自動車船事業Q&A

Q-1:2026年に需給が均衡する想定でしたが、今後の運賃の見通しについて教えてください。現在、コロナ前に比べて運賃は高い状態にありますが、需給均衡による影響を確認したいです。

 

A-1:2026年に需給がバランスすることで、一部高騰した海上運賃については調整局面に入ると考えています。コロナ前とは異なり、船が供給過剰に陥るというよりはバランスしていく中で、多少の運賃の調整はあると思いますが、一定程度のレベルで留まると見ています。

 

 

Q-2:2026年までの新造船は中国勢が発注している船が多く、且つEVを中心に中国からの輸出車を運ぶためと見られます。需給の変化に伴い中国の船社が長期契約を結ぶことや、欧米の自動車メーカー獲得のために運賃を下げてくることも想定されますが、そういった動きについてどのように考えていますか。

 

A-2:2024年と25年の合計で、業界には100隻を超える新造船が出てくると見ています。中国からの輸出に関しては、昨年度は約230万台が海上輸送、それ以外は陸路での輸出です。今年も240万台超が輸出されると見られていますが、足元スペースが足りていないため120~130万台はコンテナ船かバルク船で輸送されています。その全てではないにしろ、自動車船の新造船整備に伴い2025年末から26年に向けて相当程度の貨物が自動車船のマーケットに戻ってくると考えられます。これはその時のコンテナ船の市況動向にも因りますが、一部契約更改のタイミングが来る欧米系の顧客に対して新規参入があることは自然な流れであり、一定程度の影響はあると見ています。その影響については現時点ではっきり把握はしていませんが、今後需給がバランスしていく中で運賃は適正なレベルに収斂していく見立てです。

 

 

Q-3:各国で中国のダンピングの調査をしていると思いますが、それに対するリスクはどのように考えていますか。川崎汽船の主要な顧客は日系の自動車メーカーですが、生産計画の見通しや現地生産の動向についてどのような前提を置いているかを確認したいです。

 

A-3:まず日系や欧米系など既存の荷主動向は、生産制約が解消された後、2024年以降25年度、26年度と輸出を増やす計画を組んでいる企業が多いと理解しており、輸送能力の確保が重要ポイントとして挙げられている状況です。次に中国の補助金調査に伴う輸出入の規制に関して影響が大きいのは中国から欧州への荷動きであり、欧州の調査結果によっては大きなインパクトがあると考えられます。中長期的には別の生産工場を中国以外に造ることで対応する部分もあるかと思いますが、そうなれば一定程度の海上輸送の代替需要が新たに出てきます。制裁等により、ある部分の需要が減った際も、販売市場が変わらなければ何かで置き換わることも想定されます。欧州のケースであれば、欧州の現地生産や中国とは別の国から輸入すると考えられるため、リスクシナリオとしてはある程度織り込んではいますが、急に大きな影響が24年度に現出するとは考えていません。

 

 

Q-4:中国からの自動車輸送に関して、先ほど約230万台と説明がありました。中国の輸送量は約400万台であり、百数十万台が陸路での輸送で占められる計算となります。これについては、陸路での輸送に固定化されるのか、海上貿易として戻ってくるのか、マーケットが平準化した時には、どのようになるかを教えてください。

 

A-4:400万超の輸出に対し、海上輸送は約230万台と申し上げましたが、その差は陸路経由国境越えでのロシアや中央アジア向けであるため、今後海上輸送になるとは見込んでいません。そのため、昨年の海上輸送量である230万台の推移の変化が当社事業にとっての大きなポイントになります。

 

 

Q-5:環境対応について、LNG船の次はゼロエミッション船という話がありました。邦船社の場合には主にアンモニアとメタノールが選択肢としてあると思いますが、川崎汽船として自動車船事業についてのゼロエミッション船としてはどのような燃料を検討していますか。

 

A-5:現在発注を確定している14隻は全てLNG焚きの新造船です。今後ゼロエミッション船を発注するタイミングについては検討していきますが、主たる燃料はアンモニア、乃至はメタノールとなります。当社としてはアンモニアをメインに考えていますが、メタノールについても検討を止めていません。エンジンも含めた新造船の技術力等の検討及び、燃料供給も含めたサプライチェーンの行方も確認しながら検討する必要があります。2027年以降に若干新造船の発注が抑制的になるのではないかと申し上げましたが、その一因として新燃料を決めかねているところがあるので、当社としても業界全体としても踏み切れない部分があると見立てています。

 

 

Q-6:説明資料の8ページで「トンデイズ」という単位の紹介がありましたが、もう少し詳しく説明してください。

 

