2014年01月06日
川崎汽船株式会社
代表取締役社長
朝倉 次郎
2014年 年頭所感
― 三ヵ年計画“Bridge to the Future”の仕上げに向けて ―
皆さん、新年明けましておめでとうございます。
2014年のスタートにあたり一言ご挨拶申し上げます。
昨年の世界経済は米国を中心とした先進国主導にて緩やかに回復に向かいました。個人消費の本格的な回復までには至らないものの、米国では住宅市場や自動車販売が過去5年間で最も高い伸びを示し、株式市場では過去最高値を更新しました。長らく不振に喘いでいた欧州経済も漸く底打ちをし、昨年は3年ぶりのプラス成長に転じました。中国、インドなどリーマンショック後に世界経済回復のけん引役となった新興国においては、一時の高い経済成長率からは減速したものの、一定の調整期間を経て今後は持続的な安定成長路線へ転換して行くものと思われます。
わが国の経済につきましては、一昨年末の安倍政権発足以来、大胆な金融緩和政策と機動的な財政政策が奏功し、行き過ぎた円高は是正されました。株式市場も年間上昇率で世界一位となり、久し振りに日本経済に明るさが戻って参りました。 また昨年大きな話題となりました2020年のオリンピック東京招致成功のニュースは、東日本大震災以来停滞気味だった日本の社会に再び活気を与えるきっかけになったようです。
当社の業績に関しては今月末に2013年度第3四半期実績及び第4四半期の最終見込みを発表の予定ですが、一昨年来継続して参りました構造改革の成果が徐々に現れて来ています。全社的な減速運航の取り組みによって燃料費の削減効果も期待以上の成果を挙げました。このような全社一丸となっての努力が実を結び、2012年度からは経常黒字基調が定着し、Bridge to the Future最終年度の2014年度には過去2年を凌ぐ業績を挙げることも視野に入るまで回復しています。
ここまで現行の3ヵ年経営計画について、つまり海運市況の崩壊からどうやって会社を守るかに徹した経営について述べましたが、ここからは守りから攻めの経営に転じて行くためのいくつかのステップについて方針を述べたいと思います。世界の政治・経済は毎年大きく変貌を遂げており、同様にあらゆる産業分野においても技術革新と競争の激化は避けて通れません。当社もまた厳しい国際競争に日々晒されているわけですが、そこで勝ち残るためには従来の仕組みや、やり方を大胆に変えて行くことが必要だと思います。2014年を起点に会社をより良い方向へ、皆さんの力で変えて行きましょう。
攻めの経営のファーストステップとして、当社が強みを持つ分野への投資再開を昨年決定し、日本では最大級の7500台積み自動車専用船8隻の建造を公表しました。また、バルク部門においても既存船に比べて25%程度の燃費改善が実現できる大型鉱石船や石炭船の建造も前向きに進めております。エネルギー資源輸送部門ではLNG船3隻分の長期輸送契約を昨年獲得し、新年度には現在交渉中のシェールガス関連の輸送プロジェクトの成約を見込んでいます。コンテナ船部門においても昨年前半に14000TEU型の超大型コンテナ船5隻建造を決定し、結果的に絶好のタイミングでの発注となりました。これらの最新鋭船が出揃う2015年から2016年にかけて当社の業績は大きく回復するものと確信しています。
また、アジア・オセアニアにおける物流事業の推進と、北海・ブラジルなどでの海洋開発関連事業についても新経営計画では重点的に強化する分野と位置づける考えです。物流事業は利益を上げるには時間がかかるものの、成長著しいアジアの需要に合わせ、長期的な戦略のもとに当社の事業を拡大して行くことで10年後にはコア事業に育つと考えています。
海洋開発関連はオフショア支援船、ドリルシップの他、FPSOやサブシーコンストラクション船といった高い技術とノウハウが要求される分野にも積極的に進出して行く体制を構築して行きます。このように当社は決して現状に安住することなく、常に前を向いて着実に一歩ずつ前進して行く所存です。
さて最後になりますが、年頭挨拶にあたり次のことを強調して締めくくりたいと思います。
当社は昨年から長時間労働を無くすためにワークライフバランス運動に取組んでいます。今のところ確たる成果は出ておりませんが、仕事と生活を上手に調和させることによって生まれる充実感こそが人の活力の源泉であるという考え方を役職員一同が共有し、新年度にはこの運動を更に盛り上げて、是非成果を挙げたいと思います。また極めて初歩的ながら大変重要なことですが、皆さんには改めて法令遵守を徹底することをお願いします。社会人として守るべき法令に関しては論を待ちませんが、ここで言う法令とは競争法や腐敗防止法に代表されるような業務遂行上絶対に守られなければならない法令や社会規範のことです。この点については既に幾度かの機会に皆さんにメッセージを出して来ましたが、改めてこの場で触れて置きたいと考えます。法令の遵守即ちコンプライアンスは全ての企業活動の絶対的な基本要件であるということを忘れずに仕事をしてください。
当社グループの皆さんとそのご家族のご健勝とご多幸、すべての船舶の安全運航を祈念して私からの新年の挨拶といたします。