開会挨拶(社長執行役員 明珍 幸一)
本日の趣旨(P.2)
- 足元では混迷化する中東情勢が長期化し、加えて米中対立の懸念など事業環境へ影響を与えかねない地政学的リスクは依然続いており、予断を許さない状況に変わりはない。斯様な状況が続くなか、23年度は高騰したコンテナ船の市況は沈静化したものの、自営事業を中心に1,357億円の経常利益を確保することができた。
- また、今期は5か年中期経営計画の折り返し地点となる。先の5月の決算発表では、経常利益の目標値を26年度で従来の1,400億円から1,600億円へと上方修正、また、その先の30年度には2,500億円+αを目指すことを発表した。
- 投資については、従来の計画である6,300億円から7,400億円と引き上げ、成長を牽引する3事業を中心に、自社及び社会の低炭素・脱炭素化に資する事業にも投資規律を緩めずに投資計画を実行し、しっかりと自営事業の収益を積み上げていく。
- 株主還元においては、5,000億円以上としていた従前の中計累計期間の還元額を、7,000億円以上と引き上げた。今後も中長期的な企業価値の向上を図り、株主還元原資の創出に努めていく。
- 昨年の事業説明会では成長を牽引する3事業について、事業の概要の説明並びに事業環境を中心にご説明したが、今回は事業毎の利益水準の推移や事業KPIなども含めて、安定性に加えて更なる成長を目指す30年へ向けた収益計画の理解を深めて頂けるようしっかりとご説明していく。さらには30年度の+α実現のための成長戦略についても事業別にご説明したいと思う。
- 今回、当社の強みを生かせる分野での新規事業領域を新たに説明のラインアップに加え、社会の脱炭素化に資する事業として取り組んでいる液化CO2輸送事業、洋上風力支援船事業、アンモニア・水素輸送事業のうち、液化CO2輸送事業を中心に掘り下げてご説明を申し上げ、皆様の更なるご理解にお役立てるよう努めたい。
収支目標(P.3)
- これは、5月の本決算発表で見直した自営事業の経常利益目標だが、2030年までに1,100億円+αを目指している。
- ベースシナリオである1,100億円は成長を牽引する役割の3事業を中心にオーガニックな成長により目標達成を目指す。
- +αのアップサイドについては、自営事業の更なる自力成長に加え、新規事業領域としての低炭素・脱炭素化に向けた事業展開、さらには当社の強みを生かせる分野における非連続な成長に向けた施策にも取り組む。
- そして2030年度までには自営事業の収支目標はアップサイド部分を含めてコンテナ船事業と同等のレベル、若しくはそれ以上の収益を目指したいと考えている。
M&A戦略(P.4)
- さきほどご説明した非連続な成長については、当社の強みを生かせる分野、特に成長を牽引する役割を担う事業やその周辺領域で、高いシナジー創出が見込まれ、その事業のスコープやスケールの強化につながる案件が検討の中心になると考えている。
- 対象企業の要件やハードルレートを設定し、投資規律を緩めず投資判断を進めていく。
事業説明会のアジェンダ(P.5)
- 本日はこの後、『成長を牽引する役割を担う事業』に関しては統括役員からご説明させていただく。
- 自動車船事業を専務の五十嵐より、鉄鋼原料事業を常務の田口より、LNG輸送船事業を常務の岩下より説明する。そして、社会に貢献する低炭素・脱炭素に資する新規事業領域については、常務の金森より説明する。
自動車船事業(専務執行役員 五十嵐 武宣)
1. 事業特性・市場動向
輸送需要の見通しと事業特性(P.8)
- 資料左側に自動車船事業の特性を記載している。自動車船事業の特性は、以下と考えている。
▸中期的に販売台数増加に支えられ、輸送需要も堅調に推移する事
▸乗用車製造など主たる顧客数は限定的であるが故に、顧客と船社の相互信頼関係がとても重要な事
▸そうではあるが、輸送需要に変動はあり、事業の需給変動に向けたバランスの取れた準備・対応が必要な事
- 資料右側に、世界の乗用車販売台数及び、海上輸送需要の予測を記載している。
- 世界の乗用車販売台数は、半導体などの生産制約からの回復、世界の人口増などに支えられ、2023年の8,600万台から堅調に増加すると考えている。8,600万台の内、新車完成車の海上輸送となる数量は、年間約1,600万台。
- 足元で電気自動車(BEV)の販売増加のスピードの減速が見られますが、我々の基本シナリオでは、電気自動車の世界販売に占める割合は、2030年に約4割に達するという想定で考えている。
- これは足元で言われているBEV普及スピードからは少し早いものと考えていて、BEV販売の拡大は、現地生産化進展による海上輸送需要減少効果や、逆に新たな輸送需要を作り出すなどの両方の影響があるとされるが、本シナリオはその意味で多少慎重なものかと思う。
- しかし、2030年にその前提でも、完成車の海上輸送需要は、2023年の120億トンデイズから2030年には130億トンデイズとなり、約8%増で推移すると考えている。
ここで使用しているトンデイズは、輸送量トンと距離をデイズ(日数)に換算して掛け合わせたもので、所謂トンマイルに近い概念。
