2025年6月17日 
川崎汽船株式会社
Yinson Production

 

 川崎汽船株式会社(以下、「川崎汽船」)のロンドンを拠点とする子会社“K” LINE ENERGY SHIPPING (UK) LIMITED(以下、「KLES」)と海洋サービス事業者であるYinson Production(以下、「Yinson」注1)は、浮体式液化CO2貯蔵・圧入ユニット(FSIU(注2))および液化CO2輸送船を共同開発し、主に欧州域で開発が進められている二酸化炭素回収貯留(CCS)プロジェクトに関し共同で案件を推進していくことを目的に、覚書(以下、「本覚書」)を締結しました。

 

 CCSプロジェクトにおいて、陸上CO2受入基地の用地確保が難しい場合や、受入基地から貯留地迄の距離が長くパイプラインの延長が必要な場合等に、洋上にて液化CO2を貯蔵・圧入することが可能であるFSIUは有望な選択肢であり、Yinsonが参画するノルウェーの“Havstjerne”CCSプロジェクトをはじめ、複数のプロジェクトにおいて導入検討が進められています。Yinson傘下のStella Maris CCS社は、‟Havstjerune”CCSプロジェクト権益の40%を保有しています。
 Yinsonは、浮体式石油・ガス生産貯蔵積出設備(FPSO(注3))および浮体式石油・ガス貯蔵積出設備(FSO(注4))を運営しており、オフショアエネルギー分野におけるエンジニアリング、設計、運用において幅広い専門知識を有しています。
 川崎汽船グループは、液化ガス輸送船の保有、運航および管理において長い歴史と多様な実績を有しており、2024年以降、KLESは世界初の本格的なCCSプロジェクトに従事する液化CO2輸送船2隻の船舶管理を行っています。
 2018年以降、川崎汽船とYinsonはFPSO事業で協業を開始し、現在は2隻を共同保有しています。FPSOとFSIUはどちらも浮体式で共通点が多く、それぞれの豊富な実績と知見を活用し、共同で欧州顧客に対しFSIUを用いた液化CO2輸送を提案していくことで合意に至りました。陸上で回収されたCO2を液化CO2輸送船でFSIUまで輸送し、FSIUから海底の地下貯留層に圧入します。CCSプロジェクトにおけるバリューチェーンのうち液化CO2の輸送と圧入を一体化してソリューションを提供することで、脱炭素化社会の実現への大きな貢献を目指します。

 

 Yinson Lars Gunnar Vogt最高技術責任者のコメント
「Kラインとの今回の協業は、長年にわたる関係を基盤とし、オフショアシステムに関する深い知識を補完し合うものです。当社のFPSOおよびオフショアエンジニアリングの専門知識と、Kラインの実績あるCO2輸送能力を組み合わせることで、大規模な炭素輸送・貯留を可能にする革新的なサービスの開発を目指します。これにより、産業界の排出事業者が脱炭素化目標の達成を支援するワンストップソリューションを提供します。CCS分野の成長を支援し、世界的な脱炭素化に向けた取り組みを加速させていくことを楽しみにしています。」

 

 川崎汽船株式会社 大西 慶 執行役員のコメント
「Yinson Production社との協業は、FPSO事業を通じて築き上げた強固な基盤の上に成り立つものであり、拡張性の高いCCSソリューションの実現に向けた両社の共通のコミットメントを示すものです。Yinson Production社のオフショアエンジニアリングの専門知識と当社のCO2輸送の経験を組み合わせることで、より幅広いCO2貯留サイトに適したオフショア輸送能力とカスタマイズされた輸送ソリューションを開発します。これは、CCSバリューチェーンにおける従来の港湾間輸送モデルを補完し、排出事業者が脱炭素化目標を達成するための柔軟性を高めることにつながります。」

 

 川崎汽船グループは、環境に係る長期指針「“K” LINE環境ビジョン 2050」に基づき、自社の低・脱炭素化および社会の低・脱炭素化支援に向けた様々な取り組みを推進しています。CCS事業を積極的に推し進め、持続可能な社会の実現と企業価値の向上を目指します。

 

(注1)Yinsonについて
 Yinsonは、FPSOを世界規模で保有・運営するリーディングカンパニーです。現在10隻のFPSOを保有し、2048年までに190億ドルを超える受注残を誇り、世界10か国に拠点を展開しています。

 

(注2)Floating Storage and Injection Unitの略。洋上で液化CO2を貯蔵・圧入する設備。液化CO2を海底の地下貯留層に圧入し、長期貯留する。

 

(注3)Floating Production, Storage and Offloadingの略。洋上で原油・ガスを生産し、生産した原油をタンクに貯蔵し、直接タンカーへ積み出しを行う設備。

 

(注4)Floating Storage and Offloadingの略。洋上で原油を貯蔵し、直接タンカーへ積み出しを行う設備。FPSOと異なり、生産設備は持たない。


【FSIUと液化CO2輸送船のイメージ】

FSIUと液化CO2輸送船のイメージ