A-1.2016年度第1四半期決算概要及び上半期業績予想

 2016年第1四半期の決算は、売上高2,446億円、営業損益▲148億円、経常損益▲225億円、当期純損益▲268億円となりました。第1四半期の収支悪化に大きく影響を与えた要因は、3点。
1点目は急速に進んだ円高です。ご既承のとおり、テロなどの地政学リスクの高まりや英国のEU離脱問題など先行きに対する不確実性が増す中、安全資産とみなされる円が買われ、円高が急速に進行しました。前期末の2016年3月の112円68銭が、第1四半期終盤に一気に10円近く円高が進み、6月末の為替は102円91銭と、103円を割るレベルまで上昇しました。
  2点目はコンテナ船市況の低迷です。前年度に荷動きがマイナス成長であった欧州航路から、堅調な荷動きを見せていた北米航路へ船腹が移動し、パナマ運河拡張に伴う北米東岸航路の大型化促進等の影響もあり、需給バランスが悪化した結果、北米航路ではサービス・コントラクトの交渉が終盤に入り苦戦しました。加えて、リーマンショック後のレベルを大きく下回る北米及び欧州航路の短期運賃市況についても、当初見込みに比べ回復が遅く、6月に入ってようやく修復の機運が高まってきましたが、周回遅れのような様相です。 
  3点目は自動車船の荷動きです。中近東、中南米、アフリカ、ロシア等の資源輸出国を中心とした新興国向けの荷量が想定以上に落ち込んだことが減益の要因となりました。
  以上の3つの要因により、第1四半期は当初事業計画を大きく下回る結果となりました。前期2015年度の第4四半期経常損益▲84億円に対して、一定の悪化を期首には見越していましたが、円高進行に伴う為替評価差損が約80億円、そしてコンテナ船北米航路の低迷した運賃で決着したサービス・コントラクトが年間ベースで、期首想定と比較して約100億円下振れ、加えて東西両航路での短期運賃の市況の回復遅れの影響を受けた結果、第1四半期の経常損益は▲225億円となりました。
  第2四半期最新予想となる経常損益は、▲45億円を見込んでおります。第1四半期に生じた約80億円の為替評価損がなくなること、そしてコンテナ船については6月以降ようやく短期運賃の市況が回復の兆しを見せており、7月に入り上げ下げを続けながらも上昇基調に転じています。ただし、ボトムとなった第1四半期から大きく改善するものの、第2四半期の段階ではまだ赤字にとどまると予想しています。
  第2四半期の最新予想を加味した上期の業績予想は、売上高5,000億円、営業損益▲180億円、経常損益▲270億円、当期純損益▲400億円。セグメント別では、コンテナ船▲140億円、不定期専用船▲80億円、海洋資源開発及び重量物船▲30億円となる見込みです。
  主な財務指標につきましては、円高に伴う評価替えの影響も含め、自己資本が3,077億円に減少し、第1四半期末時点の自己資本比率は29%となります。


