともに、株主としてしっかりフォローしていきたいと思います。

 

B-4. 安全運航・サービス維持への対応 (新型コロナウイルス感染症対応)

 本船の乗組員及び前グループ役職員の安全を第一としながら、安全運航を維持し、社会インフラとして安定した物流サービスを継続する為、さまざまな施策をとっております。

 海上乗組員については、マニュアルに基づく船内感染予防の徹底、防護服など必要物資の供給を全船に実施している状況ですが、現在の課題としては乗組員の交代になります。各国ロックダウンによる移動制限が生じており、乗組員交代に支障が出ているため、当社として関係各国・各機関に早期改善を求め働きかけている状況です。また現在、乗組員のみならず待機船員へのケアを実施することで、安全確保とモチベーションの維持を図っています。

 陸上従業員については、全世界規模での在宅勤務環境を整備、実施することで、現時点では、お客様のフォローアップも含めた通常事業を大きな混乱もなく継続している状況です。

 

B-5. 当期業績への対策 (新型コロナウイルス感染症対応)

 まず成すべきことは3つと考えております。一時的な需要減退に対応したダメージコントロール、資金調達など手元流動性の確保、自己資本への対応ということです。

 一時的な需要減退に対処するには、船隊削減及び運航費の低減以外に道はありません。一時的な停船・係船による運航費削減に加えて、最大15~20隻前後の老齢船を中心に処分を進める計画を立てております。減速運航、減便などあらゆる手段をとることに加えて、昨年同様に販管費削減を継続することになります。

 資金調達につきましては、足元では月収のおよそ3カ月分の手元資金を確保しており、これはリーマンショック時の対応からすると倍以上になりますが、さらに不確実性に備えた追加の対応を進めていきます。

自己資本への対策につきましては、先程申し上げたように、本船の売却、不動産などの処分を進めており、自己資本の保全を図っていきたいと考えております。

 今年3月に前中期経営計画が終了し、新中期経営計画ついて5月末の発表を考えておりましたが、新型コロナウイルス感染拡大に伴い見送ることとしました。短期的には今期収支に与える影響を見定める必要があり、中長期的にはコロナ後の事業環境の変容を見きわめたいと考えております。新中計の発表は延期をしますが、まずは現下の状況に鑑み、営業キャッシュフローが減少することが想定される中、投資計画については全面的な見直しを行う予定です。コロナ後については当社が関わる各原材料、エネルギー資源や完成品の需要動向にも影響が出ることが予想される中、お客様がより慎重となることが想定される中、当社が常に選ばれるために、競争力あるサービスの提供が可能な事業や船種に集中しなければならないと考えております。投資先を絞ることから、自ずと中計見直しにつながりますし、船隊規模の維持ではなく、収益規模の維持・拡大を目的とした投資の絞り込みを行うことで、2019年度は約180億円の利益を計上した”K”LINE事業を安定的に200~250億円に拡大させていきたいと考えております。

 コロナ後の新たな事業環境を踏まえた新中計の発表は延期いたしますが、一方で、前中計で取り組んできた幾つかの課題については変わらずに、必要な見直しを加えた上で取り組みの強化を継続します。安全、環境、品質の3点につきましては、当社の強みを磨くために、営業部門、技術部門を交えた横断的な組織を新たに立ち上げました。経営管理高度化のもとで取り組んできた事業リスク・リターン管理については実践に入る段階であり、リスク総量を部門レベルに落とし込むとともに、リスク総量と投下資本をコントロールして取り組んでいきます。コロナウイルスの影響を受ける新たな市場環境のもと、早急に新中計を公表していきたいと考えております。

 

 

C. ONE(Ocean Network Express)2019年度通期決算説明資料

 

 ONE社については統合2年目を終えて、初期の混乱を乗り越えて、当初想定したシナジー効果の発現が進みつつあります。需要に応じたサービスの急な変更や減便の実施、きめの細かなコンテナ単位の収益管理体制が整いつつあり、今後さらに収益向上に貢献することを期待しています。コロナウイルスによる一時的な影響は免れませんが、3年目に入り、いよいよ実力を発揮するときと考えています。

 2019年度第4四半期実績は、前年同期比で+69百万ドル改善の▲27百万ドルの損失、通期実績は、前年比+691百万ドル改善の+105百万ドルの利益、当社持分相当で+40億円の黒字でした。期初の取り組み課題として掲げた貨物ポートフォリオの最適化、航路網の合理化、組織の最適化による総額500百万ドルの収支改善策については目標通り達成しました。新型コロナウイルスの影響により旧正月以降の積高は想定以上に落ち込ましたが、追加減便も実施し固定費の圧縮に努めました。規制適合油に伴うBAF適用も想定通り進んだことで、前回公表を上回る結果となりました。先程申し上げた、東西航路の主要船社が半減したことでタイムリーに、需要に応じた必要なスペースが供給される状況となっており、これまでのところ大崩れはございませんが、今後の動向については十分注視していく必要があろうかと思います。

 コロナウイルス感染拡大による2019年度通期の業績に与える影響は比較的軽微でしたが、2020年度の通期業績に与える影響は大きなものとなる可能性があり、今後大消費地である欧米の低迷が一層顕著となり、需要の落ち込みが長期化するようであれば、さらに踏み込んだ構造的な航路改編、整備が必要だと考えております。4月から5月につきましては、東西航路を中心に既に25%を超える構造的な減便を決定しております。また、今後傭船返船やコンテナ船隊の一部見直しなどを丹念に実施することで、コスト削減を図る予定です。