2017年04月03日
川崎汽船株式会社
代表取締役社長 村上 英三

 

入社式社長挨拶

 

 

皆さん、入社おめでとうございます。

 

本日より皆さんを川崎汽船の一員として迎えるにあたり、役職員を代表して一言ご挨拶申し上げます。

 

これから皆さんが社会人として働くことになる外航海運業は、国際貿易を支える基幹産業です。世界全体の船腹量に占める日本商船隊の割合は10%に及び、日本は有数の海運国として世界経済に貢献しています。その中で当社は世界33カ国に拠点を擁し、連結ベースで約8,100名の社員を擁してグローバルな事業を展開しています。

 

外航海運業は、世界の政治経済動向の影響を大きく受ける一方、垣根のない単一市場において国内外の船社、物流会社と厳しい荒波のなかで競い合っている事業です。近年ではリーマンショック前後の海運好況時における大量の船舶発注により、結果として、貨物輸送の実需を越えて大きなインバランスを引き起こす事に至りました。
2015年の後半から16年とドライバルク、コンテナ船の両主力事業部門の運賃市況は、同時に大きく低迷しました。昨年度下期に海運市況は大底を打ったものの、本格的な回復には今しばらくの時間がかかるものと考えております。

 

そのような中、昨年10月31日に発表をしましたが、当社は、日本郵船株式会社、株式会社商船三井の2社と共に、主軸事業の一つであるコンテナ船事業と海外ターミナル事業を本体事業からスピンオフし統合会社を設立することで、同部門における更なる競争力向上の実現を図ります。新統合会社の運航船腹量は、発注残を含めると150万TEUを超え、世界のトップ3に次ぐ規模のコンテナ船会社となります。
当社からも多くの人々がこのコンテナ新会社の運営に関わり続け、2018年以降新会社が持分法適用会社となり、新生Kラインとしての新体制発足後も、重要な部門の一つとしての位置付けは全く変わりありません。

 

また、コンテナ船事業に加え、当社には先人が自主独立、自由闊達、進取の気性のKラインスピリットをもって築き上げてきた事業の柱がいくつもあります。例えば当社がパイオニアとして日本で初めて建造した自動車専用船や、積載効率を最大化したコロナシリーズの電力炭専用船、環境に配慮し最新設備をいち早く採用した次世代環境対応フラッグシップ“DRIVE GREEN HIGHWAY”の建造などがこれに当ります。今年入社される皆さんにもKラインスピリットを受け継いで頂き、顧客目線をもって何事にも挑戦し続けていく気概を持ちながら業務に取り組んでいただくようお願いしたいと思います。

 

皆さんにもう一つ念頭に置いていただきたいのは、身近な業界の事に留まらず、広く世の中の動きに対して興味を持ち、自らのアンテナを張って情報を収集、分析を行うことで自分なりの意見や仮説を立ててみるという姿勢を持って欲しいということです。例えば先の米国大統領選挙と今後の米国の方針が貿易にもたらす影響や、ITの進化による自動車をはじめとする人を介さない運転の自動化。また、AI技術の進展やビッグデータを活用した第四次産業革命などなど、これらは当社事業への影響はもちろんのこと、社会のあり方や私達個々人の働き方にも大きな変化をもたらす可能性を秘めています。私達がこれらの変化に機敏に対応すべく常に学び続ける姿勢を大切にし、個の力を磨くことで、初めて当社はより一段高い組織力を持つことができます。当社がビジョンとして掲げている「安全で最適なサービスの提供」、「公正な事業活動」、「変革へのあくなきチャレンジ」、「人間性の尊重」を常に念頭に置き、日々の業務に取り組むことで、企業価値すなわち「“K” LINE Value」(ケイラインバリュー)を向上させ、世界で信頼され続ける企業を目指すとともに、皆さんにもその一員として活躍していただきたいと思います。

 

また、海上職の皆さんにとっては、船の上は現場そのものであり、諸先輩方が築き上げてこられた国際的に通用する当社の高い海技力を学び取って頂きたいと思います。安全運航と環境保全は当社が最も大事にする理念であり、顧客ニーズに全力で応える高品質の輸送サービスを提供することが当社の競争力の原動となります。   

 

当社は2年後の2019年に創立100周年を迎えます。川崎汽船の2世紀目を担う皆さんと、今日この日を迎えることは大変喜ばしい限りです。皆さんの今後の活躍と健康を祈念して、私からの挨拶とさせていただきます。