A-6:社内で分析のために使用していて、1台を何日かけて運ぶかということが、需要を正しく表すと考えています。輸送台数だけでは距離が掛け算されませんので、日本からフィリピンに運ぶのと、日本からイギリスに運ぶのでは同じ1台でも距離が異なり船の使い方も違ってきます。乗用車一台は本当の重量では1.数トンになりますが、「トンデイズ」では体積を掛けるので約14トンとなり、運賃換算に使われます。それに対して例えばフィリンピンであれば4日、イギリスなら45日かかるとすれば、それを掛けると需要が出てくるという考え方です。つまり、数量掛ける距離で需要を表していると考えて下さい。

 

 

Q-7:足元、紅海の通行制約が自動車船事業にどのような影響を与えているか教えて下さい。

 

A-7:現在、自動車船は喜望峰経由で東アジアから欧州の往来をしています。行きも帰りも喜望峰を経由するので、合わせて1航海・1隻当たり25日程度日数が伸びます。これはコンテナ船より若干長いのですが、ジブラルタル海峡から地中海への往来をするので、トランシップが単純にかけられず航海日数の伸びに繋がっています。この25日の日数の伸びによって、船舶供給全体の約7%が吸収されていると考えています。今、世界中の自動車船は約700隻なので、7%というと約50隻が吸収されていることになります。したがって、足元非常に需給がタイトな状況が続いているのには、この部分も大きな要因としてあります。

 

 

Q-8:今回説明のあった需給見通しに準じた運賃契約の戦略について教えてください。運賃更改の期間なども含めて説明をお願いします。

 

A-8:運賃契約に関して、先の話はこれからになります。足元では高いコストで船隊を揃え、長期的に輸送能力をコミットするという意味で、今までは最短1年の契約をお持ちのお客様とも、3~5年などの複数年契約を相当程度決めました。そういった意味で、23年以降3~5年程度の契約はかなり確保出来ています。次の更改タイミングになると、電気自動車の生産・輸出をどこからどのように行っていくのか、お客様側も様々なパターンが出てきますので、必ずしも次に長く決めたい、長く決められるということは現時点では決まっていません。

 

 

Q-9-1:船腹の需給見通しについて説明がありましたが、例えば港湾の処理能力やオペレーターのリソースなどがボトルネックとなって需給がタイト化するというシナリオが考えられるかについても教えてください。

 

A-9-1:例えばオーストラリアやメキシコを中心に各地で港湾の処理能力、つまり労働力、ターミナルの大きさ、鉄道等で内陸に運ぶ能力が不足しているため、港に車両が滞留する傾向が継続的に強くなっています。当社としては、全世界で約3~5%の船舶に影響を与えていると考えており、先ほど申し上げた全世界の自動車船700隻で換算すると20~30隻は少なくとも港湾の能力不足で吸収されていると見ています。これは労働力不足に起因するところも大きく、即座に改善できるとは考えていないので、注意深く見ながら影響を考えていきたいと思います。

 

 

Q-9-2:労働力不足に関しては、運賃引き上げ効果をもたらすと思いますが、収支計画には織り込まれているのでしょうか。

 

A-9-2:収支計画には様々な要素を入れています。労働力による影響も考えており、それを含んだ形にしています。

 

 

Q-10:自動車船事業としての資本コストやリスクは他の事業に対して高いのか低いのか、どのように対応をしていかなくてはいけないか、事業の担当者としてどのように考えているのかを教えてください。

 

A-10:比較相手にもよると思いますが、自動車船事業は契約が10年、15年、20年と簡単に取れる事業ではありません。その中で長い期間使う船舶を揃えながら事業を進めているので、長期契約を持てる他の事業に比してリスクは高いため、その分リターンも高いレベルであるべきだと考えています。その中で、特に現在のように環境対応船への投資を行いながら船隊を完全に代替してリニューアルしていく中、投資に見合うリターンが得られるかどうかというのが非常に大きなポイントになってきます。それを実現できるお客様を持っており、話を聞きながら当社のアセットを入れ替えていくことがそのリスクに見合い、事業収益に見合う形になり、最も大事なことだと思っています。この点をお客様としっかり対話していきたいと考えています。

 

 

Q-11:他社と比較した時の川崎汽船の自動車船の競争力はどのような位置づけかでしょうか。中国からも新造船が出てきますので、事業の経営方針について教えてください。

 

