2021年2月17日
川崎汽船株式会社
 

 当社は本船の性能評価精度向上を目的として、運航船約300隻が搭載する船舶統合システム「K-IMS」(注1)に、Bearing社(注2、以下ベアリング社)のAI(人工知能)によるデータ解析技術の採用を決定しました。当社が約20年に亘って収集してきた高品質な運航データとベアリング社の世界最先端のAIによるデータ解析技術の融合によって運航船における高精度な性能評価を実現し、安全で経済的な運航によって環境負荷の低減を進めます。

 

 風や波、海流など外乱影響を受ける実海域において本船の運航性能を正確に評価することは、経済運航や環境保全の取り組みを行う上で非常に重要であると認識しています。現在、性能評価の精度についてはIoT技術の発達により、リアルタイムに得られるビッグデータを活用することで一定の評価が可能ですが、その更なる精度向上は海運・造船・舶用機器業界における課題となっています。

 

 当社は長年に亘り「高品質なデータの収集」と「高度なデータ解析技術」に主眼を置き、性能評価技術の向上に関する様々な取り組みを行ってきました。その一環として、2019年末よりベアリング社のAIによるデータ解析技術に対する実証実験を行った結果、従来と比較して非常に高精度の運航性能評価が可能となることを確認しました。

 

 この結果についてベアリング社は、当社が長年蓄積してきたデータの品質の高さが、同社の解析技術を高めると共に高精度な性能解析を可能にしたと評価しており、当社の長年に亘る取り組みが実を結んだと言えます。

 

 今後は同社の技術と高品質なデータを活用することで、実海域における運航船の運航性能を正確に把握し運航管理に役立てるのはもちろんのこと、ハード・ソフト面問わず燃料消費削減の様々な取り組みを正確に評価し、運航船の性能改善や運航管理の高度化を図ることが可能となります。

 

 当社は経営計画で安全・環境・品質への取り組みを企業価値向上に向けた重点課題と位置付けており、今後もビッグデータやAI技術の活用を含むDXを通じて、これらの取り組みを加速してまいります。

AIによるデータ解析イメージ
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AIによるデータ解析イメージ


(注1)K-IMS(Kawasaki Integrated Maritime Solutions)
船陸間通信システムを利用した、陸上から船舶の運航管理・機関プラントの状態監視・本船性能解析を行う機能を持つ船舶ICTシステム。詳細は以下のサイトをご参照ください。
https://www.kline.co.jp/ja/news/other/other2720726084517238321.html

 

(注2)ベアリング社
人工知能の世界的権威であるAndrew Ng氏が設立したAIファンドと三井物産株式会社が共同で出資する海事産業向けAIのベンチャー企業。同氏の旗の下、世界で最も先進的なAI技術にアクセス可能であり高精度なデータ解析サービスを提供している。本社は米国カリフォルニア州。
https://www.bearing.ai/