A-2.通期業績予想

 市況回復が当初想定に対して遅れたコンテナ船、そして資源価格の下落の影響を受け新興国向けの荷動きの大幅な減少に見舞われている自動車船を中心に、通期の業績を見直しました。コンテナ船については、6月以降スポット貨物の運賃市況が上向き、上昇基調に転じていますが、当面需給バランスの本格的な改善には至らない中、上値が重い展開になると予想しています。ドライバルクについては、歴史的低水準の市況レベルからはようやく脱しつつありますが、中国を中心とした荷動きの需要回復は見込めず、ひと頃の爆買いのようなことはなく、新造船の供給圧力も引き続き強く、本格的な回復にはしばらく時間を要するものと考えています。足元の市況の動きは想定の範囲内であり、競争力確保に向けた構造改革実施によるフリー船の削減、エクスポージャーの減少に向けて鋭意取り組んでおり、この部分は計画通りに推進できる見通しです。自動車船につきましては、新興国向けの輸送台数は3割前後減少し、効率的な運航という面でも悪影響が出てきており、収益の下ぶれ要因となっています。荷動きの回復については一定の時間がかかるものと見ています。油槽船については、上期は想定を下回る市況で推移していますが、中長期契約の獲得によるエクスポージャー削減、市況変動の影響を軽減すべく取り組んでいます。今後も、新造船の竣工に伴う油槽船市況の影響については注視をしていく所存です。
  為替については、世界経済の先行き不透明感が高まる中、ある程度円高が進行したレベルで定着するとみており、ドル円の前提は105円を予想しています。燃料価格の前提は、現状と比べるとかなり高いレベルですが、原油ブレンド価格で1バレル約55ドルに相当するトン当たり310ドルを予想しています。
  通期業績予想については、営業損益▲130億円、経常損益▲215億円、当期純損益▲455億円と見直しを行いました。セグメント別経常損益では、コンテナ船は上期▲140億円、下期35億円、通期▲105億円。不定期専用船は上期▲80億円、下期50億円、通期▲30億円。ドライバルクの損失部分をエネルギー資源輸送や自動車船の利益で補う形となります。自動車船の新興国向けの輸送台数の減少が響く中、下期に向けてドライバルクを中心とした構造改革の実現による収支改善を見せています。下期は黒字に転換すると予想していますが、通期では上期の損失が残ると予想しています。海洋資源開発及び重量物船については、上期▲30億円、下期▲10億円、通期▲40億円の予想です。


A-3.通期業績変動のポイント[期首公表比較]

 見直しに伴う通期業績予想の変動について、滝グラフにしました。1つ目の要因に挙げた為替の影響については、円高の進行に伴い、営業損益ベースへの影響17億円に加えて、為替評価差損による60億円、合計で約80億円の悪化。市況については、コンテナ船では北米のサービス・コントラクトの更改による年間を通じた影響額が約100億円悪化に加え、東西航路のスポット貨物運賃市況の回復の遅れを合わせて合計238億円の悪化。不定期専用船については、新興国向けの完成車、輸送台数の減少による自動車船事業の減益に加えや油槽船市況の悪化を中心に66億円弱の収支悪化要因。コスト削減の上積みを行うも、全体では経常損益が期首公表の150億円の利益見込みから365億円悪化の▲215億円と見込んでいます。


A-4.通期業績変動のポイント[前年通期比較/当期上下期比較]

 対前年度比較では、連結経常損益33億円に対して▲215億円の損失と248億円の悪化。為替は通期の平均レートが121円から106円と15円の円高、評価差損を含めた為替による悪化の影響額は159億円となりました。そして、期首から見込んでいた市況悪化については、ドライバルクで昨年後半の底値の時期に更改したスポット契約の影響が今期に出る事。また、前期好調であった油槽船の市況も軟化が見込まれる事を合わせて、ドライバルク・油槽船の2つのセグメントで合計149億円の悪化要因となります。
  加えて、今回見直した自動車船の荷動き低迷、また、海洋資源開発等の市況低迷などを合わせて66億円の悪化要因。そして、北米航路を中心としたコンテナ船市況の悪化の190億円を合わせて、市況変動を要因とする対前年度比較の悪化要因は400億円を超える見通しです。一方、ドライバルクを中心とする100億円の構造改革による改善効果、当初計画をした188億円のコスト削減策に10億円上乗せをし、コンテナ船を中心とする198億円を見込む収支改善策などを合わせて、合計約300億円の自助努力による改善を図ります。市況悪化による400億円に、自助努力による改善策300億円を加え、さらに円高進行に伴う159億円の悪化要因が加わり、全体では対前年比較248億円の悪化となります。
  上下期比較に関しては、上期の270億円の損失に対して、下期55億円の黒字への道筋を右のチャートで示しています。為替評価差損の解消による改善額から燃料油変動に伴う悪化額を差し引いた為替及び燃料油変動などの要因によるネットの影響額は約72億円の改善。コンテナ船を中心としたコスト削減の積み増し、構造改革の実現による自助努力分により70億円の改善。6月以降回復基調にあるコンテナ船の短期運賃市況や上値は重いものの一定の回復を織り込むドライバルクによる改善額を合わせて183億円。全体では、上期から下期に向けて325億円の改善を見込んでいます。


