Q-1:説明資料16ページの為替の影響を除いた利益増減のチャートについて、輸送台数と船を増やすことでコストの方が先行して増えるというロジックの詳しい説明をお願いします。
A-1:船舶コストの増加は、一時的なものです。本年度25年度は数隻のLNG焚きの自動車船が導入される一方で、短期傭船の返船がある等、船隊の中身の入れ替わりがあります。ファイナンスの方法によってアップフロントで費用やキャッシュアウトが発生する場合がありますし、短期傭船料の一部もアップフロントで出ていく場合もあります。一方で、運賃は償却期間等を考慮し、お客様との協議の上、当社の投資規律に基づいて設定していることもあり、その差額が生じているとご理解ください。
Q-2:25年度の計画では、スポット運賃の下落が前提となっているはずですが、資料には記載がありません。恐らく滝グラフの「船舶・運航コスト増加」の項目に含まれていると思いますが、説明をお願いします。
A-2:資料ではスポット運賃について取り出しての説明はしていません。26年度に向けて需給がバランスしていく中で、運賃はある程度収斂していく見通しです。一方で、当社はスポット貨物の比率が高くないため、その影響は限定的で、下落分は100から93への減少に一部含まれています。また、滝グラフの赤い部分「関税影響」は、北米向け輸送台数の減少とそれに伴うキャパシティ(輸送能力)の緩和、更なるスポット貨物含めて運賃下落も想定しています。
Q-3-1:説明資料18ページ左側、契約確定割合のグラフについて、現時点で昨年同様に来年度26年度分までの契約が決まっていることを示したいという趣旨でしょうか。
A-3-1:ご指摘のとおりです。毎年契約更改する中で、先の期間についてもしっかりと契約を固めているということを説明したいと考えたものです。
Q-3-2:運賃については示唆するデータはありませんが、来年度分の契約運賃はどのようになっているのでしょうか。現在契約締結している運賃については言及しないのでしょうか。
A-3-2:運賃の具体的な数値は開示していませんが、昨年の説明では、22年度から23年度にかけて約10%上昇したとお伝えしました。実際に、23年度から24年度にかけて実績ベースで3-4%程度の上昇となっています。一方で、25年度、26年度は、先ほど説明したとおり、需給がバランスしていく中で運賃は若干収斂していく見通しですが、大きな下落は想定していません。また、現在締結している運賃については、言及を控えさせていただきます。
Q-4:環境対応船の発注・運航に関して、他船社、特に邦船社2社も似たようなことを行っているように見えますが、この点についてどのように認識されているでしょうか。
A-4:発注隻数は他社と同じような隻数になっていると思います。他社との差異は、当社は顧客密着という言葉をこの説明の中で何回も使わせていただきましたが、優位なポジションにいらっしゃるお客様との強固な関係があること、先行して様々な提案をさせていただいていること、お客様が持つ情報にもしっかりアクセスできることがあり、これらにより、航路網含めて、将来的な展開を目指すことができるという点を当社の強みとして認識しています。また、環境対応船への対応についても、幅広い提案ができる素地を有していると理解しています。
Q-5:High & Heavy貨物について、川崎汽船の取引において長期契約よりもスポット契約が多い印象ですが、どの程度スポット契約が多いのかということを教えてください。また、市場の成長が鈍化していたことで、数量が減ってしまったという説明がありました。市場成長や市場の動向に応じて、振られてしまう事業でもあると思いますが、川崎汽船独自の取り組みや市場に振らされない範囲での成長方法について聞かせてください。
A-5: High & Heavyのスポット契約貨物の比率と契約年数については控えさせていただきますが、基本的にHigh & Heavyはスポット契約または1年程度の契約で推移しています。また、プロジェクト貨物に関しては、そのプロジェクト期間で輸送の契約をしています。24年度は事実として若干市場が軟化しましたが、High & Heavyは需要見通しがなかなか難しい部分があります。市場の動向というよりも、当社の取り組みがお客様に評価されて、契約数が増えていく側面、実績を積み重ねる事でそれが評価され、商売が広がっていくという相乗効果が見られる事があります。一方で、今後各国や各エリアでプロジェクトが開発されていくと、想定以上の需要も出てくることになるため、あまり先の需要は心配をしておらず、しっかりと当社の中で貨物ポートフォリオとして取り込んでいく事の方が重要と考えています。
Q-6:足元の関税の影響について、本決算説明会では影響が出ていないとのことでしたが、足元の状況や今後のブッキング等を含めて、何かアップデートがあれば教えてください。
