• 企業情報
  • 事業紹介
  • 投資家情報
  • CSR
  • ニュースリリース
  • "K"LINE広場
  • 採用情報

トップ > “K” LINE広場 > もっと知りたい!川崎汽船 > カワサキくんの乗船研修記 > 走るパーキング - 自動車専用船

走るパーキング - 自動車専用船


走るパーキング - 自動車専用船

カレンダーの赤マル

 壁に掛かったカレンダーが、船の動きにあわせて小さく揺れています。いよいよ明日、カワサキ君を乗せた“まりんはいうぇい”は最初の寄港地北米東岸のジャクソンビル港へ到着します。小さく揺れているカレンダーの日付には、名古屋を出港以来、毎日つけている赤マルが全部で25個並んでいます。ひとつひとつの赤マルには様々な思い出があります。カワサキ君は“まりんはいうぇい”で、陸上では決して得ることのできない貴重な体験をしました。船の近道やいろいろなトン数の話などなど・・・・。これまでの体験が走馬灯のように、次から次へと頭の中によみがえって きます。今のカワサキ君の正直な気持ちは「もっと船に乗っていたい!」でした。しかし、そんな自分勝手なことばかりを言っていられません。東京では、これまでに溜まった仕事が机の上に山積みされています。そして、全く船音痴のカワサキ君を、親切に手取り足取り指導して下さった乗組員の方々にもこれ以上迷惑はかけられません。 カワサキ君は午前中いっぱいかけて、やっと部屋の掃除や下船の荷作りを終えました。

写真

【1】積み付けプラン

車がぎっしりの車輌甲板

会話:カワサキ君×チョッサー(1等航海士)

午後、「丁度チョッサー(1等航海士)が揚げ荷前のホールドチェックに廻るから付いて行ったら良いよ、チョッサーは本船に乗船前に“自動車船海技チーム”で当社が運航する60隻余りのPCC(Pure Car Carrier:自動車専用船)の積み付けを担当していたから面白い話も聞けると思うよ。」という船長の言葉に、カワサキ君はチョッサーに付いて垂直梯子を何段も降りて、やっと一番下の車輌甲板にたどりつきました。チョッサーがカワサキ君ににやにやして聞きます。

チョッサー

「カワサキ君の身長はどのくらいかな?」

カワサキ君

「175cmです」

チョッサー

「それならこの車輌甲板を全速力で走っても頭をぶつける事はないね。この車輌甲板は高さが185cmあるんだよ、昔の船は165cmとか170cmで背の高い人は首を曲げて猫背にして歩いたものなのだ。ところがここ数年前から、車高が170cm前後のRV車の輸出が多くなって、一定幅の間隔(8cm~10cm)をとったら170cmデッキには積めないので、最近の自動車専用船では最低でもデッキの高さを185cmにしている船が多いんだよ。」

整然と並べられた完成車、カワサキ君もよく街の駐車場に車を入れる事はあってもこんなにきっちり、無駄なく積んでいるのを見たことはありません。そこでチョッサーに質問しました。

カワサキ君

「全部で何台の乗用車を積んでいるのですか。予定の車両を積み切れなくなる事はありませんか。」

チョッサー

「本船の積載能力は6,000RTなんだけれど、RTというのは長さ4.125m、幅1.55mの乗用車のモデル名で積み付け台数を表す単位なんだ。つまり1RTの乗用車を、前後30cm、左右10cmの間隔をとって6,000台積めるという事なんだ。ということは、本船の有効車輌積載面積は(4.125+0.3)x(1.55+0.1)x 6,000=43,800㎡になる。つまり、公式サッカーグランド(縦105m、横68m:面積7,140m2)の6面分以上に相当する広さの駐車場に、びっしりと乗用車を積むことと同じになる。もっとも、今の乗用車は全体的に大きくなっているから、平均して長さ4.5m、幅1.7mとすると、1台当たりが4.5×1.74/4.15×1.55で1.25RT位かな。そうすると本船で4800台の乗用車を積む事が出来ることになるんだ。
今回の航海はエキスカベーター等の大型の建設用機械を積載しているので、7デッキのデッキパネル2枚をリフトアップしているから実際には4,752台の積載になっている。この積み付けプラン(ストウェージ・プラン)は東京の本社で作成していて、私も3年間やっていたんだ。パソコンが普及する前の初期の頃は、100分の1の各デッキ毎の図面に、各乗用車のサイズを同様に100分の1の形に切り取った“型紙”を並べていって、何台積めるのか検討をしていたんだ。しかし、今は、各船の図面をコンピューターで入力し、積載車両のモデルも自動的に入力して、積み付けプランの作成をパソコンの画面で手早く出来るSPS(Stowage Planning System)を開発したんだ。
本船“まりんはいうぇい”の貨物艙は12デッキあり全部で41区画に分けられているんだ。実際のストウェージ・プランでは、サイズの違う各車両を前後30cm、左右10cmの間隔で、余すスペースなく効率良く積むのだけれども、現場でもし1区画に予定より1台ずつ積み台数が減ったら全部で41台が入らなくなってしまう。接触等のダメージ発生の恐れを気にして、ゆったりと積み付けては折角のスペースが勿体無い、採算にも影響するしね。」