A-11:限られた顧客層と長い信頼関係で事業を行っていくことが非常に重要になってきます。特に、環境対応船への投資を進めていく中では、お客様としっかりタッグを組んで投資をしていかなければ、我々も進めづらく、お客様も脱炭素・低炭素に向けた船隊アセットを確保することが難しくなってきます。長い間事業を行っているため、日系・欧米系も含め強固な顧客基盤を持てていると思っていますので、他社と比べても決して劣後するものではないと思っています。全世界700隻の自動車船うち当社は現在82隻を運航していますが、船の割り振りとして相当量を太平洋と大西洋に分散させていますので、日系・東アジア系に加えて欧米系のお客様とも長い間商売していることが他社と大きく異なるところであります。これが結果として、新たな環境対応船やH&H、新しいネットワーク、新しい荷動きの話をするときに、顧客接点の強化に繋がり、自信を持っているところでもあります。

 

 

Q-12:自動車船の需給見通しの中で、紅海の状況はどのような織り込み方をしているのでしょうか。現状が続くのか元に戻るのか、考え方を教えてください。

 

A-12:需給見通しは、2024年度は年度を通じて紅海は通れない前提にしています。ただし、25年度には戻る前提にしており、これが需給見通しの前提です。

 

 

Q-13:説明資料の13ページについて、単純課金適用開始時には$100/tCO2、適用強化後は$200/tCO2となっていますが、この想定は川崎汽船の前提か、それともルールで既にこれが見えているのでしょうか。

 

A-13:当社のルールでも世の中のルールでもなく、一定の前提として置いています。足元で適用されているEUの排出権取引の1トン当たりの取引価格は70ユーロなので、そういったものも指標に前提を置いています。従って、どのタイミングで発生するか、20年代の後半と30年代の中盤とそれぞれ資料では示していますが、当社としての予測であり、早まることも後ろ倒しになることもあります。逆に、こういった課金が緩ければ、CO2を沢山排出する古い本船の退出が遅れ、国際ルールとして意味をなさなくなってきますので、その辺りが国際海事機関(IMO)での議論やその他議論に大きく影響すると考えています。ただし、現状では決まってはいません。

 

 

Q-14:電気自動車の輸送について、輸送時の危険性についてはどのように考えていますか。ガソリン車やディーゼル車を輸送する方が危険なのか、基本的には同じ危険性なのか、保険なども含めて変わらないと考えればいいのか、その辺りについてどのような見方をしているのか教えてください。

 

A-14:火災が発生するリスクの高さや低さという意味で、ガソリン車と電気自動車に差があるとは考えていません。ただし、一度発火すると消化するのが大変なのはバッテリーを持っている方です。言い換えると、火事が起こった際、適切な対応を取らなかった場合、手に負えなくなる危険性があるとは思っています。そのため、早期に火災の予兆を発見し、対応をとることによって火災自体を起こさないために、従来からそうではありますが、本船のソフト面でも、必要であればハード面でも対策を強化しています。当然火災報知機などはついていますが、それ以外にもカメラや温度感知用のレーザーなど、いろいろな研究が業界でなされています。それらの強化により早期発見・早期対策をとることで、そもそも火事を起こさせない取り組みが必要と考えます。他社でもいろいろなガイドラインが出ていますし、EUでもそういった話はされています。日本でも国土交通省を中心に邦船3社も含めて火災対策での研究が進んでいますので、今後ルール化されていくと思います。

鉄鋼原料事業Q&A

Q-1:鉄鋼原料事業は契約が長めに取れるため、自動車船事業に比べるとリスクは低いということになると思いますが、収益性も低いのでしょうか。低い収益の案件を獲得していっても貢献度は少ないと思いますが、事業規模としてはどのように考えているか教えてください。

 

A-1:ドライバルク事業には多様な契約形態とプレーヤーがいます。お客様の基盤に立った安定収益を軸にして、その上で市況連動型の収益も適切に取り、事業収益を高めていくというスタンスでいます。様々なタイプのお客様・船主・オペレーターがいまして、当社にとって貸し手にも借り手にもなり得ますので、リスクをうまく抑えながら自分達の希望する船隊構成を作るチャンスが比較的多い事業だと考えています。そういう意味では貨物とリスクのバランスを取りながらマネージできる事業だと考えています。収益性については、コアのお客様との中長期契約、安定収益を基盤としてしっかり注力したうえで、お客様の貨物を運ぶのに必要な市況型の船隊を保有・運営し、そこで事業収益の更なるアップサイドを狙いマネージをしていけば、しっかりとした収益貢献ができると考えています。

 

 

Q-2:ドライバルク事業全体での利益率は開示されていますが、あまり褒められたレベルではないと思います。そもそも適切なマージンはどれくらいのレベルかを教えてください。中小型は含めず、鉄鋼原料事業だけであればどうであるかなど、確認させてください。

 