A-6: 24年度本決算公表時は、足下で関税の影響が出ていないとご説明しましたが、実際に4月、5月を経て、6月のブッキングをいただいている中で、大きな影響が出ているという認識はありません。ただ、米国から発せられる関税についての情報が錯綜していることもあり、お客様も出荷をするのか、しないのかなど、計画についていろいろお考えになっていると思います。最終的には、現状6月に関しても、ブッキングは大きな影響は出ていないと見ています。一方で、7月8日の関税25%の引き上げ停止の期限が切れた後の影響が注目すべきポイントだと思っています。25年度第2四半期以降で影響が出る可能性については十分に注視していきます。
Q-7:契約の中長期化について、中長期契約が積み増せているという説明がありましたが、もう少し詳細を教えてください。例えば中長期契約が何年程度なのか、輸送台数の保証はあるのか、全体の契約のうち中長期契約が何割程度を占めるのかということも含めて、もし他にも何かポイントがあれば詳細について教えてください。
A-7:契約の中長期化については、コロナ禍を経て、スペースが非常にタイトになったこと、その中でお客様にとってもスペースをしっかりと確保できるかどうかが非常に大きな問題になったことなどが背景にあると思っています。お客様にも短期を志向されるお客様や中長期を志向されるお客様など様々いらっしゃいますが、中長期化という意味では、3-4年程度の契約が中期契約として成立している状況です。数量については、ギャランティーとまではいきませんが、例えばこれ位の数量までということでMQC(Minimum Quantity Commitment、最小船積み数量)という形でつけていただくお客様もいらっしゃいます。お客様に合わせて契約の状況は違うという状況です。
Q-8-1:説明資料11-12ページの環境対応船と重油焚き船の収益性、投資効率に関して、現状と2028年以降の変化についての質問です。 まず現状について、すでに環境価値やコスト分が、運賃に反映されて、重油焚き船と遜色ない収益性、投資効率なのでしょうか。あるいは2028年以降、変化に応じて、この状況がどの程度変わっていくのか、収益構造の変化について教えてください。現状、船価が高い環境対応船に対して、コストに見合う運賃として、どこまで転嫁できているのか、また2028年以降のIMO単純課金の影響によって、収支や投資効率がどのように変化するのかを教えてください。
A-8-1:LNG焚き船を現在9隻投入していると説明しましたが、新造船の船価が上がっていることで、資本費が上がっていることは事実です。この点も含め、社内の投資規律を踏まえ、運賃をお客様に提案させていただき、お客様にも合意いただいています。これらの契約は基本的には長期契約で、2028年度を超えての契約になっています。
一方で、2028年度を超えると、IMOの単純課金が全世界で適用されることになります。年を追うごとに強度が上がっていきますが、初年度あたりでも、CO2のコストは、LNG船が重油焚き船の3分の1になることもあります。このような全体的なコスト、運賃、CO2のペナルティを合わせて、お客様の負担額をお示しすることで、環境に対する意識を持たれているお客様が、環境対応船を志向されるのか、それとも一時的には重油焚き船を志向されるのか、現在そのようなお話をさせていただいているところです。
Q-8-2:現状では、環境対応船は投資規律はクリアしているものの、重油焚き船の方が収益性・投資効率は高いという状況には変わりないところ、2028年以降IMO単純課金導入後はこれが逆転する可能性があるという認識でよろしいでしょうか。
A-8-2:現状では、重油焚き船は償却が進んでいるため単純比較はできませんが、重油焚き船の方が船価が安い分、投資効率では高い結果になるかもしれません。いずれ重油焚き船も30年かけて退役するため、それがLNG焚き船やゼロエミッション船に代替されていきます。
Q-9:説明資料14ページについて、正味経常利益が2024年度比で指数として15%アップが2030年目標になっていて、先ほどの投資の状況を見るとそれほど大きくない成長率のように見えます。供給増に対して、運賃の上乗せはあまり織り込んでいないのでしょうか。環境対応船とHigh & Heavyの比率も上がることから、運賃の上昇を見込んでいるようにも聞こえたのですが、この部分はどちらかというとアップサイドのアルファに織り込んでいるのでしょうか。収支の見通しについての前提や考え方を教えてください。
A-9:2030年度の目標値の15%アップは、2026年度以降、需要と供給が一定程度バランスしていく中で、運賃が調整されていくという見立てになっています。事業経営が成り立つレベルで安定化していくという捉え方で見ているため、この先の2030年度までにかけて、これから需要と供給のバランスや航路網の再編を含めてアップサイドを取りに行けるのであれば、その部分はプラスアルファの所に取り込んでいけると思っています。
