2018年度決算について説明を行います。

 

A. 2018年度 決算概要

 

A-1. 通期実績

 2018年度の連結決算概要は、売上高が8,367億円、営業損益が▲247億円の損失、経常損益が▲489億円の損失、親会社株式に帰属する当期純損益が▲1,112億円の損失となりました。当社は3月7日に引当金及び構造改革費用の計上とあわせて連結の業績予想修正を公表しておりますので、その公表数字との比較でご説明申し上げます。経常損益が▲460億円の損失の予想に対して▲489億円の損失ということで、1月に発生したブラジルの鉱山ダム決壊事故の影響による、ドライバルク市況への想定以上の影響により、16億円前後発生したことに加えて、一過性費用の計上等により、29億円悪化しました。親会社株式に帰属する当期純損益は▲1,112億円の損失と、予想より112億円悪化していますが、今ご説明申し上げた経常損益の悪化に加えて、構造改革費用の変動及び追加のコンテナ船の減損損失等により▲1,112億円の損失となりました。コンテナ船の追加減損損失については将来の回収可能性を考慮した結果によるものであり、構造改革効果とあわせて19年度以降の費用低減効果が現出することとなります。

 資料3ページ、左下の主な財務指標ですが、当社中計の重要な指標の1つである自己資本比率は、今回構造改革を断行したことで、2018年度末(2019年3月末)時点では11%まで低下しております。ただし、2019年度期首に実施した新規劣後特約付ローンによる資金調達、これは全体の50%について資本性認定いただいているものですが、これ加えて4月1日に行った国内港湾運送事業子会社3社の株式一部譲渡に伴う自己資本の拡充もあり、これらの効果を加味した場合、4月初旬時点の自己資本比率は16%になります。これらの要素については、後ほどご説明させていただきます。

 

A-2. セグメント別 通期業績

 セグメント別の通期業績は3月7日の業績予想修正の際にセグメント別の開示を行っていませんので、こちらは第3四半期決算(2019年1月末)公表値との比較になります。ドライバルクセグメントでは、前述のブラジルの鉱山ダム決壊事故により市況全体が急激に大きく落ち込んだ影響を受けて、前回公表比16億円悪化の+44億円の黒字。エネルギー資源セグメントでは、総じて中長期契約のもとで順調に推移しましたが、一過性費用発生の影響もあり、前回公表比で5億円の悪化となる+25億円の黒字。製品物流セグメントでは、3月7日に公表しております、ONEに対して傭船貸出をしている当社コンテナ船に係る2019年度の傭船契約損失引当金計上などにより、製品物流セグメント全体では162億円の悪化となる▲492億円の赤字となりました。

 

A-3. 業績変動のポイント[2018年度 第3四半期公表比較]

 第3四半期決算公表時点では経常損益予想▲280億円の赤字に対して、2019年度分のコンテナ船傭船契約損失引当金の計上151億円、ドライバルク収支の悪化16億円などにより、合計209億円悪化し経常損益▲489億円の赤字となっております。

 

A-4. 2018年度 中期経営計画進捗

 中期経営計画2年目を終えた、2018年度の振り返りですが、2018年度の最大の課題であったONE社が昨年10月16日行った業績下方修正による影響と、自動車船事業の収益悪化の2つを主要因として、財務指標にある、3年間黒字化継続、自己資本比率20%の半ばに向けた積み上げ、早期の復配と、この3項目については、大変遺憾ながら達成することができませんでした。ただし、後ほどご説明しますが、3月に発表しました通り抜本的な構造改革による、一過性ではない収益改善を期待できる手段をとりましたので、まず何よりも2019年度通期業績の黒字化実現に取り組んでまいります。構造改革の断行により毀損した自己資本につきましては、前述の通り新規劣後特約付ローンによる資金調達で450億円、そのうちの50%を格付機関であるJCR社より資本性認定をいただいており、また、国内港湾運送事業子会社3社の一部株式譲渡による自己資本の積み上げを加味した場合、4月初旬時点では16%まで自己資本を拡充してきたことになります。

 その他、経営管理の高度化、機能別重点戦略、ESGの取り組み、これはCarbon Disclosure Projectにて”気候変動Aリスト”の最高ランクの評価をいただくなど、こちらについては予定どおり進捗しており、このまま継続してまいりたいと考えております。

 

