2022年4月19日
川崎汽船株式会社
川崎汽船株式会社 (以下、「当社」) は株式会社名村造船所と大洋電機株式会社 (以下、「大洋電機」) と共同で20万トン型ケープサイズバルクキャリア (以下、「ケープ」) を対象に、また株式会社新来島サノヤス造船と大洋電機と共同で9万トン型ポストパナマックスバルクキャリア (以下、「ポストパナマックス」) を対象にLNG燃料焚きバッテリー搭載省エネ型バルクキャリアの概念設計を確立し、日本海事協会から、設計基本承認 (AIP:Approval in Principle) (注1) を取得しました。
設計にあたり、低炭素燃料であるLNGを主燃料として想定し、永久磁石方式の軸発電装置 (以下、「軸発電」注2) 技術を採用、および幅広い分野で活用が進んでいるリチウムイオンバッテリー (以下、「バッテリー」) を採用することによって、GHG削減に寄与する省エネ船型を実現しました。また、バッテリーを船内電力のプラットフォームとして活用することで、将来的にはグリーンエネルギーの取り込みと省エネ技術を掛け合わせて、更なるGHG削減を目指します。
【AIP取得した技術特徴とその効果】
- LNG燃料を主燃料として採用
● 従来の重油比で、25~30%のGHGエミッションを削減します。
- 軸発電の採用
● 軸発電で発電することで、従来のDual Fuel発電機 (以下、「G/E」) での発電よりも燃費効率を改善します。 (軸発電とバッテリーの併用によるGHG削減効果は、軸発電・バッテリー未搭載のLNG燃料焚き船型比で約2.5~3.0%を見込みます)
● 大洋航海中のG/Eの稼働が不要となることで、G/Eのメンテナンス費用を大幅に削減しつつ、船員の保守作業負荷低減に寄与します。
● 永久磁石式軸発電を採用することで従来式軸発電より効率が約10%改善します。
- バッテリーの採用
● 小容量バッテリー (航海中のGHGエミッション削減)
充放電速度に優れる小容量バッテリーを採用し、これにより船内電力のピーク時の補助電力として使用します。また余剰電力の充電先として活用します。
● 大容量バッテリー (荷役時のGHGエミッション削減)
ポストパナマックスでは、荷役時にG/Eの代替として大容量バッテリーを採用することで荷役時のGHGエミッションを削減します。(G/Eの搭載台数を1台削減可能) 尚、荷役時の消費電力量が大きく、バッテリーが大型化するケープでは陸電供給 (注3) が可能な仕様にして、荷役時のGHGエミッションを削減します。
【将来の次世代型バルクキャリアイメージ図】
AIPを取得したGHG削減のための各設備に加え、各種技術をオプションとして搭載することにより、更なるGHG削減を目指します。
当社は昨年11月に環境に関わる長期指針『“K”LINE環境ビジョン2050』 (注4) の一部を見直し新たな目標として「GHG排出ネットゼロに挑戦する」ことを定めました。本取り組みも2050年のゴールに繋がる具体的なアクションの一つとして位置付けています。
船舶から排出される温室効果ガスが環境に与える影響に対する関心が年々高まっており、当社は長期指針『“K”LINE環境ビジョン2050』に基づき、エネルギー効率に優れた船を建造・運航することでより環境負荷の少ない海上輸送を推進し、地球環境保全に貢献して参ります。
(注1) 設計基本承認とは新規技術や既存規則が詳細に規定されていない分野において、認証機関が基本設計を審査し技術要件の基準を満たすと承認されたことを示すものです。
(注2) 軸発電は、プロペラ軸の回転を利用して発電するシステムです。
(注3) 停泊時に船舶の発電機エンジンを停止し、陸上より必要量の電力を供給するシステム。
(注4) 2021 年 11 月 4 日発表:2050 年 GHG 排出ネットゼロへの挑戦
~「“K”LINE 環境ビジョン 2050 」2050 年目標の改定について~
https://www.kline.co.jp/ja/news/ir/auto_20211102423687/pdfFile.pdf