A-1.2016年度決算概要 通期実績

 

  2016年度の決算概要についてご説明します。売上高1兆302億円、営業損失460億円、経常損失524億円、親会社に帰属する当期純損失1,395億円となりました。2017年1月予想時より経常損益54億円の悪化、当期純損益455億円の悪化という結果となりました。主な財務指標は、自己資本2,195億円、有利子負債5,505億円、自己資本比率21%となりました。
  部門別経常損益では、コンテナ船315億円の損失、不定期専用船95億円の損失、海洋資源開発及び重量物船51億円の損失という結果です。経常損益の本年1月公表時からの差異は▲54億円。内訳は、不定期船を中心とした為替評価差損が約29億円、特損計上としていたものを一部営業費用へ振替えたことで15億円、残りは海洋資源開発及び重量物船セグメントで市況が想定を下回ったことによります。
  当期純損益は、第4四半期で減損損失及び損失引当金で合計651億円を計上し、2017年1月公表比455億円悪化の1,395億円の損失となりました。
配当につきましては、当期純損失を計上しており、当面財務体質の改善を喫緊の課題と捉え、遺憾ながら無配とさせて頂きます。

 

 

A-2.2016年度決算概要 通期実績 経常損益 前期比

 

  2016年度の総括は、2015年度実施のドライバルクを中心とする構造改革効果93億円と2016年度中のコスト削減効果209億円の、合計302億円の収益向上への取組みを行いました。一方で、年度前半のコンテナ船、ドライバルクを初めとする歴史的な市況の低迷、新興国、資源国向け完成車の荷量減となった自動車船事業などの要因が大きく影響し、対前年度比557億円の大幅な悪化となりました。
 この滝グラフは、2016年度の実績と2015年度の実績を比較したものです。2015年度実績33億円の利益に対し2016年度は524億円の損失で、557億円の悪化を示しております。自社要因の302億円は、自社での収益改善の取組みを実施し、不定期専用船を中心とした構造改革で93億円、コンテナ船を中心としたコスト削減で209億円収支を押し上げる努力をしました。
 一方、外的要因で顕著に見られるのは、市況による収益の悪化です。画面の下の表、市況比較をご覧ください。コンテナ船、北米航路は前年度運賃指数91に対して今年度実績は75と16ポイントの下落、全体では380億円の悪化要因です。また、不定期専用船は市況変動の影響で260億円、加えて前年度及び上期の市況低迷時に更改された契約の影響で180億円、合計440億円悪化しました。また、為替の影響で31億円の悪化、燃料油価格下落で22億円の改善が見られたものの、その他30億円の悪化要因を入れて、外的要因で859億円の悪化となりました。
 2016年度の事業概況は、画面右側にありますとおり、コンテナ船、ドライバルクの史上最低レベルの市況影響の爪跡が残る形となりました。対策としまして、コンテナ船で2018年4月から営業いたします、新会社の設立という大きな構造改革を決定しました。また、コンテナ、ドライバルク、オフショア、重量物事業におきましては減損、また、損失引当を行いました。

 

 

A-3.2016年度決算概要 通期実績 構造改革・特別損失とコスト削減

 

 A-3、このような事業環境下、当グループ事業の競争力強化への取組みとして、構造改革とコスト削減を実施いたしました。また、固定資産や用船契約の回収の可能性を判定した結果、減損損失や事業再編関連損失の計上をすることとなりました。主な内容は、市況変動にさらされるエクスポージャー削減に向けた、ドライバルク事業を中心とする構造改革197億円を計上しております。コンテナ船事業の船舶資産減損、事業再編関連の損失、用船契約に関連する損失の引き当てが509億円。そして重量物船事業、海洋資源開発事業の船舶固定資産の減損が142億円。合計849億円となります。その結果、右側にありますように影響額として、2016年度に93億円、2017年度には合計343億円のプラス要因が出てきます。
 2015年度、2016年度に行いました構造改革及び特別損失計上額は、2015年度ドライバルクを中心に344億円、2016年度849億円、2年で1,193億円を計上しました。
 また、コスト削減ですが、コンテナ船、不定期専用船を中心に209億円を2016年度に計上しております。