船腹供給量の⾒通し(P.9)
- 足下での輸送能力不足をカバーすべく、新造船の発注が進んでおり、2023年から2026年までに約20%供給量が増加する。
- 2027年以降の新造船の量は確定していないが、2027年以降、一定期間、新造船の発注スピードは抑制的になるのではないかと考えている。
▸2028年位まで造船所の船台は埋まりつつ有る事
▸LNGの次の、例えばアンモニアなどのゼロエミッション燃料を使用する新造船の検討が進んでおり、正式な発注にはもう少し時間がかかる事
▸地政学的リスクも含めた今後の政治経済動向を見定める段階にある事
- 2008年のリーマンショック前後に大量に竣工した自動車船約250隻が、2030年から2035年に掛けて、退役を開始する事になり、その間に十分な代替船の造船能力が自動車船に供給されるか懸念もあり、状況を注視しながらバランス良く船隊整備をしていく必要があると考えている。
需給バランスの⾒通し(P.10)
- 将来、2023年は、恐らく今までで一番供給不足であった一年と言われると思われる。2023年の自動車船で輸送する事のできなかった完成車は、コンテナ船やパルプ船など、他の輸送手段での輸送、乃至は一部生産量を減少させる事にもなったと理解している。
- 2024年以降、新造船の竣工が続き、需給はバランスに向かうが、2025年頃まで供給不足自体は継続する。
- その後、2026年頃に需給が漸くバランスしてくると見るが、ゼロエミッション船の発注への検討時期、自動車船造船能力への注視などの要因もあり、2026年以降の供給は需要に合わせたレベルで推移した上で、需給が安定化するものと考える。
2. 中期経営計画の目標と進捗
収益力強化・投資計画の進捗(P.11)
- 2023年度は、全体として運賃修復、H&H積取り増量、運航効率アップなどの取組みが順調に推移した。
- 収益力に関する部分では、ページ左側にある通り、23年度の平均NET運賃率は22年度比で約10%向上しており、これは主として継続的に運賃修復を実施した為である。
- 又、スペース不足が厳しい中では有ったが、基幹となるお客様を中心にH&H積高も4%増加させる事が出来た。
- 船舶を中心とする投資も、中計最終年である2026年竣工を超えた期間をカバーする合計14隻を手配済で、計画通りに進捗している。
- 未実施としている投資予定600億円は、27年度以降竣工の新造船の契約時支払いなどで、今後検討を進めた上で実施していく予定。
船隊整備の進捗(P.12)
- 船型の大型化では1隻あたりの平均サイズを表示し、H&H輸送能力強化では、その隻数を表示している。
- 2026年度に向けて、これら目標値を達成して、収益力を向上させていく計画。
- 環境対応船での増加では、まずLNG燃料船の整備を進めていく計画。詳細は次のページでご説明するが、環境対応の需要の高まり、又、特に海上輸送で排出される炭素のコスト化が進んで行く中、排出CO2を削減できる環境対応船の競争力は、重油焚き船を逆転していく見通しであり、今後も継続的に競争力のある環境対応船を整備して行く。
- 最後に船隊の下方柔軟性について%表示している。足元での海上輸送需要は堅調と見ているが、予想に反して輸送需要が低迷した場合でも、直ぐに船隊規模を調整できるように、船隊の一部の調整能力を準備しておく方針。
- その割合は、最終的には15~20%程度としていく考え。
3. 事業戦略
環境対応船の競争⼒とは(P.13)
- 環境対応船の競争力についてまとめたもの。重油焚き船とLNG焚き船を比較している。
- 船舶コストと燃料費を含む運航コストの合計が、灰色の棒グラフで表されている。現在の灰色部分は、LNG焚き船の方が、CO2排出を削減出来るとは言え、高くなっている。
- しかしながら、欧州での排出権取引などに代表される排出炭素のコスト化は、現在IMOにて全世界への適用も含め議論されており、20年代後半以降に適用開始され、規制も順次強化されていく見通し。
- そんな中、排出CO2を削減できる船隊は、従来の重油焚き船比で優位なコスト競争力を持つと共に、低炭素化/脱炭素化の実現効果を得られる点から、お客様からの需要が高まってきている。
- ここ数年で重要視されている、長期的な輸送能力確保と合わせて、これら環境対応船での輸送を顧客/船社が協力して、共同で作り上げていく流れが始まっており、新しいビジネスモデルとして強化していく方針。
30年度に向けた取組みまとめ(P.14)
- 30年度に向けた取り組みについて、顧客・船隊・航路の三位一体バランスを保ちながら、更なる成長の為に取り組む方針。
- 顧客基盤の維持・拡大では、
▸長期持続的なサービスを提供していく事で、基盤顧客の需要の増加に対応していく事
▸新たなマーケットとして、既に取り組んでいる中国に加え、インド、メキシコ出しなどにも取り組んで行く事
▸H&H積取りを2030年までに10%以上増量する事としている
- 持続的な航路デザインでは、
▸当社が強みを持つ航路の増強を図ると共に、先ほどお話ししたインド/メキシコ出し取組みに対応する航路網の改良/改善を図る事
- 競争力のある船隊整備では