カワサキ君はスターンランプ(車輌積載口)付近に、まだ10台ほどのスペースがあったことに気がついたのですが、これは10個の区画にはそれぞれ予定より1台ずつ多く積載したのだと納得しあえて質問を控えました。

積み付けプラン(12デッキ) 積み付けプラン(12デッキ)

なんでも来いのPCTC

カワサキ君はチョッサーに付いて最下層の1デッキから狭い垂直梯子を登り、6デッキに出てきました。この垂直梯子の入口には蓋がつけられています、この蓋は万が一火災などの時には火はもとより、煙が他の区画に廻らないように航海中は閉めていくのです。また、車輌甲板の41の区画は、5つの防火区画に分かれていて、仮に一つの区画で火災が起こっても、他の区画には火災が延焼しないようになっているそうです。

さて6デッキの後部スターンランプ付近に辿り着いたカワサキ君は、大型車輌を目にしました、よく工事現場で見かけるあれです。

カワサキ君

「チョッサー、あんなものまで積むのですか、乗用車だけかと思いました。」

チョッサー

「あれはエキスカベーターと言って、高さが399cm重さが35トンもある重車輌なんだ。本船の6デッキは、通常では高さが240cmしかないから、その上層の7デッキのパネルを2枚持ち上げて、その部分を高さ440cmに調整してあの貨物を積載したのだよ。7デッキは元々210cmのデッキだから、200cm迄の高さの乗用車の積載場所で、2枚しかパネルを上げなかったのは7デッキの他のスペースを有効に使うためなんだよ、勿論パネルを持ち上げた7デッキの2枚分約40台のスペースが積むことの出来ない無駄なスペースになってしまうが致し方ないね。」

カワサキ君

「あんな重車輌を積んだらキャタピラーで、デッキに損傷を与えるのではないのですか。それに時化の時に動き出すことも?それにこの間キャプテンから聞いた復元性も小さくなるんじゃないのでしょうか?」

チョッサーは、スターンランプ入り口に置かれている古いホーサー(係留用ロープ)を指差して

チョッサー

「積み込み時はデッキの損傷を防ぐ為に、キャタピラーの下にホーサーや板を敷きながらデッキ面を傷つけないようにゆっくり動かして積み込むのだよ。それに固縛金具も大型車用のSWL(使用安全強度)1.5トンの物を使って、その車両の重量に見合った充分な本数を取っている。大型車輌は余り船体の重心を高くしないように、また、他の乗用車積載デッキよりもデッキ強度を大きく設計している乗り込みデッキ(スターンランプの架かるデッキ)に積載するのが常だね。最近建造されている大型車積載可能の自動車専用船PCCは、PCTCとも言われ、PURE CAR /TRUCK CARRIERの略で、トラック、バスは元よりブルドーザーやエキスカベーターの類まで積載する事が出来るんだよ。」

(注:当社のPCTCでは、一部上部デッキに建設機械を積載する船がありますが、復元性の計算をして、安全に運航が出来るように、重心を下げるべきバラストの調整、追加補油等万全を期しています。)

チョッサー

「ところでカワサキ君、名古屋でスターンランプから乗船した時に何か数字が目に付かなかったかい?」

カワサキ君

「そういえばSWL○○トンというのと、H=240、265,440ですね、なにを意味する数字かわかりませんでした。」

チョッサー

「先に言ったSWL100トン、つまりこのスターンランプには100トンの荷重の車両まで走行可能で、あとは6デッキの高さが、先に言った7デッキをリフトアップする事で、265cmにも440cmにもなるという事だね」

なにからなにまで新しい事のチョッサーの説明に、カワサキ君は息を呑むばかりでした。

【2】ダメージフリーの揚荷作業

揚荷前のミーティング

チョッサーは今から乗組員を集めて、ブリッジ後ろの事務室で揚荷前のミーティングを行なうところなので、カワサキ君も聞かせてもらうことにしました。始めはジャクソンビルの揚荷の積載場所、他貨との警戒 (他港揚げの貨物との区分けには、セパレーションテープと呼ばれるテープを施す事により、揚げ違いを防いでいます)、走行ルート、使用するランプウェーに至るまで、ダメージを防止するための注意事項の説明をされました。ミーティングが終わった後、カワサキ君はチョッサーに質問しました。

