【株主還元政策、資本政策、最適資本関連】

Q-1-1:中計期間の株主還元について、前回の「5,000億円以上」から「7,000億円以上」と2,000億円引き上げましたが、この2,000億円を、配当ないし自社株買いとするのか、どのような観点で決めたのか、今後決めるのかについて教えてください。既に決まった部分は基礎配当への追加配当で500億円、今回の自己株式取得に1,000億円なので、残り500億円は未定だと思いますが、ここについては配当利回りなのか、最適資本構成なのか、いろいろなアプローチがあると思いますが、どのようなプロセスで決定したのか、今後決定するのかを教えてください。

 

A-1-1:当社としては、インカムゲイン、キャピタルゲイン双方を志向する多様な株主様がいらっしゃる中で、当社の企業価値を最大化できる還元はどのような配分かも踏まえて議論した結果、両方のバランスをとって今回の形に落ちついたとご理解ください。

 

 

Q-1-2:特に最適資本構成、自己資本比率の目処などは今回発表はありませんでした。最適資本構成ありきの自己株式取得の規模決定などは、今のところないという理解でよいでしようか。

 

A-1-2:最適資本構成については、当社のバランスシートの多くを占めるONE社の最適資本構成も含めて、もう少し検討する課題として残るだろうと考えています。そのような状況下、キャッシュフローを踏まえて成長に必要な企業価値向上に資する投資を行い、競争力ある資金調達ができる財務の健全性も確保し、資本効率も最大化すべく考えた上での還元額ということでご理解いただきたいと思います。

 

 

Q-2:最適資本構成は今回もまた検討課題だということですが、ONE社も中計を発表したのに、なぜ出せないのかと疑問に思います。また、現中計期間の最終年度である2026年度で、オフバラリースを含めた前提でどの程度の自己資本比率を想定しているのか、数字があれば教えてください。

 

A-2:最適資本構成については、ご指摘のとおり、「ONE2030」という事業計画が公表された中、当面の3年間にわたる株主還元策は示されましたが、今後投資計画、事業計画、投資を進めていくに当たって、アライアンスの組みかえなど事業環境が大きく変化しているところです。一方で、ONE社も今後新造船が出てくる中、資金を調達して資本調達を行わなければいけないわけですが、このときの与信がどの程度必要なのか。これらの点も踏まえて、ONEの最適資本はもう少し詰めていく必要があると、当社としては考えています。これがもう少ししっかり見えてきた段階で、自営事業も含めた当社の最適資本構成が、より具体的に数字として出せるのではないかと考えています。2026年度の数字については、今お話ししたとおり、最適資本構成をどのように組み立てていくかによって、最終目標数値が変わっていくものです。キャッシュフローを前提としていくことは変わらない中、当社として最終的に最適資本構成をどのような形でまとめて、それを達成していくかをお示しすることについては、もう少しお時間をいただければと思います。

 

 

Q-3:決算説明会資料13ページ目で、キャッシュインフローの増加とともに、キャッシュアウトフローの投資キャッシュフローと株主還元をそれぞれ増やしています。一方で、非連続的な成長についてもM&A含めて検討するということですが、仮にM&Aで非連続的な成長を目指す場合、キャッシュフローの手当はどうするのでしょうか。シンプルに有利子負債を増やすのでしょうか。非連続的な成長のための投資が大幅に出たときに、どのようにキャッシュフローを賄うのか教えてください。

 

A-3:当社の株主還元については、財務の健全性を確保、維持しながら、としています。M&Aの機会が生じた場合、そのときのキャッシュフローに加えて、基本的にはレバレッジもきかせながら資本効率を高めていきたいと考えています。

 

 

【中計の状況・進捗】

Q-1:中期経営計画の利益目標の引き上げ部分について、計画策定当初と比べて為替は恐らく円安になっていて、為替の影響を踏まえると、ほとんどそれで説明できてしまうのではないでしょうか。利益目標の引き上げについて、どのようにつくられたのでしょうか。

また、2030年度の目標について、自動車船の利益は、今は需給逼迫がかなり強い中、2030年度もコンテナ船を除く製品物流セグメントでかなり利益が出る形になっています。また、コンテナ船、ONE社について利益目標が大きく増える形になっている。これはどのように考えればよいか確認させてください。