 

 

B-1.2017年度通期業績予想 通期業績予想

 

 2017年度通期業績予想についてご説明します。為替前提が1ドル110円、燃料単価320ドル前提で、売上高は1兆1,300億円、営業利益が240億円、経常利益が210億円、親会社に帰属する当期純利益が210億円を予想しております。
 部門別の経常損益の予想では、コンテナ船は前期比505億円の改善で、190億円の利益、不定期専用船は前期比185億円の改善で90億円の利益。海洋資源開発及び重量物船は前期比31億円の改善ですが、20億円の損失を予想しております。為替と燃料の変動影響は、為替1円でプラスマイナス4億円、燃料費価格変動は10ドル当たりプラスマイナス8億円です。配当につきましては、当面財務体質の改善、そして事業基盤の安定化を最優先とし、早期復配を目指して役職員一同頑張ってまいりたいと思いますが、現時点では2017年度の配当は未定とさせていただきます。

 

 

B-2.2017年度通期業績予想 通期予想 経常損益 前期比

 

 この滝グラフは、2017年度予想と前年2016年度の比較です。自社要因は、2016年度のコンテナ船損失引当金の影響額がプラス要因で203億円。不定期専用船の構造改革がプラス要因で26億円。2016年度実施の海洋資源開発及び重量物の減損がプラス要因で22億円。そして、コスト削減で192億円のプラス要因を見込んでおります。
 外部要因としましては、為替が5億円のプラス要因、燃料油価格上昇が47億円のマイナス要因。一方で昨年、一昨年の史上最低レベルの運賃、用船料市況を脱し、緩やかな回復基調が見込まれるコンテナ船で207億円、不定期専用船で70億円のプラス要因を見込んでおります。
 コンテナ船の運賃指数は、北米往航81と前年比6ポイント上昇、欧州往航は57と前年比10ポイント上昇。これは、足元の契約更改の状況を反映した運賃指数になります。ドライバルク市況についても、2016年秋以降回復傾向にありますが、その後2017年足元並みで横ばい、または2018年に向けて若干緩やかな上昇トレンドを想定しており、足元並みの市況前提としております。その他要因は56億円あり、主に為替評価替えによるものです。
 2016年度決算の報告並びに2017年度の通期業績見込みのご説明は以上のとおりとなります。2017年度は黒字必達、当社グループ一丸となって取り組んでまいりますのでよろしくお願いいたします。

 

 

 続きまして、経営計画のご説明に移らせていただきます。今回、世界の経済環境を中心とする事業環境の変化、そしてコンテナ船事業の邦船3社統合を控え、今後の川崎汽船グループの経営方針を原点に戻って見直し、新たな経営計画を策定することとしました。

 

 

C-1.経営方針 振り返り-環境変化

 

  まずは振り返りです。過去を振り返りますと、リーマンショックに始まる世界金融危機を境に、大きな事業環境の変化が起きました。海運、物量業界でも、世界金融危機前は中国、新興国の高い経済成長による需要の大幅増加、船腹の供給不足から未曽有の市況高騰となりましたが、危機後の輸送需要の大幅な落ち込みにもかかわらず、金融危機前の投機マネーの流入も含めた船腹の供給が継続して供給過剰が常態化しました。その後も世界経済の成長鈍化や貿易のスロートレード化が継続する中、船腹の供給過剰と海運市況の低迷は長期化しております。

 

 

C-2.経営方針 振り返り-事業評価

 