A-5.構造改革、コスト削減進捗

  ドライバルクの市況がほぼ想定どおりの動きを示す中、予定した構造改革を着実に進めています。構造改革による2016年度経常損益の改善額は合計100億円を見込んでいますが、第1四半期では5割強の交渉が決着済です。ドライバルクの構造改革のうち残る半分弱も、交渉は8割程度進んでおり、最終的には上期中にほぼ大半が決着する見込みです。2017年度の改善に向けた関係会社の事業の抜本的見直しについては、現時点で公表できるような段階ではありせんが、鋭意検討を進めています。
  船隊については、ドライバルクの構造改革により、ドライバルク船全体では2014年度末の基幹船隊218隻を2019年度末までに239隻に増やす計画から、2割削減を図り196隻とする計画です。2016年度末時点では、2014年度比で36隻の削減となる182隻まで縮小する予定です。パナマックス以下の中小型船は2014年度の96隻を99隻に増やす当初の計画から、逆に3割減の70隻にする計画です。今期末の時点では、そのうち23隻の削減により73隻まで縮小の予定です。
  コスト削減については、期首計画の188億円に対してコンテナ船による10億円の上積みを行い、198億円を新たな目標として設定をしています。コンテナ船は合計175億円の改善計画、これは現在のアライアンスベースでの寄港地合理化、大型船の最適配分、そして撤退を行った南米東岸航路の整理などによるものです。残りは、北米内陸費用の削減と各地でのコスト削減運動の積み重ねです。他部門については、不定期専用船など配船効率化による運航経費削減が主なものとなります。
  配当については、中期経営計画の見直しで公表しているとおり、安定性及び競争力の確保を引き続き優先課題として取り組んでいきます。下期の市況環境の動向を見据えた上で、上期末の時点で今期の配当について判断をしたいと考えています。


B-1.部門別業績動向 コンテナ船

  第1四半期は、北米航路の年間サービス・コントラクトの更改が想定を下回ったことにより減益の見込みですが、昨年末から年初にかけて過去最低レベルを記録した東西航路のスポット貨物運賃市況も底を打ったと見ています。6月以降は回復傾向を見せており、夏場の繁忙期に向けて消席率も改善しており、下期に向かい回復基調は続くと見ています。

 

B-2.部門別業績動向 自動車船

  原油など資源価格の下落が中近東、中南米、アフリカ、ロシア等の景気を押し下げることとなり、これらの新興国向けの輸送台数が2-3割減少し収益にも影響が出ています。荷動きの回復には今しばらく時間を要する見込みですが、竣工済のコスト競争力ある7,500台積み大型船7隻の効率的な運航に加えHigh&Heavy貨物の取り組み強化による 、収支の底上げを図っていきたいと考えています。


B-3.部門別業績動向 ドライバルク

  今年前半には中国による鉄鉱石の輸入量が前年度比で9%増加し、一時的な需要の高まりを見せましたが、本格的な回復には至っていません。市況は当初の想定どおり上値の重い展開となっております。予定した構造改革をやり遂げ、今後の収支改善につなげたいと考えています。


B-4.部門別業績動向 LNG船・油槽船

  中長期契約を前提とするLNG船については、当初の見込みから大きな変更はございません。昨年市況が好調に推移した油槽船については、今年は一定の市況軟化を織り込む中、エクスポージャーの削減に取り組んでいます。


B-5.部門別業績動向 海洋資源開発及び重量物船

  オフショア支援船についは、引き続き原油価格の低迷を受け厳しい状況が続いています。第1四半期では外貨建債務に関わる為替評価損を計上しましたが、今後も機会を捉えて為替評価損の縮小に努めたいと考えています。重量物船については、船隊を1隻削減し、コスト削減に取り組んだ結果、損失は縮小しています。