本日は、2017年度第2四半期決算概要、及び4月に発表しました中期経営計画の重点課題のひとつである「経営管理の高度化」の概要、またコンテナ船事業合弁会社の事業開始に向けた進捗状況について説明します。

 

A.2017年度 第2四半期決算概要

 

A-1.第2四半期決算概要

 

  第2四半期、上期の決算概要についてご説明します。2017年度上期の売上高は、1Q公表時並みの5,789億円。営業損益は、コンテナ船市況の影響、油槽船を主とする不定期専用船市況の影響等により38億円の悪化。経常損益は、1Q公表時より11億円上振れして111億円となりました。当期純損益は、特別損益の変動があり、1Q公表時より18億円悪化して132億円となりました。為替レートは期中平均が111円20銭、燃料油価格は1トン当たり324ドルです。主要財務指標及びセグメント情報は、資料に記載のとおりです。当上半期には、既に公表のとおり重量物船事業の売却を実施しております。

 

A-2.上期業績変動のポイント<1Q公表比較>

 

  2017年度上半期の経常損益は、1Q公表時との比較で11億円上振ぶれの111億となりました。内訳は自社要因にて+6億円。コスト削減の積み上げ等の自助努力によるものです。そして外部要因にて+5億円。コンテナ船市況は、船社間での事業統合や集約のプロセスが進む過渡期にあってシェア争奪に向かう動きがあったことや、大型船竣工等による影響もあり、想定を14億円下回りましたが、不定期専用船市況は想定どおりでした。一方で、為替換差は+16億円あり、他の要素と併せ全体で11億円の上振れとなりました。

 

A-3.通期業績予想

 

  通期予想は1Q公表時との比較で、売上高は微増の1 兆1,400億円、営業損益は100億円悪化の130億円、経常損益は80億円悪化の130億円、当期純利益は125億円悪化の85億円を見込んでおります。下期6ヶ月間の為替レートおよび燃料油価格の変動影響につきましては、為替レートが1円変動で±2億円、燃料油価格が10ドル変動で±2億円となります。当期純利益は、当期に見込んでいた資産売却等、特別損益の一部が来年度に後ろ倒れする影響も含んだ業績予想として修正をしています。配当については前回に発表したとおり、2017年度は誠に遺憾ながら、無配とさせていただきます。

 

A-4.セグメント別 通期業績予想

 

  主なセグメント別の通期経常損益予想は、コンテナ船セグメントでは定期コンテナ船事業合弁会社Ocean Network Express (以下、ONE)の設立関連費用約40億円を含め、1Q公表比で100億円悪化の90億円。不定期専用船セグメントは、1Q公表値から5 億円悪化の70億円。海洋資源開発及び重量物船セグメントは、1Q公表比19億円改善の4 億円を見込んでおります。

 

A-5.通期業績変動のポイント<前期比較>

 

  通期予想は前年同期比で、自社要因が+453億円、外部要因が+201億円、合計+654億円を見込んでいます。まず自社要因は、2016年度に実施した構造改革及び損失引当金の影響額が251億円、コスト削減の積み上げによるものが202億円、合計で453億円。外部要因は、コンテナ船および不定期専用船市況の回復影響が208億円、燃料油価格は上昇傾向にあり52億円の悪化、為替換差による影響で+68億円、合計で201億円となりました。

 

A-6. 通期業績変動のポイント<1Q公表比較>

 

  通期予想の1Q公表時との比較では、自社要因が+12億円。主にコスト削減の積み上げによるものです。そして外部要因は92億円の悪化、コンテナ船で船社間での統合集約に伴うシェア減少への各社による懸念、大型船の竣工などにより、2017年度下期のコンテナ船運賃想定を上期並みとしたことによる影響にて▲76億円、供給過剰が継続する油槽船を中心とした不定期専用船市況の変動影響にて▲20億円が主要因となり、合計で80億円の悪化を見込んでおります。

 

A-7. 構造改革及び引当金等による収支影響額・コスト削減進捗

 

  構造改革及び引当金による収支影響額は、ほぼ期首初の予想どおり344億円となる見込みです。コスト削減については、若干積み増して202億円となる見込みです。

 

A-8. 中期経営計画の進捗状況<2017年度上期>

 