カワサキ君

「先ほど行ったスターンランプだけで荷役するのではないのですね?」

チョッサー

「揚荷するランプがスターンランプとサイドランプの2か所使用できれば、それだけ荷役時間が短縮できるんだ。ジャクソンビルのような潮差のある港では、低潮時に6デッキにランプウエイをセットしても、高潮時には角度が付きすぎて揚げ荷の車輌にダメージ(鼻打ち、尻打ち等)を与える可能性がある。だから頃合を見て5デッキに架け替えなければならない。私の計算では、4時間後には高潮になり潮差が92cmになる。1時間に280台(約400トン)の車両が揚がるとして4時間では1,600トン=33cm今より船体が浮上するから、岸壁からの高さが1.25m高くなるのは荷役が始まって4時間後だね。1,600台の車輌を揚げるということは、それだけで貨物が約2,240トン(1.4トン/台として)陸揚げされるから本船の喫水も47cm浅くなる。それと高潮時がかさなって、6デッキの岸壁からの高さが高くなるので荷役開始して4時間後には、5デッキに架け替えなければならないんだよ。」

カワサキ君

「そうですか。そのようなことも考慮するのですね。さっき艙内を見たのですが、日本で4800台近い乗用車がぎりぎりまで積み込まれて、1台のダメージもなかったという事を聞いて、びっくりしました」

チョッサー

「そうだよ、カワサキ君。積んだときと全く同じ状態で揚げ切ることが我々の使命なんだよ。そのためには、車輌のダメージは勿論、揚違いや揚残し等は絶対にやってはいけないことなんだ。だから入港前には、色々な項目ごとに注意すべき事項を乗組員に周知して、安全な荷役に備えるのだよ。ジャクソンビルに入港したら今度は、陸上要員とのミーティングを持つよ。」

カワサキ君

「陸上の方たちともですか?」

チョッサー

「その通りだ。似たような船が毎回来ているから慣れていると思ったら大間違い。同じ本船でも先航と比べてリフトアップしている場所も違うし、ジャクソンビル貨の積載場所も毎回違うので、当然走行ルートも異なってくる。我々はコーンキャップを置いたり、バンのような背の高い車両が走行路をぐるぐる廻っている間に、背の低いデッキに進入してぶつかりルーフが損傷しないようにバリヤ・カーテンと言って進入禁止の垂れ幕を施したりして、船陸一体となってダメージ防止に努めているんだ。」

カワサキ君

「乗組員のダメージ防止資材の適切な配置は、安全かつ効率荷役に一役かっているのですね。」

短い停泊時間
チョッサー

「その通りだよ、ランプウエイの付近で本船乗組員が見張りをしているだろう。車両が損傷なく揚荷されているのか通過車両のチェック。また、ランプの角度のチェックや、乗用車が鼻打ちしないように岸壁とランプの接触面に置いてあるゴム製のフェンダーのチェックをしたり、係留索のチェックもしている。最近では、テロ対策で不審者の船内への侵入にも厳重に注意しているんだよ。」

カワサキ君

「他の乗組員は皆艙内ですか。」

チョッサー

「そうだ。ここジャクソンビルでは4班体制で荷役を行っているから、他の乗組員は最初の車両を積載場所から引き出す際に、隣同士の車両が接触しないように監視し、またコーンキャップで走行経路の確立や、取り外されてデッキ上に散らばったクラスパー(固縛金具)を取り除く事もやっている。全精力をかけて荷役に従事しているって訳さ。今回の揚荷車両は1,600台だから6時間もすれば荷役は終わるよ。」

カワサキ君

「それじゃあ乗組員の方は船が走っている時だけでなく、港に停泊中も、仕事とはいえ安心して休む間もなく大変ですね。チョッサーのお話を聞くまでは船乗りは様々な国に行くことが出来、しかも船が入港するいろいろな港に上陸して観光やらショッピングやらが出来ていいなと思っていましたが、現実は随分と厳しいのですね。」

チョッサー

「そうだね、最近は殆んど専用船化され、大型のコンテナ船でも約1000個のコンテナの積み降ろしを4つのクレーンを持ってきて僅か8時間で終わってしまう。本船のような自動車専用船でも満杯の貨物を8時間で揚げたという事もあるんだよ。これら乗組員泣かせの船だけど外国での買い物は、今や電子メールで船食屋に頼めるし、たまに一晩停泊するようなときには交代で上陸するのが一番の楽しみという訳だ。」

その話を聞いて少し安心したカワサキ君でした。明日の入港後に下船するカワサキ君はキャプテンの許可を貰って、まるで戦争のような荷役風景を見学してから本船を後にしようと思いました。

このページの先頭へ