  次に事業の評価です。当社グループの過去10年間の事業の取組みを大きく3つに分けて振り返りました。中長期契約が事業の中心であるドライバルク、油槽船、LNG船事業など安定収益型事業につきましては、継続的にお客様にサポートをいただき、高品質なサービスにより事業の拡充は結果が残せたと考えております。
  一方、市況変動にさらされる市況影響型事業では、世界金融危機前には事業と収益規模拡大に寄与したものの、その後の事業環境の変化により過大な投資リスクが顕在化して、自己資本の毀損につながる結果となり、大きな反省を残しました。この領域の事業については、ベストプラクティスに基づくシナジー追求によるコンテナ船事業の邦船3社の統合や、中小型船を中心とするドライバルク、フリー船隊縮減に向けた構造改革などの対策を実施しました。
  また、当社グループのポートフォリオ拡充に向けた新事業の展開につきましては、ドリルシップ事業のように安定的に企業価値向上に貢献し、成功しているものもありますが、世界金融危機やエネルギー価格の影響を受け、業績低迷により抜本的な対策を必要とする重量物船事業、そして事業再建に向けた対策が必要なオフショア支援船事業など、今後の課題と認識しております。

 

 

C-3.経営方針 川崎汽船グループの強み-振り返りを踏まえた分析

 

  原点に返って当社の経営方針を見直す中で、当社グループの強みを記載のとおり再度整理いたしました。当社グループの強みは、高品質な物流サービスの提供と、そのサービスを評価いただいている顧客基盤に立脚しております。また、高品質なサービスを可能とする要素として、環境対応先進船に代表される高い技術力、お客様に満足いただける高いレベルの輸送品質、安全運航、船舶管理、業務品質を提供できること。また、それらを支えるグローバルな事業拠点と変革を支える多様な人材にあると考えており、今後この強みをさらに強化していきたいと考えております。

 

 

C-4.経営方針 企業理念・ビジョン

 

  2015年に経営理念・ビジョンの見直しを公表しましたが、今回新たな経営計画を策定するに当たり、お客様を第一に考え、品質の高いサービスを提供するという原点をビジョンに加えることで、当社グループの目指す姿をより明確化することとしました。今後もここに掲げる経営理念・ビジョンを大事にする価値観に従い、事業活動を行ってまいりたいと思います。

 

 

C-5.経営方針 海運・物流業界を取り巻く事業環境と今後の方針

 

  海運、物流業界を取り巻く今後の事業環境の認識と課題をまとめております。物流事業については、人口増などを背景に緩やかな成長をするものと考えますが、世界の経済の不透明性からスロートレード化は続き、船腹供給の過剰から不安定な市況状況が継続するものと見ております。一方、お客様の物流への需要は多様化し、環境保全、技術革新による産業の変化がさらに進むものと思われます。こういった環境の中で、社会の重要なインフラとしての物流の果たす役割や、グローバルなネットワークの需要もさらに高まり、各業界での事業統合などの動きに対し、物流業界も対応していかなければなりません。
  当社は、このような事業環境の変化に対して3つの課題を認識しております。1つ目は、当社の強みを徹底的に強化し、競争力を確保すること。2つ目は、経済環境などに左右される市況による影響を受けにくい事業ポートフォリオの構築。最後に、社会変化に対応し技術革新・ビジネスモデル変革による成長性の実現です。これらの課題に取り組むことが、継続的に企業価値向上につながるものと考えており、重要な経営方針に繋がることとなります。

 

 

C-6.中期経営計画 基本方針

 

  今回当社グループの経営方針に従い、2017年度から創立100周年を迎える2019年度まで3年間を見据えた中期経営計画「飛躍への再生」を策定しました。3年間の重要な課題として、ポートフォリオ戦略の転換、経営管理の高度化と機能別戦略の強化、ESGの取組みを掲げ、経営理念・ビジョンの実現に向けた高品質なサービスと顧客基盤に立脚した安定収益基盤と成長分野を要する総合海運物流グループ、また、高度なリスク管理・ガバナンス体制により、環境の変化に対応しながら企業価値を持続的に創造する企業グループを目指していきたいと思います。

 

 

C-7-1.中期経営計画 ポートフォリオ戦略転換

 