A-5. 2018年度 構造改革実績・自己資本拡充への施策

 構造改革について、その実績・効果ついてご説明させていただきます。前回3月の公表時には、およそ25隻の高コスト船の傭船解約費用として500億円を見込んでおりましたが、最終的にドライバルク船6隻、コンテナ船17隻、合計23隻について、船主殿のご協力も得た上で傭船契約の解約を実施しました。結果、特別損失として519億円を計上しておりますが、効果額については、2019年度にて110億円の収支改善効果を見込んでおります。これらに加えて、前述の通りコンテナ船の傭船契約に係る損失引当金の計上を2019年度に行っており、これはコンテナ船事業収支の2019年度収支改善の蓋然性を高めることに寄与するものと思っております。

 下のグラフは、今回構造改革の実施により▲519億円の自己資本毀損に至ったわけですが、国内港湾運送事業子会社3社の一部株式譲渡等、事業ポートフォリオの見直しによる200億円の自己資本の拡充、その他非コア資産の処分による特別利益の積み上げ170億円、新規劣後ローンによる資金調達額450億円の50%である資本性認定額225億円、これらに加えて構造改革による収支改善効果が2019年度は110億円、2020年度は95億円、2021年度は105億円と、毀損した自己資本を早期に回復・拡充する計画を立てており、これを着実に実行していきたいと思っております。

 

B-1. 2019年度 通期業績予想

 2019年度通期業績予想についてご説明申し上げます。売上高は、上期3,780億円、下期3,820億円、通期で7,600億円、営業損益は上期80億円の黒字、下期20億円の損失、通期で60億円の黒字。経常損益は、上期100億円の黒字、下期50億円の損失、通期で50億円の黒字。親会社に帰属する当期純損益は、上期が60億円の黒字、下期が50億円の黒字、通期で110億円の黒字を計画しております。下期の経常損益予想が赤字となっている理由は、前述の通り、2020年度のコンテナ船傭船契約損失に関する引当金を第4四半期に計上する予定によるものです。

 セグメント別では、ドライバルクセグメントの売上高は通期で2,290億円、経常損益40億円の黒字となります。ブラジルのダム決壊事故などによる年初からの市況悪化の影響が上期に若干残ること。また、2020年1月からのIMOによるSOx規制への対応にて、当社SOxスクラバー設置予定船の設置工事による不稼働などを織り込んだ結果、前期実績の44億円の黒字に対して、およそ4億円の悪化となる40億円の黒字予想を立てております。

 エネルギー資源セグメントにおいては、大型油槽船をはじめとした市況前提は2018年度並みとしておりますが、安定収益源であるLNG船などを中心とした中長期契約の積み上げ、また、油槽船で石油製品船からの撤退など選択と集中を進めている結果、前期比で45億円の改善となる経常損益70億円の黒字を見込んでいます。

 製品物流セグメントは、当社の課題として認識しているONE社及び、自動車船事業が含まれますが、ONE社につきましては、前年比での収支改善の見込みによる持分法の投資損益28億円の黒字を織り込み、当社コンテナ船事業合計で▲110億円の損失を見込んでおります。自動車船事業では、2018年下期から本格的に取り組んでおります、航路収支をしっかり見直した上での不採算航路の再編合理化、加えて運賃修復の取り組みも進めており、その改善効果について今回55億円を見込んでおります。物流事業、近海内航事業についてはいずれも、前年同様に今期も安定的な収益を確保する計画となっております。製品物流セグメント全体の通期経常損益は、前年比で462億円の改善となる▲30億円の損失を見込んでおります。その他事業についても、前年比若干の改善となる15億円の黒字を予定しています。

 なお、前提となる為替レートは、1ドル109円、燃料油単価は、今年度の後半から2020年度にかけてIMOによるSOx規制に伴う規制適合油に含まれる硫黄分が3.5%から0.5%へ大きく下がった燃料油を補油することも踏まえて、年間では1トン当たり584ドルの想定としています。為替レート1円当たりの変動影響は±5.4億円、燃料油価格10ドル当たりの変動影響は±0.5億円となります。

 配当につきましては、中期経営計画で掲げていますとおり、株主の皆様への還元を重要課題として認識しております。一方で、財務体質の改善を喫緊の課題と捉える中、引き続き収益の改善に取り組んでまいりますが、現時点では中間・期末配当ともに未定とさせていただきます。

 

B-2. 業績変動のポイント[前期比較]

 コンテナ船事業全体では、前年に比べて378億円の改善予定、そのうちONE社持分法損益の改善が230億円、コンテナ船の構造改革に伴う収支改善効果が94億円、コンテナ船本体事業の改善が54億円の合計378億円の改善となります。 “K”LINE事業では161億円の改善予定ですが、ドライバルクの構造改革に伴う収支改善効果が16億円、各セグメントの収支向上策を積み上げたものが28億円、自動車船の不採算航路の徹底的な見直しに伴う航路改編、運賃修復効果によるものが55億円、エネルギー資源セグメントの中長期契約の積み上げが29億円、合計161億円の改善となります。それらを合わせて、通期経常損益予想50億円を達成する見込みです。