▸従来の制限を超える超重量貨物積載も可能とするなどのH&H積載能力向上船の整備や大型船化による競争力強化
▸最後に、新しいモデルとして競争力ある環境対応船の整備を継続する事、としている。
- 環境対応船は、右下に記載の通り、今年度までに累計6隻、中計最終年の26年度までに累計13隻、2030年度までには最終的に累計30隻を整備していく計画。
4. 収支計画
今後の収⽀⾒通し(P.15)
- 足下から26年度に向けての収支の動向は、需給がバランス化して行く中で、一部過熱した市況も巡航速度となってくる事や、足元でやはり過熱した船舶傭船マーケットでの傭船料高騰の影響余波などがあり、少々調整局面に入ると思われる。
- 一方、先にご説明した需要増加を取り込んだ輸送台数規模の拡充、輸送能力向上によるH&H輸送量の増加に継続的に取り組む事で収益力を向上させると共に、
- 競争力高い環境対応船の投入を進め、新しい輸送体制を強固な顧客層と共同で作り上げていく事で、更なる収益力の積み上げを行う計画。
- 又、収支動向のアップサイドでは、特に、中国出し、インド出し、メキシコ出しなどの新たな成長マーケットでの輸送規模の積み増しとH&H貨物の更なる積み増しを図ると共に、ゼロエミッション船を含めた環境対応船整備を更に進めて強化する事で、安定した収益力の強化を図る計画。
5. 投資計画
今後の投資見通し(P.16)
- 35年度までの船隊規模の計画を表記している。
- 基本的に基盤顧客の需要に立脚した船隊整備を実施して行く方針で、更なるアップサイドへの対応が必要な場合は、傭船を含めた船隊の準備を行う。
- 環境対応船への投資は、右側に記載の通り、脱炭素価値向上・コスト競争力向上を目指して、まずLNG焚き船を整備の上、30年頃を目途にゼロエミッション船整備へ移行する方針。
- 又、同時に船型の大型化、H&H積載能力の向上などを実現する事で、カーボンニュートラルに向けた競争力高い船隊を整備していく方針で、26年度までの中計期間に2,000億円、それ以後の投資計画は別途取りまとめていく方針だが、30年度までの期間で合計30隻の新造整備を行う計画。
本日の説明の要点(P.17)
- 需要と供給:海上輸送需要は堅調に推移。25年までは供給不⾜継続。26年頃から需給が バランスし安定化して⾏くが、30年〜35年の⼤量退役と代替新造動向は注視
- 中計の進捗:中計前半の⼆年間で、運賃修復やH&H輸送量拡充等の収益⼒向上、競争⼒ のある環境対応船を含む船隊整備など、”三位⼀体”の事業戦略は着実に進捗
- 環境対応:顧客の輸送能⼒確保や脱炭素価値追求などの需要を踏まえ、環境対応船の投 資を拡充し、カーボンニュートラルに向けた競争⼒ある完成⾞輸送サービスを顧客と共創していく。
- 収益計画:需給バランス化と⼀部過熱市況巡航速度化も、競争⼒ある環境対応船投⼊、需 要増・新規成⻑マーケット取込みを実施し、船型⼤型化・H&H積取り増で収益⼒向上させる
- 24年度取組み:環境対応船契約獲得と投⼊、貨物需要増取込みと新たな成⻑マーケット の更なる取込み、H&Hの積取り強化の継続を進めると共に、今後のゼロ・エミッション船整備に 向けた検討と実現を進めていく
鉄鋼原料事業(常務執⾏役員 ⽥⼝ 雅俊)
1. 事業特性・市場動向
鉄鋼原料事業の特性(P.20)
- 鉄鋼原料事業は、中長期契約が主体の安定収益と、短期契約が主体の市況連動収益によって構成される。
- 安定収益は、主に日本・韓国等の製鉄会社との中長期契約が中心であり、インド・中東のコアのお客様との契約もこちらに類する。市況連動収益は資源メジャーが主な顧客で、短期契約である。
- 当社の収益構造は、安定収益をベースに市況連動収益が加わる形となっている。
- そのため、持続的な成長を実現するには、安定収益の拡大と市況連動収益のボラティリティ対応が肝要。
- 本日は、安定収益の拡大に向けた戦略に焦点をあてて説明する。
市場動向(P.21)
- 当社が注力する顧客の需要は拡大する見通し。
- 左と中央のグラフは、日本・韓国・インドの粗鋼生産量の推移を示し、右側は、資源メジャーの契約形態別の割合を示している。
- 日韓ミルは、粗鋼生産量の推移と同様に、輸送需要も横ばいで推移すると見込まれるが、環境対応船需要は2030年に向かって高まるため、代替燃料船に移行する機会を押さえることが重要。
- インドは、経済成長が進むに連れ粗鋼生産量が年率5~6%増加し、中東向け含めて大型船の輸送需要も2030年にかけての増加を見込む。
- 資源メジャーは、環境対応船へのシフトが進み、短期契約中心だった契約形態が、中長期化し、環境需要の取り込みによる安定収益型の契約機会の拡大を見込む。
2. 中期経営計画の目標と進捗
事業戦略の進捗(P.22)
- 昨年度打ち出した3つの戦略を着実に実行するために、KPIを設定し、進捗を管理しており、事業戦略は着実に進捗。
- バラスト航海比率とは、積地に空船状態で向かう航海(バラスト航海)の航海全日数に占める割合。直前の揚地からの接続性の向上などで空荷日数を減らすことで、配船の効率化に寄与する。
- バラスト航海比率は、23年度に1.9ポイント改善。