  まず、2017年度の安定収益型事業拡充の見込みについては、現段階で安定収益型事業に投入している期末資産の規模が2016年度同様の5,000億円。経常損益は、安定収益型事業の効率化、コスト削減による改善と新規契約の積み上げなどにより2016年度比にて20億円を積み増し、270億円を見込んでおります。引き続き安定収益型事業を積み上げていくことに注力していきたいと思います。
経営管理高度化については、今年度下期より順次運用を開始する計画です。また、機能別重点戦略の中で、CRM(カスタマー・リレーションシップ・マネジメント)強化として、顧客の基盤強化へ向けたグループ全体での取組みをスタートさせております。技術革新・ビジネスモデル変革では、川崎重工グループと共同開発した最適運航支援システム「K-IMS」の搭載による、より効率的な省エネ最適運航を追求、それから川崎近海汽船との日本初となるLNG燃料フェリーの共同検討開始など、着実に取り組みを進めております。

 


B.部門別業績動向

 

B-1.不定期専用船事業<ドライバルク船>

 

  上期実績に「中国向けを中心とした輸送需要の拡大を背景に堅調に推移」とありますが、中国の粗鋼生産は19カ月連続で前年同月比生産量が増えています。これまで統計に表れていなかった、違法操業にて生産されていた「地条鋼」をはじめとする粗悪品の放逐により、大手をはじめとする鉄鋼会社が粗鋼生産量を増やしており、統計上も増加しています。実際に、今年度1-9月の累積ベースでは中国の鉄鉱石輸入量は前年同期比7%超の増加、石炭輸入量は14%増加、中小型船が中心の穀物関係は、大豆輸入量が15%増加と、2017年度上期は強含みの荷動きとなりました。下期については中国における環境規制対応で一部華北地域で生産調整があるとの見方もありますが、冬場の需要の先食いで、中国の鉄鋼大手各社が強気を維持しており市況のセンチメントは悪くなく、若干の改善を見込んでおります。以上、ドライバルクとしては第2四半期より黒字基調に転換し、下半期はそれを拡大する想定です。

 

B-2.不定期専用船事業<LNG船・油槽船・電力炭船>

 

  電力炭は上期までドライバルク事業でしたが、下期からエネルギー資源輸送事業に変更になります。液体、固体の違いはありますが、顧客が同じであり、顧客目線で、同様のサービスを提供する目的の為です。
LNG船と電力炭船については、中長期契約のもと安定的に稼働しました。一方で油槽船は、2017年度に入って新造船の供給に加えスクラップが進まず、2016年度下期の損益分岐点維持レベルから、センチメントが大幅に悪化。2017年度上期には3万3000ドルの見立てから2万ドル、1万ドルの損益分岐点以下の赤字レベルに落ち込んでおります。エクスポージャーは大きくありませんが、上期は下振れとなりました。下期については、足元ようやくスクラップも出始め、かつアメリカのシェール由来のオイルの輸出が本格化してトンマイルが伸長し、現在の下期想定予想よりもかなり上回って推移しております。

 

B-3.海洋資源開発事業

 

  ドリルシップは安定稼働しております。上期に基本合意したFPSOは、諸契約の締結を進めて今期内に多少でも収支に貢献させたく思っております。オフショア支援船については、油価の上昇による影響で産油国通貨に買いが戻り、上期は為替評価益を2桁億円以上計上し、黒字転換しております。下期については、ブレント油価格が足元2年4カ月ぶりに1バレル当たり60ドル台に乗せており、サウジアラビアの減産継続等の影響も追い風にして、リグ(石油掘削装置)の稼働自体も底打ちしてきております。今後ともコストの削減や為替エクスポージャー等の対策は進めるため、大きな赤字計上はない想定です。

 

B-4.コンテナ船事業

 

  第2四半期の経常利益は29億円となりました。1Q公表時想定49億円の経常利益からは、残念ながら20億円の悪化となりました。主な理由は、東西航路往航の運賃が想定を下回った事です。運賃指数は、第2四半期北米往航は75、欧州往航は56という結果となり、想定よりそれぞれ3ポイント程度下回りました。第2四半期の、8月、9月と繁忙期に短期運賃市況の修復を織り込んでおりましたが、残念ながら実効が伴いませんでした。
下期は今回の見直しによりし、経常損益は1Q公表時の80億円の経常利益想定から0に修正しました。理由は主に2つです。1つ目は、東西航路の足元の運賃市況に鑑み、下期の運賃指数前提を上期並みの北米航路77、欧州航路55に修正したこと。前回1Q公表時との比較で北米航路5ポイント、欧州航路3ポイントという大きな修正となり、減益の大きな要因となります。2つ目は、ONE設立に当たり、同社で当期に発生が想定される損失のうち、当社持分相当の31%の持分法損失として取り込む部分などを含めた約40億円を今回の収支計画に織り込んだこと。これが概ね下期に集中する分を反映しました。