A-2:投資に対するスタンスとしては、会社全体としても説明したように投資規律に沿ったリターンを目標としています。事業としては2023年度の収支が下振れしましたが、市況の上下の中での変化と一過性の要因等が積み重なったものであり24年度はその要因が剥落するため回復すると見ています。大型船のケープサイズでは全体で1,800隻あるといわれていますが、2008年前後からのリーマン・ショック時の大量竣工船がこのうち3分の1以上を占めます。過去を振り返ると、基本的には船余りの状態が続いていて、その中で需給がバランスする局面は有りましたが、2030年前後に退役の時期を迎えることで中期的には需給はバランス方向に向かっていき、堅調なマーケットが形成されると考えています。その中でしっかりとしたリターンが取れるべく取り組みます。

 

 

Q-3:ドライバルクセグメントの利益率について、コロナ前は1%、2%の時や、赤字だったこともあり、コロナ禍は特殊ですが7%、8%程度は出ていたと思います。今期に見込んでいるようなマージンを維持・拡大できるのでしょうか。

 

A-3:利益率そのものは、2030年に向けては上げていきたいと考えています。環境対応を軸とした安定収益の拡大、その中で長期傭船を活用しながら燃費効率の良い新鋭船に入れ替えていくことで競争力の向上や、インドのように商売を拡大する中で接続性を高めて稼ぐ力を強めていく、という三つの要素で利益率を高めていきいと考えています。

 

 

Q-4:ケープサイズに関して、他社と比べてどのようなところに競争力があるのかについて教えてください。船隊数や顧客について、日系だと他社と同じようなイメージですが、外資系とも比べて川崎汽船の存在感はどのような状況か教えてください。

 

A-4:世界のケープサイズのプレーヤーの中で80~100隻なりの規模を運営している会社は数社に限られます。各社においては様々なスタイルがありますが、当社としては日韓を中心としたお客様、インド・中東も含めてですが中長期契約の安定収益を基盤にして、その中で市況連動型の収益を加えていける仕組みやバランスは他社と比較すると強みであるといえます。劣後しているとは考えていません。

 

 

Q-5:ケープサイズのエクスポージャー比率ですが、今年度の期首時点では15%であると決算発表で示しています。これは毎年変わるものだとは思いますが、もっと上げたいのか、下げたいのか、適正なレベルを教えて下さい。

 

A-5:パーセンテージとして明確なKPIは出していませんが、目安としては今回の比率はコントロール可能なレベルに下げることが出来たと考えています。昨年度の事業説明会では期首時点で23%と説明しましたが、今年度は下がっていて15%です。これは船体と貨物の長短のマッチングが終了していない中で、昨年度については2022年度後半の市況が非常に低迷した時期に短期契約の貨物の更改がありましたので、なかなかそこを埋め切れることが出来ませんでした。今年度については、昨年度後半の市況が安定して上昇した時期に更改となりましたので、目標としたレベルまでエクスポージャーを固めたことが多かったという背景があります。

 

 

Q-6:貨物とチャーターの最適化、リスク・マネジメント・コントロールに関しては足元数年で会社の中で変化があったかどうかを教えて下さい。

 

A-6:貨物と契約のマッチングについては、2022年度の20pptから23年度は18pptに改善しています。今後の長期傭船の返船、中短期傭船の入れ替えによって26年度目標値の5pptに向けて進めていけると考えています。

 

 

Q-7:環境対応船に関する需要は少し遅れていますが、中長期的には確度は高まっていると感じているという話がありました。その背景を教えてください。

 

A-7:環境需要に伴う代替船需要が、時期として中計期間での想定よりも遅れたということがあります。背景には最終的な環境対応の方向性、規制の方向性がクリアになっていない点が挙げられます。更に、最終的にはゼロエミッション船に向かっていくことになりますが、現時点で新燃料の見通しがクリアでない点や、その他お客様自身にも諸事情あり後ろ倒しになっていると考えます。一方でIMO下の海洋環境保護委員会(MEPC)で話し合われているグローバル排出規制の導入に関しての詳細はまだ定かではありませんが気運は高まっていて、正式に導入されCO2に値段が付いた段階でLNG焚き船、或いはその先のゼロエミッション船については市況や価格で考えても競争力が出てくることになります。従って、どこかのタイミングでは動き始めると考えています。

 

 

Q-8:環境対応について、資源メジャーのシェアを上げることを目標としている背景について教えてください。同業他社も同じような戦略を持っていると思いますが、その中で川崎汽船がシェアをあげられるというのは、そもそも資源メジャー自体が中長期の比率を上げることを考えているのでしょうか。それとも別の理由でシェアを取っていけると考えているのでしょうか。もう少し詳しく教えてください。