- 組織営業力の強化については、この4月までにインド・中東・シンガポールで人員を増強。26年に向けて、更なる組織力強化を目指す。
- エクスポージャー・船隊ポートフォリオコントロールでは、ボラティリティへの耐性を強化するために、貨物契約と船隊構成の短期長期のバランスの一致を目指す。
- 22年度は中長期貨物契約の割合と比較して、保有・長期傭船の割合が20%高かったが、23年度は前年比2ポイント改善し、バランスの適正化が進捗。
収支計画の進捗(P.23)
- 23年度の業績は一時的に悪化したが、24年度は回復する見通し。
- 左の図は、鉄鋼原料事業の23年度の経常利益の目標、実績、予実差を表している。
- 23年度は、安定収益は計画通りに確保できたものの、市況の影響、運航要因及び一過性のコスト要因等により収益性が悪化。
- 市況要因は、22年度後半から23年前半の低市況下で契約した短期貨物の影響が大きく、23年後半の市況改善時に契約した貨物は24年度で収支貢献するため、収支は回復する見込み。
- パナマ・スエズ両運河の滞船や回避による運航ルートの変更を背景とした一時的な収益性の悪化も生じたが、コスト増加分の運賃価格転嫁は進んでおり、24年度の収支は回復する見込み。
投資計画の進捗(P.24)
- 左側のグラフは昨年の5月に開示した船隊整備計画、中央のグラフは最新の計画を表す。
- 顧客の環境対応船への転換が想定より遅れており、中計期間の当初の投資予定額の内、500億円は中計期間後に後ろ倒しした。
- 一方、新燃料船への代替の確度は上がっている。
- 2010年前後に大量竣工した船が2030年前後で退役し、大型船全体でリプレイス需要が見込まれる。
- 今後の規制の導入によって、環境対応への感度が高まることが予測され、2030年前後の環境対応船の需要は高まる見込み。
3. 事業戦略
事業戦略の概要(P.25)
- 2030年に向けては、ベースシナリオを拡大しつつ、更なる収益アップサイドの実現を狙う。
- ベースシナリオとしては、日韓ミル、インド・中東ミル及び資源メジャー顧客内シェアの維持・拡大に取り組む。
- アップサイドは、還元鉄という新たな商流やボーキサイト等の拡大する輸送需要の取り込み、またインド等の伸長地域での顧客基盤の拡大よって実現。
- 2つの戦略を着実に実行することで、持続的な収益成長を実現する。
ベースシナリオの拡大:顧客戦略(P.26)
- 顧客戦略としては、環境対応船需要を梃子に基盤顧客の顧客内シェアの維持・拡大を目指す。
- 左のグラフは、横軸に輸送需要、縦軸に当社の顧客内シェアのイメージを示している。
- 日韓ミルは顧客内シェア維持、インド・中東ミルは増加する需要の取り組み、資源メジャーは顧客内シェアの向上に注力。
- 日韓ミルと資源メジャーについては環境対応船需要を取り込むことが重要になる。
- 日韓ミルは環境対応船需要が2030年に向かって増加。
- また、資源メジャーは、環境対応船へのシフトに伴い、契約が短期から中長期化するとともに、当社がシェアを拡大する機会が生まれる。
- インド・中東ミルの増加する需要に対しては、海技を含めた現地組織の拡充・強化により、顧客基盤の拡大を目指す。
ベースシナリオの拡大:事業戦略(P.27)
- 事業戦略は、一言で言うと、「お客様の挑戦のパートナーとして選ばれ、主力キャリアの地位を高める」とういこと。
- より難度の高い脱炭素対応をはじめとした顧客の挑戦パートナーとして選ばれ続けるためには、顧客から主力キャリアとして今後も認められることが必要。
- そのために、当社の強みであり、必須要件である安全性と高い運航品質を更に磨き上げ、提案力を高める。
- 具体的な施策としては、人員育成、組織力強化、共同プロジェクトの立ち上げを行う。
- 人員育成では、LNG輸送によって蓄積した知見を活かし、新燃料の取扱いや独自の安全指針を横断的に展開することで、環境対応船乗組員や船舶管理者を育成。
- また、一昨年来取り組んでいる顧客との脱炭素の共同研究を通じて、顧客ニーズの理解の深化や、提案力の磨き上げを行う。また、安全運航・船舶管理品質の向上を目指すプログラムなどに参加し、更なるサービス水準の向上を狙う。
アップサイドの実現(P.28)
- 更に、新たな輸送需要を取り込むことで、収益アップサイドの実現を目指す。
- 成長機会としては、原料シフトによる還元鉄輸送需要とボーキサイトなどの鉄鋼以外の原料輸送需要を想定。
- 我々のお客様の製鉄プロセスの脱炭素化が進むに連れ、中間原料の還元鉄の輸送需要が新たに現出。
- 還元鉄の輸送需要に対しては、海技力を含む当社の強みを活かして部門全体で取り込みを狙う。
- 大型船は原料輸送、中小型船鉄鋼製品輸送で、それぞれにお客様と深く関わっていき、互いの強みの融合・部門横断での顧客密着による総合的な提案営業力の発揮。
- 更には、還元鉄による商流を活かして、鋼材などの輸送需要の取り込みや、配船効率化を通じて収益機会拡大を狙う
- 現在は、実績と知見の積み上げに注力。
4. 収支計画
収支計画(P.29)
- 顧客戦略・事業戦略を着実に実行することで、2030年に向けてベースシナリオの拡大目指す。
