2014年04月01日
川崎汽船株式会社
代表取締役社長 朝倉 次郎

 

入社式社長挨拶

 

 

皆さん入社おめでとうございます。

 

本日、皆さんを川崎汽船の一員としてお迎えするにあたり、役職員を代表してお祝いの言葉を申し上げます。

 

昨年、政府・日銀は大胆な金融緩和と財政政策に取り組み、日本経済はようやくデフレ不況から脱却する兆しが見えてまいりました。年末には日経平均が6年ぶりの高値を付け、また世界金融危機以降長期に亘り日本経済を苦しめた超円高にも終止符が打たれ円はドルに対し18%下落しました。これによって、多くの企業では業績回復が顕著になっています。更に国内の老朽化したインフラの更新需要や、東北復興事業が本格的に始まったことに加えて、2020年の東京オリンピック開催に向けて新たなインフラ整備が見込まれることなどにより、我が国の経済は当面着実に回復して行くものと思われます。

 

一方、国際海運にとってより重要な世界経済については、年初にIMFが3.7%の成長を予測したものの、回復は依然まだら模様で、全体としては力強さに欠けています。バランスシート調整を終え再び成長過程に入った米国と、危機をようやく脱し緊縮から成長を模索し始めた段階の欧州、高成長に陰りの見え始めた新興国という複雑な構図のなかで、中東やクリミア半島などの地政学的リスクを意識しつつ、私たちはより良いポートフォリオを求めてグローバルに事業を展開して行かねばなりません。手をこまねいて何もしなければビジネスチャンスを逃し、レースから脱落することになりますが、一方で用心深さを欠いた企業経営を続ければ会社はたちまち荒波に飲み込まれてしまいます。

 

海運業界も、他の産業同様に2009年以降大変厳しい状況に置かれましたが、世界経済が緩やかに上向きに転じたことと、当社自身が主体的に構造改革を全社一丸となって押し進めてきた結果、2012年から経営が安定してまいりました。 今年は2012年に策定した中期経営計画Bridge to The Future の最終年度となりますが、この計画を完全に達成することによって当社は再び足腰の強い会社として生まれ変わることができると確信しています。

 

皆さんが入社された2014年は、当社の経営がこれまでの守りから攻めの姿勢へと転じる起点の年になります。ただし、攻めの姿勢とは単に事業規模や利益を拡大することではありません。事業規模や利益の拡大はあくまで結果であって、それ自体を目標とはせずに、むしろそこに至るプロセスを今回は重視したいと考えています。働く人々が充実感や満足感を得られるような会社にすること、株主、顧客に当社の企業価値を充分評価して戴けるような会社にすることが重要だと私は考えています。本年半ばに策定する予定の新経営計画にはそのようなビジョンを組み入れて行きたいと思います。

 

いま我々の事業環境はかつてない早い速度で変化していますが、皆さんにはそれに対応できる柔軟な思考と未来を切り拓く勇気を身につけて欲しいと思います。世界の物流市場で活躍できる人材となることを目指して、語学力を磨き、情報の収集と分析能力を高めるよう地道に努力を重ね、海運人として成長して欲しいと願っています。皆さんの成長が会社の成長に繋がるのです。

 

陸上総合職新入社員の皆さんには、今年度は新たな試みとして、約2ヶ月間の現場研修を実施します。 主に国内外の関係会社などの臨港店のご協力のもと、皆さんにはまず現場の仕事を経験してもらう予定です。当社グループが運航する550隻の船腹も現場の地道な努力無しには動きませんし、顧客に信頼されるサービスも提供出来ません。
この機会を充分に活用し、多くのことを学んで欲しいと思います。
 海上職の皆さんにとっては、船の上はまさしく現場そのものです。 我々船会社の基盤は船舶の安全運航が第一義であることを肝に銘じ、国際的に通用する技術と知識の習得に努めてください。



さて、オリンピックが開催される直前の2019年は、当社にとっては100周年という記念すべき年であります。 100周年を迎えるにあたり、川崎汽船が更にそこから100年存続できるような会社になるにはどうしたらよいか、まさに今役員、社員が一丸となって議論し、知恵を絞っているところです。 当社が誇れる良いところはさらに伸ばし、悪いところは改善し、より良い会社に作り上げていきたいと思いますので、皆さんにも力を貸して頂きたいと思います。
最後に、ひとつ大事なことをお話します。 それは、法令順守を徹底してくださいということです。 もちろん社会人として守るべき法令については言うまでもありませんが、競争法や腐敗防止法など、企業が守るべき法令や社会規範についても、社員一人一人が常に注意し、たとえ無意識であっても逸脱することがないよう、徹底していく必要があります。 そのことを常に忘れずに、この先仕事に従事してください。
今後の皆さんの大いなる活躍を期待して、私からの挨拶といたします。