 

A-8:当社のターゲットとする資源メジャーは短期・中期契約の割合が非常に大きいです。今後環境対応船にシフトすると、コストも従前に比べて高くなるため、傭船契約期間を長く取らざるを得なくなってくると思っています。そういった動きは実際に出始めていて、環境対応船へのシフトの流れは資源メジャーはじめお客様との長期契約を取り込むチャンスの増加にも繋がると考えています。

 

 

Q-9:川崎汽船がアングロ・アメリカンからパートナーとして選ばれた背景について教えてください。

 

A-9:アングロ・アメリカン殿とは2015年から、南アフリカ船籍の事業を少数ですがジョイントベンチャーとして始めています。このアプローチが一つ有効な手段になったと思っています。また、当社が強みとするインド・中東向けの貨物からの接続性を活用して南ア・ブラジル積み中心のアングロ・アメリカン殿の貨物を取れたと考えています。

 

 

Q-10-1:還元鉄自体は天然ガスや水素を使って製鉄すると理解したのですが、輸送する際のオペレーション上、或いは収益性の影響について教えてください。

 

A-10-1:還元鉄自体の輸送需要は今後増加すると考えています。また、輸送需要は顧客である製鉄会社、或いはその周辺企業と作り出すプロジェクトの中で生まれてきますので、顧客密着と提案力を高めることで、取り込むチャンスを狙いに行きたいと考えています。

 

 

Q-10-2:還元鉄を本格的に商業ベースで運ぶようになった場合には、大型のケープサイズで輸送するのでしょうか、それとも中小型船で輸送するのでしょうか。

 

A-10-2:現時点では、貨物の性質上からも中小型船で運ぶことを想定しています。

LNG輸送船事業Q&A

Q-1-1:LNG船の隻数が増加すると、利益がどのように増えるのか、改めて確認させてください。一般論として、LNG船は安定収益源ということでマージンは確実に入るものの、立ち上げ初期は金利負担なども含めて、収益性が低い、あるいは場合によっては赤字の可能性もあるという話を聞いたことがあります。

この計画の中で、また川崎汽船の考えとして、LNG船の隻数が増えて急拡大するこれからの数年において、先行費用負担はどの程度発生して、それが経常利益にどの程度影響を与えるのか教えてください。

 

A-1-1:LNGの隻数と収支の関係について、ご指摘のように、当初の立ち上がりの収益性は、遅れて上がってくることがあります。竣工するタイミングや稼働日数が徐々に上がってくることもあり、そのような傾向があります。しかしながら、当社の投資基準はかなり厳しいものがあり、これを厳格に守っています。これまで過去10年以上、LNGの輸送で赤字が出たということはありません。足元の投資も、社内の投資基準に厳格に沿った形での運用、管理をしています。また、当社が各案件に参画する際の、参画割合が新しい案件では増えています。当社がプロジェクトの主体として取り組む案件が増えているので、収益性の積み上げが増加、このことが、収益の増加が隻数の増加を上回っている要因です。

 

 

Q-1-2:各プロジェクトへの参画比率が最近高くなってきたことの要因について教えてください。50%以上ということは、川崎汽船がオペレーターのような立場になるのかと思いますが、それが近年可能になっている背景について教えてください。

 

A-1-2:元々LNGの事業形態は、コンソーシアムを組んでいろいろなプロジェクトに参画するものです。LNG輸送船事業の黎明期は、邦船3社も一緒にコンソーシアムを組んで取り組むような案件がかなり多かったです。そのような中で、当社の船舶保有の数や、実力を踏まえての割合というのが継続してきたところはありますが、最近の案件は当社がリーダーシップを発揮して、いろいろなパートナーと話をして積極的に進めていく形態に変わってきていて、当社の参画比率が高まってきているものです。

 

 

Q-2:LNG自体の取引形態の変化と、それが海運会社、LNG輸送船に与える影響について教えてください。昔は、いわゆるファウンデーションバイヤーがいて、20年くらいの長期売買契約を結んでLNGプロジェクトを作るというのが一般的だったと思いますが、最近はLNGの長期売買契約の比率も下がってきて、ポートフォリオプレーヤーが自社でLNGのポートフォリオを組んで、機動的にユーティリティに売るような形態も増えてきていると思います。このようなLNG売買契約自体の変化、さらに北米のウエイトの高さなどを考えた場合、伝統的なLNGの取引形態自体が減少してくる中で、川崎汽船のLNG船のビジネスについてどのような影響があるのか、それとも影響はないのか、教えてください。

 