- このグラフは、2024年度を100とした指数で、正味経常利益と隻数の推移を表す。グレーのバーは隻数を表しており、赤いバーが利益を表す。
- 24年度の収支は回復する見込み。
- その後、貨物契約と船隊構成の期間のバランス適正化により、ボラティリティへの耐性を強化しつつ、環境対応船需要の取り込みによって、船隊規模増加と収益拡大を目指す。
- また、環境対応船は重油焚きに比べコスト競争力が高まっていくため、収益性向上にも寄与する。
- さらに、新たな輸送需要を開拓することで更なる収益アップサイドの実現を目指す。
5. 投資計画
投資計画(P.30)
- 投資計画は、競争力向上と船隊規模拡大に向けて、新燃料船を中心とした調達を行う。
- 右のグラフは、2022年度から2030年度までの、船隊規模を表す。
- 保有・長期傭船については、現在の重油焚き船中心の船隊から、新燃料船中心の船隊へシフトする。
- 重油焚きについても、燃料効率の高い新鋭船の中短期傭船を活用し、貨物契約と船隊構成の長短バランスを適正化することで、競争力と市況耐性を向上。
- 新燃料船を中心に投資を行い、重油船については新鋭船へのシフトを行いつつ、貨物との期間のマッチングを図る。
- さらに、燃費効率の高い新鋭船の中短期傭船を活用することで、競争力向上と貨物契約と船隊構成のバランス適正化による市況耐性向上を行う。
本日の説明の要点(P.31)
- 当社の注⼒顧客の需要は拡⼤する⾒通し。⽇韓ミルの需要は横ばいで推移するが、印・中東ミルの需要と資源メジャーの事業機会は拡⼤すると予測
- ⾜元の業績は、低市況下で契約した短期貨物などの市況影響により⼀時的に収益が悪化。 FY24の業績は回復する⾒通し
- 顧客の挑戦のパートナーとして選ばれ続け主⼒キャリアとして共に成⻑することで、⽇韓ミル、印・中東ミル、資源メジャーといった主要顧客の収益拡⼤を実現する
- 還元鉄への原料シフトによる新規需要の獲得やボーキサイト等の他原料輸送需要の取り込みを⾏うことで、更なる収益アップサイドを実現する
- 2024年度は、営業機能の強化、環境営業の推進と船隊ポートフォリオの最適化を進めるとともに、環境対応船の乗組員及び船舶管理者の育成の4施策を推進する
LNG輸送船事業(常務執⾏役員 岩下 ⽅誠)
1. 事業特性・市場動向
LNG輸送船事業の戦略類型(P.34)
- LNG輸送船事業の戦略は、「長期安定型」と「短期市況型」の大きく2つに分けられるが、当社は顧客密着力を活かし、エネルギー資源会社/需要家を主たる顧客に据えた「長期安定型」を志向している。
- 長期安定型の戦略を遂行する上では顧客・パートナーとの関係性や顧客ニーズへの対応力が「カギ」になる。
- 当社の「長期安定型の戦略」と「顧客密着を活かした強み」に焦点をあてて、説明する。
LNG需要の見通し(P.35)
- LNG需要は、新興国を中心とした経済成長などによる世界全体のエネルギー消費量の増加に加え、カーボンニュートラル社会実現に向けた現実解であることを背景に、少なくとも2040年までは堅調に増加し、2040年以降も安定的に推移することが見込まれる。
- また、需要全体の増加・維持に沿って、当社が注力する長期安定型のLNG輸送船の需要も2040年までは堅調に増加すると予測する。
2. 中期経営計画の目標と進捗
事業戦略の進捗(P.36)
- 現行の中期経営計画の進捗」について、直近では最大の事業規模を誇るカタールエナジーとの追加契約の獲得に成功し、長期安定収益案件を着実に積み上げていて、事業戦略は順調に進捗。
- 中計期間において、当社の関与隻数は44隻から65隻まで増加する見込み。
- 特にカタールエナジーとの契約においては、既存プロジェクトでの当社の豊富な経験と、安全で最適な運航サービスが高く評価され、第1弾入札での12隻に加え、第2弾で4隻の追加契約を獲得した。
- また、マレーシア国営企業のペトロナスにおいては、当社船舶管理船の傭船を通じて船舶管理・安全管理能力に関する高い評価を受け、3隻の長期契約を獲得。
- 更に、三菱商事の子会社であるDiamond Gas International社との長期傭船契約を締結した他、顧客要望により非開示の獲得済みの案件が複数隻ある。
- 当社事業ポートフォリオとしての長期安定収益の基盤を着実に拡大している状況。
計画 (収支・投資) の進捗(P.37)
- 「中期経営計画における収支と投資の進捗」について、左の図は中計期間におけるLNG輸送船事業の累計投資額を表している。
- 2023年5月公表時の1,600億円から900億円積み増して2,500億円が最新の想定。
- 投資額を積み増した主な理由は、中長期的なLNG需要の伸長を背景に、カタール・北米を中心とした大型LNGプロジェクトが具体化し、顧客サイドの調達計画が進展したため。
- なお、中計期間の累積投資CF 2,500億円の内、約6割は既に投資が確定している。
- 収支については、2023年度の収支は、既存案件の安定推移に加え、為替影響もあり、目標対比で良化。
3. 事業戦略
事業戦略(P.38)
- 「事業戦略」として、長期安定型の戦略を継続する。
