2023年1月4日
川崎汽船株式会社
『新たなステージを迎えて、一人ひとりが自ら道を切り拓き、大きなうねりをおこそう』
当社社長 明珍幸一による2023年年頭挨拶を下記の通りお知らせいたします。
記
川崎汽船グループの皆様、新年あけましておめでとうございます。年末年始は充分に英気を養い、新たな気持ちで迎えられたことと思います。
今期の決算は過去最高益を更新する見通しです。ドライバルクセグメント、エネルギー資源輸送セグメント、自動車船事業を始めとする製品輸送セグメントにおいては、前期に取り組んだ船隊規模適正化や不採算事業の整理など構造改革によるコスト競争力の回復に加えて、各事業部門による収支改善に向けた弛みない積み重ねが実を結びつつあります。上期を中心に市況が高水準で推移したコンテナ船事業においても、3社のベストプラクティスが現出し、統合効果が大きく発揮されました。これらも各事業、各グループ会社で取り組みを進めてきた役職員一人ひとりの並々ならぬ努力によるものであり、改めて感謝申し上げます。
さて当社は昨年5月に、新たな5ヵ年にわたる中期経営計画を公表しました。この中計は役職員一同が将来のあるべき姿につき徹底的に議論を進めた「未来創生プロジェクト」を踏まえて策定したものです。過去と同じ轍を踏まぬよう投資規律を維持するとともに、海運が当社の事業領域の主軸となることを再確認しました。低炭素・脱炭素化社会の実現への貢献と収益成長を両立させるため、当社グループの強みを最も活かせる事業領域をさらに磨き、成長を牽引する役割を担う鉄鋼原料船、自動車船、LNG輸送船の三事業に経営資源を集中的に配分する計画です。
鉄鋼原料船では、Emirates Global Aluminium社、JSW Steel 社と脱炭素化に向けた共同研究・包括協議に関する覚書を締結、JSW Steel社とはインド内航の連続航海長期契約を締結しました。風力を利用する自動カイトシステムのSeawingは、初号機をケープサイズに昨年末に搭載、2号機は2024年竣工予定のLNG燃料焚きケープサイズに搭載予定で、環境対応ニーズの高まりに対応して、高い輸送品質を活かした積極的な営業活動により当社が強みを発揮する日本、中国、韓国市場に加えて成長するアジアおよび中東市場などにおいて中長期契約の上積みによる安定収益拡充に努めていきます。LNG輸送船事業では、カタール国営エネルギー会社Qatar Energy社向けにLNG船12隻の大型長期定期傭船契約・造船契約を締結し、マレーシア国営石油ガス会社であるペトロナスグループ向けLNG船2隻を竣工させるなど拡大するアジア市場の需要の取り込みを着実に進めています。自動車船事業では、船舶大型化による輸送キャパシティ拡充に加えて、顧客密着型営業の強化によりLNG燃料や代替燃料によるゼロエミッション船の投入など燃料転換ニーズを積極的に捉え、運航船舶の環境対応を進めることで、既存完成車メーカーへの輸送基盤の拡充を図ります。また同時に新興BEV(バッテリー式電気自動車)メーカーなど拡大する新たなアジア市場の需要の取り込み、High & Heavy(背高・重量)貨物の着実な増量を進めています。
コンテナ船事業では、今後も経営、オペレーション両面を支える人材供給の継続と株主としてのガバナンスへの関与強化により、中長期的な企業価値向上に向けた事業計画の策定・実行サポートを進めていきます。
昨年6月に当社の完全子会社となった川崎近海汽船とは、グループ各社を挙げた協業を加速化することでシナジーの最大化を図り、当社グループの内航および近海事業をより一層強化していきます。
川崎近海汽船と共同で設立したケイライン・ウインド・サービス(KWS)社を通じた洋上風力発電支援船事業においても、先に発表した五洋建設との覚書締結のように内外のパートナーとの協業によって、国内およびアジアにおける需要に対応し、海運会社としてのノウハウを活用した幅広いサービスの提供に取り組みます。水素やアンモニアなどの新エネルギー輸送需要に向けた研究、準備、そして、昨年末に発表した世界初のフルスケールCCSプロジェクトであるノーザンライツ社向けに2隻の長期傭船を決めた液化CO2輸送など当社グループの持つ経験・知見が最大限生かせる分野での取り組みを推進していきます。
これらの中計達成のために必要な環境・技術、安全・船舶管理、輸送品質を磨くため、人材の確保・育成、そしてデジタル社会への対応など機能強化が何より重要となります。今後の成長市場の一つとして位置付けているアジア地域で機能戦略拠点としてK Marine Ship Management (KMSM)社を新たにシンガポールに設立。高品質で安全安心な船舶管理サービスの提供とともに、環境技術に関する提案など地域に根付いた顧客密着型のサポート体制を強化し、今後は米国、欧州にも展開していきます。基幹システムの“K-IMS”の再構築により安全運航、最適経済運航の支援、顧客利便性の向上、“K”-Assistプロジェクトによる統合操船支援システムや機関プラント支援システムの開発も計画通り進捗しています。
人材活用では、ダイバーシティ(多様性)とインクルージョン(包摂性)の視点から、女性活躍の推進、理系人材の積極採用、キャリア採用の通年化を進めるとともに、すでに導入しているDX研修を始めとした各種スキル研修の充実、促進を積極的に進めていきます。これらの施策により、自社および社会の低炭素・脱炭素化を進め、成長の機会を取り込む体制を整備します。
資本政策は、中計の5ヵ年で4,000〜5,000億円規模の株主還元を実施する計画です。2022年度は、増配に加えて追加還元策として総額1,000億円規模の自己株式取得を公表し実行しています。今後も最適資本構成を常に意識し、資本効率と財務の健全性を確保のうえ、キャッシュフローを踏まえて企業価値向上に必要な投資を行い、自己株式取得も含めた株主還元を積極的に進めていきます。
足元の事業環境に目を向ければ、長期化するロシアによるウクライナ問題やその影響にともなうエネルギー資源価格の高騰、加熱したインフレに対応した金融緩和措置の見直しや急速な金利引き上げ、中国のゼロコロナ政策の行方など経済活動に大きな影響を与えかねないさまざまな不透明でかつ不確実な状況が出現し、需要の先行きを見極めることは大変困難な状況が続きます。このような不確実性の高い現状を過度に悲観的にとらえる必要はありませんが、当社の更なる飛躍のためには、全役職員一人ひとりが鋭く社会情勢の変化を感じ取り、当社グループの強みや海運業として求められるものは何かを常に念頭に置きながら、当社グループならではのサービスや技術を磨き上げて、お客様に選ばれるよう新たな価値を創出するという強い気持ちで臨まなければなりません。社会のインフラを支えるサプライチェーンとしての重要な役目を忘れず、慢心することなく、何が起きてもスピード感と信念をもって対応できるよう、経営基盤の足固めをしっかりと行い、将来の成長に目を向けて一丸となって企業価値向上に取り組んで参りましょう。
今年の干支である『癸卯(みずのと・う)』は、物事の終わりと始まりを意味し、春の間近でつぼみが花開く直前を表す言葉と言われています。新しい年が、当社と役職員の皆様にとって新たな門が開き、飛躍の年となること、そして皆様と皆様のご家族の健康、またすべての船舶の安全運航を祈願して、新年のご挨拶とさせていただきます。