A-2:LNG輸送船の仕込みにトレーダーなどが参入してきて、見込み発注をしてきた経緯もあると思います。ただし、契約の長短という意味では、二極化していると思います。全てのプロジェクトが短期になってきているという訳ではなく、特にロシアによるウクライナ侵攻の後は、短期化のトレンドもまた元に戻ってきていると思われます。最近は大型プロジェクトも長期案件に回顧するといった動きも出てきていて、長期案件と短期案件のコビネーションになると思っています。しかしながら、当社としては長期安定型を目指すという基本方針には変更はありません。

 

 

Q-3:今回、中期経営計画がアップデートされていますが、エネルギー資源セグメントの経常利益の見通しを見ると、24年度が50億円で26年度が100億円と、少し増える見込みです。一方で、先ほど説明のあったスライドでLNG輸送船事業だけの利益を見ると、24年度から26年度にかけて、経常利益は横ばいのように見えます。これは、隻数は増えるものの、先ほどお話しがあった、プロジェクト立ち上げ当初は利益貢献しない、ということによるものなのでしょうか。LNG輸送船で増えないとしたら、エネルギー資源セグメントのどの事業で利益が増えるのでしょうか。また、30年度では、26年度の経常利益100億円から200億円に増加する見込みになっていますが、これは先ほどの説明資料を見ると、ほとんどLNG輸送船の貢献によるもの、100億円分の利益が30年度付近で入ってくるという認識でよいでしょうか。

 

A-3:具体的に各事業の収支は開示していませんが、LNG輸送船では竣工してから収益が積み上がってくるのに、少しタイムラグがあるので、26年度までの貢献というよりは、その先の期間でかなり伸びてくる計画です。一方、エネルギー資源輸送全体で考えると、LNG輸送船以外に油槽船や電力炭船などは、新しい高効率な船への入れ替え、またLNGチェーンの周辺事業を積み上げて、収益をアップさせていくことを考えています。ご指摘のとおり、30年度の経常利益を考えると、LNG輸送船のウエイトは確かにかなり大きいものを見込んでいますが、他の事業も合わせて30年度の収益を上げていく計画です。

 

 

Q-4:LNGは、ゼロエミッションに移行していく途上の中間的な役割の燃料とよく言われますが、LNG輸送船の耐用年数を全て使い切る前提での長期契約ということなのか、途中で何か新しい船、他の燃料も使うことができる船への転用もあるのでしょうか。他の会社でもそのような取り組みあると思いますが、LNG輸送船の使い方は長期的にどのように考えているのでしょうか。

 

A-4:LNG輸送船は、LNGタンクの寿命が非常に長く、物理的にはかなり長期の使用が可能です。基本的に当社は長期契約を獲得して、長期運用していくということですが、契約が終了した古い船については、使い方をいろいろと考えています。例えば、中短期の契約に投入したり、市況によりますがFSRUへの改造など、周辺事業での使用を目指したりということです。海外の投資会社や船主で見込み発注、投機発注をしている会社も一部あり、そのような方々は長期使用を前提とした船舶というよりは、もう少し短い運用での転売も考えているかもしれませんが、LNG輸送船については、まだそのような転売マーケットは確立されていません。市場にもほとんど出てこない状況です。

 

 

Q-5:LNG輸送船の投資リターンについて、どのように良し悪しを評価しているのでしょうか。先ほど投資基準をかなり厳しく設定しているという話がありましたが、何を基準に厳しいと言っているのでしょうか。資本コストとの兼ね合いで考えると、資本コスト並みのリターン、川崎汽船のROEと同じぐらいだとすると、それを取るためにはかなりのレバレッジを使わないと厳しいのかなと思います。また一方で、長期契約で決めてしまうのであれば、リスクも考えなくてよいと整理して、リスクが少ない分、より多くの契約を獲得していかなければならない、ということになると思います。リターンとして何が適切な基準と考えて事業経営しているのか、確認させてください。

 

A-5:投資規律について、エクイティIRRが、ハードルレートを超える案件に絞ってとりくんでいます。具体的な数字の開示は控えますが、全社の投資規律に沿った形でROICが事業WACCを上回る案件に絞って取り組んでいきます。リターンが低い案件というのはなかなか獲得が難しいですが、最近のLNG需要の高まりも受けて、収益性も一定の水準になってきていると認識しています。

 

 

Q-6:LNG輸送船の場合は、あまり自社で船を保有しないのかもしれませんが、オフバランスかオンバランスかでリスクの取り方をコントロールすることはあるのでしょうか。

 

A-6:プロジェクトファイナンスを組んで、オフバランスにする案件が主流です。

 