- 左側のグラフは、当社の関与隻数と市場規模の拡大を表している。
- 足元46隻から2026年度には65隻へ、2030年度には関与隻数を75隻以上とし、中長期的には100隻体制を視野に入れていく。
- 関与隻数の目標実現に向けて、「既存顧客の顧客内シェア維持・向上」と「新規顧客のシェア獲得」に注力。
- 「既存顧客の顧客内シェア維持・向上」については、カタール・ペトロナス等の既存顧客が計画する新規プロジェクトの契約、及び既存契約の代替需要を獲得し、顧客内シェアを維持・向上を目指す。
- 「新規顧客のシェア獲得」については、中国・インド・東南アジア等の新興地域向け及び、世界最大の輸出国となる北米出し貨物を中心に、新規顧客の開拓を行っていく。
関与隻数増加に向けた体制強化(P.39)
- 当社の強みは、「業界トップ水準の船舶管理実績」と「顧客ニーズへの対応力・提案力」と分析、この両輪に磨きをかけ、「技術・営業一体となった顧客サポート」の強化を継続していく。
- 具体的には、船舶管理面においては、継続して高い品質を維持できるよう、将来の隻数拡大を見据えて、船員の育成・採用を進めていく。船員に関するKPIを設定し、体制強化を進めていく。
- また、営業面においては、営業ネットワークの拡充を行い、地域・顧客密着で顧客ニーズの理解度を高める活動を継続することで、さらに差別化されたサービスを実現していく。
- 技術面では船舶管理の質を高め、営業面ではネットワークを拡大し、技術・営業の連携を深め、関与隻数増加に向けた体制強化を進めていく。
事業計画達成に向けたKPI(P.40)
- 先の体制強化に加え、事業計画の達成に向け、「案件獲得」、「船舶建造」、及び、「船舶運航」の各フェーズでKPIを設定し、事業の進捗を管理する取り組みについて紹介。
- 案件獲得フェーズでは、「関与隻数」をKPIに設定。長期安定契約を積み上げる事で事業計画通り、または計画以上の利益創出を目指す。
- 船舶建造フェーズでは、「建造監督準備率」をKPIに設定。各工程に必要な建造監督を確実にアポイント出来ているかを管理し、高品質の船舶を事業計画の前提スケジュール通りに竣工させる事で事業計画の確度を上げる。
- 船舶運航フェーズでは、「船員リテンション率」、「船員準備率」、「船舶不稼働率」の3つをKPIとして設定。
- 「船員リテンション率」、「船員準備率」は、当社の強みである高品質の船舶管理を実現する1つの「カギ」である船員について管理する。加えて、当社の高品質の船舶管理を継続的にお客様に提供している1つの指標として、「船舶不稼働率」についても管理していく。
4. 収支計画
収支計画(P.41)
- 2030年度に向けて、市場拡大を上回るスピードで契約獲得と収支拡大を実現している。
- 左のグラフは、市場規模、当社の関与隻数、正味経常利益の推移を指数で表している。
- 市場は2023年度から2030年度にかけて40%の拡大となる見込みに対し、当社船隊は70%以上、収支は150%以上の拡大を目指す。
- なお、船隊の増加率に比して収支の増加率の方が大きい理由は、各案件における当社参画保有率の違いが主な背景。具体的には、既存案件と比べ、新規の案件は当社がリーダーとなり、当社参画保有率は50%が中心となることから隻数以上の収支の伸びに繋がっている。
- また、ベースシナリオに対して、アップサイドとして「新規案件の更なる積み上げ」と「中古船の資産価値の最大化」により、収支の更なる積み上げも狙っていく。
5. 投資計画
投資計画(P. 42)
- 1つ前のスライドで「収支計画は150%以上の拡大を目指す」と説明したが、投資の考え方は従来から変わっていない。
- 具体的には、「長期安定型の戦略を継続」、「案件獲得と同時に船舶を発注」、「採算性を重視した隻数拡大」の3点を重視する。
- 現中計期間に累計2,500億円の投資を計画しており、約6割については既に目途がついている状況。
- 2030年に向け、投資規律を維持した上で、残り4割の投資案件を獲得し、中長期的な収益貢献規模の拡大を目指していく。
本日の説明の要点(P.43)
- 事業環境については、LNG需要の堅調な増加に沿って、長期安定型のLNG輸送船需要も2040年までは堅調に増加する見込みであり、LNG輸送船事業は、市場拡大と共に成長を遂げることができる事業。
- 事業戦略及び計画の進捗について、当社は業界トップ水準の船舶管理実績と顧客ニーズへの対応力・提案力を武器に、「営業ネットワークの拡充」と「船舶管理品質の向上」に注力し、技術・営業の連携により、市場拡大を上回るスピードでの契約獲得と収益拡大を実現中。
- 投資計画について、既に当初の中期経営計画の投資目標を達成しており、当社事業ポートフォリオとしての長期安定収益の基盤を拡充すべく投資規模を拡大していく。
- 最後に、事業計画達成に向けた取り組みとして、事業のフェーズを「案件獲得」「船舶建造」「船舶運航」の3つのフェーズに分け、合計5つのKPIを設定し、事業計画の実現の確度を上げていく。
低炭素・脱炭素に向けた事業(常務執⾏役員 ⾦森 聡)
序. 低炭素・脱炭素に向けた事業の全体像
低炭素・脱炭素に向けた事業の全体像①(P.45)
