2020年1月6日
川崎汽船株式会社

 

本日行われた年賀式での当社社長 明珍幸一による「年頭所感」をお知らせします。
 


 

 川崎汽船グループの皆様、新年あけましておめでとうございます。
 2020年代の幕開けとなる最初の1年を迎えました。今年はまた、当社が新しい中期経営計画を始動する年でもあります。新たなスタートラインに立つにあたって、ひと言ご挨拶申し上げます。

 

2019年を振り返って
 昨年は当社が創立100年という大きな節目を迎え、日本が令和の新時代に入った年でした。世界情勢を振り返ると、米国は比較的堅調な経済を維持した一方、自国第一主義の抬頭により多国間の自由貿易は影響を受け、米中間では貿易摩擦の長期化に加えて非関税分野での対立なども懸念されています。中東の地政学的緊張の高まりや、英国のEU離脱問題などもあり、不透明感に覆われた一年でした。
 一方、当社では黒字転換を2019年度の必達目標と掲げ、グループ会社一丸となり取り組んで来ました。期初に掲げた3つの課題、すなわち前期末に村上前社長が断行した構造改革による船隊のコスト競争力回復、自動車船事業の収益力改善、そしてOCEAN NETWORK EXPRESS(ONE)の業績立て直しに着実に取り組み、中長期契約に基づく収益を積み上げ、販管費削減にも努めた結果、上期においては計画を超える進捗を得ることができました。これも偏に役職員の皆さんのたゆまぬ努力によるものだと感謝しています。

 

新しいスタートライン
 2017年度からの3ヵ年の中期経営計画では、想定以上に落ち込んだ市況に呼応した構造改革の断行、またONEの初年度の混乱に伴う一時的な収支悪化などにより財務指標は残念ながら目標を下回りました。しかしながら、事業ポートフォリオの転換を進め、事業リスク管理体制の導入など、次のステップに向けた事業基盤の整備を着実に進めることができました。今期はここまで計画通り進捗していますが、残る第4四半期も気を引き締め、通期の黒字化達成を確かなものとすべく、全員一丸となり取り組んで行きましょう。
 今年4月、当社は新たな中期経営計画を始動します。具体的な内容は議論を重ねているところですが、お客様と向き合い、その要望に応えた高い品質のサービスを提供するという基本に何ら変わりはありません。当社グループが運営するドライバルク、エネルギー資源輸送、自動車船、物流・内航/近海の中核4事業においては、当社の強みをさらに磨き、競争力を強化していきます。初期の混乱を乗り越えたONEは、力を合わせてベストプラクティスによるシナジー効果を高めていく段階にあり、一層の収支改善を期待しています。
 新しいスタートラインに立つにあたって、高いアンテナを張り、変化への備えと柔軟性を持った対応が重要になります。市況に変動はつきものです。中長期の視点では、自動車産業では100年に1度と言われる変革期を迎えており、エネルギー産業においても低炭素化・脱炭素化の流れが進みつつあります。従来からのやり方を絶えず見直し、本質を見極め、個人の力を磨き行動することで、確実な前進に繋がると信じています。

 

選ばれ続ける企業に向けて
 当社グループがさらに取り組みを強化するドライバルク、エネルギー資源輸送、自動車船、物流・内航/近海の中核4事業では、ひとりひとりのお客様の顔がしっかりと見えるビジネスが中心となります。いずれも内外のインフラを牽引し、各業界を支えるお客様ばかりです。そのお客様と向き合ってニーズを汲み取り、それに応え、我々ならではの価値とサービスを提供することは、当社が選ばれ続ける企業となるための重要なテーマです。
 その中核となるのは、安全、環境、品質です。これらは当社が100年の歴史のなかで培ってきた強みであるとともに、サステナビリティ(持続可能性)が重視されるこれからの社会において、その重要性はより増すものと考えています。様々な先進技術の研究と開発を進め、またAIやIoTなども導入、活用し、お客様の要望に応えることで、当社の強みである安全、環境、品質をハード・ソフトの両面で一層強化していきたいと考えています。
 安全は、海運を中心とした総合物流企業である当社グループにとって事業の根幹をなすものです。お客様、また社会からの信頼の基盤となる「安全」への地道な取り組みを重ねるとともに、最新技術も活用して世界トップクラスの安全運航を維持することが、「安全で最適なサービス」をビジョンに掲げる我々の使命だと考えています。当社が川崎重工業と共同で開発したK-IMSは、30分おきに最大2000項目の運航データの収集、監視、分析を行える統合船舶運航・性能管理システムですが、既に当社船約170隻に搭載しており、今後最適航路の選択、重大事故の発生防止や故障予知に役立てていきます。
 そして環境の保全は、自然を利用して事業を営む我々にとって正面から取り組まなければならないテーマです。いよいよ今年から始まったSOx規制強化への対応は、お客様の貨物を預かる船社として、「船を絶対に止めない」という大方針のもと1隻1隻の乗組員と陸上関係者が綿密な準備を進めてきました。この先にはGHG(温室効果ガス)の削減というさらに大きな課題があります。当社は『環境ビジョン2050』に掲げている通り、昨年末にはLNG焚き自動車船の建造を発表、また中部地区での合弁事業の立ち上げに加えて、新たにシェルと組み、シンガポールでのLNG燃料供給事業への参画を発表しました。ただLNG燃料への転換だけでは2030年の目標は達成できませんので、昨年発表した風力を利用する自動カイトなど「LNG+(プラス)」の新技術導入を進めます。さらに2050年目標の達成に向け、先に発表した「HySTRA」(*)への参画による液化水素輸送事業への取り組みに加えて、アンモニア、メタネーションといった代替燃料の研究など、環境負荷低減に向けた取り組みも加速させていきます。
 これまで取り組んで来た経営管理高度化については、過去10数年に亘る海運市況や造船価格の実績データに基づき、事業部門ごとのリスク量の計測や投資ガイドラインを設定しています。リスク量やリスクに見合ったリターンを定量的に把握のうえ、今後は当社の顧客戦略に合致した投資を行っていきます。

 

 2020年の干支は「庚子(かのえ・ね)」で、これまでのやり方を継承しつつ、新たな形に変化する状態を表すそうです。黒字化への一歩を踏み出したいま、安全、環境、品質の3点にさらに磨きをかけ、お客様からサポートを頂くことで、安定的な利益を積み上げ、次の100年に向けて新たなスタートを切るべく、グループ役職員一同、一丸となって着実に歩みを進めていきましょう。

 

 最後になりますが、川崎汽船グループの皆さんと、そのご家族のご健勝とご多幸、またすべての船舶の安全運航を祈念して、私からの新年のあいさつといたします。

 

(*)HySTRA:技術研究組合CO2フリー水素サプライチェーン推進機構
 http://www.hystra.or.jp/