  戦略転換のポイントは、安定収益型事業の徹底的な強化と成長に向けた次世代の中核事業育成にあり、これに沿ってコンテナ船事業統合の完遂と市況影響型事業の縮減を行います。安定収益型事業では、中長期契約拡充とコスト削減による収益基盤強化が主眼であり、成長に向けた次代の中核事業育成は物流・完成車物流・エネルギーバリューチェーン事業の育成に加え、技術革新・ビジネスモデル変革による新サービス・市場の創出に取組んでいく方針です。

 

 

C-7-2.中期経営計画 ポートフォリオ戦略転換-事業別方針

 

  ポートフォリオ戦略の転換で、事業別の方針をまとめております。後ほど部門別事業戦略のパートでご説明をさせていただきたいと思います。

 

 

C-8.中期経営計画 経営管理の高度化と機能別戦略の強化

 

  2つ目の重要な方針である経営管理の高度化につきましては、過去の反省に立ち事業ごとのリスクを勘案し、また、資本コストを意識した適切なリターンを事業ごとに設定することで、投資評価、そして事業のモニタリングを強化します。また、自己資本を危険にさらすリスクの総量を把握、管理することで、各事業の収益性とリスクを見極め、事業ポートフォリオの転換を支える仕組みとします。事業リスク・リターン管理は現在詳細を詰めていますが、今年度より実施したいと思っており、事業部門ごとに明確なリターンの目標を定め、全社一丸となって取組むことを浸透させ、投資規律の徹底を図りたいと考えております。
  また、機能別戦略として重視するのは、カスタマー・リレーションシップ・マネジメント(CRM)の強化、技術革新・ビジネスモデル変革による高品質サービスの追求、人材確保・育成の3つです。CRMでは、グループ全体で横串を入れた提案型営業を強化することが狙いです。技術革新・ビジネスモデル変革による高品質のサービス追求では、造船技術とは別に、新たに先進技術グループを立ち上げ、CRMとの連携の上、社会の変化、産業変化に対応する新たなサービス市場創出に向けてグループ総力を挙げて対応する考えです。人材確保・育成は、企業価値向上に向けた最も重要な経営資源である人的資源、次代の中核事業育成でも十分対応できる質と量を確保する取組みです。

 

 

C-9-1.中期経営計画 ESGの取組み コーポレートガバナンス体制強化

 

  当社グループは過去より、コーポレートガバナンス体制の強化を進めてまいりました。最近では、ユニット性の導入による執行責任体制の明確化、そして重要方針の決定に向けた取締役会体制の強化といった、グループ価値を高める戦略実施に際して最も重要となる、ガバナンス体制の整備を実行してまいりました。今後、さらにコーポレートガバナンス体制の整備を進めてまいります。

 

 

C-9-2.中期経営計画 ESGの取組み 環境対策とCSR

 

  当社グループはESGへの取り組みを最重要課題の1つとして位置づけております。環境、安全、ガバナンス体制整備に引き続き尽力してまいります。安全面では、重大海難事故ゼロの持続は当然ながら、環境面では特にCDP2016気候変動でAリスト及び「サプライヤー・エンゲージメント・リーダー・ボード」に選定されるなど、当社の積極的な活動を評価いただいております。

 

 

C-10.中期経営計画 船隊整備・投資計画

 

  本中期経営計画期間の3年間の船隊整備では、今後の飛躍への準備として、船隊は合計で35隻、特に市況変動型の部分で31隻の削減を行い、エクスポージャーの縮減、そして安定収益型事業の積み上げを重視し、コンテナ船事業を除く投資計画は3年合計で800億円を計画しております。特に財務基盤強化を実施する方針のもと、次代の成長に向けた戦略的投資も考慮に入れ、戦略的投資枠として300億円を確保する体制としております。

 

 

C-11.中期経営計画 重要方針と目指す指標

 