 

A-1:中計期間最終年度の2026年度以降、2030年度も含めた目標は、今回為替影響は一旦全て外しています。2024年度の予想よりも、為替前提は元に戻しているという言い方が正しいかもしれません。したがって為替によるプラス要因は、含めていません。

2030年度のコンテナ船の目標値については株主3社とも同じ数字を使って発表していると思いますが、「ONE2030」の計画を前提に、ONE社が積み上げた数字を使っています。当社として、2030年度に向けて自営事業を(コンテナ船事業と同等の)1,400億円を超えるような収益規模を稼げる事業に育てる必要があるということで、+α部分はM&Aも含めて非連続的な施策を今後も継続的に検討したいという目標を今回掲げています。

 

 

【コンテナ船事業関連】

Q-1:コンテナの年間契約について、北米のサービスコントラクトを含めて、年間契約は概ね前年並みと理解しています。前年並みの年間契約というのは、直近のスポット運賃の推移からも違和感がありますが、一方で長期的な荷主との関係性を重視するのであれば、そのような契約の着地もあるとも思います。その戦略的な合理性も含めて、本当に年間契約が前年比横ばいなのかどうか教えてください。

 

A-1:コンテナ船の長期運賃の契約の状況について報告を受けている限りでは、長期運賃は前年並みのレベルです。北米航路と欧州航路では、長期といっても期間が若干異なり、北米航路は1年間の契約が主であり、欧州航路は3カ月間あるいは6カ月間の契約も一定程度は長期契約という枠に入るので、その違いはあります。比較されている短期運賃との乖離についての違和感は、ご指摘の通り現状の短期運賃の水準からすると長期契約が上がってもよいのではないか、という推測や見立てはあるとは思います。この点、背景にある中東情勢の問題がいつ終わるのか分からない一過性のものだということから、荷主のお客様と船社側との交渉事として、長期契約は前年並みで決着しつつある状況にあります。

 

 

【自営事業関連】

Q-1-1:決算説明会資料の25ページに市況エクスポージャーの数字が掲載されていますが、今回CAPE(大型船)や中小型船、それから電力炭船についてもエクスポージャーが10%を超えるような水準になっています。特に電力炭船について、今年度はリスクをとっていく方針にも見えますが、市況エクスポージャーを上げた背景と、今後も継続してこのようなエクスポージャーをとるのか、教えてください。

 

A-1-1:基本的な考え方として、全社としてエクスポージャーを増やすという考え方はありません。基本的には中長期契約を中心とした、顧客との強い結びつきにより安定収益を積み上げていきます。一方で、主にドライバルクでは、追加需要への対応などもあり、いろいろな形で追加船腹も必要になるので、一定程度の必要なエクスポージャーは確保した上で、最終的に当社のドライバルクの収支が最大化するように、道具として使っていきたいという考え方です。従いまして、ドライバルクについては、今年度のエクスポージャー方針を変更したわけではございません。

 

 

Q-1-2:電力炭船について、今年度は例えばCOA契約などが終了して、たまたまスポット比率が高くなってしまった、ということでしょうか。

 

A-1-2:電力炭船については、決算説明会資料の作成段階で、まだ契約更改が完全に決まっていないものや、1年ごとに更改する契約で決まっていないものがあった状況で、資料作成時点の集計上はエクスポージャーとしていますが、時差はあるも基本は契約更改の前提となりますので、実際にはほとんどエクスポージャーがないものとご理解ください。

 

 

Q-2:足元で生じている紅海の状況について、市況部分については説明で分かりましたが、コストについて教えてください。他船社の発表でも、燃料費などを中心に先行費用が発生すると書かれています。今回の計画の中で、紅海を中心とした問題に関して、喜望峰経由に迂回することに伴う費用は、それぞれの船種でどのように織り込んでいるのか教えてください。

 