 

B-3. 2019年度以降の取り組みと次期中期経営計画に向けて

 ONE社へのガバナンスの強化については、昨年来、親会社3社の社長会も含めて毎月開催しており、また、ONE社事業会社から親会社への報告体制も、精度を非常に高めたものを既に導入しており、当社としてもしっかりモニタリングをしてまいります。あとはコンテナ船事業スピンオフ後のポートフォリオ戦略転換、関係会社の見直しなど引き続き仕上げてまいります。経営管理高度化につきましては、これまでの準備段階から既に運用を開始しており、最終年度の2019年度についても事業リスク・リターン管理の考え方をしっかり導入した上で、次世代の成長に向けた中核事業の育成を目指していきたいと考えております。

 また、構造改革に伴い毀損した自己資本の拡充については、前述の通り構造改革を通じて得た収益力を基に、安定的な自己資本拡充を実施してまいりたいと考えております。

 

 

D. ONE社  2018年度決算説明資料

 20ページのONE社の業績について、2018年度業績は、前回第3四半期公表時は594百万ドルの損失予想でしたが、実績は8百万ドル改善して586百万ドルの損失となりました。現状足元では、北米航路が運賃市況も含めてより強い地合いが見られる一方、欧州航路については短期運賃市況、これはSCFI(Shanghai Containerized Freight Index)などで開示されておりますが、下落傾向が続いていたのが、ようやく底を打った状況にあります。

 22ページの2019年度の通期予想については85百万ドルの黒字、前年比で671百万ドルの改善を目指します。当初ご心配をおかけしました事業開始時の混乱は既に収束しており、積高、消席率についても実績でも示しているとおり、第4四半期にかけて大きく回復しております。2019年度の積高前提は、事業統合前の邦船3社の合計に近いレベルに戻る前提です。また、事業開始当初の2018年度第1四半期の実績を除いて、同第2四半期や第4四半期の実績との対比でも北米航路や欧州航路の往航の前提は微増としており、大きく増やした数字を、全体として計画している内容とはなっておりません。

 次の23ページにある2019年度見通しの差異分析の滝グラフですが、2018年度実績▲586百万ドルの赤字からスタートして、当初混乱から脱して積高、消席率改善が400百万ドルの改善。プロダクトの最適化、これは北米西岸、北欧州航路を振り子配船とするなどの配船合理化や、アジア航路を中心に不採算航路を全面的に見直し、一部合理化や休止も含めた整理ですが、これは、ほとんど既に計画どおり改編が終わっており、260百万ドルの改善。貨物ポートフォリオ最適化、これは、昨年は親会社3社が各自で決めた契約を引き継ぐ形で事業を開始しましたが、今年はONE社として顧客と交渉することでの運賃修復、北米の内陸地点も含めたイン、アウトのバランス、各航路の収益性、この辺りを全て一つ一つ見直した上で契約更改を進め、貨物ポートフォリオの最適化を図ることで190百万ドルの改善を図ります。運賃については、OBS、ONEの固有の燃料油サーチャージであるONE BUNKER SURCHARGEですが、これはIMOによるSOx規制対応も含めて徴収する形で270百万ドルの改善。あとは既に着手している一般管理費の削減による50百万ドルの削減効果などを含みます。一方で燃料油価格は190百万ドル上昇。変動費も一部契約更改に伴って値上がりしたところがあり、90百万ドルの悪化。IFRSについては2019年度からIFRS基準によるリース会計の適用を受け、70百万ドルの悪化。その他一過性要因を含めて、85百万ドルの黒字を目指す計画です。

 当社の今年度の計画については、ONE社をしっかりガバナンスを効かせてサポートするとともに、黒字化をきちんと果たしていくこと。また、自動車船事業の収益改善を図るとともにその他、ドライバルクセグメント、エネルギー資源セグメントにつきましては、これまで積み重ねてきた中長期契約の更なる積み上げを進めていくことで、収益の改善に努めていきたいと思います。

 最後に1点申し上げたいことがございます。本日開示しました通り、当社の提案として、当社株主であるEffissimo Capital Management Pte Ltd(以下、ECM社)のディレクターである内田龍平氏を社外の非業務執行取締役候補者として選任して、株主総会に付議することにいたしました。内田氏を迎え入れて、数多くの日本企業に投資しているECM社の知見を生かすことで、当社の中長期的な企業価値の向上に寄与するものと考えております。なお、ECM社からは、当社の経営陣及び中期経営計画への信認をいただいている状況です。