  2020年代半ばを目指す長期的な目標では、経常利益ベースのROA6%の達成を通じて、ROE10%台の達成を図り、事業リスクバッファとして自己資本4,000億円レベルを目標としておりますが、自己資本額はコンテナ船事業統合の効果・影響等を精査した上で改めて設定する予定です。配当につきましては、当初より掲げる安定配当方針への早期復帰を実施したいと考えております。
  2019年に向けた中期経営計画の目標としては、まず2017年度から3年間黒字を継続し、安定収益型事業の拡充を通じて同事業で経常ベースROA6%の達成、2019年度で資産規模約5,000億となる安定収益型事業の拡大を図り、安定収益300億円超を目指します。配当については、財務体質の改善と事業基盤の安定化を最優先とし、早期の復配を目指します。

 

 

C-12-1.中期経営計画 不定期専用船事業-ドライバルク

 

  ドライバルク市況は、2016年2月にケープサイズで2,000ドル台という歴史的な低迷を大底とし、それから反転し、9月には1万ドルを超え、その後一旦落ち込みましたが、3月にかけて再び上昇に転じ、年度末には2万ドル台を記録いたしました。2016年の中国向け鉄鉱石及び石炭の荷動きは、合計で約1億トン増加し堅調に推移する一方、船腹のスクラップ数は、市況の回復に伴い若干息切れ感はありましたが、新造船の竣工も想定内におさまり、センチメントは大幅に改善いたしました。
  2017年度の市況については、昨年見られた中国の鉄鉱石の高品位化、国内鉱を落として海外からの高品位鉱を輸入するといった動きや、国内炭抑制の動きは今後も継続すると見られます。また、これらが海上輸送需要を下支えする一方、新造船供給量も減少を続け、2017年度はいずれの船型においても2016年度実績を上回る水準で推移すると見ております。
  また、現時点での2017年度船型別エクスポージャー比率はケープサイズが10%台半ば、パナマックス以下の中小型が、従来5割程度ありましたが今年度に関しては約2割となり、ドライバルク全体で15~16%に抑制されております。これは市況回復時局面でのFFAや1-2年の短期契約を成約したほか、過去2年間の構造改革による船体規模縮小の効果が出ております。
  2017年度以降の取組みに関しては、これまで鉄鋼原料輸送や電力炭、製紙原料輸送を中心に、中長期貨物輸送契約を基盤とした安定収益型事業を展開しておりますが、今後とも日本国内はもとより海外の有力なお客様を含めた皆様との関係を強化し、中長期契約の拡充に努め、安定収益基盤の充実を図ります。また、なかなか長期契約が成立しない中小型船の分野については、市況影響型事業という整理で、コストが固定されている中長期の基幹船隊が市況のエクスポージャーにさらされない、船隊ポートフォリオの実現に引続き取組んでまいります。

 

 

C-12-2.中期経営計画 エネルギー資源輸送事業-LNG船/油槽船

 

  まずLNGですが、2016年度は、Petronet LNG社向け新造船1隻を加え、全体のフリート42隻が中長期契約のもと順調に稼働し、当社の安定収益型事業の基盤として収益に貢献しました。油槽船につきましても22隻全てが順調に稼働し、大型原油油槽船VLCC、大型LPG船ともに収益に貢献しております。一方で、中型原油船や石油製品船は、市況低迷の影響を受け厳しい収支となりました。
  安定収益型事業の転換、強化、拡大を目指す中で、LNG船事業は引き続き安定収益型事業の大きな柱として拡大を図ってまいります。現在稼働中の42隻に加え7隻のLNG船が建造中であり、今年度に3隻、2020年度にかけて4隻が順次竣工する予定です。足元ではLNG自体の需給関係が緩んでいることもあり、従来のような15年、20年といった長期用船をベースにしたものから、7-10年といった中期用船のニーズが高まっております。当社としては、適正な事業リスク管理を考慮しつつこうしたニーズにも取組み、中期的には60隻前後のフリートに拡大したいと考えております。
  油槽船事業につきましても、安定収益型事業の強化・拡大を目指し、具体的には中長期契約をベースとするVLCC及び大型LPG船隊の拡大を通じ、安定収益源を積み上げてまいります。VLCCは、今年度に1隻、来年度2隻の新造船が竣工する予定です。大型のLPG船も、今年度、来年度に各1隻がフリートに加わる予定です。一方で、エクスポージャー型の事業である石油製品船等の縮小を通じ、全体の船隊数は変えず、ポートフォリオの中身を入れかえてまいりたいと考えております。