A-2:自動車船については、ご指摘の喜望峰経由での先行費用は、実際に船が喜望峰経由で配船をしていながら、その後お客様と追加コストの回収についてお話をさせていただき、チャージを適用させていただきますが、その時期がずれることによって、費用が先に出て、後からチャージをいただくという構造になっています。先行費用という形では、2023年度第4四半期に発生しましたが、2024年度については、お客様のご理解を得ながら、通期でチャージとして回収させていただく見込みですので、影響はそれほど大きくありません。当社もヨーロッパ向けの往航や復航の航路が喜望峰経由の迂回となりますが、年間で何もしなければ30億円程度の追加費用が発生します。当社としてはこの部分をチャージで回収させていただいている、という構造になっています。

コンテナ船については、喜望峰回りのスケジュールを維持するために一定程度の船の増速が必要で、そのための燃料コストが上がっています。計画にはこれを織り込んでいます。

ドライバルクについては、2023年末、喜望峰経由への迂回が始まった当初は、既存契約の中で、途中で航路変更を余儀なくされた結果、コストが発生する影響が出ましたが、2024年以降の契約においては市況あるいは契約を通じてコストをカバーしています。計画にもその前提で織り込んでおります。

全体として、基本的にはコストをお客様から回収する前提で進めています。

 

 

Q-3:ドライバルクの2024年度計画について、市況前提も前年度比で高い水準で見ていますが、前年度からの増益の幅が結構大きいと思います。他の会社と比べても、現実的なものなのかと思いますが、どのような前提で大幅に増益する計画となっているのか、教えてください。

 

A-3:2024年度は荷動きが堅調と見ており、当社の安定収益になる、専用船や中長期契約などの契約も、しっかり収益を上げていく予定にしています。

2022年度半ばに下がった大型船の市況は2023年度下期から、中小型船については2024年に入ってから回復してきました。この間、2023年度について、その前の2022年度に決めた契約が残った部分や、エクスポージャーの手当がうまくいかなかった部分もあり、2023年度の収支は厳しいものになりました。

2024年度については、2023年度の下期、市況回復期の中で2024年度の契約を手当てしていて、一定の収益を確保する計画としています。また、2023年度にあった一過性の費用も2024年度には解消する部分もあり、この点も大きく増益しているように見える要因かもしれません。

 

 

Q-4:自動車船について、紅海の迂回の影響や、欧州で在庫が積み上がっているという話もよく聞くが、中国のEV輸出の鈍化など、今後の需給をどのように見て、どのように計画を策定しているのでしょうか。今年度の契約運賃の前提、複数年契約での更改など、何がどのようになって前年度と比較しての利益としているのかなど、詳しい前提があれば教えてください。

 

A-4:自動車船の、2024年度業績の前提となる要素について、いくつか説明します。

まず契約について、この4月からスタートする今年度の契約は、3月末までにほぼ全て固めています。2024年度の収入サイドでの契約は単年ないしは残り2年、3年、もう少し長いものもありますが、そのような契約でカバーしているので、足元で大きな影響は受けません。

需要サイドは、世界の自動車販売自体はまだ回復途上で、特に米国の販売が思ったより底堅く推移していて、全体の需要を大きく底支えしています。よって、需給も2024年度に関しては大きく崩れない、むしろ喜望峰経由によって、当社試算では全体で7%程度船を余計に使うことになるので、全体の需給はタイトな状態が続くと見ています。恐らく需給がバランスしていくのは、新造船が継続して出てくる25年の後半くらいではないかと考えています。

最後に中国出しの荷量について、陸路経由ロシア向けの輸出等を除いた、海上輸送の台数は、2023年暦年で220万~230万台と理解しています。恐らく2024年は、これを若干上回る240万台程度は少なくとも出てくると見ています。当初想定より伸びのスピードが落ちて鈍化していると思いますが、輸出自体は堅調に推移していると見ています。ただし、昨年と比べて2024年の方が、コンテナで輸送される中国出し完成車の数量が増えると見ていて、一部の仕向地に関しては、若干需給がバランスするタイミングが早くやってくるかと考えています。これらの点も勘案した上で2024年の業績予想を策定しています。2023年度の業績は非常に好調でしたが、2024年度も引き続き、様々なコストアップ要因の影響は受けますが、好調に推移するものと考えています。