Q-10:USTRによる入港料の課税に対する見解や影響について教えてください。現在、中長期契約が重なっている中で、仮に入港料がかさんだ場合、契約等で運賃に転嫁できるのか、顧客との対話状況も含めてアップデートがあれば教えてください。
A-10: USTRの自動車専用船に対する入港料課税の適用については、現時点では不透明感が非常に強いと考えており、お客様とは、事実を共有している状況です。2025年の10月から本当に適用されることとなった場合、実際にどのように対応していくのか、お客様がどのように出荷計画を変えられるのかなどといったことがまだ見えていないため、具体的なことは控えさせていただきます。
Q-1:説明資料29ページの収支見通しについて、24年度比で30年度はプラス25%ですが、年率換算にすると5%以下の成長率になります。安定した事業という意味ではこれで十分だと思いますが、成長を牽引することは、この成長率では難しいと思います。成長という観点でこの事業を捉えるべきかどうか、ドライバルク事業全体の業績としては利益率が低い状況で、その中の鉄鋼原料事業の位置づけについて確認させてください。
A-1:鉄鋼原料事業の主たる役割と強みとしては、会社の安定利益です。これをベースにし、成長を担う中で、ここで示しているような成長を一つの目標としています。加えて、貨物のポートフォリオ拡大に向けたアップサイド、つまりこれからの還元鉄やボーキサイトといった成長する分野での成長を目指して、更なるアップサイドを狙っていきます。ドライバルク全体での利益率については、隻数と利益率に若干乖離があるように見えると思いますが、この先30年にかけて、安定収益の積み上げとともに、船隊が入れ替わっていく中で、競争力のあるものに変わっていくことで収益率が上がっていきます。また、大型船も中小型船も共通ですが、KPI、運航効率の改善、船隊ポートフォリオのバランスを通じて更なる配船効率の向上による収益率の向上、アップサイドを目指します。
Q-2:提携やM&Aに関して、鉄鋼原料事業においてスケールメリットなど、買収などでメリットが出るような要素は、そもそもあるのでしょうか。提携やM&Aという手段に対して、鉄鋼原料事業はどこが有効かというのがあれば教えてください。
A-2:鉄鋼原料事業の強みを伸ばす戦略実行や、事業全体の成長を加速するようなエリアでの提携及びM&Aを投資規律の範囲の中でしっかり検討していきたいと考えています。必ずしも規模だけを追うわけではなく、当社の安全、品質、運航効率の改善につながるパートナーシップなどがあれば、ぜひ前向きに検討していきたいと考えています。
Q-3: 競争環境としては、現在どのように捉えていますでしょうか。競争相手との兼ね合いで、中長期契約を結ぶ中で、過去と比べて運賃にどのような影響があるのでしょうか。需要面では、これまでと異なり中国はあまり強くないと思うのですが、この点も含めて競争環境についての現状認識と見解を教えてください。
A-3:インダストリアルの分野では安全品質管理と高いサービス品質が中長期契約を得ていくのに非常に重要な力であると思っています。これらを更に磨き上げることに加え、当社の強みである顧客基盤をしっかり維持して、お客様に寄り添い、環境対応船への移行期のニーズも含めてニーズを捉え、お客様の成長に即したサービスの提供、投資を行っていくことで差別化し、競合環境の中で戦っていきたいと考えています。
Q-1:今後5年程度の新規契約の獲得の状況に関して、昨年比に対するアップデートは何かあるでしょうか。また、他社に比べて受注獲得量は従来よりも増えていると思いますが、他社よりも獲得できるようになった背景を、どのように認識しているでしょうか。
A-1:昨年比アップデートは、新しい案件を積み上げています。お客様との契約のお約束によって公開できてない案件がありますが、着実に案件を積み上げていることをご報告します。かなりの数、様々なプロジェクトが出てきたものについて、商談してきましたが、その中で、特に当社が優先して選ばれた案件も複数あります。これは、これまでの当社の海外における船舶管理の実績などを評価いただいたことによるものと考えています。
Q-2:LNGの需要に関して、ロシア・ウクライナの衝突の長期化などもある中、現実解としてのLNGに対する見方、米国やヨーロッパ等でグリーンエネルギーに対する方針などは変わってきていると理解しています。川崎汽船はLNGに対してどのような認識なのでしょうか。また、その認識に基づき、何をしていかなければならないと考えているのか、確認させてください。