 

 

C-12-3.中期経営計画 海洋資源開発事業および重量物船事業

 

  2016年度は、ドリルシップ事業は長期用船を基盤に安定稼働し、安定収益に寄与しました。一方で、オフショア支援船事業は、北海にて事業を展開しておりますが、船腹の供給過剰感が強く、2016年度収支は厳しい結果となりました。また、重量物船事業も、原油価格低迷に伴う新規プロジェクト遅延の影響を受け、厳しい収支となりました。このような環境下、両事業分野において、2016年度に船舶資産の回収可能性を考慮し、合計142億円の減損を行いました。
  2017年度以降は、オフショア支援船及び重量物船事業については、既に着手済みのコスト削減、為替対策等のほか市況変動リスクを縮減すべく、PSVやAHTSで構成されているポートフォリオの見直しのほか、あらゆる可能性を排除せずに検討してまいります。その一方で今回、中期経営計画のもとで、成長に向けて育成する次代の中核事業の1つとして、エネルギーのバリューチェーン関連事業を挙げております。長年にわたり培ってきた当社の液化ガス輸送ノウハウ、経験と顧客基盤、パートナーを組み合わせ、エネルギーバリューチェーンの中で特に中流、下流に属する取組みを強化したいと考えております。具体的には、この4月に専業組織として、液化ガス新事業室を新設し、顧客窓口と社内の知見を一本化しました。これにより洋上のLNG船、LNG貯蔵および再気化を行うFSRU、LNG燃料船等の事業化の検討や、長期安定収益が見込めるFSO事業への参入を図りたいと考えています。

 

 

C-12-4.中期経営計画 コンテナ船事業

 

  2016年上半期は史上まれにみる低い運賃市況の中、秋以降かなり改善しましたが、2016年度は315億円の赤字を計上いたしました。
  2017年度は、川崎汽船として行うコンテナ事業の最後の年になります。まず運賃市況は昨年と比べ多少改善すると想定しております。加えてコスト削減を行い、約500億の収益改善を見込み、2017年度は190億円の黒字を見込んでおります。できればさらに華々しい黒字をもって終わりたいと思っておりますが、今現在、地合いは悪くないと思います。
  また、邦船3社のコンテナ船事業統合ですが、今年7月に新会社を立ち上げ、来年4月からの事業開始を予定しております。

 

 

C-12-5.中期経営計画 物流事業

 

来年コンテナ船事業が新統合会社に移りますと、弊社のグローバルネットワークの大きな基盤の1つである、コンテナ船事業のネットワークがなくなることを踏まえ、これにかわるグローバルネットワークのインフラにすることを目指し、物流事業の中核会社であるケイラインロジスティックス社の業容を拡大し、それ以外のグループ会社事業との統合等も含めて地盤を拡大し、安定収益をさらに拡大していく考えでおります。

 

 

C-12-6.中期経営計画 不定期専用船事業-自動車船

 

  昨年度を振り返りますと、完成車の海上輸送量は北米向け、欧州向け等大きな市場においては堅調な荷動きでしたが、資源価格安に伴う資源国向けの完成車輸送は、中東、南米、アフリカ向けで大きく落ち込み、減益の大きな要因となりました。2017年度は、全体の海上荷動きの状況に大きな変化はないと見ております。ただし全体の積高は、2016年度310万台に対して2017年度は353万台と、約40万台強の増量、これは新規契約の獲得等を踏まえて計画しており、さらに配船の効率化を進め収益拡大を目指します。