- はじめに、低炭素・脱炭素に向けた事業の全体像をご説明する。
- 当社は、“K” Line環境ビジョン2050において、自社の脱炭素化と社会の脱炭素支援を掲げており、社会の脱炭素化の支援を進めるために、4つの新規事業領域の事業開発に取り組んでいる。
- ネットゼロに向けた現実解としてLNGとCCSの両輪での開発が必要と考えており、カーボンニュートラル社会実現を支える液化CO2輸送事業とLNG輸送周辺事業、再生エネルギーの発展に貢献する洋上風力発電支援船事業、新燃料としての水素/アンモニア輸送事業である。
- 本日は、当社の「液化CO2輸送事業」に焦点をあてて、ご説明する。
低炭素・脱炭素に向けた事業の全体像②(P.46)
- 弊社はバランスの良い事業ポートフォリオ形成を目標に、4つの低炭素・脱炭素に向けた事業に同時並行で取組中。
- 本日は、液化CO2輸送事業に焦点を当てて詳細な説明をするため、ここでの説明は割愛する。
- LNG輸送船周辺事業は、FSUとFSRUを中心に、当社LNG輸送船事業に貢献する案件に取り組んでいる。FSU・FSRUとは液化天然ガス(LNG)を貯蔵、乃至それを再ガス化して天然ガスとして供給するための浮体式受入設備。LNG輸送船事業で培ったオペレーションノウハウ・実績とアセットを活かし、LNG輸送船周辺事業に取り組む方針。
- 洋上風力発電支援船事業は、川崎汽船グループの洋上風力ブランドとして、ケイライン・ウインド・サービスに知見を蓄積し、サービス提供を目指している。
- 水素/アンモニア輸送事業は、既存顧客とのパートナーシップ等を活用し、日本向けの輸送案件獲得を目指している。
低炭素・脱炭素に向けた事業全体の収支目標(P.47)
- こちらのスライドでは「低炭素・脱炭素に向けた事業全体の収支目標」について説明する。
- 低炭素・脱炭素に向けた事業全体では、アップサイドを含め2030年代中盤に経常利益50~100億円を目指している。
- 2026年度迄の中計期間中に900億円の投資を計画。
- 中計期間以降は、2050年カーボンニュートラルに対する社会の環境対応需要の変化を捉えながら、機動的に投資を行う。
1. 事業特性
液化CO2輸送事業の社会的意義(P.49)
- こちらのスライドでは「液化CO2輸送事業の社会的意義」についてご説明する。
- 液化CO2輸送事業は、カーボンニュートラル社会の実現に不可欠なCCSバリューチェーンの中流を構成する重要な要素で、当社の強みを生かせる社会的意義のある事業。
- CCSは工場などから排出されるCO2を回収・輸送し、地下に圧入することでCO2を削減する手法。
- LNG輸送船事業の説明であったように、ネットゼロ実現の現実解として、LNGとCCS両輪での開発が不可欠となっており、CCSへの注目度が近年高まっている。
- CO2輸送において、CO2の回収地と貯留地の距離が離れている場合は液化CO2船による海上輸送が必要となる。
川崎汽船の取組意義(P.50)
- こちらのスライドでは「液化CO2輸送事業における川崎汽船の取り組み意義」について説明する。
- CCSは社会的な意義に加えて、川崎汽船の強みを生かせる新規事業と考えている。
- 第一に、当社は液化ガス(LNG・LPG)輸送船で国内外多数のプロジェクトに参画しており、これまでに培ってきたノウハウを活用可能であること。
- 第二に、既存顧客とのパートナーシップの強化・拡大も期待できること。液化CO2輸送ニーズを持つ産業は電力・ガス、エネルギー、鉄鋼など多岐にわたり、弊社との取引関係がある既存の顧客もCCS開発に取り組んでいる。
- 第三に、CCSはネットゼロ実現に不可欠で、液化CO2輸送事業を通して顧客や社会の脱炭素にも貢献できること。
- 例えば、世界初の商用CCSプロジェクトであるNorthern Lightsでは、オイルメジャーのEquinor、Shell、Total Energiesが参画している。それらの企業は当社の既存顧客であり、これまでの取引関係・信頼関係が傭船契約の獲得に繋がったもの。加えて、CCS導入に向け、既存顧客との共同検討を進めている。
2. 市場動向
輸送方法の分類(P.51)
- こちらのスライドでは「CO2の輸送方法」についてご説明する。
- CCSにおけるCO2の輸送方法は船舶、パイプライン、オンサイト圧入の3つに大別される。
- 一般的に輸送距離が長距離になるほど船舶輸送が優位になると言われている。
- パイプラインは、輸送距離に対する、工事費用・メンテナンス費用の上昇が大きく、150マイル以上の長距離輸送では、船舶輸送が優位となる。また、規制上パイプラインの敷設が難しい地域では、船舶輸送が必要となる。
- ノルウェーのNorthern Lightsプロジェクトは世界初の船舶輸送を伴うCCSバリューチェーン事業で、当社は液化CO2輸送船の運航企業として参画している。
需要の見通し(P.52)
- こちらのスライドでは「液化CO2輸送船の需要の見通し」についてご説明する。
- 弊社試算として、2030年代中盤で約200隻の液化CO2輸送船の需要が生まれると予測している。