 

B-5.不定期専用船事業<自動車船>

 

  想定していた事業環境、市況については概ね変更はありません。上期の輸送台数は173万台で、前年比14%の輸送台数増加を達成できました。また、通期でも昨年度311万台に対し、今年度の想定は353万台と、14%増で、ほぼ計画通りの台数の増量を達成できる見込みです。基本的には運航、船腹規模は変更せず、効率配船による増量を図り、収益拡大を目指しております。また、事業環境としては、特に中東、南米、アフリカ等資源国向けの輸送台数が昨年から落ち込んでいたものの、資源国での自動車の販売台数は改善の兆しも見えており、今後徐々に回復し、収益改善に寄与していくと考えています。

 

C.経営管理高度化について

 

C-1.経営管理高度化の考え方(経営計画方針)

 

  経営管理の高度化は、今年4月に公表いたしました中期経営計画での当社を取り巻く事業環境の認識、そして現在当社の置かれている経営状況の認識に基づいて、重点課題として掲げたものです。今回想定される最大損失額を意味する事業リスク量を当社事業の特性に合わせて計測し、その総量を連結自己資本の範囲内にコントロールする方針とすることで安定性、成長性の両面を図っていくとともに、各事業において事業リスクに見合うリターンの確保を重視することで、最適な事業ポートフォリオの転換を図るものです。事業リスクに見合うリターン確保の重要な指標として、“K”LINE版のEVAである“K”VaCS、と“K”LINE版のROICである“K”RICを導入し、今まで以上に資本コストを意識した経営を進めたいと考えております。

 

C-2.経営管理の高度化 骨子

 

  事業リスク量については、当社は海運業を母体とする総合物流企業グループとして、その事業の特性を考慮の上、それぞれの事業の想定最大損失額を事業リスクとして計測してまいります。計測の対象は、収益変動リスクと資産価値変動リスクです。その他のリスクにつきましては、従来からの危機管理委員会のもと、グループの経営リスク委員会で管理をしていく方針です。
事業リスク量コントロールとリスク・リターンの管理について、事業リスク量は、その許容量を設定し、連結自己資本の範囲内でコントロールすることで安定性を高め、一方で事業リスクに見合うリターンを確保することを重要な指針とすることで収益性、成長性が高い事業ポートフォリオへ転換していく方針です。今回これらの指標に沿った事業評価を行うべく、当社の事業特性を考慮に入れた“K”VaCSと“K”RICを導入し、投資評価基準を案件ごとに事業リスクを計測し、それに見合うリターンも設定いたしまして、事業戦略の合致性など定性的経営方針と併せて、当社グループの企業価値向上の両輪とする計画です。このような事業評価を考慮した上で、投資の経営判断として、事業の将来性等も含め、経営戦略の合致性と併せて取組みを実施していく所存です。

 

C-4. 事業ポートフォリオ転換-“K”VaCS・“K”RICを活用

 

  経営管理高度化は、企業価値向上を支える基盤です。経営方針と両輪となり、あるべき、ありたい事業ポートフォリオの構築へ向けて効果を上げていく計画です。今年度下期より順次導入し成果を上げたいと思っております。

 

D.定期コンテナ船事業合弁会社 事業開始に向けた進捗状況報告

 

  ONEの事業開始に向けた進捗状況について報告します。2017年7月に日本のホールディング会社およびシンガポールのグローバル・ヘッドクォーターを設立しました。10月には、全ての地域統括会社および日本の総代理店であるONE JAPANが業務を開始しております。
地域統括拠点は、シンガポール、香港、英国、アメリカ、ブラジルとなります。今回の統合における各国の独禁法許認可の状況は、残念ながら、現在南アフリカ共和国のみ許可をいただいておりませんが、審判請求手続中であり、来年の1月には結審される見込みです。南アフリカを除いた他の各国においては、既に独禁法関連の許可手続が全て終了しており、2018年4月以降の顧客との輸送契約や、ターミナル会社等関係先とのベンダー契約交渉についても順次進行中です。
また、ITインフラ、安全運航、環境、コーポレート機能等、新会社設立へ向けた様々な準備作業も着実に進んでおります。ただONEは、かなり大規模かつグローバルな企業となりますので、2018年4月の営業開始に向けて多くの課題が残っております。現状は支障なく想定通りのスケジュールで進んでおりますが、今後も3社の英知を結集し、魅力的かつ競争力のある企業にすべく努めてまいります。