2013年04月01日
川崎汽船株式会社
代表取締役社長 朝倉 次郎
入社式社長挨拶
皆さん入社おめでとうございます。
本日より皆さんを川崎汽船の一員として迎えるに際し、役職員を代表してお祝いの言葉を申し上げます。
我が国は過去20年にも亘り深刻なデフレ不況から脱却できずにいましたが、昨年末に発足した安倍新政権が示したデフレ不況克服への強い意志表示により、ようやく経済に明るさが戻ってまいりました。また日本銀行も先月トップが黒田新総裁に替わり、大胆な金融緩和を速やかに実行する姿勢を明確にして政府の政策を金融面で後押ししています。世界金融危機以降過度に昂進した円高も水準訂正の局面を迎えており、自動車、鉄鋼などの日本を代表する製造業の復活が期待される環境が整って来ました。また、新政権はTPPやEUとのEPAなど自由貿易協定にも積極的に取り組んでおり、一時は世界の中で孤立するのではないかとの虞すらあった日本経済にも希望の光が見える様になってまいりました。
また、世界に目を転じますと2008年の金融危機以降、先進国をはじめ世界経済は長らく停滞していましたが、昨年後半から漸く回復の息吹を感じるようになりました。世界最大の経済大国アメリカではシェール革命が進行しており、エネルギー省によると2017年にはアメリカは世界最大の産油国になり、2020年頃には天然ガスの純輸出国に転じる見通しです。一方、中国、インドなどの新興国においても成長のスピードこそ鈍るものの、持続的成長を続けることは間違いなく、これをタイ、インドネシアなどのアセアン諸国が猛烈な勢いで追いかけています。私は昨年タイに、今年はインドネシアに出張し、その急速な成長ぶりを目の当たりにしましたが、まさにアジアの熱気が渦巻いておりました。
皆さんはその様な期待と高揚感に溢れる環境下で川崎汽船に入社されたわけで、大変幸先の良いスタートであるとまずはお祝い申し上げます。然しながら皆さんが選択した外航海運は私が先ほど述べた世界経済に対する認識のようには順風満帆ではありません。むしろ2011年から続く船腹の供給過剰によって大変厳しい事業環境に直面していると言っても過言ではないでしょう。しかし、我々は過去2年に亘り、グループ一丸となってこの難局に立ち向かい、あらゆる困難と戦って来ました。今日、ここに皆さんをお迎えするに当たって、長く曲がりくねった会社再生への道のりの半ばまで辿り着いたということをお知らせしておきたいと思います。そして、目的地までの残された道は皆さんとともに、皆さんの若い力、発想をエネルギーにして一気に駆け抜け、川崎汽船グループの完全復活をステークホルダー、市場に一日も早く示したいと考えています。
ところで東日本大震災から二年が経ちましたが、我々は被災地に対して息の長い支援をすることを誓い、これまでいろいろな取り組みをしてきました。 多くの社員も自らの意志で被災地に赴き、復興のために働いてきましたし、会社もそれを後押しすべくボランティア休暇制度を創設しました。 こうした取り組みは今後も続けていきます。新入社員の皆さんには、昨年度に引き続き、「復興支援研修」として東北地方に行って頂くことを予定しております。皆さんひとりひとりが、一社会人として世の中のために何ができるかを、しっかりと考える機会としていただきたいと思います。
最後に、もうひとつ皆さんにお願いしたいことがあります。社会に貢献できる会社になるためには、社員一人ひとりが広く社会の事象に目を向け、社会のために我々が何をしなければならないかを考えることが重要です。 そのためには長時間を会社の仕事のためだけに費やすのではなく、自分自身のためにしっかりと時間を使ってください。多くのことに広く関心を持ち、アンテナを高く張って知識と情報を外から吸収し、それを自分の頭でしっかり考えることによって皆さんはこれからいくらでも成長出来るのです。 海上職員の皆さんにおかれましては、諸先輩方が築いてこられた国際的に通用する当社の海技力を身につけ、安全運航に努めてください。そして数年後には当社船の基幹職員として世界の海で大活躍されることを期待しています。 陸上職員の皆さんにはこれから研鑽を積み、やがては国内のみならずグローバルマーケットにて活躍されることを期待して私の挨拶といたします。