- 予測の根拠は、右側に示している計算式(CCS貯蔵トン数×船舶輸送割合÷1隻あたり輸送能力)で算出している。
- CCS貯蔵トン数は、国際エネルギー機関が算出しているシナリオの中で、持続可能な開発シナリオを使用。
- 長距離輸送においては船舶輸送が優位であるものの、CCSバリューチェーン全体でのコスト競争力を考えると近距離且つパイプラインのプロジェクトから立ち上がると予測し、船舶の輸送割合は10%と仮定した。
- なお、CCSの需要は各国の支援制度や技術革新の進展度合いに依存するため、事業性の見極めや事業・投資計画の更新を逐次行っていく方針。
3. 事業戦略
顧客戦略(P.53)
- こちらのスライドでは「顧客戦略」についてご説明する。
- 当社の既存顧客を中心に、顧客の脱炭素課題解決に向けたソリューションの提供として、液化CO2輸送事業に取り組んでいく。
- 前述したように、液化CO2の輸送ニーズを持つ産業はエネルギー、鉄鋼等多岐にわたり、その多くが当社の既存顧客である。公表済みの企業様、未公表の企業様含め、多数の企業様と、共同検討を実施中。
- 既存顧客の脱炭素課題の解決に貢献することを通じて、液化CO2輸送事業の拡大を目指す。
地域戦略(P.54)
- こちらのスライドでは「地域戦略」についてご説明する。
- まずは世界で先行する欧州に参入し、その後アジア太平洋へ拡大する計画。
- 欧州は環境対応の意識が高く、炭素税の導入や政府の補助金といった政策が整っているため、2030年までは世界初のNorthern Lightsプロジェクトをはじめ欧州の有力案件に参加し、実績を積み上げる。
- アジア太平洋地域では、日本の先進的CCSを中心に2030年頃の事業開始となり、事業開始に向け各社との共同検討を進める。
事業戦略(P.55)
- こちらのスライドでは「事業戦略」についてご説明する。
- 事業戦略は、「先行者メリットを活かし、プロジェクトの起案段階から伴走する、液化CO2輸送乃至はCCSプロジェクトの最良のパートナーとして認められることを目指す」というもの。
- CCSの実現に向けては、多くの課題があり、未だCCSバリューチェーンのインフラが整っていない状況。
- Northern LightsやNEDOの実証実験で培ったノウハウを体系化し、先行者メリットを確立したいと考えている。
- 加えて、CCS導入に際し顧客側の負担が大きいため、弊社は貯留を担う企業と協力し、輸送と貯留のソリューションをパッケージとして提供することで、顧客の課題解決に貢献する。
- プロジェクトの初期段階から顧客と伴走することで、液化CO2輸送乃至はCCSプロジェクトの最良のパートナーとして認められることを目指す。
アライアンス戦略(P.56)
- こちらのスライドでは「アライアンス戦略」についてご説明する。
- 当社は5月に日本ガスライン株式会社と共に「日本液化CO2輸送株式会社」を設立し、内航・外航一体での効率的な輸送サービスの提供を目指している。
- 両社の液化CO2輸送の知見を結集し、日本ガスラインの内航輸送と弊社の外航輸送を一体化して提供することで、顧客に対して付加価値のあるサービスを提供することが目的。このようなアライアンスも活用し、課題解決のソリューションの磨き上げに取り組んでいく。
4. 収支計画
収支計画(P.57)
- こちらのスライドでは「収支計画」についてご説明する。
- 収支目標としては、液化CO2輸送事業で2030年代中盤に弊社関与隻数は20隻以上、経常利益30~60億円を目指す。
- 左のグラフは、液化CO2輸送事業の経常利益と隻数の推移を示している。
5. 投資計画
投資計画/方針(P.58)
- こちらのスライドでは「投資計画」についてご説明する。
- 投資の考え方はLNG輸送船事業と同様。具体的には、「長期安定型の戦略」、「案件獲得と同時に船舶を発注」となる。
- 現 中期経営計画期間中に低炭素・脱炭素に向けた事業全体として、900億円の投資を実施予定。
- 2027年以降は、需要の変化を敏感に捉えながら機動的に投資を実施することで、更なる事業拡大を視野に入れながら取り組む考え。
本日の説明の要点(P.59)
- 最後にこちらのスライドにて、ご説明の要点をまとめた。
- 社会の低炭素・脱炭素化に貢献するために、4つの低炭素・脱炭素に向けた事業に取り組み、2030年代中盤には50~100億円の収益規模の事業体確立を目指す。
- ネットゼロを実現する上で不可欠なのはLNGとCCSです。特に、CCSを支える液化CO2輸送事業は社会的意義と川崎汽船の取組意義が両立する魅力的な事業。
- 液化CO2輸送船の船舶需要は2030年代中盤には200隻の規模になると予想。世界初のNorthern Lightsプロジェクトでの実績の積上げとノウハウの体系化等により、20隻以上の運航隻数を目指す。
- 液化CO2輸送事業の2030年代中盤の収益規模は30~60億円を計画。投資規律を効かせつつ、環境対応需要の変化を機動的に捉えることで、更なる事業規模拡大を目指す。
- 同時に、液化CO2輸送事業一本足ではなく、水素/アンモニア輸送事業、洋上風力作業船事業等とバランスの良い事業ポートフォリオ形成を図る。