 

Q-7:LNG輸送船の建造について教えてください。最近、日本の造船会社でLNG輸送船をあまり建造していないかと理解していますが、このことをオペレーターとして川崎汽船では、どのように見ていますか。一般論として、海事クラスターとしては日本の造船が充実した方がよいと思いますが、競争力に何か影響はないのかなど、考え方を教えてください。

 

A-7:ご指摘の通り、日本の造船所は、国内ではもうLNG輸送船を建造しなくなってしまっています。元々は重工系の造船所で建造していたことがあり、当社としても、本当は日本で建造してもらえれば安心なところはありますが、中国・韓国の造船所との強烈な競争もあり、現在ではLNG輸送船の9割方は中国、韓国の造船所が建造している状況になっています。また、LNG輸送船の契約では、LNGのプロジェクト側が造船所を指定することもあり、そのような背景のもと、当社は中国・韓国の造船所との関係性を強化して、それらの造船所で建造された船を使用していくこととしています。

 

 

Q-8:FSRUなどのエネルギーの周辺事業についてどのようなスタンスでしょうか。LNG輸送が主力だということは理解していますが、FSRUは数年前から有望視されていながら、なかなか邦船社での取り組みは進んでいないと思います。川崎汽船としてFSRUを中心とした他のエネルギー関連事業について、どのようなスタンスなのか教えてください。

 

A-8:当社は周辺事業についても、いろいろなものを追いかけています。エネルギーバリューチェーンにおける周辺事業について、上流に近い側面は、例えばFPSOとFSRUでも異なります。当社としては、あまり上流を指向していません。できるだけ船の商売に紐づく周辺事業を追いかけて取り組んでいきます。FSRUについては案件の話もありますが、老齢LNG船の改造利用が可能で、どちらかというと上流の難しいオペレーションが必要なものとも異なるので、採算性がきちんと合えば、確実に積み上げていきたいと思っています。

低炭素・脱炭素に向けた事業Q&A

Q-1:CCSに関する守備範囲について教えてください。先ほど運搬と貯留も検討するという話がありましたが、CO2の液化に関しても川崎汽船は関わるのでしょうか。

 

A-1:当社の守備範囲は基本的には海上輸送です。貯留や液化の部分にはその道のプロがいて、当社はそういった方々とアライアンスを組んで共同で取り組むことによって、CCSのバリューチェーンを作っていこうと考えています。

 

 

Q-2:CO2輸送船の技術的、あるいは操業の難易度について教えてください。LNGはマイナス160度でメタンが液化し、水素はマイナス250度で、二酸化炭素はマイナス56度で液化すると理解しています。液化する温度という意味では、CO2は運びやすいのかと単純に思ってしまいますが、どのように考えたらよいでしょうか?

 

A-2:液化CO2船の難易度に関して、基本的にはLPGやアンモニアの輸送に、実はかなり近いです。中温・中圧という仕様だと、マイナス20度、2メガパスカルというレベルで、これはLPGとあまり差がありません。一方で、液化CO2の特性として、ドライアイスになってしまう可能性があります。ドライアイス化してしまうと、荷役が止まってしまいますし、瞬時に液体に戻せるわけではないので、ここに関するノウハウ、モニタリング、圧力および温度のコントロールが重要になってきます。

 

 

Q-3:欧州での先行の経験について教えてください。Northern Lightsもそうだと思いますが、CO2を他国に輸送するというのは、ある意味厄介物を輸送して貯留するということで、ややハレーションが発生しているという話も聞きます。あるいは、これから日本がもしCCSに取り組む場合、貯留地については、日本だけではなく東南アジアなども含めて考えているという話も聞きます。本当にCO2という厄介物を他国に任せていいのか、押しつけていいのかというような議論があると理解しています。Northern Lightsも含めて、現在欧州で取り組みが進んでいるCCSの動きで、何かハレーションがあるのか、それとも脱炭素や低炭素というものが優先されて、ある程度円滑に進んでいるのか、現在どのような手応えを感じていますか。

 

A-3:ご指摘の通り、確かに厄介物という部分もありますが、ご案内の通り、ロンドン条約という条約があります。この条約は、他国への廃棄物輸出を禁止するものですが、2国間協定が結べる限りにおいてはその限りではないという例外規定があります。ヨーロッパで今起きている事としては、特に受け入れ側のノルウェーが、オランダやデンマークなどの諸国と既に2国間協定を締結していて、条約上輸出できる環境が既に整っています。