A-2:グリーンエネルギーに対する世の中の見方やトランプ政権の脱炭素への姿勢など、昨今やや行き過ぎたと思われる脱炭素が少し修正に向いていると理解しています。その中で、LNGの評価が再認識されていることは間違いないと思います。今年に入って特に北米中心に、様々なプロジェクトが先行するような動きも出ていますが、そのような動きを敏感に捉えて、商売の獲得をしていきたいと思っています。一方で、脱炭素への取り組みは、長期的には取り組んでいかなければならないことであると考えていますので、全社で並行して取り組んでいきたいと考えています。
Q-3:LNG船の発注に関して、LNG船は日本でほぼ建造されていないと理解しています。この点についてリスクを感じているか、米国等の政策なども合わせて、確認させてください。
A-3:トランプ政権で、米国で船舶を作るべきだという意見が先行していますが、実際に商船を作る体制を整えるには相当時間がかかると思っています。現在世界のLNG輸送船の建造は中国、韓国が大半を占めており、この2か国でほとんど建造されています。足元の政策の議論などはありながら、現実的には今後もこの状況が続いていくであろうと考えています。もちろん、LNG輸送船を国内で建造してもらえるのであれば、当社は商談はしていきたいと思いますが、恐らくそれが再開されるのはそう簡単ではないと予想します。したがって、中国、韓国の造船所との良好な関係を維持しながら、発注、造船を行っていきたいと考えています。
Q-4:LNG需要について、確かに中長期的には低炭素として評価されると思いますが、足元で言うと中国のLNG需要は必ずしも強くないと理解しています。加えて、川崎汽船が注力しているアジアや南アジア、東南アジアも、かなり価格敏感な需要者だと認識しています。そのような中で、構造的なLNG需要を中長期的に信頼していいのか、足元の状況を考えると少し心配な部分もあると思います。この点について、どのように捉えているのでしょうか。LNG輸送船の受注獲得において、LNGの需要見通しについて陰りがあるように感じたりすることがあるでしょうか。
A-4:当社は、LNGは低炭素化に向けて再評価されているという認識をもっています。陰りというよりもむしろ再認識をされて、世界中での需要が強くなっているのではないかと感じています。また、ヨーロッパも、簡単にロシアからの輸入を増やせるとは思えません。中国についても、北米からの輸入もかなり多いですが、北米からのLNGは仕向地変更も可能なため、柔軟に向け先を変えていくことができます。また価格の問題もあると思います。コモディティとしてのLNG価格も、これだけLNGの生産が増えてくると、ある程度落ち着くと思いますので、経済性もふまえて、LNGの強い需要は当分続くのではないかと考えています。
Q-5:中長期契約について教えてください。LNGの契約も仕向地を変えられるものが増えていると理解しています。また、長期の20年契約は、少なくなってきていると認識しています。そのような中で、アジアやインドなどはどちらかといえば価格敏感な地域だと思うので、これまでと同じようにトラディショナルな中長期契約をLNG船が結べるのかどうかについて心配を持っているため、考えを聞かせてください。
A-5:中長期契約と短期契約の動向について、まずロシア・ウクライナの戦争が始まって以降、10-20年間の長期契約は増えています。北米出しのLNGについて、仕向地が変更できるものは、柔軟に需要を吸収できると思っています。中長期と短期の割合について、確定的なコンセンサスはないですが、現状は約6-7割が中長期というイメージを持っていて、今後もほぼ同様の割合で推移していくのではないかと予想しています。
Q-6-1:LNG輸送船の隻数と収支の関係についてはよく分かったのですが、収支が大きく増えるタイミングをどのくらいの時期と考えればいいのかを教えてください。LNG輸送船は初期は償却や金利の負担が重く、ある程度年数が経ってからPL上の利益が増えてくると理解しています。2030年はそれらの先行費用をある程度こなして利益が認識できるのか、まだまだこの先の時期に利益が増えていく可能性があるのか、考え方を教えてください。
A-6-1:LNGの収支については、当初は金利負担が大きくなるため、収益の貢献は、竣工後年数がしばらく経ってからになります。それに加え、収支アップは、これまでコンソーシアムなどで当社が比較的小さいシェアで取り組んできたものもあったところ、リーダーとなって獲得した案件が増えてきています。それと、今説明したとおり、後半になって収支の向上が出てくることから、説明資料45ページに示したようなカーブでの上昇を予想しているものです。
Q-6-2:もし可能でしたら、小さいシェアと大きいシェアの具体的なパーセンテージを教えてください。
A-6-2:一緒に取り組んでいるパートナーもいることなので、具体的な数字は控えさせていただきます。
Q-7:説明資料38ページの強みが活かせる分野について、現状川崎汽船よりも上位にいる他船社と比べて、川崎汽船が特徴を持てる分野や強みがある分野を教えてください。
