2024年9月18日
川崎汽船株式会社
株式会社商船三井
日本シップヤード株式会社
日本郵船株式会社
三井物産株式会社
三菱商事株式会社
三菱造船株式会社

 

◆ 国際間大規模液化CO2海上輸送の実現に向けて、標準化検討を進める低圧液化CO2船のAiPを取得
◆ 日本政府が進める将来のCCS事業への適用をはじめ、液化CO2船の早期市場投入に向け準備を加速

 

 川崎汽船株式会社(社長:明珍 幸一、本社:東京都千代田区)、株式会社商船三井(社長:橋本 剛、本社:東京都港区)、今治造船株式会社とジャパン マリンユナイテッド株式会社の共同営業設計会社である日本シップヤード株式会社(社長:檜垣 清志、本社:東京都千代田区)、日本郵船株式会社(社長:曽我 貴也、本社:東京都千代田区)、三井物産株式会社(社長:堀 健一、本社:東京都千代田区)、三菱商事株式会社(社長:中西 勝也、本社:東京都千代田区、)、三菱重工グループの三菱造船株式会社(社長:上田 伸、本社:東京都港区)は、低圧仕様の液化CO2輸送船(LCO2輸送船)の2船型について、アメリカ船級協会(ABS、本部:テキサス州)および一般財団法人日本海事協会(NK、本部:東京都千代田区)から基本設計承認(Approval in Principle:AiP)(注1)を取得しました。
授与式は、天然ガス・LNG・水素など世界のエネルギー環境問題に関する大規模国際会議「ガステック2024(Gastech 2024)」の会場となったアメリカ・ヒューストンのGeorge R. Brown Convention Center で9月17日に行われました。
 国内で回収したCO2を貯留地に向けて輸送する各CCS(Carbon dioxide Capture and Storage)プロジェクトにおいて、今後海上輸送の手段としてLCO2輸送船の需要拡大が見込まれます。日本シップヤード、三井物産、三菱商事、三菱造船では、日本国内での安定的なLCO2輸送船の建造・供給、CCSバリューチェーンの実現と経済性向上を目的に、各プロジェクトを横断したLCO2輸送船の標準化や建造サプライチェーンの確立に取組んできました。今回、国内の主要船社である川崎汽船、商船三井、日本郵船を加え、AiPの取得に至りました。
AiPを取得したLCO2輸送船は、長距離大量輸送を見据えた低圧仕様の5万㎥級および2万3,000㎥級の2船型で、貨物タンクの鋼材として従来のニッケル鋼に代わる適切なタンク鋼材の適用を前提としているほか、その製造工程の確立において重要な課題となる溶接後熱処理(PWHT)(注3)をECA(注4)と呼ばれるエンジニアリング的アプローチにて省略するプロセスを含みます。


川崎汽船は、環境に関わる長期指針「“K”LINE環境ビジョン 2050」に基づき、自社の低・脱炭素化および社会の低・脱炭素化支援に向けたさまざまな取り組みを推進しています。また、CCSの分野において、当社は外航海運会社の中で唯一、独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構(JOGMEC)が令和6年度「先進的CCS事業(注5)」として選定したCO2海外貯留プロジェクトに参加しています。加えて、世界初の本格的なCO2回収貯留バリューチェーン事業であるNorthern Lightsプロジェクト向け液化CO2輸送を本年度から開始予定です。当社は液化CO2海上輸送を通し、CCSバリューチェーン構築に貢献してまいります。

 

【ガステック2024で行われたAiP授与式】

ガステック2024で行われたAiP授与式の様子
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(左から)
三井物産 執行役員 白井卓哉
川崎汽船 常務執行役員 金森聡
商船三井 専務執行役員 梅村尚
三菱造船 取締役社長 CEO 上田伸
日本シップヤード 代表取締役社長 檜垣清志
日本海事協会 副会長 菅勇人
日本郵船 執行役員 横山勉
三菱商事 本部長 仲庭幹人
 
ガステック2024で行われたAiP授与式の様子
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(左から7人目)
ABS  Senior Vice President and Chief Technology Officer, Mr. Patrick J. Ryan

(注1)    基本設計承認(Approval in Principle:AiP)とは、認証機関が基本設計を審査し、技術要件や安全性の基準を満足すると承認されたことを示すものです。今回は液化ガスをばら積で輸送する船舶に適用されるIGCコード(注2)および各船級(ABS,NK)規則に基づき、審査が実施されました。

 

(注2)    IGCコード(正式名称:International Code for the Construction and Equipment of Ships Carrying Liquefied Gases in Bulk)とは、LCO2やLNGなどの液化ガスをばら積貨物として輸送する船舶の安全要件が規定された国際規則のことです。

 

(注3)    溶接後熱処理(Post Welding Heat Treatment : PWHT)とは、溶接施工後に構造物を再加熱し、一定温度で一定時間保持することで溶接施工時に発生した残留応力を低減し、溶接継手部の品質を改善する効果を狙うものです。このプロセスは構造物を専用の炉に入れて行われることが一般的であり、大型構造物を対象とする場合、炉のサイズとの関係で製品製造のボトルネックになることがあります。

 

(注4)    Engineering Critical Assessment : ECAとは、溶接構造物の安全性を評価する手法で、溶接部に含まれる微小な初期欠陥と予想される応力履歴を用いて、材料および溶接の特性から、構造物の使用年数中に溶接継手に重大な品質上の問題が発生しないこと確認するものです。

 

(注5)JOGMEC令和6年度「先進的CCS事業に係る設計作業等」公募においてマレーシア サラワク州におけるCCS事業に係る設計作業等を受託
 https://www.kline.co.jp/ja/news/carbon-neutral/carbon-neutral-20240913.html