2022年1月4日
川崎汽船株式会社
 

 当社社長 明珍幸一による2022年年頭挨拶を下記の通りお知らせいたします。

 

 

 川崎汽船グループの皆様、新年あけましておめでとうございます。

 

当社を取り巻く環境について
 世界経済は、総じてコロナウイルス感染症による影響の落ち込みから回復を続けています。コロナウイルス感染症の今後の広がり方や収束時期は不確実ですが、ワクチン接種の進展や各国財政支援など景気刺激策もあり、引き続き回復基調を維持、さらに2022年以降の世界経済は、政策効果に支えられた回復から、自律的な回復へとシフトして行くのではと期待しています。一方懸念材料としては、コロナウイルスの変異株による感染再拡大、米中対立など地政学的な要因による貿易構造の変化などが挙げられ、Withコロナの時代に入るなか、実体経済への影響もしっかりモニターしなければなりません。

 

2021年を振り返って
 当社の業績を振り返りますと、2021年度上期は過去最高益を記録しました。持分法適用会社のオーシャン・ネットワーク・エクスプレス(ONE)の貢献が大きいですが、自営事業も大きく改善しました。新型コロナウイルス感染拡大による輸送需要減退で業績に大きな影響を受けたドライバルクと自動車船事業、物流事業などコンテナ船以外の製品物流セグメントの回復も今期の改善を牽引しています。昨年度に船隊の適正化としてドライバルクと自動車船を中心に経済性に劣る船や老齢船約50隻を整理する方針を決め、このうち自動車船については今年度上期までに終了、ドライバルクの船隊適正化も今年度中に前倒しで進めており、来期からのさらなる収益改善効果が期待できます。

 

 エネルギー資源輸送事業ではオフショア支援船事業は市況低迷の継続により、苦戦しましたが、LNG船、電力炭船、VLCC、LPG船などが、中長期の用船契約のもと、順調に稼働し、安定収益に貢献しました。尚、課題であった欧州オフショア支援船事業は将来の経済性に鑑み、今般撤退による構造改革を決定しました。

 

 コンテナ船事業並びに自営4事業部門の業績改善により、今期中に船隊適正化、不採算事業の構造改革を進め、負のレガシー整理に取り組むことで、今年度の復配に目途をつけることが出来ました。

 

2022年の方針と課題(経営計画の見直しについて
 業績の改善により当社は新しいフェーズを迎えています。現在の経営計画では30年度までに自己資本4,000億円以上とする計画でしたが、昨年の9月末時点で4,696億円となり、自己資本比率は4割まで回復しました。過去に数回の構造改革を進めた結果、棄損した自己資本を相当程度修復することができ、今期に残る船隊適正化や不採算事業の構造改革をやり遂げることで、自営事業の競争力の回復を図り、今後はより成長に重点を置いて前に進んでゆかなければなりません。昨年7月から開始した未来創生プロジェクトでは当社の企業価値向上へ向けた検討が進んでいます。さらに当社を強くするためにどの分野に経営資源を投入して行くのか、また、環境対応船の提供など、環境負荷低減や輸送品質の改善に向けて、当社がいかに付加価値を提供して行くのか新たな事業計画に織り込む必要があります。

 

 既存事業の強化と成長戦略を同時に追求するのは容易なことではありませんが、継続的な財務基盤の拡充と安定収益の確保を維持しつつ、リターンとのバランスが取れるリスクを見極めながら、新たな取り組みも進めていきたいと思います。この状況をチャンスと捉えて、成長戦略と規律ある投資を盛り込んだ新たな経営計画を策定し、皆さんと一緒に知恵を絞り更なる飛躍を成し遂げ、企業価値向上につなげたいと思います。

 

 言うまでもなく、安全・安心な高品質サービスは当社のサービスの中核をなすものです。コロナ禍の中でも、サプライチェーンの重要な一翼を担う当社の強みを徹底して行くことで、お客様に選ばれ続けられるよう、海運のプロとして全役職員で取り組んで行きましょう。

 

環境対応について
 サステナビリティへの取り組み、特に環境対応については、成長機会ととらえ、さらに力を入れて行く必要があります。すでに多くのお客様が、バリューチェーンの再構築も視野に、製品のライフサイクル全体でのGHG排出削減を目指しています。製造過程だけでなく、素材や部材、完成品の輸送過程で排出されるGHG削減を実現するために、私たちはより高い付加価値を持つ最適なソリューションをお客様に提案しなければなりません。カーボンニュートラルの実現に向けたエネルギー構造の変化もまた、中長期的な「機会」をもたらします。洋上風力発電支援船を始めとする再生可能エネルギーの開発に必要な物資の輸送、あるいは水素やアンモニアのような新たなエネルギーや回収したCO2の輸送需要などが拡大することが予想されるなか、サプライチェーンの構築とその輸送を担うサービスの提供は、当社にとって大きな成長機会となります。

 

 昨年11月には環境対策の長期指針『“K”LINE環境ビジョン2050』の一部を見直し、従前、IMOと同じ目標であった2050年までに排出量半減という目標に替えて、新たに2050年までに『GHG排出ネットゼロに挑戦』を掲げました。具体的な取り組みとして、既に竣工済みのLNG燃料焚き自動車船1隻に加えて、8隻を新造整備、LNG燃料焚きケープサイズバルカーを1隻、LPG焚きLPG運搬船1隻の発注を決めており、さらにゼロエミッション船を2020年代後半までのできるだけ早い段階で導入することを目指しています。GHG削減戦略委員会において、次世代代替燃料、安全環境支援技術の両プロジェクトはさらに加速します。

 

 デジタル化の加速が進み、価値観が変容するなか、当社は陸上業務の効率化のみならず、海上従業員の作業負担軽減、そして安全運航を支援する取り組みを進めています。先に発表したAIを活用した機関プラントの運転支援システム、および見張り・操船支援システムの開発、さらにはAI技術を駆使した船舶データ解析技術の向上など、デジタル技術を活用して、当社のコアバリューである安全・環境・品質を磨き上げ、デジタルトランスフォーメーション(DX)を推進して行きます。

 

 最後に川崎汽船グループの皆様におかれましては、国内のみならず海外においても様々な制約・制限を受ける生活を余儀なくされる困難な状況下でも日々の業務と感染対策を両立させて取り組んでもらいました。海上職員の方についても、乗船、下船の交代に多大な困難を伴う中、船を1日たりとも止めないという強い決意の下、安全運航に取り組んでもらいました。改めて感謝申し上げたいと思います。

 

 新しい年が、当社グループと役職員の皆さんにとって新たな飛躍の年となること、そして、皆様と皆様のご家族の健康、すべての船舶の安全運航を祈願して新年のご挨拶とさせていただきます。