A-7:上位にいる他船社も、非常に上質な船舶管理や対応をされていると思います。この点、当社が一生懸命取り組んでいることと同じですが、当社は欧州などに会社を作り、現地での顧客対応ノウハウの積み上げもあります。また、現在船舶管理については6拠点に海技者を置いて、迅速にお客様に対応できるような体制・拠点の強化にも目下取り組んでいるところです。このような点が当社の強みになると思っています。
Q-8: 技術的なことについて、LNG輸送船でLNGを荷揚げした後のバラスト航海で、液化CO2を積んでLNGの輸出地に持っていき、CCSで地中に埋めることができればいいのではないかと思っています。Northern Lightsプロジェクトなどに投入している船は、液化CO2専用船となると思いますが、将来技術的にLNG輸送船でLNGを運んで、復路でCO2を輸送することが可能なのか、またそのような研究がされているのかなど、教えてください。
A-8:バラスト航海を減らすことは大事な取り組みであり、往路だけではなく復路にも貨物が付くと船の収益は大きく上がります。当社もバラストで他のものが積めないか、検討はしていますが、これには2つ側面があります。1つ目は、揚げる港から貨物が出てくるかどうか。2つ目は、技術的なことですが、貨物の性状、微妙な温度や比重によって、船の同じタンクを使えるかどうかが微妙に異なるという点です。LNGも含めた液化ガスでは、LNGと液化CO2を同じ船で運べるか色々な研究をしていますが、現実的には難しいという結論になっています。なお、LPGとアンモニアは共通した船で輸送が可能です。
Q-9:説明資料38ページでLNG輸送船について、中長期的に100隻以上の体制を目指すということを掲げていますが、2030年以降に竣工する船であれば、2050年までは使うと思います。一方で、契約の短期化や今後のLNG需要の状況に応じて、ここまで隻数を増やすことが、本当に川崎汽船の安定収益に貢献するのかどうか、考え方を整理して教えてください。今までの契約が切れた船をスクラップするのか、FSU・FSRUなど、他の船に変えて活用することも検討しているということですが、規模の拡大がいつまでも安定収益につながるのかどうかについての考え方を教えてください。
A-9:説明資料35ページのLNG需給予測で示しているように、現在の4億トンの需要が2050年にかけて7億トン超の需要になっていくという予想が立てられています。その中で、当社の計画にある、2030年代半ばで100隻体制を目指すというのは、世界中のLNG需要の伸びからすると、アップサイドの数字ではなく、LNGの需要の伸びに加えて少し積み上げているようなイメージです。もちろん、船の確保や船員の体制などをきちんと構築していく必要はありますが、世界中のLNG需要はプロジェクトという意味では、それだけ伸びていくであろうという予測のもとに考えています。
また、契約の短期化についは、ロシアとウクライナの戦争が始まって以降、契約が長期化しています。LNGについては、LNGの受け入れ側でどの程度在庫を持てるかという問題もあるため、スポット契約だけで需要に対応できません。欧州や中国では地下に貯蔵することもできますが、それ以外ではあまり長期の在庫を持つことはできません。このことから、スポット契約による対応も困難であり、長期契約が主体となって今後も増えていくだろうという予想をしています。
Q-10:液化ガス輸送について、今後の収益のポテンシャルとして説明がありましたが、これだけLNG輸送を増やす中で、LNG輸送と液化ガス輸送の船隊ポートフォリオを長期的にどのように考えているのでしょうか。バランスの考え方があれば教えてください。
A-10:まだまだ当社の液化ガスの取り組みは大きな規模ではありません。LPGについては、日本でLPGの統廃合があった際に、初期の段階から進んで取り組んでおり、現在5隻を運航しています。今後はLNGの生産に伴って付随ガスとしてLPGやエタンなどが増えてくるだろうと考えているため、今後の需要に追いついていき、柱としていくべく、事業を強化していきたいと考えています。
Q-11:説明資料38ページの関与隻数についてですが、直近は出資割合、リスクの割合としては、隻数以上に急拡大してくようにも感じます。リスクリターンの関係において、契約の短期化のリスクを踏まえても、安定収益に貢献するという考え方でよろしいでしょうか。隻数以上に隻数に対するシェアが上がると理解しましたが、いかがでしょうか。
A-11:リスクに関しては、もちろんリスクヘッジをしながら取り組んでいきます。リターンについても投資基準を満たす案件を積み上げていきます。基本的には当社の取り組みについて、今後も長期安定型の契約獲得を中心に取り組んでいく方針に変わりはありません。