CCSが実現できる条件がいくつかあると思っていますが、一つ目が今お話しした2国間協定で、貯留地が確保できるという点。それ以外に、炭素税の制度があります。また、政府支援があります。大きく、この三つが条件として求められると思っています。翻って日本に関しては、これら三つがまだこれからの状況です。CCS事業法という法案が内閣閣議決定していますが、実際に圧入先であるオーストラリア、マレーシア、インドネシアとの協議は並行して進んではいるものの、まだ締結には至っていないという認識です。よって、ご指摘のハレーションについては、解決に向けて欧州が先行して動いており、日本、アジアも動いているという状況だと認識しています。

 

 

Q-4:日本におけるCCSについて、川崎汽船としてはどのように見ていますか。苫小牧でCCSの実証試験をしていたり、一部枯油ガス田があったり、帯水層があると言われたりしますが、輸送ということを川崎汽船が考えているということは、日本でCCSの貯留まで行うのは厳しそうということなのでしょうか。もしくは、2030年代中盤までで言えば、日本でのCCSも視野に入ってくるでしょうか。

 

A-4:経済産業省が主導している先進的CCSとして7つのプロジェクトが昨年採用され、当然国内の貯留案件もあります。また、同時に海外の案件もあります。これは貯留先がどこになるかという点と密接にリンクしていると思います。貯留先は枯渇油ガス田、ないし帯水層ですが、特に枯渇油ガス田は、ご案内の通り、何億年もかけて保持されてきたものです。その間に地震や火山活動などがあっても残っているもので、油ガス田を使った後、圧入先として使うということについて信頼性が高いと言えると思います。そのような油ガス田が日本では限定的で、日本がネットゼロ社会に向けて必要とするCCSの量ということを考えると、どうしても海外の貯留先を視野に入れないといけない状況です。アジア太平洋地域、豪州、マレーシア、インドネシアなどの国と進めるということになると、ヨーロッパのような近距離ではなく、長距離輸送が必要になってくると思います。当社は、基本的にはそのようなチェーンが出来上がる中で、輸送の部分を支援していくことになります。それが、仮に日本国内であれば先ほどお話ししたようなパートナーシップで、日本ガスラインさんと一緒に取り組んだり、海外であれば当社の知見を生かしたり、柔軟な対応ができればと思っています。

 

 

Q-5:CCSに焦点を当ててというお話しでしたが、2030年以降で経常利益30億円、50億円と利益貢献も大きくないものが、川崎汽船の事業の中で大事な話なのだろうかと疑問に思っています。このような事業が10個くらいあれば話は別ですが、そもそもCCSはどのような位置づけなのか、CCS以外の新規事業や、立ち上がりがどうなっているのかなど、全体感を確認させてください。

 

A-5:ご指摘の通り、CCSがヨーロッパでドライブがかかってくるのが恐らく2028年以降、日本だとおそらく2030年くらいと見ています。よって、利益貢献という意味では、どうしても2030年以降になってしまいます。一方で、アンモニア輸送は、おそらく2028年以降くらいには出てくるのではないかと思います。洋上風力はもう少し手前で、2026年か2027年頃、そもそもプロジェクトの運転開始が日本では2027年、2028年と言われているので、どうしてもこのような脱炭素・低炭素に向けた事業は、利益貢献が27年以降、2030年以降が中心とならざるを得ないと認識しています。しかしながら、このような事業が今後新たに出てくるところでは、当社は中長期的な視野で事業についていくことを考えている、そのような位置づけです。

 

 

Q-6:全体的な話しとして、脱炭素・低炭素に向けた事業が立ち上がっていく中で、無くなっていく事業、あるいは減っていく事業、例えばドライバルク事業などでは、逆にマイナスの影響を受けることがあるのではないかと思います。例えば自社の利益にとってマイナスの要因があっても、プラス要因で伸ばしていくなど、全体的な話について、社内ではどのような議論をしているのでしょうか。

 

A-6:脱炭素化・低炭素化の動きが進むに応じて減っていく事業や、逆に増えていく事業に当社がどのように取り組むかという問題はありますが、一方で世界の貿易量や、エネルギー関連で言うと電力需要というのは伸びていくと見ています。その中では、いろいろな入れ替えが起こっているのではないかと思います。自動車船事業や、鉄鋼原料事業でも、話がありましたが、環境対応の船に入れ替えていく動きや、当社が輸送する荷物が変わっていく部分と、当社が使う燃料が変わっていく部分と、いろいろな要素があると思っています。定性的な話になってしまいますが、全体を総合的に見ながら判断したり、議論を継続的に続けたりしていくことになります。このような動きはどんどん変わっていきますし、進歩のスピードも変わっているので、置いていかれないように議論を進めて、手を打っていくということだと考えています。